当事者目線の障がい福祉推進シンポジウム〜ともに生きる社会を目指して〜 【第二部 報告】  中井やまゆり園における当事者目線の支援の取組 (司会)  それではここからの第二部では、県直営の障害者支援施設である中井やまゆり園における当事者目線の支援の取組をテーマに、有識者の皆様にお話を伺います。進行は、県福祉子どもみらい局福祉部長、山本千恵が務めます。 (山本福祉部長)  神奈川県福祉子どもみらい局、福祉部長の山本と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。この第二部では、まず、県から事案の概要として、外部調査委員会が本年9月に取りまとめた調査結果をご報告いたします。次に、現在、中井やまゆり園の再生に関わっていただいている有識者の皆様から、現在の園の取組をご報告いただくとともに、そうした取組に対する評価についてもお話を伺ってまいります。  冒頭、条例を所管する共生担当局長の川名から一言申し上げ、続けて、事案の概要について、県立障害者施設指導担当課長の吉田からご報告をいたします。 (川名共生担当局長)  神奈川県共生担当局長の川名でございます。本日は、これほど多くの方にこのシンポジウムに参加いただきまして誠にありがとうございます。  第二部では、中井やまゆり園で起こしてしまいました虐待事案を含めた多くの不適切な事案につきまして、その内容と、あと現在の取組状況についてご報告をさせていただく予定でございます。これまで利用者ご本人や、ご家族の皆さんには、園の方から直接お詫びをさせていただいております。また園の家族会等を通じて、皆さん、多くの皆さんにも、お詫びをさせていただいておりますが、改めましてこの場をお借りいたしまして、県の現場の責任者として、お詫びを申し上げたいと思っております。  県では、中井やまゆり園、強度行動障がい対策、この中核施設といたしまして、民間では対応が難しい方を受け入れて支援するということで、県の役割は果たしてきていたと考えてきました。しかしですね、利用者の皆様の行動障がいのみに着目してしまって、皆さんの一人ひとりの暮らし、望む暮らしとか、可能性を考えて、外部との交流ですとか、働くこととか、そういうことを通じて暮らしを豊かにしていくという、そういうような障害者支援施設の本来果たすべき役割を疎かにしてきてしまったのかと考えております。  こういう状況で、外部の調査委員会からは、人権意識が欠如しているとか、利用者を人間として見られなくなっているんじゃないかと、そんなような厳しいご指摘を受けたところでございます。この今回のこういう事態につきましては、中井やまゆり園だけの責任ではなく、県で障がい福祉施策を進める中で、何回も見直す機会があったかと思いますが、このような状況になるまで看過してきてしまった、障がい福祉行政を所管する立場である我々の責任、大変重大であると考えております。  現在、中井やまゆり園におきましては、民間の支援アドバイザーの方に入っていただいて、お力を借りながら、再生に向けた取組を行っているところでございます。今後、当事者の皆さん、学識者等で構成するプロジェクトチームで、改革プログラムを取りまとめていただく予定でございます。これはしっかりと着実に実行していきたいと考えております。  まだ取組が始まったばかりでございまして、今回の事態について、県に対して怒りをお持ちの方ですとか、今後に対する懸念というのは当然あろうことかと思います。しっかりこの反省を忘れることなく、当事者目線の障がい福祉をしっかり具現化していけるように、全力で取り組んでまいりますので、皆様方には、引き続きのお力添えをいただければと考えております。本当に申し訳ございませんでした。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。  それではこれから、中井やまゆり園で起こしてしまった事案について、県の方から報告をさせていただきたいと思います。 (吉田県立障害者施設指導担当課長)  福祉子どもみらい局県立障害者施設指導担当課長の吉田でございます。私からは、中井やまゆり園におけます虐待事案等の概要につきまして、今年9月に、外部調査委員会が取りまとめた調査結果に基づきまして、ご説明をさせていただきます。  はじめに、中井やまゆり園の概要についてです。  中井やまゆり園は、県西部の中井町にあります、知的障がい者対象の障害者支援施設です。昭和47年、県が開設しまして、現在も県直営により運営しております。施設入所支援の定員は122名。現在は90名の方が入所されており、平均障がい区分5.9。年齢、平均年齢は46歳。平均在籍年数は18年7か月となっております。  次のスライドお願いします。  次に、この中井やまゆり園におけます不適切な支援、経緯について、簡単にご説明させていただきます。県では、令和2年7月、県立施設におけます利用者支援について検証するため、障がい当事者や学識者など、外部委員で構成します「利用者目線の支援推進検討部会」を設置いたしました。この検証の結果、長時間の身体拘束が確認されるとともに、身体拘束が重大な人権侵害であるという認識の不足や、施設の閉鎖性等についての指摘を受けました。同年12月には、身体拘束ゼロの実現を目指しまして、県のホームページにおきまして、県立施設におけます毎月の身体拘束の実施状況の公表を開始しました。こうした取組を進める中、令和3年9月、この中井やまゆり園の利用者支援の改善を、加速化することを目的に、障がい当事者や学識者、県などで構成します「支援改革プロジェクトチーム」を設置し、当事者の目線から議論を進め、このプロジェクトチームの助言を支援の現場で取り組み、その結果、現在令和2年12月に61件であった身体拘束は13件まで減ってきている、こういった取組の状況もございます。  