資料3 県立障害者支援施設における当事者目線の支援の実践について (1ページ)   県は、県立障害者支援施設(以下「県立施設」という。)における利用者支援に対する県の関与について、その実態を自ら検証し、「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の意見を踏まえ、県立施設に対して行う運営指導やモニタリングについて改善を図っており、この取組が持続的かつ適切に行われているか、外部評価を受けるため、神奈川県障害者施策審議会に報告する。 1 定期モニタリングの充実強化 (1)概要 ○ 県が県立施設に対して実施する定期モニタリングについて、令和2年度は利用者の居室や支援の場面に入り支援内容を直接確認する等の改善を図った。 ○ 令和3年度は、県立直営施設も含め、各県立施設による自己点検を実施したうえで、集中的なモニタリングを実施する等、更なる充実強化を行う。 〇 また、モニタリングは、障害サービス課職員に他の県立施設の職員が加わった「当事者目線の支援サポートチーム」により実施し、現場職員の当事者目線の支援への理解や実践につなげ、県立施設全体の底上げを図る。 【実施スケジュール(令和3年度)】の表 実施施設 実施時期の順で記載 中井やまゆり園 令和3年7月 津久井やまゆり園 令和3年11月 ※ 他の県立施設については令和4年度以降に実施予定 (2)中井やまゆり園のモニタリング結果 ア 実施日 令和3年7月12日(月)から7月16日(金)までの4日間 ※モニタリング結果に基づく幹部職員ヒアリングを8月26日(木)実施 イ 実施内容 (ア)自己点検 介護施設を参考に作成した評価表や国の手引きに定める障害者虐待防止チェックリストにより自己点検を実施した。 a 施設支援自己評価表による自己点検 ※ 介護施設におけるユニットケアの評価を参考に作成(別紙参照) b 施設・地域における障害者虐待防止チェックリストによる自己点検 ※ 障害者虐待防止の手引き(社会福祉法人全国社会福祉協議会「障害者の虐待防止に関する検討委員会」平成23年3月版)を使用 (2ページ) (イ)集中モニタリング 障害サービス課職員が長時間の居室施錠等を行っていた利用者22名(令和3年2月時点)の状況等を確認するとともに、身体拘束の解除が難しい利用者4名について、支援の改善に向け、他の県立施設職員による園職員との支援方法の検討や意見交換を行った。 a 障害サービス課職員による施設内ラウンド・書類調査(2日間) 長時間の居室施錠等を行っていた利用者22名の状況等を確認 ・ 施設内のラウンド、利用者・職員ヒアリング ・ 書類調査(身体拘束関係書類等) b 他の県立施設職員との支援方法の検討や意見交換(2日間) 身体拘束の解除が難しい利用者4名について支援の改善に向け、支援方法の検討や意見交換 ・ 施設内のラウンド、利用者・職員ヒアリング ・ 寮長や担当職員と、支援方法の検討・意見交換 c 上記結果を踏まえた幹部職員ヒアリング(1日間) ウ 実施結果 (ア)自己点検の結果 ○ 施設支援自己評価表 ・ 施設支援自己評価表の「設備面への配慮」、「取組体制」、「個別支援の実践」の各項目を点検し、結果は106/108点であった。 ・ 課題として、日中活動や日課について、職員体制によっては個々のペースを十分に尊重できない場合がある等、利用者本位のサービスや個人の意思を尊重した個別支援が挙げられた。 ○ 施設・地域における障害者虐待防止チェックリスト ・ 施設・地域における障害者虐待防止チェックリストの「規定等の整備」、「職員への研修」、「外部からのチェック」、「体制の整備」の各項目を点検し、概ね「できている」という結果であった。 ・ 近年の虐待事案については、外部委員も構成員に含めた「職員による不適切な対応に関する改善計画進行管理委員会」を設置し、再発防止に向けて取り組むとともに、身体拘束ゼロの実現に向け、身体拘束を検討する会議の名称を「行動制限判定会議」から「身体拘束廃止検討会議」に改称し、職員意識の徹底を図っている。 ・ 課題として、個別支援計画作成会議に、利用者が参加していないことから、意思決定支援のモデル的な取組の継続が挙げられた。 (3ページ) ○ 県のふりかえり ・ 自己点検を利用者一人ひとりの支援の改善につなげるため、施設支援自己評価表による評価を、今後は、利用者ごと寮ごとに自己評価を行う等の工夫が必要である。 ・ また、虐待防止に向けた取組を徹底するため、施設・地域における障害者虐待防止チェックリストによる点検作業を、園だけでなく第三者も加わって行うなど工夫が必要である。 (イ)集中モニタリングの結果 ○ ラウンド <取組状況> ・ 利用者が好きなものを装飾する等、利用者の好みに合わせ、居室空間を整えていた。 ・ 粗暴行為や異食等の要配慮行動のある利用者への配慮、利用者一人ひとりの障がい特性や身体状況に合わせてスロープ・畳・クッションフロア等の居住環境が整備されていた。 ・ 身体拘束によらない支援に向け、利用者の見守りにセンサーを導入する等工夫がなされていた。 <課題> ・ 一部利用者は、他利用者や職員との接触により、自傷や他害が発生する要因となっていることから、居室施錠等により刺激を遮断し、 居室で過ごさざるを得ず、生活の場の拡大に向けた支援に困難が生じていた。 ○ 書類調査 <取組状況> ・ 身体拘束廃止検討会議で、身体拘束をやむを得ず行う場合の3要件に該当するかの確認や、身体拘束ゼロの実現に向けた具体的な取組状況を時間単位で詳細に確認する等、組織として検討がなされていた。 ・ 寮では、日々の支援や利用者の行動をデータとして積み重ね、客観的に分析・検討する等、身体拘束ゼロの実現に向けた具体的な取組が実践されていた。 ・ 身体拘束ゼロの実現に向けた取組により、長時間の身体拘束を実施している利用者(1日8時間以上)は、22名(令和3年2月時点)から8名(7月時点)に減少していた。 <課題> ・ 身体拘束廃止検討会議において、身体拘束をやむを得ず行う場合の3要件の検討は行われているが、身体拘束を行った際の日々の記録が、拘束した時間のみや「他者とのトラブルのため」といった記載のみで、利用者の心身の状況等の記載がないものがあった。 (4ページ) ・ 個別支援計画において、アセスメントの見直しが図られていたが、同じ支援方法が続き、利用者の生活に拡がりが見られないものがあった。 ○ ヒアリング a 利用者へのヒアリング ・ 自らの意思が反映された生活を送ることができているかを確認するため、利用者へのヒアリングを予定していたが、新型コロナウイルス感染症対策のため、利用者へはあいさつや声掛けに留め、職員から利用者の日頃の生活の様子等についてヒアリングを行うとともに、それぞれの障がい特性に応じた支援が行われていることを確認した。 b 職員へのヒアリング ・ 「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の指摘を真摯に受け止め「少しでも身体拘束を減らしていく」との意識で、身体拘束ゼロの実現に向けた取組を進めていた。 ・ やむを得ず行っている長時間の身体拘束(居室施錠)を、決して良いとは思っておらず、「身体拘束や日々の生活が固定しないよう、居室だけでの生活でなく、外での活動(日中活動)に繋げていきたい」と、利用者の生活の質を考えた発言があった。 ○ 他の県立施設職員による支援方法の検討、意見 ・ 生活場面の中で丁寧なアセスメントを行い、客観的な事実に加え、利用者の表情や職員の見立て等も含めた記録とすることが大切である。 ・ 職員一人ひとりは、利用者の生活の一部分しか見ておらず、それぞれが見ている利用者の一面を合わせていくことで、本人像や支援のあり方が見えてくる。 ・ 利用者のことを深く理解した丁寧なアセスメントに基づき、小規模なグループ会議、寮や課単位の会議、園全体の会議と段階的に検討を重ねていくことで、施設全体で利用者支援のモニタリングを進めることが大切である。 ・ 多職種が日頃から、各職種の専門的観点から利用者と関わることで、支援の幅が広がる。 ・ 積極的に第三者の意見を取り入れながら、身体拘束の廃止や利用者支援の改善を、一人ひとりに合わせて進めていくことが重要である。 エ 幹部職員へのヒアリング結果 ・ 利用者支援の改善に向けた課題への具体的な対応として、現在、身体拘束ゼロに向けた取組として、市町村と連携した支援の改善や学識経験者等が参加したプロジェクトチームによる検討等、第三者の視点を入れた支援の改善に取り組んでいることを確認した。 (5ページ) ・ また、支援困難な状況の利用者について、職員と利用者との信頼関係の築き方や日中活動のつくり方などについて、先駆的な取組を行っている民間施設の職員から、コンサルテーションを受け、現在、支援の改善を図っていることを確認した。 ・ 他施設の現場職員からの意見は、具体的でわかりやすく、利用者支援の改善に役立てていくことを確認した。 ・ 寮単位での利用者支援の改善に向けた実践を園内実践報告会で情報共有を図るとともに、業務改善アイデア募集及び生活向上委員会の運営など働きやすい職場づくりに向けて、園全体としてガバナンスの向上に取り組んでいることを確認した。 ・ その他、自己点検の結果を踏まえ、今後、個別支援計画策定にあたっては、意思決定支援のモデル的な取組の継続を確認するとともに、例えば、その際に、当事者による利用者へのピアサポートの導入を検討する等、当事者目線の支援の実現に向けた意見交換を行った。 (6ページ) (3)今後の対応 〇 園は、モニタリング実施結果を踏まえ、支援の改善を図るとともに、県は、県立施設の支援部長会議等で、園による改善状況の進捗を確認し、必要に応じ運営指導等を行う。 〇 県は、モニタリングの実施方法や実施内容について、県障害者施策審議会で評価を受け、その結果を踏まえ改善を図る。 2 身体拘束ゼロに向けた取組 (1)概要 〇 昨年12月から、県立施設の身体拘束の実施状況を県ホームページで公表し、職員の気づきや行動変容を促すことで、「身体拘束ゼロ」の実現や「本人の可能性を活かしていく支援」を目指している。 〇 県立施設の支援部長会議において、各県立施設の支援の見直しの情報共有を行い、身体拘束の実施件数は着実に減少してきている。 〇 また、中井やまゆり園では、より良い支援を進めるため、令和3年2月に身体拘束22件の状況を、第三者の視点を入れる観点から、関係11市町村に情報提供し、市町村とともに支援内容の検証や意見交換を実施している。 (2)県立施設の身体拘束の実施状況の表 令和2年12月、令和3年1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月の順で記載 県立6施設全体 98件、93件、83件、82件、79件、72件、72件、64件 (3)その他、関連した取組(見守りカメラの設置) 〇 県立施設において、日々の支援を検証し、虐待の防止や支援の質を向上するためのひとつのツールとして、県立施設における見守りカメラ(※)の設置を進めている。 (※)県立施設の生活ユニットの共有スペース(食堂、廊下、デイルーム等)に設置するもの 【設置計画(案)】の表 令和3年度 中井やまゆり園、津久井やまゆり園、芹が谷やまゆり園、厚木精華園 令和4年度 さがみ緑風園、愛名やまゆり園、三浦しらとり園 【活用方法】 ・事故や虐待等の不適切な支援が発生した場合の検証や再発防止策の検討 (4)今後の対応 〇 今後、各県立施設における身体拘束ゼロの実現に向けた好事例を集約し、ホームページで公表するとともに、見守りカメラについて利用者及び家族等に丁寧な説明を行ったうえで、県立施設に順次設置し、更なる「見える化」の推進を図る。 (7ページ) 別紙の表 3点 できている 2点 ほぼできている 1点 できていないことが多い 0点 全くできていない 施設支援自己評価表 施設名(         ) 重視するポイント 評価項目 得点 A.