

一般社団法人真鶴未来塾
2025年 09月 30日真鶴に惚れ込んだ移住者が中心に「こどもたちの居場所をつくる」
2025年 09月 30日 JR真鶴駅から港に向かって700メートルほどのところにあるコミュニティ真鶴は、真鶴町が、昔から引き継がれてきた懐かしい港町の生活風景を保全していくために作成したまちづくり条例「美の基準」にのっとって31年前に建設された公共施設です。
2024年10月から指定管理者としてその管理運営を受託しているのが一般社団法人真鶴未来塾です。人々が行き交う「町の交差点」の役割を果たしたいという思いから、「まちこ」という愛称で活動をしています。
放課後はこどもの声でにぎやかに

「どこかの子」が設置された中庭では木登りする子も
美の基準は8つの原則のもと、69個のキーワードが提示され、「建築は場所を尊重し、風景を支配しないようにしなければならない」「町の材料を生かして作らなければならない」などが示されています。
それをふまえてつくられた建物は、中庭を囲んでこどもや地域の人たちが自由に過ごせるコミュニティスペースと2つの会議室、和室などで構成され、地元の木材や石材などがふんだんに使われています。
中庭にある彫刻作品は2020年に開催された真鶴・石の彫刻祭で制作された大竹利絵子さんの『どこかの子』という作品。

コミュニティスペースには駄菓子コーナーも
コミュニティスペースは毎週月・水・金・土曜日の午前10時から午後4時45分まで開放し、平日は下校時間になるとこどもたちがどんどん集まってきます。
中庭にある木に登ったり、鬼ごっこをしたり、小さい子から上級生まで一緒になって思い思いに過ごしています。駄菓子コーナーや飲み物などもあり、「家にいるみたい」といわれることも多いようです。

救急救命講習会を実施
貸会議室や和室はお花の講座やお習字、ヨガ教室、体操教室などにも利用されています。
午前中は主に大人の方、午後はこども達の習い事など、時間や講座の内容によって幅広い町民の方に利用されています。
まちこは2015年、前代表の奥津秀隆さんによって、地域を担う次世代の人材育成と多様なコミュニティの創造に寄与することを目的として設立されました。
当初は起業支援などを手掛けていたといいますが、子育て世代が中心になった現在の活動は、こどもから大人の方まで幅広い世代に向けたものにシフトしています。
まちこは活動の柱として、次の5つを掲げています。
1 いたいように居られる「場」づくり
2 多様な人々と出会う「機会」づくり
3 それぞれに出番のある「機会」づくり
4 挑戦することの「きっかけ」づくり
5 それら様々な思いの実現の「お手伝い」
2024年から指定管理者に