また、県はプロジェクトチームの助言をいただきながら、令和元年7月に発生しました利用者の骨折事案の再調査を行いました。この中で、事実であれば不適切と思われる情報を把握し、令和4年3月に、この支援改革プロジェクトチームにご協力いただいた「外部調査委員会」を設置しまして、県が把握した全91件を対象とする調査を行い、検証を行い、この調査結果の報告を9月に公表した、こういった流れになっております。  この外部調査委員会での調査結果についてです。外部調査委員会からは、この情報の一部または全部が事実であり、虐待が疑われる事案であったのが25件でした。これらについては県から11の関係自治体に虐待通報を既に行っており、11月の時点で3件が虐待認定、1件が不適切支援と判断されております。また、不適切な支援などであり、速やかに支援方法等の見直しをすべき事案は12件でした。これらは、情報の一部または全部が事実であるものの、虐待が疑われる事案とするか、不適切な事案とするか判断が難しかった、そういうものであります。また、事実特定が困難な事案が17件、事実が判然としない事案が24件で、これらにつきましては、またこの判然としない事案につきましては、支援改革プロジェクトチームのご助言をいただきながら県と園が調査を継続しております。  事実誤認や情報の信憑性が低いといった事実ではなかった事案が8件、過去の虐待通報事案で通報公表済みの事案が5件でした。これらの事案について、虐待を受けた可能性がある利用者は計28名。関与した可能性がある職員76名となっています。また、年度別では、令和3年度12件、令和元年度9件ほか、9件が複数年にわたり発生しておりました。さらに虐待が疑われる事案は41件、7寮中4寮で発生しております。  次に、虐待が疑われる事案の一部です。食堂の床に座り込む利用者を台車に乗せて移動させようとしたところ、職員の腕を掴んだため、制止しようと顔を平手打ちし、額を殴った。利用者の居室の天井に便を投げつける行動に対して、天井を清掃せず便まみれになっている環境で生活させていた。利用者の肛門内にナットが入っていたといった事案がありました。この調査結果に関する外部調査委員会の考察についてです。  外部調査委員会からは、人権意識の大きな欠如が生じ、利用者を人間として見られなくなっている。不適切な対応を受けた利用者の多くは、民間施設での支援対応が困難と理由で受け入れられてきた背景があるが、地域との連携が途絶えることとなり、その結果、閉鎖的な環境の中で不適切な支援が常態化した。県は、利用者の生活状況の変化を定期的に把握しようとせずに放置しており、現場を十分に見ることがなかった状況も重大な問題であるなど、大変厳しい指摘を受けております。  今後の対応です。先ほども触れましたが、事実が判然としていない事案がありますので、支援改革プロジェクトチームの助言をいただきながら、引き続き検討、園で調査を行います。また、支援改革プロジェクトチームにおきまして、改革プログラムを作成いたしまして、改善の取組を進めていきます。こうしたことによりまして、条例が目指します「当事者目線の障がい福祉」を具現化していけるよう、園の再生に全力で取り組んでまいります。私からの説明は以上です。 (山本福祉部長)  では、ここで、令和元年度から中井やまゆり園をはじめとする県立施設における利用者支援の検証に関わっていらっしゃり、今回、外部調査委員会で委員長を務めていただきました佐藤彰一(さとうしょういち)様からご意見を頂戴できればと思います。  佐藤様は、國學院大學教授、弁護士全国権利擁護支援ネットワーク代表としてご活躍されていらっしゃり、障がい者の権利擁護関連の社会活動に広く関わっておられます。  それでは、佐藤様、よろしくお願い申し上げます。   (佐藤氏)  はい。皆さんこんにちは。佐藤彰一(さとうしょういち)でございます。  時間が限られておりますので簡単に、私の方からお話をさせていただきますが、今、神奈川県では「やまゆり」という名前のつく県立施設が4か所ございますけれども、もう数年にわたって何故か私が関わっています。  最初に、中井に訪問をした時にはびっくりしました。何ていうかな、信じられないですけど、便所の手洗いの上に板が打ち付けてあって、手洗いの場所が使えないようにしてあるとかですね。あるいは、テレビのところに板がやっぱり打ち付けられていて、テレビが見られないようにしているという。せっかくそういう道具があるのに、どうしてそんなことするのかっていうことを聞いたんですけども、担当者の方は、それはそうなんだという話でした。  最初に訪れた時に比べますと、今の中井の現状は相当改善されています。いろいろと工夫をされて環境も改善して、いろいろと人間らしい生活に移そうと。施設全体はそういうふうに動いていると私は思っておりますけれども、それでもなおですね。今の現状は、他の都道府県の方と一緒に訪れると、他の都道府県の方は「これでもそうなのか」みたいな感じでおっしゃるんですよね。要するに、単純に言うと、汚いんです、施設全体が。職員が暮らしているところというか、仕事をしているところは綺麗なんですけども、利用者の方が暮らしているところは汚いんです。掃除をしないんですね。掃除をするのは自分たちの仕事じゃないというふうに思ってらっしゃるのかもしれませんけれども、そういう中で、トイレも蓋がなかったりとか、未だにそうです。蓋がなかったりとか汚かったり、拭いてないとかですね。いろんなことがありまして、まだまだ改善されたとはいえ、道半ばという、そういうところがあるかなというふうに思っております。  