障害者支援施設における利用者目線の 支援推進検討部会報告書(素案) 令和3年○月 障害者支援施設における利用者目線の 支援推進検討部会 目次 T利用者目線の支援とは3 U検証3 1検証の対象とした県立障害者支援施設について3 2検証の方法6 3検証結果9 (1)津久井やまゆり園9 (2)県立直営施設9 ア中井やまゆり園9 イさがみ緑風園10 (3)指定管理施設10 ア愛名やまゆり園10 イ厚木精華園10 ウ三浦しらとり園11 (4)県の関与に関する調査11 4全体考察11  V利用者目線の支援の実践に向けて12 1利用者目線の支援の実践に必要な取組み12 (1)検証結果を受けて12 (2)虐待ゼロの実現を目指した取組み12 (3)行動障がいを軽減するための支援技術の向上(身体拘束によらない支援)13 (4)意思決定支援の推進14 (5)利用者目線の支援を支えるための組織的な体制づくり16 (6)県の取組みについて19 W今後に向けて(さらなる検討の方向性)20 1県におけるこれまでの障がい福祉行政の振り返り20 2今後の障害者支援施設のあり方を踏まえた県立施設の役割について20 3地域共生社会の実現に向けて20 はじめに 神奈川県(以下「県」という。)では、令和元年11月に愛名やまゆり園の元園長が強制性交罪で逮捕された事件を機に、かつての津久井やまゆり園の利用者支援に関し、不適切な支援が行われてきたと指摘する情報が県に寄せられたことから、指定管理の基本協定に基づく随時モニタリングを実施し、利用者支援について検証を行った。 県では、随時モニタリングを進める中で、県内部の検証だけでなく、障がい者支援や権利擁護などの専門家の視点から深く調査する必要があると判断し、令和2年1月に津久井やまゆり園利用者支援検証委員会(以下「検証委員会」という。)を設置した。 検証委員会では、津久井やまゆり園の利用者支援、指定管理者である社会福祉法人かながわ共同会(以下「共同会」という。)のガバナンス体制及び施設設置者である県の関与の3つに分けて検証を行い、津久井やまゆり園及び共同会の職員からのヒアリングも予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から実施を見送り、令和2年5月に、それまでに収集した各種資料等から確認できた課題と今後の改善の方向性について、中間報告書を取りまとめた。 中間報告書では、検証によって明らかになった課題は津久井やまゆり園だけではなく、他の障害者支援施設にも当てはまる普遍的な課題であると考えられるとし、検証対象を他の県立障害者支援施設に拡大し、身体拘束への対応も含め利用者支援等について、更なる検証が必要であるとされた。 このことを受けて、県では、検証委員会を発展的に改組し、「神奈川県障害者施策審議会」の部会として、「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」(以下「検討部会」という。)を令和2年7月に設置した。 この検討部会は、津久井やまゆり園に加え、県立障害者支援施設のうち、直営の中井やまゆり園、さがみ緑風園、指定管理施設の愛名やまゆり園、厚木精華園、三浦しらとり園の合計6施設を対象として、支援の検証を行うとともに、利用者目線の支援など、障害者支援施設における未来志向の支援のあり方を検討することを目的とし、○回の検討部会における審議のほか6施設へのヒアリングを行い、この報告書を取りまとめた。 T利用者目線の支援とは 利用者目線の支援について、「『利用者のためにはこれが良い』という支援者側の目線ではなく、どんなに重い障がいがあっても、利用者本人には必ず意思があるという理解に立ち、本人を中心に、本人の望みや願いを第一に考え、本人の可能性を最大限に引き出す支援を行うこと」と考える。 (背景となる考え方) 「利用者目線の支援」と同様の考え方として、障がい者の相談支援などで言及される「本人中心支援計画」がある。これは障がい者本人を中心として、本人の望みや願いに基づき、その実現に向けて、どのような支援が必要か、本人とともに立案する支援計画である。 