神奈川県衛生研究所

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平成23年12月21日発行
神奈川県衛生研究所

神奈川県衛生研究所における  薬剤耐性肺炎マイコプラズマの検出状況について

2000年に、当所で初めてマクロライド系薬剤に耐性を示す肺炎マイコプラズマが分離されました。その後、神奈川県内においても2003 年以降、継続的にマクロライド耐性肺炎マイコプラズマが分離されています。

○調査方法

神奈川県衛生研究所では、マクロライド耐性肺炎マイコプラズマの出現状況の把握と臨床分離株の薬剤感受性、耐性菌の遺伝子変異の特徴を調査しています。調査方法は、肺炎マイコプラズマ感染の疑いがある患者の咽頭ぬぐい液から、培養法と PCR 法で肺炎マイコプラズマを検出し、分離株について薬剤感受性試験を実施し、最小発育阻止濃度 (MIC: μ g/ml) を測定しました。マクロライドに耐性を示した肺炎マイコプラズマについては、 PCR-RFLP 法あるいは塩基配列解析にてマクロライド耐性に関与する 23SrRNA 遺伝子変異の確認をおこないました。

○調査結果

神奈川県では、1986~1999年まではマクロライド耐性株は検出されませんでしたが、2003年以降は継続的に分離され、2000年~2010年で110株中23株(20.9%)にのぼりました。
神奈川県外では、2000年以降に北海道、山形県、新潟県、山梨県、千葉県、埼玉県、兵庫県、熊本県、高知県、沖縄県の医療機関から分離された139株中25株( 18.0% )がマクロライド耐性株でした。
国内の広範囲な地域からマクロライド耐性肺炎マイコプラズマが検出されています。それらの耐性肺炎マイコプラズマは、マクロライド耐性に関与する 23SrRNA 遺伝子の2063番目のアデニンがグアニン(A2063G) に置き換わっているものが最も多く検出され、神奈川県内ではA2063GとA2064Gの2種類の耐性菌が検出されています。また、遺伝子の変異箇所によって薬剤感受性試験結果に特徴がみられることがわかりました。
 

神奈川県衛生研究所では、今後も継続して県内外におけるマクロライド耐性肺炎マイコプラズマの調査を実施するとともに、耐性菌が急激に出現してきた要因の解明についての基礎検討をすすめてまいります。
(微生物部)