私どもが外部調査委員会を構成いたしまして、9月9日に黒岩知事に私どもの最終報告というものをお渡しいたしました。これは最終報告と謳っていますけれども実は最終報告ではなくて、先ほど吉田課長の説明にもありましたように、まだ調査が済んでいない事案がたくさんありますので、さらに調査は継続をしていくという予定でおりますけれども、しかし、今の段階で、私の方が述べられることはこれですということを、黒岩知事にお話をいたしました。  その時に私がお伝えをしたコメントを簡単にお話したいと思うんですが、一つは、改善しているはいえ、まだまだ先は遠いぞということですね。今申し上げましたように、トイレが汚いとかですね、それから天井に便を投げつける人がいらっしゃるんですよね。それはその人の特性なのでしょうがないのですけれども、それを掃除しないというですね。だから、天井が便だらけになっているという、そういう状況が実は今も残っていまして、部屋を変えたんですけども、まだ部屋を変えても、そういう状況が起こっているということで、どうも全体がやっぱり汚いという。  それから外出支援も始まっていますけれども、これは本当に画期的なことをやっていると思いますが、日中支援にしても外出支援にしても、一部に留まっていまして、まだまだ外に自由に出ていくという、そういう環境にはないということで、これはこれからまだまだ改善をしていかなきゃいけないということですね。  それから、こういった虐待事案というか不祥事が起きたときに、園の説明が明確ではないんですね。明確ではないっていうよりも、はっきり言いますと、全部利用者さんの責任だという説明をしてくるんです。他の利用者さんがやったとかね。あるいはご本人がやったとかですね、そんなことで、あとは何も分からないというような説明してくるんですけども、よく調べてみると、それは利用者さんの責任ではなくて、支援のまずさというものが実は根本にあるということが多々出てくるわけです。  なので、全部利用者さんの責任だよと、困った人たちなんだよということで説明を済ましてしまうと、実は支援の改善、あるいはアセスメントというものが本当のところできないわけですよね。そういう状況が、実は大分改善されています、今。改善されていますが、かつてはあったということを反省しないといけないというですね。今良くなりましたので、それでいいという話ではなくて、「なんで前は駄目だったんだ」ということを反省しないといけないということが二つ目です。  もう一つは、今日は県庁の会合ですので、県庁の幹部職員の皆さん含めて、知事もいらっしゃいますけれども。今はそうでもないんだと思います。県が一生懸命支援をしようとしてらっしゃると思いますけれども、従来はこういう状況を県は放置をしていたということだと思うんですね。利用者さんもそうです。職員もそうです。みんな、ほったらかしにされていたわけです。県がもう少し関与していれば、もっと良くなったというふうに私は思っております。  今、非常に県は強力な支援を行っていますけれども、この支援が崩れたら、中井やまゆり園は今後どうなるかというのは、一抹の不安を持っているところでございます。知事もいろんなことをおっしゃっていますけれども、こういった問題は、中井やまゆり園だけの問題じゃなくて、あるいは県立施設だけの問題じゃなくて、日本全国の施設に共通する問題なんですね。  良い支援をやっている施設もあります。そういう良い支援をやって、施設の工夫を見習って、入所施設だから駄目だというふうには端的には申し上げませんけれども、入所施設でもこれだけのことができるんだということをやっていただくということが、今後の課題かなというふうに思っております。  ちょっと時間が過ぎましたか。私からは以上です。 (山本福祉部長)  佐藤様、ありがとうございました。県として反省し、ご指摘、重く受けとめております。  県として、今、外部調査委員会からのご指摘踏まえまして、本庁と園が一緒になって、再生の取組を進めているところでございます。  そこで、ここからは、中井やまゆり園の再生に向けて、一緒に取り組んでいただいております有識者の皆様から順にお話を伺っていきます。  先ほど、担当局長から申し上げましたように、中井やまゆり園の支援の改善に向けては、民間の支援改善アドバイザーのお力をお借りしております。  本日はそのアドバイザーのお一人でいらっしゃいます、羽生裕子(はにゅうひろこ)様に具体的なケースを通じて、園の改革の現状をお話しいただきます。  羽生様は、社会福祉法人コロロ学舎にて、発達障がい児者の療育にも携わるとともに、東京都立特別支援学校外部専門員としてご活躍をされていらっしゃいます。それでは、羽生様、よろしくお願いいたします。 (羽生氏)  皆さんこんにちは。ただいまご紹介に預かりました中井やまゆり園支援改善アドバイザーの羽生と申します。私は、東京の民間施設で、知的障がいや発達障がいを持つ方に関わってまいりました。縁あって、今年の4月から、中井やまゆり園の改革に関わらせていただくことになりました。  現在、中井やまゆり園では、当事者目線に立って、利用者一人ひとりの暮らしの改善に取り組んでいます。今日は、一人の女性の変化を中心に、その実践の様子を振り返ります。    今日取り上げるのは、先ほど知事のお話の中でも出てきましたAさんです。Aさんは、20代の女性で、障害児施設から中井やまゆり園に入所されました。音楽や童謡が好きで、機嫌がいいと音楽に合わせて踊ることもある方です。そして、言葉はありませんが、ジェスチャーや指差し、職員の手を引いてそのままで連れて行くなどして、意思を伝えることのできる方です。