真鶴未来塾のスタッフ
前列 右 玉田さん 左 西村さん
現在の代表の玉田麻里さんは一人旅の途中で途中下車したことがきっかけで真鶴の魅力にとりつかれ、8年前に東京から一家で引っ越しました。
「たまたま訪れた真鶴が大好きになって通い始めて、最終的に引っ越してきました。ただ、子育てをしながら働ける仕事が真鶴にはなかったんです。そこで自分たちで働く場所をつくろうと、様々な方法を模索しているうちに、前代表の奥津秀隆さんから「法人を引き継いでは」との提案を受け、二代目の代表に就任しました」
かつてコミュニティ真鶴は施設利用団体や地域住民による「運営協議会」で自主運営されており、真鶴未来塾が施設内に事務所を置いてその一員としてかかわっていた縁もあり、指定管理者として施設の運営を担うことになりました。
現在のスタッフは6名。そのうちもともと真鶴の地元っ子が1名います。
理事の西村梨沙さんも、ご親戚が真鶴にいた関係から茅ヶ崎市から引っ越してきたメンバーです。
「子育て支援に関しては前に暮らしていた市のほうが充実していたものの、豊かな自然がある真鶴での生活を選びました」(西村さん)
町民センターで開かれていた子育てサロンのようなスペースで玉田さんと知りあい、活動に興味をもつようになったそうです。
「子育てをしている中で抱えた困りごとを、現在活動をしているメンバーなどと一緒に役場に相談に行くと、役場の人は親身にサポートしてくれて、そんな形で仲間が広がっていきました」(西村さん)
足らないものがあれば自分たちで動く活動の積み重ねが、コミュニティ真鶴で働くことにつながっていきました。
「指定管理者として施設内の整備等、管理を行っていますが、それ以外にも、コミュニティ真鶴のレンタルスペースをもっと多くの町民に使ってもらうために、様々な告知を行っています。また、お部屋を使って何かをしたいというお問い合わせがあれば一緒に講座をつくったり。平日の午前中などには、大人向けの講座なども開催しています」(玉田さん)
もともと真鶴町には「習い事ができる場」が少なく、こどもの習い事も近隣まで車で通うといったケースが多かったため、町内でも学べるような場をつくりたいということから多くの人を巻き込んでいった結果、次第に大人向けの講座も増えていったそうです。
これらのさまざまな取組みを通じて地域の人と移住者をつなぐコミュニティとしての役割も担ってきました。
近所を遊びつくすことを思い出に
さらに昨年度は、補助金を活用してこどもが自由に遊べる場をつくる“遊びの専門家”であるプレイワーカーを招き、「放課後まなづる探検隊」と題して、荒井城址公園、岩海岸など町内の様々な場所に遊びにでかけていろいろな遊びを体験する活動を行ってきました。
また、海の専門家である特定非営利活動法人ディスカバーブルーの協力を得て、季節ごとの海の生物を知ろう、といった企画も実施しています。
多くのこどもが中庭で楽しんでいた木登りのしかたもまなづる探検隊で来たプレイワーカーさんに教えてもらったそうです。
将来の地域のありようを考える

みんなでつくったりんご箱コンポスト
あわせて、「環境・エネルギー活動」と称し、真鶴町の環境について考える取組みを行っています。
「災害にあったときに陸の孤島になる可能性の高い地域であることから、何かあったときに最低限のエネルギーを自分たちでつくることがっできないかと考えました」(玉田さん)
専門家を招いて太陽光パネルで発電したものをバッテリーに溜めて使えるようにする電力自給システムをつくったり、リンゴ箱を使ったコンポストづくりをしたり。こどもから大人まで多くの人に好評だったそうです。
こども服や本、雑貨などのリサイクルなども積極的に行っています。

こどもたちのアートクラス
いろんな方に助けられて続いているというまちこの活動を聞いていて感じるのは、いい意味で「緩い」ことです。
他の地方と同様に、住民の減りつつある地域をなんとかしたいという意識は強くとも、活動の柱にあるように、できる範囲のことを見守ったり、サポートしたりという姿勢がみえるので、こどもたちや地域の人が気軽に利用できる雰囲気が生まれ、たくさんの人が集まっているように思えます。
今後についても活動を発展させるというよりは、方向性を定めず、活動を続けながら、最適な進路を模索していきたいという思いがあるようです。
「私はここを勝手に児童館だと思っているんですが、真鶴って中高生の居場所がほとんどないんです。いまは小学生主体になっていますが、もう少しお兄さんお姉さんでも過ごしやすい場所にしていきたいですね」(西村さん)
「いまのこどもたちが真鶴を出ていく未来があったとして、地域でたくさんの大人に関わったり、町で遊びつくしたりしたんだという思いがあると、何か困難に直面したときにその思いが心の支えになるんじゃないか、その記憶のひとつにコミュニティ真鶴が残っていたらいいなと思って、ゆるく長く活動を続けていきたいです」(玉田さん)
コミュニティ真鶴は、自然に恵まれたところへの移住を考えていたり、美の基準についてもっと知りたいと思ったり、真鶴町に興味を持った方への視察等にも対応しています。
月・水・金・土曜日オープンしている一階のコミュニティスペース、ぜひお気軽にお訪ねください。
プロフィール

一般社団法人真鶴未来塾
真鶴町の公共施設「コミュニティ真鶴」の指定管理者として、レンタルスペースやコミュニティスペースの管理運営を行いつつ、大人向けのお花教室などの講座等、町民活動の支援なども手掛けています。「放課後まなづる探検隊」をはじめ、こども向けの事業も多数展開しています。