当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会第11回(令和4年8月30日)資料2 県立障害者支援施設の方向性の検討について 令和4年8月30日神奈川県福祉子どもみらい局 1将来展望検討委員会の提言(令和4年3月) (1)県立施設の課題 ・県立施設は、民間で受け入れることが難しい強度行動障がいのある人等を引き受けるという役割を担っていたが、現在は利用者支援やガバナンスの課題が指摘されている。 ・一方、民間の中には、グループホームにおいて強度行動障がいのある人に対して適切な支援を行っている先進事例や、入所施設においてもユニット化、個室化して専門性の高い支援を行っている取組が存在する。 ・中井やまゆり園や愛名やまゆり園のような県立の大規模入所施設は、安全のためにといった、管理的、閉鎖的な支援環境に陥りやすいという構造的な課題がある。 (2)県立施設の方向性 入所施設は通過型のサービス提供に重点化し、県立施設は率先して地域生活移行に取り組む。また、規模を縮小の上、民間移譲も視野に入れた検討を行う。 (3)県の役割の方向性 福祉に関する先進的な研究や人材育成は、県の役割である。 (4)令和5年度からの指定管理期間における検討 県立施設のあり方について、中長期的な視点から、さらなる検討行う。 2 県立施設の現状と課題 @中井やまゆり園 所在:中井町 管理:直営 対象:知的障がい者 定員:140名 施設:築22年 部屋:個室・多床室 〈現状〉 ・強度行動障がい対策の県の中核施設として、民間で特に対応が困難な障がい者を受入 ・知的障がい者対象の唯一の県立直営施設 〈課題〉 ・職員の支援技術の不足やガバナンスの課題が指摘されている ・従来型の大規模施設であるため、建物の構造面から当事者目線の支援が困難になっている ・交通の便が悪く、住宅街から離れているため、地域との交流に課題がある A愛名やまゆり園 所在:厚木市 管理:指定管理 対象:知的障がい者 定員:120名 施設:築36年 部屋:多床室中心 〈現状〉 ・民間施設では対応が困難な重度重複等の知的障がい者を受入 〈課題〉 ・施設の老朽化対策等の検討が必要になっている ・従来型の大規模施設であるため、建物の構造面から当事者目線の支援が困難になっている B津久井やまゆり園 所在:相模原市緑区 管理:指定管理 対象:知的障がい者 定員:66名 施設:新築 部屋:個室 〈現状〉 ・民間施設では対応が困難な重度重複等の知的障がい者を受入 ・令和3年8月に小規模ユニットケア施設に再整備し、当事者目線の支援に取り組んでいる ・令和5年4月から新たな指定管理期間を開始予定 〈課題〉 ・令和5年4月からの指定管理の状況を確認する必要がある C芹が谷やまゆり園 所在:横浜市港南区 管理:指定管理 対象:知的障がい者 定員:66名 施設:新築 部屋:個室 〈現状〉 ・民間施設では対応が困難な重度重複等の知的障がい者を受入 ・令和3年12月に小規模ユニットケア施設に再整備し、当事者目線の支援に取り組んでいる ・令和5年4月から新たな指定管理者による運営を開始予定 〈課題〉 ・令和5年4月からの指定管理の状況を確認する必要がある D三浦しらとり園 所在:横須賀市 管理:指定管理 対象:知的障がい児者 定員:児40名・者112名 施設:築39年 部屋:多床室中心 〈現状〉 ・民間施設では対応が困難な重度重複等の知的障がい者を受入 ・知的障がい児者の複合施設で、横須賀三浦地域の福祉拠点の機能を果たしている 〈課題〉 ・施設の老朽化対策等の検討が必要になっている ・従来型の大規模施設であるため、建物の構造面から当事者目線の支援が困難になっている E厚木精華園 所在:厚木市 管理:指定管理 対象:知的障がい者 定員:112名 施設:築28年 部屋:多床室中心 〈現状〉 ・高齢の知的障がい者支援のモデル施設 〈課題〉 ・60歳以上の入所者数が70%を超え、高齢化が進行しているため、地域生活移行が難しい ・従来型の大規模施設であるため、建物の構造面から当事者目線の支援が困難になっている Fさがみ緑風園 所在:相模原市南区 管理:直営 対象:身体障がい者 定員:100名 施設:築20年 部屋:個室中心 〈現状〉 ・ALSや遷延性意識障害などの医療的ケアが必要な最重度の身体障がい者を受入 ・病院や介護施設との役割分担を進める中で、入所者の高齢化が解消傾向にある 〈課題〉 ・さがみ緑風園でないと受け入れられないという方が減ってきており、定員が減少している 県立障害者支援施設の今後のあり方の検討について ○神奈川県が設置する7つの(県立)障害者支援施設は、令和4年3月1日現在、531名が生活しており、これまで、県下の重要な社会資源として位置付けられてきた。しかしながら、先の有識者による支援内容の検証において、複数の施設で虐待が疑われる不適切な支援が長期間にわたり行われていたことが判明するとともに、新聞報道等でも、一部の県立施設における支援の質の課題がたびたび取り上げられ、県立施設を管理する県本庁の関与のあり方や各県立施設の組織運営も含めた改善が求められている ○「当事者目線の障がい福祉に係る将来検討展望員会」においては、次期指定管理期間(令和5年4月からの5年間)の指定管理者の選定基準に反映すべく、当面のあり方について議論が行われ、10月の中間報告において、@通過型施設への転換、A定員規模の縮小、B環境の整備(ユニット化・個室化)などの提言がなされた ○同検討委員会では、県立施設も含む障害者支援施設の2040年頃のあるべき姿を議論したが、県立施設については、これまでの提言を踏まえた取組みを着実に進めながら、次期指定管理期間中において、中長期的な視点から、そのあるべき姿に向けさらなる検討を行うこととしている 令和2年(2020年)5月津久井やまゆり園利用者支援検証委員会中間報告書 発展的改組 令和3年(2021年)3月障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会報告書 虐待ゼロの実現を目指した取組み 行動障がいを軽減するための支援技術の向上(身体拘束によらない支援) 意思決定支援の推進(全県への展開) 利用者(当事者)目線の支援を支えるための組織的な体制づくり 令和3年(2021年)10月当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会中間報告書 これまでの支援の検証と支援の改善に向けた以下の取組みを加速させる 地域生活移行、地域生活支援の推進(通過型の施設への転換) 定員規模の縮小、環境の整備(ユニット化、個室化) 当事者目線を基礎とした日中活動の充実 意思決定支援の継続(実践を検証する仕組みづくりも必要) 令和4年(2022年)3月県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会設置 これらの報告書の実践を継続、指定管理者の選定基準に取入れ、調査を行い 令和5年(2023年)4月津久井やまゆり園を含む4つの県立施設について、新たな指定管理期間の開始 県立障害者支援施設(7つの県立施設全て)のあり方について、中長期的な視点から、さらなる検討を行う 令和10年(2028年)3月左の4つの県立施設の指定管理機関の終期 3 今後の県立施設の方向性に関する論点 ○今後の県の役割として、福祉に関する先進的な研究・人材育成が位置付けられているが、どのような研究・人材育成が考えられるか。 ○今後の県立施設は、「通過型施設(重度障がい者の地域生活移行の推進)」を目指しているが、通過型施設として民間施設を先導する役割でよいか。その場合、どのくらいの定員規模が適当か。 ○民間施設でも専門性の高い支援が行われている現状を踏まえれば、現在の 県立施設の利用者は、民間施設でも受け入れることが可能ということでよいか。その場合、県立施設が役割を果たすために、量的にどのくらい必要か。