さっきの知事の方でもありましたが、園での暮らしはこのような形でしたが、決して意思疎通ができないという方ではありません。  これまでのAさんは、長時間居室施錠の状態で、食事や短時間の活動、入浴の時のみ解錠するという生活だったと聞いています。2021年5月に居室施錠廃止の大号令が出されたものの、不穏になると激しい頭突きをしてしまうなどの行動があって、過去には怪我をしてしまうこともあったということもあって、居室施錠や身体拘束廃止に向けた取組に対しては慎重に進めたいという意見が多かったというのが実情だったそうです。  私が初めてAさんに会ったのは、まさにこの写真の時なんですけれども、知事のおっしゃっていたとおり、もう本当に何もない部屋。私もこの部屋の中に一緒に入りました。ドアが閉まったときにも、何ていうかその圧迫感というか、閉塞感を本当に今でもリアルに思い出すことができます。服を脱いでしまうことがあるんですね。なので脱いでしまわないように、このつなぎの服を、前後ろ逆に着て、首のところで結んでいる拘束衣、身体拘束ですね。そういう形で、特にすることもなく、この施錠された部屋の中で、1日のうちの長い時間を過ごす、そのような生活をしていました。やっぱり、ふらふらとこういって壁にバンと頭突きするような姿がその時にも見られて、なんていうか、そうすることでしか自分がここにいるということを、確かめることができないのではないかというようにも見えました。  これが全く同じ頃に、その他の事業所を体験した際のAさんですが、このように普通の服を着て、他の利用者さんとともに作業したり、リビングルームで本当に絵本をめくりながら、読みながら、穏やかに過ごすというような姿がありました。  なぜ同じこのAさんが大きく違う姿を見せるのか。この昨年まで中井やまゆり園で起きていたことは何だったのかということを考えていきたいと思います。  今いろんなお話あったとおり、昨年までの中井やまゆり園の様子です。初めて伺ったのは、私は10月なんですけれども、天気の良い日中なんですけれども、この園庭、誰もいないんですね。渡り廊下にも人気がなく、寮の入口は施錠されているというような状態でした。その寮の中に入れていただいたんですが、利用者の視界に入ってしまうと、私たち見学者が視界に入ってしまうと、刺激になってしまうということで、見学者が来ると、このパーテーションですね。このようなもので仕切られて、利用者さんの刺激にならないようにというような対応をされる寮もありました。そして、この下にモニターがあるんですが、これ、よく見ると一人ひとりの部屋の様子が映っているんですけれども、このモニターで様子を観察しながら、お食事を届けるタイミングを図るというような支援が行われている。つまり、もう利用者の姿が見えない、どこにいるんだろうっていう状態でした。  そしてちょっと衝撃的な映像になってしまうんですが、先ほどからお話がありましたように、居室の状態もかなり、もう大変な状況で、こちらのは真っ暗な部屋なんですね。電灯などを破壊してしまうという利用者さんで、もう全部こう真っ暗。もう本当に独房のような形です。そこにお布団を敷いて寝ている。隣は、天井に便が投げてしまう利用者の方、やっぱり掃除が追いつかないでそのままになっている。あと何もない部屋。こういう状態、ここで過ごして、この中でご飯食べているという、やはりもう人間の尊厳というのは何なんだろうかということについて、帰り道、考えずにはいられませんでした。  暮らしもこのような形で洗面場が封鎖されていたり、家具を投げてしまったりするので、動かないように固定されているという状態で、要するに排泄しても手が洗えないっていうことですよね。やはり人が暮らす環境ではなかった、このような状態でした。  このような状態、なぜこうなっていたのか。中井やまゆり園の菅野園長は、次のように振り返っています。県立直営の施設ということで、行動障がいの激しい人を集めて、その障がい特性に対して集中療育をする場所というような位置付けであったのだけれども、むしろそういう人たちを閉じ込めて、分離をさせてしまうということになってしまっていたのではないか。そして、他の場所では見られない、民間では対応できない人たちを受け入れているということで、役割を全うしているという意識がどこかにあったかもしれない。そして刺激を減らして、強度行動障がいの点数が下がることが第一、というふうな支援になってしまっていた。結果、本人たちの生き難さを強めて、まるで何もできない人たちのように過ごさせてしまっていた、と振り返っています。  また、4年前後の人事異動で、誰でも働ける場所にするために、職員が関わらなくても、利用者さんが一人で、安全に過ごせるということが重視されてしまっていた。怪我なく、それは関わらないで、一人で部屋にいれば、トラブルも起きませんから、怪我もしないということで、結果、関わりが失われてしまっていた。本来人間は、人と人との関係性の中で生きていくものだと思うのですが、行動障がいを出さないようにという支援の結果、その関わりが失われていた、というふうに振り返っています。結果的に、家族や仲間、地域などから利用者さんを孤立させてしまい、一人ひとりの大切な時間、そして暮らしというものが奪われていたというふうに振り返っています。  こうした反省と、様々な虐待事案や不適切支援の改善をしなくちゃいけないということで、とにかく園として変わっていかなくてはいけないという取組が始まりました。  園として、今までの支援方法をどうこうするということではなくて、とにかく、利用者さんの暮らしを豊かにしていくんだと。具体的には、まずは日中活動にみんなが参加して、この何もない部屋にずっといるというような生活を変えていこうという、本当にそういうところから取組をスタートさせました。  