紹介事例
3
男性中心の業界です。女性社員を採用しようとしてもなかなか集まりません。
A
自社による託児所運営という「思い切った施策」で、女性の応募が急増した企業があります。
4
女性が新たなサービス開発に貢献している事例を知りたいです。
A
「子育て支援タクシー」「介護タクシー」のように、女性ならではの発想力やきめ細やかさが、企業の新たなサービス開発に大きく貢献したケースがあります。
ヒント(2018年)

自社の託児所設置で
女性ドライバーの安定確保を実現

株式会社ハートフルタクシーの画像
2人の子どもを育てながら働く加藤さん。女性ならではのきめ細かな視点で、利用者に寄り添うサービスに定評があります。「お客様に『また加藤さんにお願いしたい』と言ってもらえる瞬間がとても嬉しい」と話し、いつもとびきりの笑顔で接客しています。

 「タクシー業界のイメージ刷新」を掲げ、2006年に設立した株式会社ハートフルタクシー(海老名市)では、高齢化による利用者ニーズの変化や労働力確保の観点から、女性ドライバーを積極的に採用してきました。接客サービス業ながら働き手の女性率は1%ほどというタクシー業界において、ドライバーの約3割が女性(昼間の時間帯なら約6割)という突出した数字を叩き出しています。

 創業当初から女性ドライバーの積極採用を展開してきた同社ですが、最初から順風満帆であったわけではありません。「募集しても全然人が集まらず、せっかく女性を採用してもすぐに辞めてしまって」と篠原俊正副社長は当時を振り返ります。離職理由を聞くと、多くの女性社員が、「子育てによる制約」を挙げました。「タクシーはひとたび仕事に出るとなかなか戻れない」「保育園もない」―そんな声が相次いだといいます。

 「思い切った施策」が必要だと感じた同社では、本社内の一室を利用した託児所運営に乗り出すことを決意。自社で保育士を採用し、小さな託児所運営をスタートさせました。すると、瞬く間に女性ドライバーの応募が急増。篠原副社長も「こんなに効果があるとは」と改めて驚いたといいます。

 託児所開所時に同社の求人に応募し、今も勤務するドライバー・加藤知枝さんは「やはり、託児所が職場についているというのは最大のメリットでした。この条件があれば職種はなんでもよかったと思うくらい、私の中では優先順位が高かったんです」と当時を振り返ります。

女性ならではのきめ細やかさが会社のサービス展開に

 「女性の働きやすさ」の追求は、本業であるタクシー業にも新たなメリットをもたらしました。女性ドライバーが増えたことで、(陣痛時に妊婦を病院まで運ぶ)「陣痛タクシー」や(子どもを学校から塾、自宅などに送迎する)「子育てタクシー」といった女性支援タクシーのサービス展開が本格化。他社との大幅な差別化を図ることに成功したのです。

 「女性は皆、意識が高い。事業提案も積極的」と篠原副社長。加藤さんも「お客様に加藤さんで良かったと思ってもらえるドライバーになりたい」と前向きです。同社ではこうした女性社員の気持ちに応えるべく、次は自社による学童保育の設置を計画しているそうです。

飯田 隆明の画像

飯田 隆明 代表取締役

COMPANY DATA

設立:2006年 業種:サービス業(タクシー)
従業員:75人 所在地:海老名市
URL:http://www.heartful-taxi.co.jp/

「子育てタクシー」や「介護タクシー」など、業界に革新をもたらす様々なサービスを展開しています。