資料3-1 令和4年5月11日神奈川県議会厚生常任委員会報告資料 県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会の調査状況について 中井やまゆり園については、令和元年7月に発生した骨折事案を再調査する中で、「事実であれば不適切な支援と思われる情報」を複数把握した。 把握した情報の調査を行うため、令和4年3月3日に「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会」(以下「外部調査委員会」という。)を設置し、令和4年4月26日に調査結果(第一次)を公表したところである。 現在までの調査内容や今後の対応、中井やまゆり園の改善に向けた取組について、報告する。 (1)外部調査委員会のこれまでの取組 ア開催状況 〔第1回〕開催日令和4年3月11日(金) 議題・調査の進め方の確認・個別事案の意見交換 〔第2回〕開催日令和4年3月25日(金) 議題・個別事案の意見交換 〔第3回〕開催日令和4年4月11日(月) 議題・個別事案の意見交換 〔第4回〕開催日令和4年4月26日(火) 議題・個別事案の意見交換 ・調査結果(第一次)のとりまとめ イ調査方法 支援記録等の書面調査、関係職員、利用者等へのヒアリング(59名) (2)調査結果(第一次)の概要 4月26日に外部調査委員会から調査結果(第一次)として報告された8事案は次のとおりである。 ア虐待通報すべき事案(5件) 次の事案は、いずれも県が把握した情報の一部又は全部が事実であったことから、障害者虐待防止法に規定される虐待が疑われ、県として関係市町村に虐待通報すべきと判断した。 (ア) 塩水事案 把握情報:服薬用のコップの水等に、塩や砂糖が混ぜられていた。 調査結果:異物を入れたと疑われた職員は否定しており、入れた職員は特定できなかったが、利用者の水等に異物が入っていたことは事実であり、身体的虐待が疑われる。 (イ)ナット事案 把握情報:利用者の肛門内にナットが入っていた。 調査結果:利用者の体内にナットが入っていたことは事実であり、現時点で、ナットは肛門から入った可能性が高く、職員が入れた可能性が高いと考えられ、身体的虐待が疑われる。 ※当該事案については、いつ、どのように体内に入ったのか、特定できていないため、利用者本人に、体調を確認しながら、ヒアリングを実施するなど、調査を継続する。 (ウ)スクワット事案 把握情報:数百回に及ぶ回数のスクワットをさせた。 調査結果:当初、運動不足の解消を目的として行われていたが、個別支援計画に定めず、シーツ交換を行う条件などとして、一部では数百回に及ぶ過度なスクワットを一部の職員がやらせ、それが寮内で見過ごされてきたことは事実であり、身体的虐待や心理的虐待が疑われる。 ※当該事案については、他の利用者にも行われていた可能性があるため、調査を継続する。 (エ)粗暴事案 把握情報:職員が怒り、殴ったことで利用者が頭を打ち、失神した。 調査結果:情報提供者に再度確認したところ、殴ったのではなく、正確には振り払ったとの目撃情報であった。虐待を行った疑いのある職員本人は事実を否定し、事実は確認できていないが、目撃情報がある以上、振り払ったとしても身体的虐待が疑われる。 (オ)オリゴ糖事案 把握情報:4人の利用者に対し、食事の際に多量のオリゴ糖シロップをかけて食べさせていた。 調査結果:オリゴ糖シロップを摂取させること自体は問題ないが、多くの職員が個々の判断で多量のオリゴ糖シロップをかけ、また、組織のチェック機能が働かず、職員個人の判断で多量に購入されていたことは事実であり、身体的虐待や経済的虐待等が疑われる。 イ調査を継続する事案(3件) 次の事案は、職員へのヒアリングなどが終了しておらず、事実が明らかになっていないため、調査を継続する。 (ア)寿司にワサビをたくさん盛りつけて利用者に食べさせたとされる事案 (イ)利用者の顔に消毒液をかけたとされる事案 (ウ)職員が蹴り、消化管穿孔で救急搬送されたとされる事案 ウ調査結果(第一次)に関する外部調査委員会の考察 ○人権意識の大きな欠如が生じている。 ○今回の調査は8件だけであるが、他にも把握している40数件以外にも、虐待があり、県と園とがそれを認識できていない可能性が強い。その中で、利用者が人間らしい生活を送れなくなっている。 また、支援職員も利用者を人間として見られなくなっている。 ○なぜそうなったのかということについては、これまでの経緯を遡って調査していく必要がある。 ○こうした利用者は、対応が困難という理由で県立直営の園で受け 入れ、支援をしてきていたが、不適切な対応へとつながった。 ○まだ調査を行ったのは、一部の事案であるが、総じて、利用者の支援についてのアセスメントが不足していると認められる。 ○園の支援は、利用者を、人として支援することに欠如し、行動特性を適切に把握できずに、放置に近い対応をしていた。利用者本人が望む生活を組み立てていくという点が欠如している。 ○また、園全体として「虐待」に対する認識が甘く、虐待が疑われる事案に関係する利用者だけでなく、他の利用者への支援も同じような問題がある可能性が高い。 ○さらに、支援や対応が難しい利用者が入所する寮では、利用者の支援について職員同士で話し合う環境になく、職員間での対立や風通しの悪さなど、人間関係の問題があった。また、こうした実態を把握していた幹部職員は、適切に対応ができておらず、現場の把握をせずにマネジメント機能も失われていた。 ○利用者一人ひとりに対するケアマネジメントが機能しておらず、自己完結型の支援で、機関連携が行われていなかった。 ○県本庁は、園の不適切な対応が行われていることを十分に把握できていなかった。 (3)今後の取組 ア虐待通報すべきとされた事案について 外部調査委員会から虐待通報すべきと判断された5事案について、令和4年4月26日に関係自治体(9市町)に関係資料を送付し、虐待通報を行った。翌27日に、関係自治体会議を開催し、事案の詳細について説明を行った。 イ県が把握した情報の調査継続について 県が把握した残りの事案については、速やかに調査を行い、順次、公表を行う。 ウ園のマネジメントや支援技術の改善に向けた取組について ○本庁と園が一体となった職員の意識改革と風通しのよい組織改革 ○民間スペシャリストによる当事者目線の支援の実践指導 ○見守りカメラの増設による支援の検証 <別添参考資料> 参考資料「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会調査結果(第一次)」