資料3−1 先駆的な施策を積極的に取り入れるべきではないか(論点〜大事項) 多様な価値観の取り入れについてどう考えるか(論点〜中事項) (1)現状と課題 【文化芸術活動】 〇我が国における障がい者の文化芸術活動は、近年、障がい分野だけではなく、文化芸術分野からも機運が高まっており、平成30 (2018)年には、議員立法により「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(障害者文化芸術推進法)」が成立した。もとより、平成7(1995)年に策定された「障害者プラン」には、障がい者の生活の質の向上を目指し、芸術・文化活動の振興が施策の一つとして掲げられ、その後の「障害者基本計画」においても文化芸術活動の振興が施策の一つとして位置づけられてきた。 〇文化芸術施策においては、平成29(2017)年に制定された「文化芸術基本法」に、障がいの有無等にかかわらず、文化芸術の機会を享受することができる環境の整備を図ることが基本理念として示され、これを受けて平成30(2018)年に制定された「文化芸術推進基本計画(第1期)」において、文化芸術による社会包摂の推進や障害者による文化芸術活動の推進環境の整備等が重要な施策として位置づけられている。 ○前後して、平成19(2007)年、文部科学省・厚生労働省により「障害者アート推進のための懇談会」が開催され、美術・福祉の有識者による意見交換が行われた。平成25(2013)年には文化庁・厚生労働省により「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」が開催され、中間とりまとめでは、障がい者の芸術活動の支援をより一層推進する「裾野を広げる」視点と、芸術性の高い作品を国内外に文化芸術として発信していく「優れた才能を伸ばす」視点を踏まえた仕組み作りを行うことが支援の方向性として重要とされた。 ○この中間とりまとめを踏まえ、平成26年度から平成28年度まで、国庫補助事業として、地域における障害者の芸術活動を支援する「障がい者の芸術文化活動支援モデル事業」が実施されることとなり、平成29年度からは、そのモデル事業の成果を全国に展開する「障害者芸術文化活動普及支援事業」が実施されている。また、文化庁では、障がい者の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施など、障がい者による文化芸術活動の充実に向けた支援を実施している。 〇県では、令和2年4月より「神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター(運営:認定NPO法人STスポット横浜)」を設置し、障がい者の文化芸術活動を振興しており、令和2年度の主な実績としては、障がい者の芸術文化に関する相談支援が42件、人材育成として実施した、コーディネーターの養成研修会への参加者が延べ188名、ワークショップ実施事業が延べ12回、発表の機会の創出が延べ 197名などとなっている。 ○また、県は、障がいの程度や状態にかかわらず、誰もが文化芸術を鑑賞、創作、発表する機会を創出する目的から、「神奈川県障害者文化・芸術祭」を年1回開催(受託:公益財団法人神奈川県身体障害者連合会)しており、令和元年度には16の団体・個人が出展するとともに、6団体が出演し、208名の来場があった(令和2年度は新型コロナウイルス対策のため、出展のみ)。 ○さらに令和2年度からは、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念を踏まえ、障がい者が自ら文化芸術を楽しむための取組みを推進することにより、共生社会の実現を図る目的で、「ともいきアートサポート事業」も実施している。 〇同事業の令和2年度実績は、県立特別支援学校の児童・生徒が県内外で活躍するアーティスト等と制作したアート作品をアートギャラリーなど地域で展示する「創作×地域展示」を実施し、3校で延べ68人(全10日間)がワークショップに参加するとともに、4会場で展示会を実施し、6,831人の来場があった。令和3年度からは、県立青少年センターでの常設展示、神奈川県民ホールギャラリーや神奈川県庁での巡回展示も実施している。こうした取組みにより、障がい者の文化芸術活動の充実に向けた環境整備を進めている。 【ロボット・ICT技術の活用】 ○近年、ICT技術は目覚ましい発展を見せ、様々な技術革新を招来している。我が国においては、令和2年12月、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が閣議決定され、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」といった趣旨がまとめられた。 〇令和3年8月には、総務省及び厚生労働省が「障害者にやさしいICT機器等の普及に関する勉強会」を開催し、同年9月に「障害者にアクセシブルなICT機器等の利用に向けて(主なご意見の整理)」が取りまとめられ、「誰もがデジタル活用の利便性を享受し、多様な価値観やライフスタイルを持って豊かな人生を送ることができる包摂的な社会(デジタル活用共生社会)の実現が求められる」とされた。 ○今次、ICT技術を導入した様々なコミュニケーションツールが開発され、重い障がいがあっても意思疎通を図ることが可能となり、障がい者の在宅雇用が実現したり、通常の発語による会話では表明困難であった障がい当事者の意思世界を、文字盤のポインティングやパソコンによるコミュニケーション方法を使って示すことが可能となった事例も報告されている。 ○既にパソコンやスマートフォン等を、日常生活の中で活用している障がい者が増えてきた一方で、高齢などを背景とした、ICT機器に不慣れである等の理由によって、その活用から取り残されている人もいることが課題である。 ○県では、障害者総合支援法に基づく「地域生活支援事業」に位置づけられた「障害者ICTサポート総合推進事業」により、「かながわ障害者ITネットワーク」(受託:公益財団法人かながわ福祉サービス振興会)を実施しており、パソコン等のIT機器の利活用により、障がい者の社会参加をより一層進めるため、IT機器に係る情報提供及び利用支援の相談等に応じており、同事業の令和2年度実績は、専用サイトへのアクセス数42,534件、相談件数17件となっている。 【SDGsと障がい者の社会参加】 〇SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、平成27(2015)年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であり、貧困層、障がい者、女性など弱い立場に置かれやすい人たちを「誰一人取り残さない(leave no one behind)」多様性と包摂性のある社会の実現を誓った、発展途上国のみならず先進国自身が取り組む普遍的なものとされている。これは、誰もが住みなれた地域で、いきいきといのち輝かせて暮らすことのできる共生社会の実現に通ずる考えでもある。 〇SDGsの17の目標(ゴール)において、「障がい」という言葉は、すべての目標に出てくるわけではなく、目標4.質の高い教育、8.働きがいと経済成長、10.不平等の是正、11.住み続けられる街づくり、17.パートナーシップの5つの目標において、「障がい」が直接的な取組みの対象として取り上げられている。 〇このうち、目標8「働きがいと経済成長」は、「包括的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセントワーク)を促進する」とされ、ターゲットとして「2030年までに、若者や障がい者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する」と示されている。障がい者が、自らの能力を発揮して、就労していくことが含まれるこの目標は、障がい者の社会参加と自立にとって大変重要である。 ○また、ILO(国際労働機関)も、「働きがいのある人間らしい仕事」を働き方の目標として掲げており、現代社会においては、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていないとの指摘がある。 〇加えて、神奈川県の障害者雇用率は、対象企業の2.16%(令和3年6月1日時点)であり、法定雇用率の2.3%に届いていない。企業等で障がい者の一般就労を進める上で、障がい者が活躍できる環境をどのように整えたらいいか分からないと企業等が感じていることが課題とされている。 〇近年、同じ思いを持った仲間が共に働く場として、労働者協同組合、ワーカーズ・コレクティブ、労働統合型の社会的企業、支援付きの中間的就労などが注目されている。これらは、労働市場から遠ざけられ、働き難さを抱えている人が働くことを実現し、社会参加が拡がるのではないかと期待されている。令和4(2022)年10月には、「労働者協同組合法」が施行され、こうした共同労働の場が法人格を得やすくなることから、今後、NPO法人と並ぶ新しい社会活動の形として、多様な社会参加を実現する方法の一つとなる可能性がある。 〇障がいをはじめ様々な状況にある人々の社会参加と自立を後押しするため、SDGsなどで掲げられた包摂する社会を目指して、行政のみならず、民間の営利・非営利組織、地域住民が相互に役割を補完し合っていくことで、より豊かな地域社会の構築が期待される。 (2)検討の方向性 (障がい者の芸術文化の普及啓発)  〇障がい者が生み出す文化芸術活動には、既存の文化芸術に対して新たな価値観を投げかけるものも多く、また、既存の芸術理解を揺さぶる多様な在り方を示唆するものとされる。障がい者による文化芸術活動は、それまで見えづらかった障がい者の個性と能力に気づかせるだけでなく、障がい者を新たな価値提案をする主役として位置づけ、誰もが対等である関係を築く機会を提供するものである。こうしたことを踏まえ、県は、障がい者の文化芸術活動に取組む障害福祉サービス提供事業所、地域の学校、文化施設、文化芸術団体等と連携し、引き続き、障がい者の文化芸術に関する啓発普及に取組むこととしてはどうか。 (様々な表現、創造の機会の拡大) ○障がい者の文化芸術活動は、芸術的に価値が高いものを作ることを目的とするのではなく、自己表現の一つとして行うという考え方を基本とすべきであり、障がい者が創作した作品であることを必要以上に強調することで価値を高めるという行為も適当ではないのではないか。県は、障がい者は自由に創作活動に取り組むことができ、芸術的な価値のみにとらわれるものではないことを、障がい当事者も含め、広く県民に発信していくこととしてはどうか。 ○作品等の発表の場は、障がい者が多様な関係者や地域社会等と交流する機会として重要である。県は、作品発表の機会を増やす取組みを進めるとともに、障がい当事者の創作した作品を展示する際、障がい者であるかどうかに関わらず、共同創作した作品なども区分けすることなく展示する等の取組みを進めることとしてはどうか。 (ともいきアートサポート事業の更なる推進) ○県は、障がい者であるかどうかに関わらず、文化芸術の鑑賞、創作・発表する機会をさらに確保し、自ら楽しむことを通じ、共生社会の理解が促進されるよう、 「ともいきアートサポート事業」の取組みを企業やNPOなど民間とも連携を図りながら継続的に進めるとともに、併せて、障がい関係団体とも連携し、県内で文化芸術の創作活動に取組む障がい当事者の発掘、支援に取組むこととしてはどうか。 (関係者のネットワーク作り) 〇障がい者の文化芸術活動が、学校や福祉施設にとどまらず、文化施設、社会教育施設等や民間のダンス教室、美術サークル、劇団など、多様な場において行われることを踏まえ、それぞれの場所で環境や内容の充実が図られ、障がい者が身近な場所で、創作活動に親しめるよう、県は、市町村や事業者と連携し、こうした関係者のネットワーク作りを進めることとしてはどうか。 〇多様な人々が創造活動に参加することで、文化芸術の新たな価値や優れた作品を生み出す契機となることや、人々の心のつながりや相互理解、多様性の受け入れなどにつながる可能性に鑑み、様々な主体が創造活動に参画できるような環境作りが重要である。県は、地域における文化芸術に関する相談支援、ネットワーク形成、人材育成等に取り組むとともに、芸術家や専門家が福祉施設等を訪問・巡回し、利用者等と共に行う多様な創造活動を促進する取組みを進めることとしてはどうか。 (ロボット・ICT技術の利活用の促進) ○障がい者の地域生活を支援するため、その状態像に応じて、先端技術であるロボットやICT技術を活用した自立支援機器が持続的に開発されることが重要である。そのためには、先端技術(シーズ)と本人の必要性(ニーズ)のマッチングが円滑に行われることが必要であり、県は、経済産業局や産業界と連携して、障がい当事者、ロボット・ICT機器の製造開発事業者、関係機関・団体とともに、研究開発や連絡協議のための会議体を立ち上げるなどにより、障がい当事者のニーズに合わせた新たな機器の開発の促進につなげる取組みを進めていくこととしてはどうか。 ○県は、障がいの種類や程度、ニーズに合った最新の障がい者向けロボット・ICT機器、サービスに関する情報提供の充実強化を図るとともに、 ICT機器に不慣れな障がい者が、障がいの種類や程度、ニーズに応じて直接利用方法を学び、また利活用のための支援が受けられる取組みを進めることとしてはどうか。 ○高齢者向けの見守り機器の活用は全国的に取組みが進んでいる。見守り機器は、コミュニケーションロボットだけでなく、日常生活に身近なテレビやスマートフォン、タブレット等と情報通信技術を組み合わせた双方向の会話によるもので、障がい者にとっても孤立感を感じずに生活でき、簡便かつ速やかに必要な支援を求めることができるという利点がある。県は、既に開発されている有用な技術等を障がい者が容易に利活用できるよう、機器開発及び販売事業者と連携し、適切に情報が得られる環境の整備に取り組むこととしてはどうか。 (SDGsの考えの普及啓発と取組みの推進) 〇誰もが住み慣れた地域で、いのちを輝かせながら安心して暮らしていくためには、福祉政策のアプローチだけではなく、地域の行政や関係機関・団体、住民が連携しながら、一人ひとりの「出番」を作っていくことが大変重要である。県は、地域における障がい者の多様な就労や社会参加の機会を作り出すことを念頭に、市町村と緊密に連携しながら、むしろ福祉とは縁遠い企業者や商工団体、NPO団体、地域住民の参加を得て、コンソーシアム(共同事業体)の設立を検討するなど、「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある社会を目指した活動につなげていく取組みを進めることとしてはどうか。 〇併せて、県は、障がい福祉サービス提供事業者に対して、SDGsの考えが、障がい福祉と深く関連付けられることについて普及啓発を図り、同事業者等が積極的に関わる意識を醸成し、ポストSDGsに向けた議論の広がりを目指すこととしてはどうか。 (障害福祉サービス事業所等との連携) 〇企業等の障がい者雇用に際しての「どのように障がい者が活躍できる環境を整えたらいいのか」といった課題の解決に向けた方法の 一つとして、就労系の障害福祉サービス提供事業所や障害者就労支援団体と連携・協働していくことが考えられる。「ジョブヘルパー」といった企業との連携を図る人材の育成の提言も踏まえ、県は、関係部局間との連携を図り、取組みを進めることとしてはどうか。 〇また、障がい者の就労の機会を作り出す可能性がある、社会的企業や労働者協同組合などについて、県は、全国の好事例を収集し広く情報提供するとともに、知見のある公益団体の力も活用し、「思い」のある人たちが社会的企業や労働者協同組合などを創設する際の支援に取組むこととしてはどうか。 これまでの主なご意見(多様な価値観の取入れに関して) 〇これからの神奈川の「地域社会」を描くときに、障がい者と家族等だけでは展望がない。子どもや高齢者なども含めて、もっとまぜこぜというか、もっといろんな人が一緒に生きているという、そういう社会像を描くのが展望としていいのではないか。 ○SDGsが誰も取り残さないということであれば、これはまさに今回の、どんなに障がいの重い方も地域で生活するんだ、共生社会を実現するんだ、という県の覚悟、目標設定と軌を一にするものだと思っている。 〇前勤めていた職場で人間関係がうまくいかなくなり、体調を崩して退職しまった。その時、自分の将来に大きな不安があった。就職を紹介してくれる人がいたけれど、自分の人生は、相談に乗ってくれる人はいなかった。そんな不安の中で就職合同面接会を受けたことがある。障がい者雇用の面接では、人間性を見てもらえるような気がしない。自分の身の回りにも、採用側にも理解者がいないと、不安になった。 〇障がいのある人が長期間働けるように、企業等と障がいのある人をつなぐ役割として、「ジョブヘルパー」の創設を提案したい。「ジョブヘルパー」は、社会福祉法人、NPOによる人的支援ということで、現行の移動支援、身体介護、コミュニケーション等を含めて、企業にヘルパーとして入って支援を行って、企業側と障がい当事者との間をつなぐ仕組み。これにより働く場の継続ができると考える。 〇佛子園の各事業所に温泉がある。温泉の人たちに手伝ってもらってみたいなことを考えている。日中活動を考えていくということを、中期展望として、是非神奈川県で考えていってほしい。県立の役割って何だっていうことを考えた時には、地域を見ていくという、これが重要だと思っている。 関係団体ヒアリングの主なご意見(多様な価値観の取入れに関して) 〇自立して、基本的人権が保障される生活を営むことが出来るため、働ける人は働く、いわゆる就労の支援が必要と考える。(神奈川県肢体不自由児者父母の会連合会) 〇私たちの仲間は年金だけで生活できない。(にじいろでGO!) 〇経済的に収入を支える生産活動や芸術活動、就労支援の充実が欠かせない。(神奈川セルプセンター) 〇障害者手帳が取得できない、ボーダーの方々や、家でひきこもっている多くの障がい者へアプローチをして、社会とつながり、本人も家族も孤立しないようにしていく必要がある。(神奈川県障害者地域作業所連絡協議会) 〇相談支援事業所や就労・生活支援センターと連携し、自立に向けてサポートしてほしい。(神奈川県自立生活支援センター) 〇交通費を半額割引にするのは、障がい者は収入がないからということだったが、ちゃんと収入があるようにすれば半額にする必要が ない。根本的なところ、ハンディに見合った対価を考えないと、いつまで経っても受け身の立場になってしまう。( 〃 ) (参考資料1) 「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(障害者文化芸術推進法)-抄-(平成30年法律第47号) (基本理念) 第三条 障害者による文化芸術活動の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。 一 文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み、国民が障害の有無にかかわらず、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるよう、障害者による文化芸術活動を幅広く促進すること。 二 専門的な教育に基づかずに人々が本来有する創造性が発揮された文化芸術の作品が高い評価を受けており、その中心となっているものが障害者による作品であること等を踏まえ、障害者による芸術上価値が高い作品等の創造に対する支援を強化すること。 三 地域において、障害者が創造する文化芸術の作品等の発表、障害者による文化芸術活動を通じた交流等を促進することにより、住民が心豊かに暮らすことのできる住みよい地域社会の実現に寄与すること。 2 障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を講ずるに当たっては、その内容に応じ、障害者による文化芸術活動を特に対象とする措置が講ぜられ、又は文化芸術の振興に関する一般的な措置の実施において障害者による文化芸術活動に対する特別の配慮がなされなければならない。 (地方公共団体の責務) 第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、障害者による文化芸術活動の推進に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (文化芸術の鑑賞の機会の拡大) 第九条 国及び地方公共団体は、障害者が文化芸術を鑑賞する機会の拡大を図るため、文化芸術の作品等に関する音声、文字、手話等による説明の機会の促進、障害者が文化芸術施設を円滑に利用できるようにその構造及び設備を整備すること等の障害の特性に応じた文化芸術を鑑賞しやすい環境の整備の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。 (文化芸術の創造の機会の拡大) 第十条 国及び地方公共団体は、障害者が文化芸術を創造する機会の拡大を図るため、障害者が社会福祉施設、学校等において必要な支援を受けつつ文化芸術を創造することができる環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。 (文化芸術作品等の発表の機会の確保) 第十一条 国及び地方公共団体は、障害者の作品等の発表の機会を確保するため、文化芸術施設その他公共的な施設におけるその発表のための催しの開催の推進、芸術上価値が高い障害者の作品等の海外への発信その他の必要な施策を講ずるものとする。 (参考資料2) 文化芸術基本方-抄-平成13年法律第148号(平成29年6月23日改正) (目的) 第一条 この法律は、文化芸術が人間に多くの恵沢をもたらすものであることに鑑み、文化芸術に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、文化芸術に関する施策の基本となる事項を定めることにより、文化芸術に関する活動を行う者の自主的な活動の促進を旨として、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。 (基本理念) 第二条 文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。 3 文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み、国民がその年齢、障害の有無、経済的な状況又は居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。 (地方公共団体の責務) 第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、文化芸術に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 (高齢者、障害者等の文化芸術活動の充実) 第二十二条 国は、高齢者、障害者等が行う文化芸術活動の充実を図るため、これらの者の行う創造的活動、公演等への支援、これらの者の文化芸術活動が活発に行われるような環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。 (参考資料3) SDGsにおける障がいまたは障がい者への言及(持続可能な開発のための2030アジェンダ和文仮訳(外務省HP掲載)から一部抜粋) 目標4.すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する 4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 4.a 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。 目標8.包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・   ワーク)を促進する 8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 目標10.各国内及び各国間の不平等を是正する 10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 目標11.包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する 11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 11.7 2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 目標17.持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する 17.18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。