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公益財団法人よこはまユース
「ひとりで悩まないで」高校生に居場所を提供

2023年 02月 01日

校内カフェで生まれた「信頼の輪」

2023年 02月 01日

高校生らしくいられる居場所をつくる

 横浜市立横浜総合高校で2016年からオープンしている「ようこそカフェ」は、さまざまな事情を抱える高校生にリラックスできる居場所を提供する取り組みです。
 横浜総合高校は午前・午後・夜間の3つの部をもつ3部制の定時制高校です。
 進学先に定時制高校を選ぶ生徒には様々な事情を抱えている生徒が少なくなく、入学しても卒業を諦めてしまう生徒も全日制高校に比べて多いという課題がありました。当時の校長先生が若者の居場所の研究を行う横浜市立大学の高橋寛人教授(当時)に相談したところ、学校内に生徒たちが高校生らしく過ごせる場をつくって、そこで大人が悩みを聞いたり、相談窓口として専門家の支援につなげたりすることができれば学校生活を続ける助けになるのでは、という提案がありました。「青少年を見守り・育む地域づくり」の活動を進めてきた「公益財団法人よこはまユース」が運営の中心となりスタートしました。
 原則、毎週水曜日に中庭に面したフリースペースで開催しています。Ⅰ部が終わってⅡ部の生徒が来る前の12時~13時30分と、Ⅱ部とⅢ部の間の16時30分~17時30分の時間帯にオープンします。

カフェがあるから学校が楽しい

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横浜総合高校「ようこそカフェ」

ようこそカフェはカフェ形式にすることで、誰もが気軽に立ち寄れる場であると同時に生徒とボランティア、コーディネーターを含むスタッフが知り合いその延長で相談ができる形になっています。3部合わせて在校生およそ1,000人。1日300人くらいがカフェを利用し、学校生活に欠かせないものとして定着しています。

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左からよこはまユースの塩嶋瑤子さん、阿久津強さん、山中梓さん

 「相談窓口です」という雰囲気を出さないことが、相談のハードルを下げることにつながるのだそうです。よこはまユースからは山中梓さんと塩嶋瑤子さん、2人のコーディネーター、その他学生ボランティア、社会人ボランティアなどがスタッフとして入ります。
 「カフェがあるから学校に来るのが楽しい、という声はよく聞こえてきますね。昨日もカフェがある日はバイトを入れない、と言われてうれしかったです」と山中さん。話題は家庭のこと、先生との関係、アルバイト先のこと、恋愛相談など多岐にわたります。ヤングケアラーの問題など、本人が自分の抱える事情を認識していないケースもあります。よこはまユースのほかに複数の団体と連携、認定NPO法人多文化共生教育ネットワーク(外国につながる生徒の相談)、認定NPO法人横浜メンタルサービスネットワーク(人間関係づくり)、認定NPO法人エンパワメントかながわ(デートDV相談)が、専門的な立場から必要に応じて相談機能を果たしています。

 居場所をつくることのプラスアルファとしての取り組みも多彩です。料理研究家の長島由佳さんが中心になって軽食を無料で提供。こちらは食育という観点もあります。コロナ禍の現在はおにぎりやお菓子を持って帰れるように渡しています。
 ようこそカフェの取り組みの一環として実施している就労支援には、外部からカフェに人を呼んで仕事についての話をしてもらう、就業体験の機会をつくるといったものがあります。具体的には農業体験や漁業体験が主になっています。
 「まずは仕事をする充実感とか、作業を通じて体を動かす喜びを味わってもらいたい」と事業企画課長の阿久津強さんは話します。校内に食農体験ができる専用の畑をつくり、収穫したものはカフェで料理して提供、といった活動も行っています。

運営継続は周囲の理解があってこそ

 ようこそカフェのような“高校内居場所カフェ”の取り組みは、神奈川県内で広がっています。県立高校では田奈高校の「ぴっかりカフェ」、津久井高校の「出張ポルトカフェ」などがありましたが、横浜市立の高校としては横浜総合高校がはじめて。
 こうした支援活動でむずかしいのが学校内の先生の理解を得ること。学校外からの活動のアプローチに対してはどうしても壁をつくりがちですが、校長先生が旗振り役となったため、先生方の協力もスムーズに得られました。実際に先生方もスタッフとして一緒にカフェを運営してくださっています。
 志望者に向けた学校説明会でもようこそカフェを紹介。その説明を聞いて横浜総合高校を選んだ、という生徒もいるようです。
 JR桜木町駅前の複合施設「桜木町ぴおシティ」6階には、よこはまユースが運営する「青少年交流・活動支援スペース(通称:さくらリビング)」があります。ようこそカフェのスタッフを訪ねて卒業生がくることもあるなど、カフェを介して生まれたコミュニケーションが続いています。

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「青少年交流・活動支援スペース」

 ようこそカフェの運営費用は、最初は関連の補助金を集めたり、クラウドファンディングを実施したりとさまざまな形で集めていましたが、今は横浜市の補助金により運営しています。
 今後の目標について、「幅広い年代、特に卒業で入れかわってしまう学生ボランティアなどに入ってきてほしい。横浜総合高校のほか、いま市立の2つの高校でもカフェの開催や就業体験機会の提供ができないか検討を進めています。そちらも軌道に乗せたいですね」と阿久津さんは前を見つめます。
 山中さんは「生徒たちの声に寄り添い、将来に希望が持てるようなことにつなげていきたいと思っています」と意気込みます。塩嶋さんも「コロナで制限されてましたが、徐々にもとに戻りつつあります。カフェという居場所が心のよりどころになっている生徒がいるので、これからも途切れさせることなく活動を続けていきたいです」と笑顔で話しました。

プロフィール

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団体名

公益財団法人よこはまユース

活動内容

公益財団法人よこはまユースは、すべての青少年が人とのつながりの中で学び、育つことができる社会を目指して、青少年の体験活動の推進、青少年に関わる人材の育成、地域の青少年育成活動の支援、青少年に関する調査研究・ネットワーク推進など、さまざまな人・団体と協働して、ヨコハマの未来を担う青少年の育成・支援に取り組んでいます。

応援団では、困難な環境にある子どもたちをはじめとした、すべての子どもたちを社会全体で支援する機運を醸成し、子どもやその保護者の身近な地域での取組みがさらに進むよう様々な事業を行います。