「本人中心支援計画」とも関わる「意思決定支援」の考え方の背景には、障害者権利条約(2014年批准)の成立に象徴される、判断能力に困難を抱える人に対する理解の世界的なパラダイム転換があり、「利用者目線の支援」の前提として重要である。こうした人に対する、旧来からの理解は、「判断能力が不十分であるので、他者が本人に代わって適切な判断をしてあげなければならない」というもの(能力不存在推定)であるが、パラダイム転換後の理解は、「どんなに重い障がいがあっても、本人には必ず意思があり、支援を受ければ、意思決定ができる」というもの(能力存在推定)である。 なお、近年の国内法においても、障がい者の人権、尊厳が重んじられ、人格と個性を尊重しあうことと謳われており、この視点も障がい者目線と符合することである。 (参考) ○障害者基本法改正(2011) 「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」ことを前提に、制度政策が作られることの必要性を示している。 ○障害者総合支援法の基本理念 第1条の2では、「・・・全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること・・・、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと・・・を旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。」とされている。 ○障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(H.24.3.13.厚生労働省令第28号)  第二章第一節第二条 「指定計画相談支援の事業は、利用者又は障害児の保護者の意思及び人格を尊重し、常に当該利用者等の立場に立って行われるものでなければならない。 2指定計画相談支援の事業は、利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるように配慮して行われるものでなければならない。 ○知的障害者福祉法 (支援体制の整備等) 第十五条の三 市町村は、知的障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、この章に規定する更生援護、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の規定による自立支援給付及び地域生活支援事業その他地域の実情に応じたきめ細かな福祉サービスが積極的に提供され、知的障害者が、心身の状況、その置かれている環境に応じて、自立した日常生活及び社会生活を営むために最も適切な支援が総合的に受けられるように、福祉サービスを提供する者又はこれらに参画する者の活動の連携及び調整を図る等地域の実情に応じた体制の整備に努めなければならない。 U検証 1検証の対象とした県立障害者支援施設について (1)施設整備の経過 現在、指定管理施設である三浦しらとり園(昭和58年再整備)や愛名やまゆり園(昭和61年再整備)は、それぞれ前身である長沢学園(昭和38年開設)や愛名学園(昭和41年開設)といった県立知的障がい児施設を、昭和54年に行われた養護学校の義務教育化を契機として、昭和55年度から昭和61年度までを計画期間とする「やまゆり計画(県立社会福祉施設整備拡充計画)」のもと、児者併設の施設や成人施設へと再整備した施設である。また、再整備に当たっては、入所機能だけでなく、地域支援の機能を併せ持つ施設とした。 平成3年度から平成7年度までを計画期間とする「第2やまゆり計画」では、昭和39年開設の津久井やまゆり園が再整備(平成6年)されたほか、高齢の知的障がい者や医療的サポートを必要とする中高齢者の更生施設として厚木精華園(平成6年開設)が、県立民営の施設として整備、かながわ共同会に委託された。 