株式会社OTERA
2026年 8月 7日些細な困りごとを地域人材が解決!孤立を生まない支援サービス
2026年 8月 7日
生活支援サービス「マモルバ」
高齢者の孤独や孤立の入り口になるとされる、介護保険ではカバーしにくい家事や生活の“ちょっとした困りごと”。そうした困りごとを地域サポーターが有償で手伝い、解決につなげる生活支援サービス「マモルバ」を展開しているのが、逗子市に拠点を置くスタートアップ企業、株式会社OTERAです。26歳の若き代表・武田啓さん(メイン写真右)は、山口県のお寺に生まれた浄土真宗の僧侶。起業のきっかけは、コロナ禍だった大学時代、実家の寺院を手伝いながら法事や葬儀で高齢者のもとを訪れた際の体験だったといいます。
思いを語る武田さん
「檀家さんが孤独死され、誰にも気づかれないまま行政が遺骨を保管していたことがありました。『お墓があるので引き取りたい』と申し出たものの、叶いませんでした。また、買い物中に転倒し、頭に包帯を巻いている高齢の方にも出会いました。『困ったことがあれば言ってください』と声をかけても、お坊さんに日常生活の困りごとを相談する人はほとんどいないんです」と武田さん。
かつて寺院は、地域で暮らす人々を支える場としての役割も担っていました。僧侶としてその原点に立ち返り、亡くなった後だけではなく、生きている間の暮らしも支えたい――。そのためには寺院だけでは限界があると感じ、外側から支える仕組みをつくろうと会社を立ち上げました。
地域の誰もが参加できる、持続可能なサービスに
武田さんは、それまで縁がなく知り合いもいなかった湘南の地に偶然根を下ろし、地域の介護事業所やデイサービスを1軒1軒飛び込みで訪問。さまざまな声に耳を傾けていきました。そうして中核事業となったのが、生活支援サービス「マモルバ」です。マモルバでは、事前に登録した地域サポーターが、買い物代行や病院への付き添い、部屋や庭の掃除、話し相手など、利用者からのさまざまな依頼に無理のない範囲で対応します。いずれも介護保険の対象にはなりにくいものの、日常生活には欠かせない支援ばかりです。2025年6月ごろに事業をスタートし、2026年1月にはサポーター向けアプリをリリース。現在は逗子市、葉山町、鎌倉市、横須賀市、三浦市まで対応エリアを広げています。
“親しいご近所さん”のような関係を築いているサポーターと利用者も
サポーターには身分確認や面談を経て、誰でも登録でき、特別な資格は必要ありません。2026年7月時点で、15歳から85歳まで約240人が登録しています。夫婦で活動している人もいれば、引っ越してきたばかりで地域に知り合いがいなかったものの、サポーター活動を通じて地域になじむことができたという人もいるそうです。一方、利用者は80代を中心に約150人。依頼は電話で受け付けています。高齢者本人だけでなく、仕事をしながら親の介護を担う「ビジネスケアラー」からの依頼も多いといいます。サポーターとのマッチングは、面談時の印象なども踏まえ、運営メンバーが行っています。
専任サポーターからLINEで家族に作業報告
利用料の約7割がサポーターに支払われ、残りは運営費として充てられます。また料金については、「心理的なハードルが低く、利用していただきやすいと考えました」と武田さん。また、希望すればサポーターを専任にすることもでき、“親しいご近所さん”のように継続して関係を築けることも特徴です。サポーターと利用者家族でLINEグループをつくり、作業後には写真付きで報告も行っています。
高齢者とサポーターをつなぐこうしたサービスはほかにもあります。しかし、サポーター登録が資格保有者に限られていたり、高齢者には気軽に利用しづらい料金設定だったりと、それぞれに壁がありました。中には、人件費がかさんでサービスを継続できなくなるケースもある一方、公的な仕組みのもとで運営されるボランティア制度も、人手不足やデジタル化の遅れなどの課題を抱えていました。
そこで株式会社OTERAは、そうした課題を解決する仕組みを目指し、
・資格がなくても活動できること
・地域の人同士が助け合うこと
・持続可能な収益モデルであること
――この3つを重視して、「マモルバ」を形にしていったそうです。
サポーターの8割が「地域に貢献したい気持ちが高まった」と回答
