資料3−2 第3回委員会での福岡委員からのご報告の概要(長野県西駒郷) 〇長野県立障害者支援施設の「西駒郷」は、平成16年に西駒郷基本構想を策定し、入所者の地域生活移行を進めるとともに、原則として新たな入所は行わないこととし、入所者数は、取組み前が441名だったところ、平成28年には102名まで減少しているところ 〇西駒郷基本構想後の役割、機能、運営方針を見直すため、平成28年にあり方検討会が設置され、セーフティネットの確保と地域生活支援の推進を担うべきとされた 経緯 ・平成12年に知事が替わり、翌年13年に西駒郷改築検討委員会がスタートし、副委員長として参加した。西駒郷の在り方についてまとめられた提言を踏まえて、その後基本構想の検討会が新たに設けられ、平成16年に「西駒郷基本構想」がまとめられた。 ・当時、西駒郷の地域生活移行は少し動きだしており、グループホームが徐々に開設され、500人の定員が、平成15年当時、437人になっていたが、当初の計画では、5年後の将来像と10年後の将来像を描き、平成25年頃の西駒郷の入所定員を60人から100人にしようという目標でスタートした ・また、長野県は、10の圏域で地域ごとに自立支援協議会の前身のような活動を行っており、西駒郷の地域生活移行の話し合いを行ってくれたことも大きい。やがて、10圏域にコーディネーターのいる総合支援センターを設置し、在宅の生活を考えるケア会議や支援会議を開催していった ・地域生活移行の取組みは、本人に、まずグループホームを見てもらうことから始める。できるだけ出身地に近いグループホームを、ビデオで見てもらったり写真で見てもらったり現地を見てもらったりした。その中で、本人がここで動いたなあ、気に入ったなあ、なんか表情が変わったなあ、といった様子をよく掴むようにする。意思表示がはっきりしなくても、何かすごく居心地いい顔してるなあとか、喜んでるなあとか、帰るときに後ろ髪を引きずられるように車に乗ったなあ、ということが感じ取れると、そこにもう1回行ってみましょうとか、体験してみましょうとか、宿泊体験しましょうということをやりながら、その後でここで暮らすのがどうも一番本人が、今ある中では気に入ってるなあとなると、今度この地域で通える場所をいろいろ見て歩こう、となる。そして、作業所や通所事業所などを見て歩きながら、昼と夜を決めていくといったやり方をしていた。西駒郷の職員と総合支援センターの職員がペアを組んでそういった取組みを進めたのだが、やはり総合支援センターというのは大きな役割を果たした ・西駒郷の取組から始まった県の自立支援協議会は、入所施設は困ったらしっかり夜受けとめ、受けとめっ放しではなく、48時間、72時間経てば必ず元の生活に戻れるという、地域生活支援拠点の取組みにつながっていった 課題等 ・当時、長野県中、障害福祉の現状を変えていけるチャンスだという熱気があり、県も本気で対応した。基本構想を実現するため、エンジン(推進体制)として、県庁と西駒郷の現地に専門の部署を作り、県庁に設けられた障害者自立支援室は、後に自立支援課となり、10名体制となった。官民協働で、2足のわらじであったが、県の担当者と相談しながら、現場で実感していたアイデアを形にしていった。長野県は予算をしっかり組むという裏打ちの中で取り組んでくれたというのも大きく、グループホームを作るときに、障がいの重い人も受け入れられるよう、看護師の配置も可能とした ・ワーキンググループの存在も大きかった。県の様々な実践家や、公募した人たち、いろいろな人たちがワーキンググループの中でいろんな提案をしてくれた。全県的な検討会の下に、県内のいろいろな人たちが入ったワーキングがあって、それを各圏域が受けていく、マクロとメゾとミクロがつながりる体制作りが大事だ。医療的ケアや地域生活支援拠点の推進、計画相談100%の話にも通じる ・長野県は人口600人ぐらいの村もまだあり、全国でも小規模自治体の多いところでもあるが、西駒郷から県内全域に地域生活移行の取組みが広がり、他の入所施設でも同様の取組みが進み、いつの間にか県内の各地域の入所施設から地域に移行した人たちの方が西駒郷からの移行者を上回るような流れになっていった ・老朽化した入所施設を建て替えてくれれば、それで十分だということが、地域生活移行の取組みに変わっていったという意味では、保護者の皆さんたちは、大変不安だったと思う。保護者との懇談会も随分開かれた ・西駒郷には依然100人前後の入所者がおられる。平成28年に検討会を設けて、西駒郷の役割や機能をどうするか議論され、地域生活支援拠点の役割、あるいは全県の何か専門的機能の役割の他に、今入所している人たちをさらに地域生活移行で頑張る、という方向を出しているが、なかなか進んでいない。様々ないきさつの中で、家族と本人の了解を得て、さらなる地域生活移行を進めるというのは、苦しいところにある。また、グループホームも西駒郷を運営している事業団で37か所ほどに増え、20年前からグループホームに移られた人たちを、今後どう支えていくかということも大きなテーマとなっている