設備面への配慮 住環境づくりへの配慮がなされ、生活の場としての設えをしている。 T.居室が入所者にとっての居場所になるように配慮している @個人の持ち物などを自由に持ち込み、居場所を確保している。 A支援員の都合で居室のドアを開けっぱなしていることはないようにしている。 U.デイルームで普通の生活ができるように配慮している @入所者が生活しやすい住環境になっている。 Aリビングにいる入所者はそこで生活感を感じている。 V.地域交流室等の空間作りや社会とのつながりの配慮をしている @セミパブリックスペース等、工夫のできる空間等をうまく利用している。 A地域交流室等が地域の交流の場として活用されている。 W.トイレ、浴室等の配慮を行っている @トイレ及び浴室を入所者が使用しやすいよう手すりの設置等環境整備を行っている。 Aパーテーションの設置等、入所者が使用する際のプライバシーに配慮を行っている。 その他(  *使用しないでください           ) B.取組み体制 情報共有の仕組み作りや職員配置、職員教育を行っている。 T.施設の理念が職員に理解できるよう配慮している @施設の理念について職員の理解が深まるような取り組みをしている。 A管理者は自らの思いを職員に伝えている。 U.個別状況に応じた計画策定や記録がなされている @入所者の生活習慣、趣味、好きなこと等についての意向を把握している(記録等)。 A職員が入所者ケアプランやケアカンファレンスに貢献している。 V.入所者本位のサービスとなるよう、利用環境への配慮をしている @一人ひとりに関する情報を過不足なく記載される仕組みがある。 A入所者が朝起きて今日は何をしようか考え、実行できるよう職員は努力している。 B入所者ごとの外出または外泊を支援する仕組みがある。 W.情報共有の工夫がされている @入所者に関する記録は一元化一覧化されている。 A計画の内容や入所者の記録を、支援する全職員が共有できるようにしている。 X.職員研修計画・実施など支援の質向上に取り組んでいる @職員が知識や技術が学べるような機会を提供している(施設内研修など)。 A職員の研修等成果を確認し、研修等が本人の育成に役立ったかを確認するようにしている。 Y.会議等、重要案件の意思決定手順が決まっている。 @目的に応じた会議が定期的に開催されている。 A会議等、職場の意向を反映する仕組みがある。 その他(  *使用しないでください           ) C.個別支援の実践 施設の理念の共有のもと、一人ひとりを尊重し、生活リズムに沿った個別支援を実施している。 T.入所者の権利・プライバシーを守り、個人の意思を尊重している @支援の際に、その方の生活習慣等に沿うようにしている。 A入所者の羞恥心に配慮した支援を行っている。 B服装や整容は利用者の好みを反映して行っている。 C職員のペースになったり、日課の消化となったりしていない。 D夜間の見回りは必要に応じて行うようにしている(定時、随時を含め)。 U.家族等との交流・連携を図っている @家族等との外出・外泊・面会時間の制限はない。 A入所者の日常の様子や施設の状況を家族に連絡している。 V.食事提供時に工夫している @入所者の様態に応じて提供する食事を工夫している。 A入所者が食べたいものがあれば、食べられるよう配慮している。 B入所者がおやつなど食べたいものを持ち込める。 W.排泄や入浴は入所者の状態や意思を反映して行っている @排泄介助が必要な入所者に対して、個別に誘導や介助の支援をしている。 Aおむつ等の排泄用品は各入所者に合わせたものを使用している。 B夜間の排泄支援については、それぞれの入所者に合わせた支援をしている。 C入所者本人がゆったりできる入浴方法(入浴時間やマンツーマン方法等)を支援している。 D入所者本人の気持ちを尊重し、同性介助等に配慮している。 その他(  *使用しないでください           ) 合計点数 (終わり)