2019.10.4

積水ハウス株式会社
ダイバーシティ推進部

森本泰弘さん

https://www.sekisuihouse.co.jp/
森本泰弘さんの写真

「イクメン休業」 ハウスメーカー最大手が先鞭

女性社員だけでなく、男性社員にも育児休業の取得を推奨する「イクメン休業」(https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/)制度を2018年9月に導入した積水ハウス。「男性は育休を取りづらい」という社会の風潮に一石を投じるべく取り組むイクメン休業のアプローチについて、同社ダイバーシティ推進部の森本泰弘さんが解説した。

同社が「イクメン休業」制度の導入を決めたのは、仲井嘉浩社長が海外IR(インベスター・リレーションズ)でスウェーデンのストックホルムを訪れた際、街中でベビーカーを押す人の多くが男性という光景を目にしたことがきっかけだった。スウェーデンでは育児する男性のことを「ラテ・ダッド」と呼び、男性の育児に対する理解度が高いといわれる。彼の地で垣間見た子育てのあるべき姿に衝撃を受けた仲井社長は、帰国後2か月足らずで「男性社員は1か月以上の育児休業完全取得」を宣言した。

「イクメン休業」制度では、3歳未満の子どもを持つ全男性社員を対象に、1か月以上の育児休業の取得を強く推奨。最初の1か月を有給とし、条件を満たせば最大で4回の分割取得も認めている。賞与や昇給昇格において、利用者が不利益を被ることは一切ないという。

進む職場理解 より良い住まい提案にも寄与

「家事育児のシェアで家族のきずなが深まり、子どもと過ごすかけがえのない時間という無形資産の構築につながる」と、イクメン休業の意義を語る森本さん。その恩恵は取得した社員や家族だけでなく、「職場や会社、お客様にも広がっていく」という。

例えば職場においては、休むための業務の優先順位付け時間の使い方などに変化が見られるとともに、コミュニケーションが深まることにより仕事分担の効率化や助け合いへの理解が進む。チームをまとめる上司のマネジメント力向上にも寄与しているという。会社にとっては、「男性も育児休業を取得できる会社」というブランド力の訴求にも繋がり、採用・人材定着において大きなアドバンテージに。これらの好循環により、家事育児の経験豊富な営業や設計担当者、現場監督が育ち、顧客の気持ちを踏まえた一歩進んだ住まいづくりの提案につながっている。

イクメン休業の完全取得に向け、同社では様々なサポートツールやシステムによる支援を行っている。

  • ■サポートツールによる支援
    • 家族ミーティングシート
      家族で取得時期、家事育児の役割分担や休業中の過ごし方を話し合う
    • 「イクメン休業」取得計画書
      業務を、だれに、どのように引き継ぐかを上司と面談したうえで決めていく
    • 取得後アンケート
      本人、パートナーの感想や要望、満足度などを、今後の施策に生かす
  • ■システムによる支援
    • 勤怠管理との連携による申請の簡素化と、取得状況のタイムリーな把握
    • 未取得者とその上司を対象とした取得促進アラートの定期的な発信

何よりも大きかったのは、トップ自らが社員に向けて意識改革を呼びかけたことだ。イクメン休業の運用開始翌月には、社内イベントとして取得対象者と上司約1900人を対象にイクメンフォーラムを開催。WEB会議システムで社長自らがメッセージを発信し、全社を挙げて男性の育児休業取得に取り組もうという機運が高まった。

2018年9月から2019年1月を準備期間に据え、2月以降はイクメン休業の取得期限(子の3歳の誕生日)を迎える対象者253名全員が1か月の育児休業を取得。アンケートでは、取得した社員の95.8%、配偶者の93.8%が「良かった」と回答するなど、好意的に受け止められているという。「SDGs風に言えば、『ひとりも取り残さず』ということになります。当社のイクメン休業は、経営戦略としてこれをずっと続けていきます」と森本さんはいう。

「イクメン休業」を社会的ムーブメントに

社外に向けて2019年9月に実施した「イクメンフォーラム2019」では、イクメン休業の運用開始から1年経過後の活動実績を報告。9月19日を「育休を考える日」に制定したほか、小学生以下の子を持つ全国の20代から50代の男女9400人を対象に、男性の家事育児実態を独自に調査した「イクメン白書」も紹介した。

イクメン白書2019

「男性の育児休業取得を、よりよい社会づくりの素地に――。企業と顧客、社会の三方良しに向けた取組みとして、また、「キッズ・ファースト企業」を目指す同社の理念実現に向け、森本さんはイクメン休業の輪がますます広がることを期待している。

男性の育児休業取得の課題と推進のアイデアについて話し合いました!