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特集 Work vol.9

農業を通じた地域活性を目指す大学生と障害福祉サービス事業所がコラボ。廃棄される摘果みかんを再利用し、商品を開発。

横浜国立大学Agridge Project
(社福)開く会「共働舎」
(社福)ぐりーんろーど「トロワランド」

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農業を通じた地域活性を目指す大学生と障害福祉サービス事業所がコラボ。廃棄される摘果みかんを再利用し、商品を開発。

横浜国立大学の学生が農業を通じた地域活性を目指す「Agridge Project」(以下:アグリッジプロジェクト)と障害福祉サービス事業所が連携し、商品開発を行いました。廃棄されてしまう摘果みかんを再利用し、加工品を製造。横浜市泉区にある障害福祉サービス事業所「共働舎」と同市神奈川区にある「トロワランド」が加工作業を担いました。

アグリッジプロジェクトって?

横浜国立大学の学生が中心となり、2017年から始まった「アグリッジプロジェクト」は、農業による地域活性化を組織理念とする地域課題実習。発案メンバーは大学1年生の4人で、そのうちの徳島県出身の学生が「将来、地元を盛り上げる活動ができたら」という思いがきっかけとなり、日本全国にある農業で地域を活性させることができればロールモデルになれるとプロジェクト創設に向け動き出しました。

1年の準備期間を経て、全学部の学生が希望制で参加できる地域課題実習(地域交流科目の一つ)としてプロジェクトが始動。農業を通じた地域活性を目的に、3つの目標(ビジネスによる経済活性化、地域コミュニティ活性化、技術開発による地域活性化)を掲げ、さまざまな活動を展開しています。

「Agridge Project」というプロジェクト名の由来は、Agriculture(農業)とBridge(架け橋)を掛け合わせた造語で、農業を通じて「人と人」「人と地域」の出会いの場を創出するという願いが込められています。

アグリッジプロジェクトのロゴ

地元農家や企業とコラボ

3つの目標を達成するために、アグリッジプロジェクトは県内農家や企業と連携。これまでにはビール製造企業とコラボした「大学オリジナルビール」の開発や、コロナ禍における地元飲食店支援のための学内での弁当販売、農家や住民と協力した農産物生産などを行ってきました。

活動を通じて地域資源を有効活用し地産地消を図るとともに、商品開発や農業経営などの現状や課題を学んでいます。

大学オリジナルビールの写真
農産物生産の風景
学内での弁当販売の風景

里山保全団体と障害福祉サービス事業所と連携

2021年度に取り掛かった企画は「摘果みかんの有効活用」。摘果みかんは、状態の良いものに栄養を集中させるため、間引きといわれる栽培工程時に未成熟のまま収穫されるもの。多くの摘果みかんが廃棄されることを知った学生が、有効活用できないかと方法を模索しました。

摘果みかんの提供には、小田原市の里山保全団体「曽我山応援隊」が協力。担当教員の紹介を経て、障害福祉サービス事業所「共働舎」と「トロワランド」が商品の開発に携わりました。

作業風景

商品開発に奮闘

農園やパン屋などを運営している「共働舎」は、そのノウハウを生かし、焼き菓子を製作。火を通してもみかんの風味をできる限り残した商品になるように、試行錯誤を重ね、パウンドケーキやグラッセを完成させました。また、無農薬のとうがらしと皮を混ぜた「青みかん胡椒」も手掛けました。

青みかんパウンドケーキの写真
青みかんぴーるチョコレートの写真
青みかん胡椒の写真

一方の「トロワランド」は、地元農家や地域の方と連携して甘夏のジャム作りの経験があり、摘果みかんを使ったジャムを製作。試作段階では苦みが強く出てしまったことから、生産方法を改善し、果肉感があり酸味と苦みがある大人向けのジャムを完成させました。

曽我山思いやりジャムの写真

完成した商品のパッケージやラベルデザインなどは学生が考案。大型商業施設で行われた福祉イベントに出品し、人気を集めました。

「摘果みかんの有効活用」が将来にわたり持続することができれば、地産地消やフードロスの削減、農家や障害福祉サービス事業所の収入アップの可能性をもつ事業になりうることが見えました。

福祉イベント出品の様子

理解が広まる地域に

アグリッジプロジェクトを創設した一人・松本雅裕さんは「プロジェクトを通じて地域に何があり、どのように活用すれば社会に貢献できるのかを学ぶ機会になりました。大学生という世界の中では、なかなか出会えない人とつながれることは、毎回新鮮で楽しみの一つになっています。そして、今回の事業では障害福祉サービス事業所が身近にあることも知ることができたし、つながれたのは大きな収穫となりました。今後の人生にも良き経験となりました」と話す。

共働舎施設長の萩原達也さんは「商品開発も良かったですが、なによりも大学生とつながれたことが良かったです。若い人と一緒になって作業を行えること自体が利用者に良い刺激となり、関心を集めていました。外から人が入ってくることで、いつものと違う風が吹き、施設内に変化が生まれていました。学生たちには実際に触れ合うことで『健常者と障がい者』と区分けすることのない社会を感じてもらえればと思います」と語っていました。

トロワランド施設長の加藤祐子さんは「横浜国立大学とは以前からつながりを持ちたい思いがあったので、とても良い機会になりました。その理由は、地域に障がいのある方や事業所が多くある事を知ってもらうとともに、食品づくりに限らず、さまざまな仕事ができる事を知ってもらえればと思っていたからです。活動をみて、障がい理解を深めて広めていただければと思います」と振り返りました。

基本はオンラインで打合せ
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取材先:
横浜国立大学Agridge Project
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