この中でのAさんの変化を見ていきたいと思います。Aさんも、こういう流れの中で、居室施錠を廃止して、そして、職員と一緒に日中活動に取り組むということを徐々に始めていきました。最初はマンツーマンでの作業や散歩などの活動を試みていましたけれども、やはり最初は座り込んでしまったり、あと服を、つなぎの服ですけれども、こう嫌がったりとかというようなことがあって、最初はその活動場所まで車椅子に乗って移動していました。全然歩けるのだけど、やっぱり座り込んでしまうと動かせないということで、車椅子で作業して、後ろに車椅子がありますよね。そこでパーテーションで区切られた机の上で、短時間作業をして、また帰っていくというような、そういう活動をするというようなところから始めていました。  そして、この春、2022年4月から、私たち支援改善アドバイザーということで3名就任をして、いろんな議論を重ねていく中で、ただ身体拘束を廃止するということだけじゃなくて、より豊かな暮らしに向けて、もっと日中活動を充実させていこうと。それと同時に、一人ひとりの障がい特性とか問題行動を見るのではなくて、人となりを知り、一人の人間としてちゃんと関わっていこうということを基本原則として、見直していきました。   そして、6月1日から、もう全園で、全員が日中活動をするんだということで取組を開始して、職員さんの中に本当に様々な葛藤や迷いがあったと思うんですが、とにかくそれをやろうということで開始しました。  できるだけマンツーマン対応ではなくて、より仲間を意識した支援、みんなでできることはみんなで一緒に関わりを持ちながら、ということを開始してきました。そして、Aさんも午前午後ともに、仲間とともに日中活動に参加するようになりました。  右側の写真は、赤い服を着ているのがAさんで、隣いるのが職員さんなんですけれども、これ何をしているかというと、園庭の草刈をみんながしていて、それをリヤカーみたいな後ろに草を入れて、それをAさんが運んでくれて捨てていって、それで帰るところなんですけれども、こんな役割を持った活動をしたり、他にも、手帳の解体作業なんかもしているんですが、解体した手帳を台車で運んでいくなど、本当に喜々として取り組む様子が見られました。  そして、見ていただくと分かるように、つなぎの服ではなくて、普通の洋服を着ているんですけれども、この日中活動に参加するときはちゃんと服を着るよっていうような関わりを職員さんが始めて、その時はちゃんと着替えて参加するということができてきました。  現在のAさんです。活動が広がっていくことで、本当に笑顔が増えて、意欲的に活動に取り組む姿が見られるようになりました。このように、活動室に移動する時に、前は、Aさんが車椅子に乗っていたりしていたんですが、今は車椅子に乗っている利用者さんを押しているのがAさんで、右側はこれ、園の外なんですね。最初は園の外に出て、みんなで行くというようなことほとんどなかったんですが、園の外にこの利用者さんたちのグループで行って、小一時間ですね、公園に行って帰ってくるというようなところで、一番先頭にいるピンクの方がAさんなんですけど、何かこう手を挙げていますが、歌を歌いながら、この間は「真っ赤だな」という歌を歌っていたんですけど、本当に鼻歌みたいな感じなんですが、とても上手に歌いながら、笑顔で歩いています。仲間とこうやって作業に取り組んだり、昼食後にデイルームでみんなでくつろぐという姿も見られるようになりました。  こうしたAさんの変化を見て、職員さんがやっぱり変わってきています。これは担当の方の言葉ですが、以前は頭突きの激しい利用者さん、ちょっと対応が難しいという印象だったのが、何に関心を持つか、笑顔を見せてくれるのかを知りたいと思うようになった。うまくできないときに、一緒に乗り越えるような支援をするというふうになったと言っています。日頃関わる支援者の存在が障壁になっていたのではないか。支援者の関わり方が大きく影響するんだということが、支援者の方から聞かれるようになっています。  以前と現在を比較すると、やはりその激しい行動障がいを出さないために、刺激遮断、居室施錠、身体拘束等をしていたんですが、結果として、暮らしや人との関わり、豊かな表情、意欲などが失われていました。4月からの取組によって、暮らしをつくり、仲間との関わりを増やすことで表情が豊かになり、暮らしの中で意欲的な姿が多く見られるようになりました。  他の利用者さんにも変化が見られています。これは真っ暗な部屋で、過ごしていた利用者さんなんですが、外でみんなで草刈をしたり、リビングルームで、もう本当にこの日の当たるリビングルームでご飯を食べているのを見たとき、私も本当に涙が出そうだったんですけれども、そういう姿が見られるようになりました。  このような日中活動をやってみて、やはり職員さんの中には、これまでとあまりにも違う支援のあり方に戸惑いや葛藤ももちろんありました。けれども、その利用者さんの違った姿を見ることで、様々な発見があって、全体が、みんながこう関わりながら一緒に乗り越えていこうという雰囲気ができてきていると思います。  やはりこの仕事は、こういう新しい出会い、発見がなくなると、不適切な支援に傾倒してしまうということがあるのではないかと思います。現在今、変わりつつあるのはなぜなのか。障がいの特性や問題行動をただなくそうというふうに見るのではなくて、一人の人間として関わっていくこと。利用者と職員が同じ方向を見て、支援する側・される側ということではなくて、両方が当事者になって、当事者として同じ方向を見ていくということがとても大事だと思っています。  