実証実験で設置したPRブース
「マモルバ」を大きく後押ししたのが、神奈川県のオープンイノベーションプログラム「エール“ガバメント×ベンチャー”アライアンスかながわ」(通称・YAK)へ応募し、採択されたことです。「YAK」は、県や県内市町村とベンチャー企業が持つアイデアや技術をマッチングし、地域課題の解決を目指すプログラムとして2025年度にスタートしました。採択された企業は、金銭的な支援に加え、社会実装に向けたさまざまなサポートを受けることができます。
株式会社OTERAは神奈川県生活援護課とタッグを組み、孤独・孤立の解消に向けた取り組みとして、横須賀市で約2カ月にわたり「マモルバ」の実証実験を実施しました。県による支援の中でも特に大きかったのが広報面です。市内にある県立保健福祉大学でのサポーター募集をはじめ、地域包括支援センターでのチラシ配布、医療機関へのPRなどが実現しました。また、支援金を活用してアプリ開発も進め、より多くの人が参加しやすい環境が整いました。
こうした生活支援サービスは紹介によって広がることが多いため、武田さんは「2カ月という実験期間は、地域にサービスが浸透するには短かった」と感じたそうです。それでも期間中には約60人のサポーター登録があり、利用者20人からの依頼に応じることができました。「掃除が苦手」「頼れる人が近くにいない」といった理由から、50~60代の利用も想像以上にあったそうです。また、人手不足に悩むデイサービスや民泊事業者から清掃の依頼が寄せられるなど、新たなニーズの発掘にもつながりました。
神奈川県の成果発表会で話す武田さん(右)
「一人で銀行や携帯ショップへ行くことをためらっていた方は、『付き添ってくれる人がいたおかげで、初めて外出できた』と喜んでくださいました。奥様が病気になり、家の掃除ができず困っていた40代のご夫婦からも、『頼れる人が見つかって助かった』という声をいただきました。前向きな反応が多かったです」と武田さん。実験終了後には、サポーターの約8割が「地域に貢献したい気持ちが高まった」と回答しました。「自宅の掃除をしても当たり前ですが、高齢者のお宅で同じことをすると、とても感謝されるんです」。そうした経験が、地域活動への参加や、やりがいにつながっていることが分かりました。
「競争ではなく、共創」で地域を支える仕組みを全国に
「マモルバ」はこの先、高齢者支援を軸にしながらも、「困っている人」を年齢に関係なく支えられる仕組みを目指していくそう。「地域で困ったことがあれば『まず相談してみよう』と思ってもらえる存在になりたい」といいます。まさに“駆け込み寺”です。
現在、新しい地域には地域マネージャーを配置し、介護事業所や地域包括支援センターなどを一軒一軒訪ねる草の根の活動を続けています。こうした地道な取り組みによって認知度も高まり、自然と相談や連携につながるケースが増えてきました。対応エリア近隣地域からの問い合わせも増えてきているといい、まずは湘南エリア全体へ広げることが目標です。
今回の実証実験をきっかけに、高知県や秋田県などからも相談が寄せられており、将来的には全国展開も見据えています。武田さんはこう話します。「私は山口県萩市の出身ですが、地方では必要なサービスが採算の問題で提供できないケースも少なくありません。だからこそ、人口の少ない地域でも利用できる仕組みを作りたいと思っています。見守るだけでなく、地域の困りごとを解決する会社として成長していきたいですね」
株式会社OTERAが掲げるのは、「競争ではなく、共創」。自治体や事業者、地域で活動したい個人とともに、孤独や孤立を生まない地域づくりを目指し、地域を支える仕組みづくりを進めていきます。
※この記事は、神奈川県が株式会社OTERAの取組みを保証したり、利用を推奨するものではないことを予めご理解ください。掲載情報の詳細については、株式会社OTERAに直接お問い合わせくださいますようお願いいたします。
プロフィール
株式会社OTERA
2024年に設立した逗子市のスタートアップ企業。僧侶が代表を務め、地域の人材を生かしたシニア向けの生活支援サービス「マモルバ」を逗子・葉山・鎌倉・横須賀・三浦で展開、見守りアプリ「マモミル」の運営や寺院向けのIT支援なども行っている。