その後、県直営の中井やまゆり園(昭和47年開設、平成12年再整備)は、県域の強度行動障害対策の中核施設として、また、さがみ緑風園(昭和42年開設、平成15年再整備)は、重度意識障がい者、更にはALS(筋萎縮性側索硬化症)障がい者への対応施設として、介護、看護とも24時間体制で支援するなど医療ケアを重視する施設として、それぞれ再整備された。 (2)運営主体の見直し 平成12年度から、愛名やまゆり園がかながわ共同会に委託されて県立民営となり、その後、「県立障害福祉施設の将来展望について」報告書(平成15年)では、各施設の方向性が次のとおり整理された。 ○中井やまゆり園及びさがみ緑風園 機能強化を図りつつ、中長期的には運営主体の見直しを検討する施設 〇津久井やまゆり園及び三浦しらとり園 委託の検討を進めるべき施設 ○愛名やまゆり園及び厚木精華園 委託の経過や委託先の状況を包括的に踏まえながら、今後、方向性を検討する施設 その後、指定管理者制度の導入により、津久井やまゆり園(平成17年度〜)、愛名やまゆり園(平成18年度〜)、厚木精華園(平成18年度〜)、三浦しらとり園(平成23年度〜)が指定管理施設に移行している。 さらに、「県立障害福祉施設等あり方検討委員会」報告書(平成26年)では、制度変更等による障がい者を取り巻く環境の変化や、県立施設が果たしてきた役割、市町村や民間施設から期待されている役割等を踏まえ、各施設の方向性について、次のように整理された。 ○さがみ緑風園 医療と福祉の連携体制を継続的に確保し、医療的ケアが必要な最重度障がい者の受入や地域生活支援が可能であれば、指定管理者制度の導入が可能と考えられる施設 ○中井やまゆり園 高度な専門性が求められる強度行動障がい対策の中核施設の役割を果たし、発展させていくために専門性の高い人材を継続的に確保することが必要であり、地域生活移行を目指した仕組みづくりを進めるため、県立直営施設として運営していくことが望ましい施設 ○津久井やまゆり園、愛名やまゆり園及び三浦しらとり園 県立施設に期待される役割を引き続き担うため、指定管理施設としての存続が望ましい施設 ○厚木精華園 モデル施設としての役割を終えた段階で、民間法人への移譲を検討していくべき施設 (3)県立障害者支援施設(6施設)の概要(令和3年3月末時点) ア津久井やまゆり園 運営:指定管理者制度(指定管理者:社会福祉法人かながわ共同会) (T期)平成17年4月〜平成27年3月 (U期)平成27年4月〜令和3年7月 所在地:横浜市港南区芹が谷2−1−1(平成29年4月仮移転) 主な対象:重度の知的障がい者(障害支援区分平均○) 提供サービス:施設入所支援、短期入所、生活介護、 入所定員:114名、空床型短期入所 職員数 :○名 イ中井やまゆり園 運営:県直営 所在地:足柄上郡中井町境218 主な対象:重度の知的障がい者(強度行動障がいの専用棟もあり)(障害支援区分平均○) 提供サービス:施設入所支援、短期入所、生活介護、自立訓練(生活訓練) 入所定員:140名、併設型短期入所18名 職員数:○名 ウさがみ緑風園 運営:県直営 所在地:相模原市南区麻溝台2−4−18 主な対象:身体障がい者(障害支援区分平均○) 提供サービス:施設入所支援、短期入所、生活介護 入所定員:128名、併設型短期入所12名 職員数:○名 エ愛名やまゆり園 運営:指定管理者制度(指定管理者:社会福祉法人かながわ共同会) (T期)平成18年4月〜平成28年3月 (U期)平成28年4月〜令和8年3月 所在地:厚木市愛名1000 主な対象:重度の知的障がい者(障害支援区分平均○) 提供サービス:施設入所支援、短期入所、生活介護 入所定員:100名、併設型短期入所:20名 職員数 :○名 オ厚木精華園 運営:指定管理者制度(指定管理者:社会福祉法人かながわ共同会) (T期)平成18年4月〜平成28年3月 (U期)平成28年4月〜令和8年3月 所在地:厚木市上荻野4835−1 主な対象:中高齢で医療的ケアの必要な知的障がい者(障害支援区分平均○) 提供サービス:施設入所支援、短期入所、生活介護 入所定員:110名、併設型短期入所2名 職員数:○名 カ三浦しらとり園 運営:指定管理者制度(指定管理者:社会福祉法人清和会) (T期)平成23年4月〜令和5年3月 所在地:横須賀市長沢4−13−1 主な対象:重度の知的障がい者(障害支援区分平均○) 提供サービス:施設入所支援、短期入所、生活介護、自立訓練(生活訓練) 入所定員:88名、併設型短期入所24名(ほかに障害児支援施設定員36名、障害児支援施設併設型短期入所4名) 職員数:○名 ※指定管理者制度について 指定管理者制度は、平成15年地方自治法(以下「法」という。)