

社会福祉法人愛川舜寿会
2025年 03月 31日地域の緩やかなつながり・見守りづくり情報交換会
地域共生文化拠点の現場を見る「春日台センターセンター」視察会
2025年 03月 31日
神奈川県主催で2月21日、愛川町にある地域共生文化拠点「春日台センターセンター」(社会福祉法人愛川舜寿会)の視察会が行われました。今回の視察会は、孤独・孤立対策推進法の施行に伴い企画されたもので、県内で人と人との「つながり」を実感できる地域づくりに取り組んでいる人など、行政・民間あわせ約20人が参加しました。
春日台センターセンターは、高齢者介護や就労支援、放課後等デイサービスを行っており、コロッケスタンドやコインランドリー、寺子屋、コモンズルームなどの設備も備えた、まちの新たな交流拠点となっています。施設内では子どもから高齢者、障がいのある人もない人も、様々な人が集い、憩い、楽しんでいる姿を見ることができます。この日も多くの子どもたちの姿があるなど、施設は活気にあふれていました。
スーパーの跡地に開設 「町の中心(センター)に」の思い

様々な機能が複合した春日台センターセンター

洗濯文化研究所の説明を行う馬場理事長(中央奥)
この日、視察会のナビゲーターを務めたのは、同施設を運営する社会福祉法人愛川舜寿会の馬場拓也理事長です。視察会の冒頭、挨拶に立った馬場さんは、「かつてこの地区は工業が盛んで、そこで働く方々が移住し、ベッドタウンとして栄えた場所になります。今でも1,500世帯3,000人ほどが暮らしています」と説明しました。現在、春日台センターセンターがある場所には、春日台地区の人たちに長く愛され、まちの中心を担っていたスーパーマーケット「春日台センター」があったそうです。愛川が地元の馬場さんも「思い出の場所」と振り返ります。スーパーは約50年経営されていましたが、時代の流れや地域の高齢化に伴い客が減る中、2016年に閉店しました。中心だったスーパーの閉店後は、治安が悪化したときもあったそうですが、町や県との協働の末、2022年に春日台センターセンターとして生まれ変わりました。施設の名前には「子どもから高齢者まで、みんなの中心だった『春日台センター』をもういちど、このまちの中心(センター)に」という思いが込められています。「開設は(住宅地である)この場所にこだわりました」と馬場さん。小学校や中学校から近く、こどもたちが負担なく自然と集まりやすい、まさに「センター」の場所だからだそうです。

操作方法はイラストを使用。
視察会でははじめ、コインランドリーや洗濯デリバリーサービスを行う「洗濯文化研究所」を見学しました。洗濯デリバリーサービスは就労継続支援A型事業所として運営されています。過去にひきこもりだった人もここで働く中で、自信を付け、地域や仲間との交流を通じて、明るくなった方もいるそうです。セルフのコインランドリーではシンプルながら分かりやすいイラストを配置したデザインが目を引きました。馬場さんは「愛川町は外国人の方も多いのでピクトグラムで説明することにしました。また、べたべた利用方法を解説した紙を貼っているコインランドリーもありますが、あえて説明しすぎないようにしています」と話します。有人ランドリーなので使い方で分からないことがあれば、「近くのスタッフに声をかけてもらう。そこから会話が生まれる」からだそうです。
コロッケスタンドや駄菓子コーナーも

コインランドリーを抜けると、すぐ目の前に、人気のコロッケスタンド「春日台コロッケ」があります。春日台センターにあったコロッケ。お店のレシピを受け継ぎ、就労継続支援B型事業所の店舗として運営。ホクホクのコロッケが大人気で、老若男女問わず愛されています。お惣菜や自家製ドリンクなどメニュー開発にも積極的で、コロッケ職人が知恵を絞り合って考えているそうです。

施設内に設置された駄菓子コーナー
1階部分の外側にコロッケスタンドが入る2階建ての建物には、グループホームや小規模多機能型居宅介護、放課後等デイサービスなどの福祉事業が展開されています。それぞれの空間を開放的につないでいることが特徴で、高齢者グループホームのすぐ隣に放課後等デイサービスのスペースが設けられていました。そのため、グループホームを利用されている人は、放課後等デイサービスや遊びに来て元気に動き回る子どもたちの姿を見ることができ、思わず笑みがこぼれる日常があるそうです。
建物の入り口付近には子どもたちが大好きな駄菓子コーナーも設置され、お年寄りが店番を手伝うなど、ときには世代間をこえた交流も生まれています。以前の高齢者施設では、順応できず怖い顔をしていた人が、子どもたちが身近に見える環境に移ってからは、優しい顔つきになり、穏やかになるケースも見られたそうです。
ルールで縛るより会話で理解促す

盛り上がりを見せた意見交換会
春日台センターセンターには、張り紙がほとんどなく、禁止事項や注意書きが貼られていないことも特徴です。「気付いたことがあったら、気づいた人が、そのつど声がけをしています」(馬場さん)。同施設ではルールで縛るのではなく、皆でスペースを使用するうえで、互いに考え、コミュニケーションを取ることを大切にしているそうです。「まだこの規模だから、このやり方でできています」と馬場さんは補足します。
視察会の終盤では、馬場さんと参加者による活発な意見交換が行われました。参加者からは「生活の中でお互いに助け合う、自然に関わり合う環境を作っていることが間近に感じられたことが印象的だった」「これから来る多文化、多様性、多人権社会になる中で、高齢者や障がいのある方、子どもたちそれぞれが、比較的自由に交流できているところを見ることができ、共生の一つの正解を見た気がしました」などの声があがりました。
神奈川県では人と人とのつながりを実感できる地域社会に向け、今後も地域の緩やかなつながり・見守りづくり情報交換会として視察会やセミナーなどを行っていく予定です。
プロフィール

社会福祉法人愛川舜寿会
神奈川県愛川町で、特別養護老人ホーム「ミノワホーム」、「カミヤト凸凹保育園+plus(厚木市)」、地域共生文化拠点「春日台センターセンター」、コインランドリー&洗濯代行事業「洗濯文化研究所」を運営。高齢・障がい・子どもの福祉事業と社会との融合を目指している。