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特定非営利活動法人 ひまわり

2023年 03月 27日

「緊急支援」「共感」から「自立支援」まで
ひとり親家庭を多面的にサポート

2023年 03月 27日

"ひとり親"当事者団体としてスタート

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横須賀市の委託事業「ひとり親家庭指導講座」の様子

 「小さな子どもを抱えて離婚。これからどうすればいいんだろう」「ひとりで子育てしながら、ちゃんと働けるのだろうか」「頑張って働いても、結局託児料で収入が消えちゃう」などなど。ひとりで子どもを育てている親には、様々な悩みがあります。「どうしよう」「しんどい」と思った時、「こういう方法があるよ」「うんうん、その気持ちわかるよ」と共感し、寄り添ってくれるのが横須賀市のNPO法人「ひまわり」です。なぜひとり親の気持ちに共感できるのか。それは「ひまわり」が当事者からなる団体だからです。

花見やリサイクル、家計・法律相談など活動内容は多彩

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お花見お散歩交流会では横須賀市内の桜の名所へ

 2023年3月に法人化した「ひまわり」の前身は、2009年4月、ひとり親家庭の当事者3人が立ち上げた「よこすかひとり親サポーターズ・ひまわり」でした。 
「ひ」とり親の「まわり」のサポートや、「ひ」とり親たちが「まわり」回る助け合いで親子ともども明るく生きていこう、という願いをこめて命名された「ひまわり」は、当事者の市民団体として、ひとり親同士が自由に話すことのできる交流会を始め、徐々に規模も活動内容の幅も拡大。2014年には横須賀市から「ひとり親家庭指導講座」と「交流会」事業を委託され、行政とひとり親家庭との橋渡しも担うようになりました。

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すぐサイズアウトしがちな衣料品がたくさん。リサイクル交流会

 市内コミュニティセンターで開催する交流会をはじめ、桜の名所や猿島におでかけしたり、衣類や日用品をリサイクルしたり、体育館遊びやクリスマス会を開いたりと、親子で楽しめるイベントを定期的に開催。「ひとり親家庭指導講座」としては、子どもの心の不安について取り上げたり、法の手続きや家計の悩みに対して弁護士や行政書士、ファイナンシャルプランナーといった専門家を招いて相談会を開いたりと、心理、法律、経済など多角的な講座を開いています。

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NPO法人ひまわり理事長・佐藤智子さん

 対象としているのはシングルマザーだけでなく、シングルファーザー、未婚・非婚ママ&プレママ、離婚協議中や別居中など、法的離婚前の人も含みます。また、「ひまわり」の活動を支援する地元の企業、団体は20以上あり、助成金・補助金を受けているほか、個人からの寄付も募っていて、寄付者の中には継続して寄付をしてくれる人も少なくないそうです。

コロナ禍を受けて始めた新たな取り組み

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ひまわりプロジェクトで食糧支援

 「ひまわりの活動は“会って話す”交流会が主軸でしたが、新型コロナウイルス感染症によって自粛・制限することになってしまいました」と教えてくれたのは、「ひまわり」の立ち上げメンバーのひとりであり、今春法人化した「ひまわり」の初代理事長、佐藤智子さん。世界規模でコロナ禍の影響を受ける中、ひとり親家庭も孤独や孤立、先行きの見えない不安や経済的困難に襲われました。「そこで2021年3月、食料を中心とする生活物資を提供する事業、“ひまわりプロジェクト”をスタートさせました」。 
特にコロナ禍では子どもの体重減少が発表されたため、主食である米をはじめ、肉や野菜、パスタやお菓子など食料品を継続的に配布。自宅での食事機会が増える休校期間や長期休み、そして「あたたかな気持ちで年を越してほしい」と年末には「年越しパック」と銘打った食料セットを配布しています。 
佐藤さんは「企業へも声をかけていますが、個人の方からの寄付や提供が大きいです。食品ロスへの意識の高まりや『もったいない』などの世論も背景にあり、自宅で使用していないものが集まることが多い一方、相応の数を買って届けてくださる方もいらっしゃいます」と支援者への感謝を述べます。

