当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会第5回(令和3年10月20日)資料6 令和3年第3回神奈川県議会定例会厚生常任委員会報告資料抜粋 8中井やまゆり園における利用者支援について 中井やまゆり園は、昨年度設置した「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」から、「長時間の居室施錠が行われている」、「身体拘束の3要件の検討が不十分」など厳しい指摘を受け、利用者支援の改善に向けて取り組んできた。 令和2年12月から、同園における身体拘束の状況を県ホームページに掲載し、拘束の廃止や時間短縮に向けた検討を行い、順次実施している。 令和3年2月には、1日8時間以上の身体拘束を行っていた22件の状況を、第三者の視点を入れる観点から関係市町村に情報提供し、市町村とともに、支援内容の検証を行った。 今年度に入り、市町村に提供した22件のうち2件が身体的虐待に当たると認定されたため、5月に公表し、学識者や市町村職員などを含む会議を6月に園内に設置して、行動障がいの軽減方法などの検討を進めている。 さらに、県は、7月12日から4日間、県と他の県立施設の職員で構成する「当事者目線の支援サポートチーム」による集中モニタリングを行った。モニタリングでは、支援現場の直接確認や職員へのヒアリング、身体拘束を行っている事案の調査を実施した。また、22件の身体拘束については、直近の状況等を確認し、特に拘束の廃止が難しい4件の支援の改善に向けて「当事者目線の支援サポートチーム」と園で、意見交換を行った。 このような中、令和3年9月26日及び27日に報道のあった、同園の利用者に対する身体拘束や骨折事案についての現在までの取組状況などを報告する。 (1)報道の概要について ア9月26日の報道(身体拘束事案) ・令和3年2月時点で、1日8時間以上、施錠するなどの身体拘束が22件あり、そのうち5人を20時間以上施錠した個室に閉じ込める対応が常態化している。 ・園の複数の職員は、「県の発表は時間を少なく見せかけている。県立のため、身内意識でチェックが働いていない。」と証言している。 ・虐待と認定された2人は、住民票が同じ市で、職員らは、「他市町は県の顔色をうかがって虐待と言わなかっただけ」と話す。 イ9月27日の報道(骨折事案) ・2年前に職員が入所者に暴力を振るって骨折させたのに、事故として隠蔽した疑いのあることが複数の職員への取材でわかった。 ・職員らによると、20代の男性入所者に対し、男性職員が「邪魔だ、どけ」と言って、洗濯物などを運ぶカートを肩に強くぶつけた。後日、医療機関で診察を受けると、鎖骨が折れていた。カートをぶつける様子を目撃した職員もいたが、園は「寝転がっていた入所者を、他の入所者が踏んだことが原因と推測される」と事故扱いにした。 (2)身体拘束事案について 身体拘束事案については、昨年度設置した「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」でも厳しく指摘されており、外部への「見える化」を図りながら、改善に向けて取り組んでいる。 ・令和2年12月から、県立障害者支援施設における身体拘束の実施状況を県ホームページで公表し、「見える化」を図ってきた。 ・令和3年2月には、中井やまゆり園において、1日8時間以上の居室施錠などを行っている22件の身体拘束の状況を、関係する市町村に情報提供し、市町村とともに支援内容の検討を行った。 ・同年5月14日に、市町村に情報提供した身体拘束のうち2件について身体的虐待に当たると認定されたため、記者発表した。 こうした取組を続ける中で、同園における20時間以上の居室施錠は、令和3年9月末時点で3名となった。 自傷他害のおそれのある利用者への身体拘束を廃止するためには、利用者の特性に応じて慎重に支援内容を見直す必要があり、引き続き、身体拘束ゼロに向けて、専門家の指導を受けながら、取組を進めていく。 (3)骨折事案について 令和元年7月31日に発生した利用者の骨折について、当時、県と園は、次のとおり対応した。 ・園は、発生時の状況を確認するため、事案発生時にホームで勤務していた職員にヒアリングを行ったところ、職員が加害行為を行ったことは確認できなかった。 ・また、当該利用者は横になって過ごしていることが多く、当時、利用者同士で、互いに手や足を出すトラブルがよくあったことから、事故と判断し、園内で共有の上、園長までの報告書を作成した。 ・令和元年11月15日に発生した虐待案件を調査した際に、7月31日の件は職員による虐待ではないかと発言した職員がいたが、直接その現場を目撃したものではなかったことや、虐待したとされた職員が否定したことから、再調査には至らなかった。 今回の報道を受けて、県と園では、骨折事案に関する当時の記録の確認や関係する職員へのヒアリングを行うなど、当時の判断が適切だったのか、確認していく。   (4)今後の県の対応 アプロジェクトチームの設置 当事者目線の支援や園の役割の向上などをさらに加速するため、医師や学識者などの外部の専門的な視点も入れて「県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム」を9月27日に設置した。 プロジェクトチームには、身体拘束事案については、支援内容を確認の上、助言をいただき、長時間の拘束を廃止できるよう取り組んでいく。さらに、個別の事案ごとに検討を行い、改革プログラムを作成していく。 また、骨折事案については、当時の記録などを提示して、助言をいただき、今後の県と園の確認に生かしていく。 イ中井やまゆり園の全体的な検証 県は、緊急立入調査等により、支援現場の確認、過去の事故報告書の検証、職員ヒアリングなどを行い、同園の組織執行体制の課題を洗い出し、抜本的な改善に取り組む。   (参考)プロジェクトチーム構成員  左から区分、氏名、所属等 施設関係、大川貴志、社会福祉法人同愛会てらん広場統括所長 意思決定支援、小川陽、特定非営利活動法人かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク 学識関係、佐藤彰一、國學院大学法学部教授 医療関係、野崎秀次、汐見台病院小児科・児童精神科・精神保健指定医医師 学識関係、渡部匡隆、国立大学法人横浜国立大学大学院教育学研究科教授 当事者、(現在人選中) 県、福祉部長・障害サービス課長・中井やまゆり園長ほか