改正で法244条の2により、民間事業者等にも「公の施設」の運営管理を委ねることが可能となった制度。それ以前は、「公の施設」の管理運営主体については公共性確保の観点から公共団体等に限定し、管理委託制度で運営されていた。指定管理者の選定にあたっては、行政外部の専門家を中心とした選定委員会(神奈川県では「外部評価委員会」という。)が、応募団体から提出された書類の審査により候補者の選定を行い、その後、議会で指定管理者の指定に係る議決を行ったうえで、正式に指定管理者が決まるものである。 神奈川県では、平成17年から指定管理者制度が導入され、検証の対象とした障害者支援施設としては、平成17年に津久井やまゆり園、平成18年に愛名やまゆり園、厚木精華園が、平成23年に三浦しらとり園が、それぞれ指定管理者制度による運営に移行している。 なお、神奈川県では、社会福祉施設は支援の継続性、安定性を保つ必要性がある等の観点から、指定管理の期間については、基本的に10年を一つの期間としている。   2検証の方法 (1)実施施設  全6施設 (2)実施方法 書面調査とヒアリングにより、以下のとおり実施した。 ア書面調査 令和元年12月に県が実施した身体拘束実施状況調査で把握された身体拘束が行われていた個別ケース(126事例)についての調査時点における身体拘束の状況を確認し、その中から、長時間にわたって身体拘束を行っているケースや前施設からの引継を身体拘束実施の主な理由として挙げてきているケースなどから抽出した事例のほか、虐待事案等を加えた合計23事例について、5年間(平成28年〜令和2年)の身体拘束の状況を中心に、支援の具体的内容、課題、改善に向けた取組状況について調査した。 <調査事例数>左から施設名、調査数、抽出数 中井やまゆり園、44事例、6事例 さがみ緑風園、3事例、2事例 津久井やまゆり園、22事例、6事例 愛名やまゆり園、37事例、5事例 厚木精華園、14事例、2事例 三浦しらとり園、10事例、2事例 合計、130事例、23事例 イ現地調査及びヒアリング調査 (ア)調査構成員 1施設あたり3〜4名の検討部会委員で構成する。 (イ)ヒアリング対象 施設長、支援部長、課長、寮長、支援員、法人理事長ほか (ウ)現地調査 ・施設内見学(共用スペース、居室部分) ・利用者の様子の確認 (エ)ヒアリング項目 ・調査時点における身体拘束の状況 ・身体拘束に至った背景や要因 ・改善に向けた検討状況 ・やむを得ず身体拘束を行う場合の可否の判断 ・虐待の疑義があった場合の通報の仕組み ・組織的な検討状況 等 (オ)特定事案に係るヒアリング 次の特定事案についてもヒアリングを実施した。 〔津久井やまゆり園〕 ・「津久井やまゆり園における身体拘束等行動制限の廃止と支援の質の向上に向けた検討会報告書」に係る疑義について 〔愛名やまゆり園〕 ・令和2年1月に認定された虐待事案について ・虐待通報に係る理事長名の文書について (カ)ヒアリング人数 左から施設名、ヒアリング人数 中井やまゆり園、16人 さがみ緑風園、6人 津久井やまゆり園、14人 愛名やまゆり園、11人 厚木精華園、6人 三浦しらとり園、7人 合計、60人 3検証結果 (1)津久井やまゆり園 検証委員会の中間報告書において指摘された、身体拘束を行う場合の「切迫性、非代替性、一時性」の3要件の理解が不足していたこと、24時間の居室施錠を長期間行っていたこと、身体拘束を行った際の記録がないこと等について、かながわ共同会としても概ね事実として認識している。 