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NPO法人 子どもと生活文化協会(CLCA)
安心できる居場所で、社会で生きる力を身につける

2023年 10月 2日

若者や子どもの社会的な自立を支援

2023年 10月 2日

ひきこもりの若者たちが就労するまでに必要なものとは

 「まずは親を救うこと。それがすごく大事なんです」
 そう話し始めたのは「NPO法人 子どもと生活文化協会(略称・以下CLCA)」の顧問、和田重宏さん。不登校やひきこもりの子どもや若者が社会性を身につけ、就労するために何が必要なのか、と質問した際に返ってきた言葉です。
 当事者たる若者よりもまず親を救うとは、一体どういう意図でしょうか。それを紐解く前に、CLCAとはどんな法人なのかをご紹介しましょう。

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若者の居場所「キテミル」での稲刈りの様子

 「未来を生きる子どもや若者たちが、心も体も健やかに、末広がりの人生を歩める力をはぐくむ」という理念を掲げるCLCA。設立のきっかけは公立学校で隔週5日制が実施されることになったことを受けて子どもたちの生活の受け皿として、1992年に設立されました。
法人名にあるように、生活や文化にまつわる「実体験」を大切にして活動していて、実体験を通してこそ、「生きる力」や「知恵」などが養われ、心が育つという理念のもとに活動してきた法人です。農作業を軸に合宿や自然観察会など、様々な体験の機会を提供してきました。

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「キテミル」では養鶏も行っている

 

      

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同じ課題を抱えた家族同士で、問題解決のきっかけを発見できる

 そんな様々な活動の中の一つに、冒頭で質問した若者の就労支援があります。和田さんは言葉を続けます。
「ひきこもりやニートの若者にとって、親や家族、大人に対して信頼がなくなっているから、そうした状況に陥ってしまうんです。だから、まずは親を救う。親の意識を変えて、安心してもらうと、子どもも安心できるんです」
 CLCAでは月1回、家族の会を対面で開催。「『不登校やひきこもりとはこういうもの』と説明をして、『不安なのはあなただけではない』と安心してもらう」とのこと。また、CLCAの職員は参加せず、保護者だけの家族会も開催していて、かつてのひきこもりから自立を果たしたOBや、その保護者なども参加するといいます。
「そういう経験者からの言葉を聞いていると、現状からの出口、方向性が見えてくるんですよね」

「CLCAは黒子。家族関係の再構築を手助けするだけ」

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「キテミル」の活動でタマネギを作る

 そうして親、保護者が安定してきたら、次は子ども、若者と保護者との関係性を再構築する段階。「ここで大切なのは現状を肯定してあげること。そして会話を遮らないで、最後まで聞いてあげることです」と和田さん。話を最後まで聞く、というのは単純なようで忍耐力が必要なもの。近い存在の家族だからこそ、ついつい言葉を挟んだり、「でも」「だって」などと否定する言葉が出てきたりしてしまうかもしれません。けれど、そこを堪えて、相手の話を最後まで受け止めることが大切とのこと。
 さらに「どんなに小さくても、約束は絶対に破らない」。これらができて初めて、家族間の信頼関係が再構築できるのだと和田さんは言います。
「ただ、僕らは説得や説教はしません。あくまでも親と子を結びつけるコーディネーターであり、黒子なんです」

農作業にボイストレーニング、マインドフルネスも

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初夏の恒例、青梅の収穫

 こうして社会的自立の土台である家族間の信頼関係が回復できてくると、当事者への様々な取り組みが生きてきます。例えばCLCAの主な活動である農作業を続けていると、体力が付いてきます。家にひきこもっていた生活から、定期的に屋外へ出て、しかも体を動かす作業をする。開放的な空間にいることで、気持ちも開放的になれる。
「農作業は身体も、柔軟な心も育ててくれるんです」と和田さん。
このほか、会話で強弱をつけて話せるようにとボイストレーニング、将来への不安や過去への苛立ちを解消するためのマインドフルネス、決断力を高めるためのトレーニングなども取り入れているそうです。
 CLCAではこうした様々な取り組みや段階を経て、就労へと結び付けていきます。

一人ひとりの個性に合わせて職場をコーディネートする

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長く教育現場にいた経験を生かして、CLCAの顧問を務める和田さん

 CLCAは2004年に合宿型若者自立塾を始めて以来、多くの就労者を輩出してきました。最近のキテミルからは1年に5~6人が自立していくとのこと。県内2箇所の地域若者サポートステーション(通称サポステ)では毎年200名くらいが就職しています。
 「一番大事なのは企業の理解度なんです」と和田さん。せっかく頑張って就職しても、受け入れる企業側にどんな人物なのか、どんな得意不得意があるか、などの理解が足りていないと継続しての就労は厳しくなってしまいます。
  そこでCLCAでは企業開拓する専任者を置き、就労後のミスマッチが極力減らせるよう、企業の理解度を高めているそう。キャリアコンサルタントもいて、パソコンなどの講座も開講しています。
  その上で、「一人ひとりの個性に合った職場をコーディネートすることも大切です」と和田さん。
  この人はこんな作業が得意。この人はこういう仕事で生き生きしている。CLCAでの活動を通して個人個人を理解しているからこそ、可能になるコーディネートと言えるでしょう。

まずは電話相談という最初の一歩を

 これまでも神奈川県が県立青少年センターに設置している相談窓口で、ひきこもり・不登校・非行などに関する相談対応をしてきた和田さん。2011年からはCLCAの地元、小田原を中心とした神奈川県西部青少年サポート相談室を、県との協働事業としてスタートさせました。
 電話相談、面接相談ともに無料で、面接相談は要予約。対象はひきこもり、不登校、非行、就労等の悩みを有する青少年およびその保護者等で、県西部以外に在住の人も利用できます。相談専用電話は0465-35-9527。詳細はこちらのサイトを参照してください。https://clca.jp/experience/experience5/5-3/

プロフィール

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団体名

NPO法人 子どもと生活文化協会(CLCA)

活動内容

「親子で楽しむ生活体験」「若者や子どもの社会的自立支援」「食農体験」「大人のまなびば」「行政連携事業」という5つの事業を軸として、自然観察会や生活体験合宿、伝統芸能体験や料理教室など、多彩な活動を展開している。公式LINEで活動やイベント情報を発信したり、YouTube公式チャンネルで和田顧問の「子育て一口メモ」やおすすめ料理のレシピを公開したりと、情報発信にも積極的。