今後、今もこの相互作用が生まれてきているんですけれども、職員さんの関わりが変わって利用者も変わる、さらに職員が変化していくという相互作用を作って、その中で利用者も職員もやりがいを得て、そしてそれをさらに地域へと広げていきたいと考えています。  みんなが当事者になる、自分ごと化していくということです。  最後になりますが、やはりまだまだ始まったばかりで、まだ道半ば。これがちゃんと継続性のあるものにしていくには、まだ乗り越えていかなければいけないことがたくさんあると思っています。今現在、地域の他の事業者さんにも様々な協力をいただいて、実際、園からその他の事業所に体験するという方も出てきていて、少しずつ広がってきていますが、本当に、中井やまゆり園の中だけではなくて、地域全体の力を集結させながら、利用者一人ひとりの人生があるということを何より大事に、一人ひとりの豊かな暮らしを一緒に作り、幸せを追求していきたいと思っております。どうぞ皆さん一緒に、この改革に力を貸していただきたいと思います。私からは以上です。 (山本福祉部長)  羽生様、ありがとうございました。本当にAさんの暮らしの変化、そして笑顔、表情の変化といったものに、私たち多くの気づきを得て、次の可能性といったものをこう切り開いていく、今そういう状況にあるというふうに感じました。利用者お一人おひとりのその人となり、その可能性といったものにしっかりと向き合い、一緒に豊かな暮らしを作ってまいりたいと、そのように強く思います。ありがとうございました。  ここで再び、佐藤様から、ただいまの羽生様にご報告いただいた取組について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします (佐藤氏)  簡単に申し上げます。  今、Aさんの話が出まして、それから知事の最初の話の方で松田さんという女性の方の話が出ました。津久井やまゆり園から別の施設に移って、全然表情が違ってくる。Aさんも支援の仕方が変わると、全然表情が違ってくると。何が違うんだということなんですよね。  ちょっと抽象的な話になりますけど、今、目の前に「対人理解のパラダイム転換」という表現のスライドを掲げております。従来我々はこういう理解をしていたわけですね、重度の知的障がい者の人って、社会のことは何も分からない。それだけじゃなくて自分の事も何も分からないと。だから他の人がご本人に代わって何か判断をしてあげないと、この人たちは生活ができないと、こういうふうに理解をしていたわけですね。これを私は「能力不存在推定」と、こういうふうに呼んでおります。能力がないんだというふうに思っているから、代わって判断してあげるという、こういう理解なんですね。これも権利擁護としては、一つの権利擁護なんですが、能力がないというふうに思っているから、もう、あれですよ、安全第一ですよ。だから居室施錠をしちゃうというような話になるんですね。  これがちょっと1990年代からだと思いますけども、全世界的に考え方が変わりつつありまして、今はこういう考え方に変わっています。どんなに重い認知症の人であっても、どんなに重い重度の知的障がい者の人であっても、その人なりの思いがある、人生がある、考えがある。例えば、言葉がない人であってもそうなんです。言葉がない人だから何も考えてないという話ではなくて、その人たちだって、何か考えてらっしゃるわけです。その思いを汲み取った支援ができれば、その人たちは自分で自分のことを判断できると。こういう考え方に変わってきているんですね。これを「能力存在推定」と、こういうふうに呼んでおります。  言葉として、そういうふうな説明を施設の職員さんが受けてらっしゃるかどうかわかりませんけれども、松田さんの例にしても、Aさんの例にしても、何が変わったかというと、  この人たちには能力があるというふうに支援者が思ったわけですよ。あるいは、そう思っている人たちを支援しているわけです。そうすると、自分の能力を出すわけです。だから建物の構造とかそういう話ももちろんあることあるんですが、そうではなくて、支援者がご本人をどういうふうに思っているか。能力があるんだというふうに思うと、能力を引き出す支援ができるわけです。そうすると、さっき羽生さんの言葉にありますけれども、職員も変われるんですね。自分たちの人生を職員自身も豊かにできると。こういう違いが生じるということなんですね。  これは何ていうかな、動作のDNAみたいなのもありまして、一長一短に簡単に変わるものではないです。今、中井についてはいろんな人が入っていって、いろんなことを言って、「こうしましょう、ああしましょう」と言っていますけども、これが外部の目がなくなったら、さあどうなるかというところが気になるところですけれども、少なくとも、私たちは、ご本人には能力があるんだと。そういう前提で支援を組み立てていくんだということを考えないといけないと。こういう話なのかなあというふうに、今羽生さんのお話を伺いながら思いました。同時にこれは、全国的に私いつも言っていることなんですけれども、こんな話です。 (山本福祉部長)  佐藤様、本当にありがとうございます。次の及川様のお話にもつながるかなというふうに思います。そういうことで続きまして、一般社団法人日本ICF協会の及川惠美子(おいかわえみこ)様から、現在の中井やまゆり園の再生に向けた取組の意味するところを、このICFの視点からお話をいただきます。  及川様は、長年厚生労働省の職員として、世界保健機関、WHOが作成する国際生活機能分類、ICFの普及に取り組まれてこられました。退官後、日本ICF協会を設立し、代表理事として、ICFの普及、実用化に尽力をされていらっしゃいます。それでは及川様、よろしくお願いいたします。 (及川氏)  ご紹介ありがとうございました。皆様こんにちは。私、日本ICF協会の代表理事をさせていただいております。及川惠美子(おいかわえみこ)と申します。昨年の3月まで、厚生労働省国際分類情報管理室というところで、国際生活機能分類分析官をしておりました。  今日のお話の中で、今までいろいろ伺った中で、やっぱり私たちは、可能性というものに向き合うことの大切さ、その中で、一本筋の通った、ぶれない考え方を持つ必要がある。それが求められているなというふうに感じました。  私は、ICFの視点から、今回の中井やまゆり園への取組について、その見えてくる可能性、そして、必要性についてご紹介をしていきたいと思います。  報告書を拝見しまして、今回、中井やまゆり園の課題というものを、私なりに2点。まずは人権意識の問題。そしてもう一つは、支援技術の問題というふうに絞らせていただきました。  その人権意識の問題というのは、支援をしようとする方に対して、人権意識に根差したアプローチっていうものが、当たり前のこととして、自然に定着する必要がある。そしてそれは、園全体が受け入れ、認識する必要があるということを思いました。そして、支援技術の問題ですけれども、園の職員の方々というのは、もちろん高い専門性を持って、その知識のもとに支援をされているわけですけれども、それがなぜか硬直化してしまう。型にはまったものになってしまったのではないかというふうに考えました。  その中で、やはり必要なのは、ICFに基づいた取組ではなかったかというふうに思いまして、まずはそのICFというものはどういうものかについてお話したいと思います。  ICFの話をする上で大事なキーワードがあります。それは人権です。皆さんご存知のWHOは、第二次世界大戦後に、保健医療福祉分野に関する様々な問題を取り組む国連の機関として設立されました。国連憲章の第1条には、人権という言葉が入りまして、WHOも、人間の健康を基本的人権として位置付けています。戦後の国際社会においては、障がいというものと向き合わざるを得ない時代に入ってきました。そこで1980年、WHOは、障がいに関する初めての分類。国際障がい分類、ICIDHというのを発表します。これはですね、変調疾患が起きると、機能形態に障がいが起きてしまい、それが能力障がいを引き起こし、そしてやがては社会的不利を起こすという、障がいの階層性を示すという点では、非常に画期的なものでした。しかし、一方通行のこの考え方に関しては、様々な反論が起きました。  障がい者、障がいを持っている者にとっても、単なるその個人の問題でいいんだろうか。いやいや環境さえ整えば、できることはたくさんあります。そして、障がい者の方一人ひとり、自分たちもできることはたくさんあるんだと、そういった意見が出されました。   そこでWHOは、これらの意見を取り入れて、10年にわたる、この障がい分類の改定作業に着手いたしました。先ほど知事がおっしゃっていたように、WHOも障がい当事者の方と向き合う、そして専門家の、福祉のですね、その分野の専門家の意見を取り入れるというような、広い聴取を行いながら、意見交換をしながら、ついに、2001年に国際生活機能分類、ICFを誕生させました。ICIDHとICFの大きな違い、これは、人が生きることの全体像を捉えるという考え方。ですから、全ての人の分類となっています。その生活機能の中に影響を及ぼすものを「環境因子」「個人因子」というふうに捉えて、それらが相互に作用を起こす。そういう分類を作り上げていきました。  ここで、「障がい」って何でしょうか。私たちは生きることにおいて生じた様々な問題を、単純に「障がい」というマイナスの評価の言葉で一括りにしていないでしょうか。ここで、ICFの考え方、少し見方を変えています。人が生きるということを、この生活機能というふうに捉えていて、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」というこの三つの要素、これをプラスの包括用語としています。そして、それぞれに問題を生じてしまった状態を、「機能・形態障がい」「活動制限」「参加制約」。これもマイナスの包括用語として捉えています。  このように、細やかに捉えるというところで、見えてくることがたくさんあるはずですね。これはいわば、可能性の模索です。環境因子や個人因子との相互作用を重視すること、これを大切にしている、そういうことです。  今まで例に上がってきましたAさん。これをICF的に整理してみます。まず、Aさんの環境から見ていきますね。ICFでは、環境を大切な大きな要素として考えています。環境因子というのは、実はプラスにもマイナスにも働くんですね。例えば、こういった福祉制度、これは社会的環境です。園、住まい、そういったものは物的環境になります。そして職員の方、これは人的環境として捉えます。そして、Aさんという個人、この中で、この考え方の中で一番大切なことは、Aさんを一人の人として、中心に置くことが大事。そこで、その上で、Aさんを取り巻く環境から、Aさんにとっての大切なことと、環境が合っていなかった。様々なミスマッチが起きた。そこでいろいろな悪循環の積み重ねとなって、Aさんはつらい思いをする日々になってしまったというふうに思います。  このAさんの日々のこの動きの中で、Aさんの持っている個性。何ていうかプラスの因子は、残念ながら園の方たちに受け入れられなかった、見てもらえなかった状況が起きています。しかし、園の中で、アドバイザーという新しい環境因子が加わりました。アドバイザーの方たちは、Aさんを強度行動障がいがある人というのではなくて、その障がい特性を見る前に、Aさんを一人の人として見ることになります。