また、22事例の書面調査を行い、6件の個別事例のほか、平成30年2月に不適切な支援の事案が発覚したことに対応し、平成30年11月に取りまとめられた「津久井やまゆり園における身体拘束等行動制限の廃止と支援の質の向上に向けた検討委員会報告書」等について、幹部及び現場職員からヒアリングを実施した結果、次のことが明らかになった。 ○身体拘束を行う3要件を幹部職員も含めて誤って認識していた(一つでも該当すれば身体拘束を実施して差し支えない旨、会議で伝達)。 ○障害者虐待防止法について職員の認識が低かった。 ○安全確保や利用者の障がい特性を理由に、代替性の検討を十分行わないまま身体拘束を行っていた。 ○長時間にわたる居室施錠は虐待であると認め、身体拘束の軽減・廃止に向けて取り組んでいるが、これまで身体拘束を継続してきた管理者の責任は重い。 ○意思決定支援の取組みを通じて、職員の意識が変わり、身体拘束の軽減・廃止に向けた取組みが進んできた。 (2)直営施設 ア中井やまゆり園 44事例の書面調査を行い、6件の個別事例等について、幹部及び現場職員からヒアリングを実施した結果、次のことが明らかになった。 ○障害者虐待防止法についての認識が低く、本人の障がい特性を理由に身体拘束を行っており、環境側のアセスメントも不十分である。 〇本人の障がい特性やストレングス(強み)を理解した個別支援計画が作られていない。 〇安全確保を重視するあまり、管理的な支援となっている。 〇外部施設との交流がほとんどなく、施設の中で閉じた支援の仕組みとなっている。 〇本来、支援のあり方を検討するはずの身体拘束判定会議が、身体拘束を承認するための会議体になっている。 〇県の強度行動障害対策事業の中核施設であるが、役割が果たせていない。 イさがみ緑風園 3事例の書面調査を行い、2件の個別事例等について、幹部及び現場職員からヒアリングを実施した結果、次のことが明らかになった。 〇園長のリーダーシップの下、施設内の診療所の医療スタッフとの連携が図られ、安全の確保と身体拘束の解消に向けた環境調整に取り組んでいる 〇身体拘束の可否を判定する会議が、年2回であったが随時開催とし、ケース担当も出席して議論を行うこととしたことで、実効性のあるものに変化した。 〇身体拘束によらない支援が徐々に増え、今は、身体拘束の数や時間の短縮だけではなく、生活の質の議論ができるようになっている。 〇県直営施設が指定管理に移行し直営が減少する中、職員のモチベーションを高め、支援の質の維持・向上を図ることが課題である。 (3)指定管理施設 ア愛名やまゆり園 37事例の書面調査を行い、5件の個別事例のほか、令和2年9月7日付の虐待通報に係る理事長名文書等について、幹部及び現場職員からヒアリングを実施した結果、次のことが明らかになった。 〇安全確保や障がい特性を理由にして身体拘束を行っていた。 〇長時間にわたるミトン装着が虐待には当たらないと誤った認識をしていた。 〇他施設での支援内容、従前の支援内容を引き継ぎ、検討することなく身体拘束を継続していた。 〇虐待認定を受けた事案について、愛名やまゆり園の検証委員会にて改善報告をまとめているが、現場職員への周知が不十分だった。 〇理事長名の文書は、職員の虐待通報を抑制させかねないものであり、法人を守るという考えではなく、利用者を守ることを第一に考えるべきである。 〇令和元年度後半から身体拘束廃止に向けての取組を、支援員が中心となって進めており、件数の減少が見られる。 イ厚木精華園 14事例の書面調査を行い、2件の個別事例等について、幹部及び現場職員からヒアリングを実施した結果、次のことが明らかになった 〇高齢の利用者が多く、転倒による怪我のリスクが大きいことから、利用者の安全確保を優先し、ベッド柵や車椅子のベルト等の身体拘束を行っていた。 〇津久井やまゆり園に対する検証委員会等での指摘をきっかけに、令和2年度から身体拘束の解消に向けた取組みを進めており、件数の減少が見られる。 〇なぜ身体拘束を行ってはいけないのか、なぜ解除しなければならないのか、現場職員にまで意義が浸透していない。 