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オンライン受講だから、どこにいても学べる

 また、NPO法人シングルマザーズシスターフッドの協力を得て始めたのが、「ひとり親TECHエンパワーメントプログラム」です。Microsoft の「Global Skills Initiative」の一環で、志をもつシングルマザーのために、ICTスキルやプレゼン、スピーチ、リーダーシップなど就労につながるスキルを身につける半年間のオンラインプログラムで、昨秋までに3期生まで終了しました。今年は、インターネットを安全に活用するための「サイバーセキュリティ講座」(参加者募集中)、仕事の可能性をさらに広げる「シングルマザーの安心・安全リモートワーク入門」(参加募集終了)をオンラインで開講しています。 
「コロナ禍で仕事が減る=収入が減るということに直面したひとり親は多いです。そもそもひとり親家庭=ワーキングプアという背景があり、観光業や飲食業、パート勤務が多いこともコロナ禍の影響が大きかった理由でもあります。そこで、『パソコンを習いましょう』というのとは違う、ICTスキル、オンライン活用能力、さらには自分が自分らしく自信を持って生きていくことまでを目標としたこのプログラムを開始しました」(佐藤さん)。

DV、ヤングケアラー、教育格差などの課題にも注目

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不登校の児童・生徒の親や支援者を対象にした講演会

 佐藤さんに今後の展望について訊くと、「ここ数年の自粛生活で得られなかった経験・体験がたくさんあると思うのでそういうのを味わってほしいです。子どもを中心に大人も含めて。具体的には野外活動。BBQ、キャンプ、バス旅行などがしたいですね。たくさんの経験・体験をして欲しい」との回答が返ってきました。と同時に、「今回のようなパンデミックや物価影響などで収入が変動するひとり親にとっては、周囲からの影響を最小に受け止められるような強さを持ってほしいと思っています」とのこと。勉強会の回数を増やすことやオンライン講座の開講などで、それらは実現されていくことでしょう。 
さらに現在、佐藤さんが注目しているのが、DV被害者の心のケア。「本人がDV被害者だと気付いていないケースも多い」と佐藤さん。来年度は「DV・トラウマからの回復支援 こころのcare講座」をスタートさせるべく、準備を進めているそうです。

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クリスマス会のヒトコマ

 また、ひとり親を支えるために、自分を犠牲にして家事をしたり、弟妹の世話をしたりするヤングケアラーにも「支援や交流が必要です」と佐藤さん。子ども自身が自分の状況がおかしいと気付くことができなかったり、つらくても声をあげづらかったりというケースがあるそうです。「第三者からひとり親への偏見はまだありますし、最近ではひとり親自身が自らの立場や待遇に引け目を感じてしまうことも増えてきているので、ちょっとした子どもの変化に気付けるようなスクールカウンセラーなどが充実し、支援団体として行政とも連携できるといいと思っています」(佐藤さん)。 
経済格差による教育・進学の格差にも注目しています。いろいろな団体が独自で奨学金制度などを行っていますが、「知らない人が多かったり、非課税世帯のみだったりとまだまだ狭き門。頑張っていて課税となったあたりの世帯もかなり厳しいので、家庭の収入だけでなく、子ども個人の意欲や申請に応じて、進学の幅が広がるようなシステムがあるといいのではないかと個人的には考えています」。

"ひとり親"は"ひとりぼっち"じゃない

 最後に、この「さぽなびかながわ」を見て、「ひまわり」に興味は持ったけれど、実際に連絡する勇気が出ない方へのメッセージを佐藤さんからいただきました。 
「心細かったり、“自分だけが”と抱えてしまいがちな気持ち、とってもよくわかります。ひとりで抱えないでくださいね。何でも言っていいよ、頼っていいよ、と思っています。そして頼る力、頼られる力も付けていってもらいたいと思っています。初めは“仲良しが集まってわいわいしているのかと思って、来るのをためらった”という声もよく聞きますが、帰り際には“来てみたら、ほっとした”と言われます。初めて来られた方には、スタッフが静かに寄り添いますので、ぜひご連絡くださいね」(佐藤さん)

プロフィール

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団体名

特定非営利活動法人 ひまわり

活動内容

特定非営利活動法人 ひまわりは、ひとり親が親子ともども明るく元気に過ごせるように、いろんなイベントを開催しています。2014年から横須賀市から委託されている「ひとり親交流会」「ひとり親家庭指導講座」を主な事業とし、公式サイトほか各種SNSでの情報発信事業、電話・メール・LINEチャットなどでの相談事業、食糧・日用品支援プロジェクト、ネットワーキング(シングルマザーサポート団体全国協議会)等、活動の幅を広げています。