そして、園で暗い部屋で過ごしているAさんを見て、アドバイザーは、Aさんにとって必要なものは、活動の場ではないかという気づきが起きるんですね。そこでAさんを外に連れ出す。活動の場を提供する。その中で、Aさんにとって、どんなことが喜びになるだろうということを模索し、少しずつですけれども環境が整っていきます。  先ほどご紹介もあったように、Aさんは、外に出て、歩き回るということで、何と運動機能が向上していくわけですね。Aさんは自分の意思であちこち歩き回るようになったわけです。こういうふうにしなさいと命じられているわけではなく、そうしたいから、そうする、というご自分の意思での行動ができるようになります。そうすると、やっぱり運動機能が向上していきます。散歩などの日中活動がもうAさんにとってはとても楽しみになるんですね。私も訪れまして、Aさんと一緒に散歩させていただいたんですけども、とっても楽しそうに、さっきもご紹介ありましたけど鼻歌を歌って、「ふんふん」って言いながら、散歩されていました。  そして、そのAさんの活動は、次に、参加。先ほど、車椅子を押してあげるという場面が紹介されていましたけれども、ICFで言いますと、これは他者への援助という項目になるんですね。これは今まで支援を受ける側だったAさんが、支援を提供する側になった、という大きな変化です。これは個人の特性と、心身機能、活動参加が大きく影響し合っているということになります。相互作用の発露です。  今回、「当事者目線の障がい福祉実現宣言」というものがアップされ、「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例 〜ともに生きる社会を目指して〜」というものが公布され、これらは環境因子として、職員の方たちに大きな影響を与えたと思います。Aさんの変化が、職員に大きな影響を与えた。職員にとっては、こういった条例などの本来自分たちが置かれている立場、やるべき姿というのを再認識することになった。そして、Aさんの改善された活動を見て、職員も生きがい、やりがいを感じるようになった。素晴らしい相互作用が働いたわけですね。  これは、Aさんに限ったことでは当然ありません。障がい者全て、そして私たちも環境因子においては、全て当事者です。誰かにとっての影響を与える一つの存在になっています。なので、私たちも当事者なんですよね。  そういう中で、様々な環境と個人の特性が絡み合って好循環の積み重ねになるという、素晴らしいこの変化を目の当たりにすると、この条例が、皆さんにとってプラスの環境因子として、そして、今後もその影響を続けていってもらいたい。必要性の継続性というのは当たり前ですけれども、先ほどもおっしゃっていましたけれども、条例ができて終わりではない。これからも続いていくもの。そういうことで、ICFが持っている可能性、そして必要性について、お話いたしました。  ICFは共通言語と言われているんですね。皆さんが、同じものの考え方を持って、同じように接する。先ほども同じ方向を見てというお話をされていましたけれども、そういう共通のものの考え方をするという、大きな枠組みを持っているものですので、皆さんもICFを知っていただいて、この事例はICF的にはこうだよね。やっぱりプラスっていいよねみたいな、そんな話ができるようになっていただきたいなというふうに思っています。  これからも、みんながより良く輝いて生きる社会に、私たちも微力ながら協力させていただきながら、そしてみんなが同じ方向を見て、進んでいきたい。これで私の拙いお話を終わりにいたします。どうもありがとうございました。 (山本福祉部長)  及川様、ありがとうございました。現在の中井やまゆり園の取組、またAさんのケースを通じまして、新たな環境因子であるアドバイザーの皆様が加わったことで職員も変わり、それによってAさんに向き合った結果、相互作用が働いて、プラスに変わっていったというご説明ございました。これは条例が目指す当事者目線の障がい福祉の姿、これに一致するものだというふうに感じました。また、こうした支援の根拠となる考え方というのは本当にぶれない支援、継続性というような意味においても重要だと思いました。ありがとうございました。  これで間もなく、第二部の終了となります。ご登壇いただきました皆様、本当にありがとうございました。  中井やまゆり園の改善の取組は、まだ本当に始まったばかりでございます。また、一部の事案の調査は、継続をしている状況でございます。県といたしましては、まずは多くの虐待事案が発生した背景をしっかり検証いたします。また、現在の改善の取組に加えて、今後プロジェクトチームにまとめていただく改革プログラム、これを確実に実行し、一人ひとりの利用者と職員が一緒になって、暮らしを豊かにしていく、その取組を広げていきたいと考えております。皆様のお力添えいただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございました。 (司会)  山本福祉部長、ありがとうございました。  皆様、今2時10分を回りました。ここから10分間の休憩に入らせていただきます。お手洗は会場を出て左手にございます。また車椅子の方は、会場を出て右斜め前のお手洗をお使いください。お手洗は2階、4階にもございます。ご不明な点は、青いTシャツをきているスタッフにお声掛けください。  再開は、この後10分後ですので、2時20分頃、再開は2時20分ごろです。お時間までにご着席ください。  またこの時間の間に、受付時にお渡ししましたアンケートへのご協力もお願いいたします。ここから2時20分まで休憩とさせていただきます。