NPO法人 こまちぷらす
2024年 12月 06日ママを独りにさせない “まちの子育て”でみんなをプラスに
2024年 12月 06日子育て体験から生まれたアイデアいっぱいの自然派カフェ
「こまちぷらす」のメンバー
イベント情報などをまとめたリーフレット。月に1回発行している
活動について話す大塚さん
子育ては毎日がハプニングの連続で、多くは思うようにはいきません。特に今の時代は核家族化をはじめ、ライフスタイルの変化や多様化に伴い、子育てそのものを一人で抱え込んでしまう傾向にあります。出産・育児を機に家にひきこもりがちになってしまう、社会とのつながりが断たれてしまう、ということも珍しくありません。そうした孤立をなくそうと、ママ仲間たちが横浜市戸塚区で2012年に立ち上げたのが、認定特定非営利活動法人「こまちぷらす」(理事長 森祐美子)です。
団体名には「“子”育てを“まち”で“プラス”に」と、当事者のみならず、まち全体で子育てを豊かなものにしていこうという思いが込められています。理事の大塚朋子さん自身も、戸塚区に暮らす2人のお子さんを持つママです。参画したのは、設立当初から続く親子カフェを訪れたことがきっかけでした。
「こまちぷらすでは、ママにとって家族以外の人たちや社会との接点となる居場所事業と、子育てや地域の場づくりにまつわる情報を届ける事業を2つの柱としています」(同NPO法人理事・大塚さん/以下同)
JR戸塚駅の西口から区役所の脇を抜けて歩くこと10分弱、路地に面したレンガづくりの建物は、ママたちの居場所となる「こまちカフェ」です。このお店では、入口で靴を脱ぐのがお約束。白木のフローリングにローテーブルを配置し、赤ちゃんが“はいはい”や“あんよ”をしても安心なつくりにしました。
地域の八百屋さんから仕入れた野菜をふんだんに使ったランチは、豊かな彩りが自慢です。ふだんは子どもに食べさせるのに気が回って食べた気がしない人も、忘れかけていた「おいしい」という感覚にじっくり浸ることができます。あたたかいご飯を両手でゆっくり、おしゃべりしながら食べられるように、ボランティアスタッフがお子さんの見守りをサポートしてくれるので安心です。奥のスペースでは、毎月30近くのイベントが開催されます。親子で楽しむクラフト体験や撮影会、学校に居づらさを感じる子どもを持つ親同士の語り場と、実に多彩なラインアップです。
ママ同士のつながりが支援を受けるきっかけに
ゆっくりとした時間が流れるカフェ
「駅の東口にある善了寺の境内に構える姉妹店、『こよりどうカフェ』と共に、お店を訪れた人がほっと安心できる場づくりを大切にしています。こまちカフェはテーブルの間隔が狭いので、ふとした弾みでお隣のテーブルの方との会話や交流が生まれやすいですね。イベントで知り合って、カフェでおしゃべりをして、連絡先を交換するという人も多いです」
子どものことを気軽に語れる存在は重要です。というのも、子育てに悩む保護者は目の前のことに必死で、行政をはじめ地域にはたくさんの支援があることを知りつつも、つい後回しにするうち、内に閉じてしまうことが少なくないからです。
「それでもカフェに来れば、この支援がよかった、その手続きならアプリでできると教えてくれる先輩ママや、あのイベントに一緒に行こうと連れ出してくれる友達に出会えるかもしれない。あるいはかつて同じように悩んだベテランお母さんのボランティアが、聞き役に徹してくれるかもしれません。何より、自分の子どものことを見守ってくれる大人が、このまちには、こんなにたくさんいるんだ!と気づくことでしょう。親が地域との関わりを築くことは、子どもの社会性を育む効果も期待できます」
地域との協業を通じて”まちぐるみ“での子育てを実践
こまちぷらすでは活動を十数年続ける中で、地域との協業を大切にしてきました。地元企業の協力を募り、出産祝いを届ける「ウェルカムベビープロジェクト」や、こまちカフェを構える商店会の事務局運営なども取り組みのひとつ。近年は市内の保育園との連携のほか、県内の学校での出張授業や子育て体験も増えてきています。
「今はきょうだいのいない家庭も多いですよね。そして中高生くらいになると、子育てを経済的、精神的に負担が大きいものと、ネガティブに捉えている人も少なくありません。ほかの家族の子どもや、子どものまわりにいる地域の大人と接する体験は、社会の一員としての子育てに対する関心や行動につながってくると考えています」
こまちぷらすの願いは、“まちの子育て”が戸塚のみならず、県内、そして日本中に広く行きわたることです。そのために「居場所立ち上げ伴走プロジェクト」を通じたカフェ運営のノウハウの共有や、ウェルカムベビープロジェクトの他地域での導入支援を手がけています。
「私たちの親世代から私たちへ、私たちから子どもへ、そして地域から地域へと、“まちの子育て”のリレーを紡ぐことが大切ではないかと考えています」
ママが子育てに一生懸命になるのは、子どもの健やかな成長を願ってのことです。だからといって常に気を張っていては、疲れてしまうもの。ちょっとだけ自分をいたわりたい。そうしたときは、戸塚に足を運んでみては。きっとまちの人たちが、笑顔で迎え入れてくれることでしょう。
プロフィール
認定特定非営利活動法人 こまちぷらす
横浜市戸塚区で2012年に発足し、週に1度の親子カフェの営業からスタートしました。それから常設店の設置、戸塚区役所での子育て情報スペース運営などを経て、2016年には地域企業との協業により出産祝いを届ける「ウェルカムベビープロジェクト」を開始します。以降、未就学児から小中高校生の子どもを持つ親からセカンドライフを迎えた人まで、子育てを通じてまちも人もプラスになる取り組みを続けています。2024年には『Forbes JAPAN』にて「いま注目のNPO50 日本を動かし社会を変える、新たな主役」に選出されています。