ウ三浦しらとり園 10事例の書面調査を行い、2件の個別事例等について、幹部及び現場職員からヒアリングを実施した結果、次のことが明らかになった 〇身体拘束の軽減・廃止に向け、組織的な検討が不十分だった時期があるが、現在は、管理者から現場職員まで一貫した姿勢で取り組んでいる。 〇身体拘束の要件である切迫性や一時性について、ケース記録に厳密に時間等を記録した上で共有し、経年的に見える化している。 〇毎年、実践報告会を開催している。これまでの支援の振り返り、共有化、今後の取組みへの反映につながるので、継続してほしい。 (4)県の関与に関する調査 ※「県の関与」の検証調査報告を踏まえ、記載する。 V利用者目線の支援の実践に向けて 1利用者目線の支援の実践に必要な取組み (1)検証結果を受けて 検証結果からは、身体拘束は原則禁止であることの認識が低く、身体拘束ありきの支援を行っている事例や、障がい特性と環境要因の両面からのアセスメントなど、行動障がいのある利用者に不可欠な「エビデンスに基づく支援」が十分行われていない事例が見られるなど、利用者目線の支援にはなっていない状況が確認された。 また、一方で、津久井やまゆり園において、意思決定支援の取組みなどにより、利用者が変わることで、職員の意識が変化し、より良い支援に改善されてきている状況も確認された。 今後、本人を中心に、本人の望みや願いを第一に考え、本人の可能性を最大限に引き出す支援を行う、利用者目線の支援を進めるため、次のような視点を踏まえた取組みの強化が求められる。 ・虐待ゼロの実現を目指した取組み ・行動障がいを軽減するための支援技術の向上(身体拘束によらない支援) ・意思決定支援の推進 ・利用者目線の支援を支えるための組織的な体制づくり (2)虐待ゼロの実現を目指した取組み ア身体拘束の考え方の改善 身体拘束は、本人の尊厳を侵害する行為である。「正当な理由なく障がい者の身体を拘束すること」は身体的虐待に該当する行為であり、重大な人権侵害である。 個別支援計画に態様や時間、理由を記載した上で、支援上、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合も考えられ、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3要件について十分に検討し、身体拘束の廃止に向けた取組みがなされなければならない。 身体拘束ありきで支援を考えず、身体拘束を行わずに支援するあらゆる方法の可能性を検討することが必要である。 イ虐待通報の徹底 不適切な支援を早く発見して、それがエスカレートしないように、虐待通報を避けるのではなくて、むしろ積極的にしていくことによって、自分たちの組織を変えていく、又は支援を変えていく機会にすべきである。 虐待行為を軽微な段階で適切に通報することができれば、利用者の被害は最小限で留めることができる。 通報した者が誰であっても、そのことで通報者に不利益が生じないようにするとともに、小さな出来事から虐待の芽を摘むことが重要であることを認識し、自らの支援を常に見直し、検証していく体制の構築が必要である。 ウ組織的な対応 不適切な支援が行われたときに、なぜやってしまったのか、しっかりチェックできる組織体制づくりが必要である。虐待防止に向けた組織体制づくりに関して、障害者虐待防止法(15条)では、障害福祉施設従事者等の研修の実施、苦情処理体制の整備などの措置を講ずることとしている。 「障害者虐待の防止等のための措置」として、虐待防止委員会の設置等、必要な体制の整備が求められる。虐待防止委員会には、虐待防止マネジャーのほか、利用者の家族、第三者委員等の外部委員を入れてチェック機能を持たせる等、形骸化させない実効的な組織形態にする必要がある。 研修については、現在、支援者向けに行われている研修の多くは、知識、技術など課題解決に関するものが多い。しかし、支援者は利用者と向き合う中で、考え、感じ、いろいろな思いを抱く。大切に一緒に考え、一緒に取り組んでいく伴走者が必要である。そういった伴走者となる支援者を養成できるよう研修内容を見直していくべきである。 (3)行動障がいを軽減するための支援技術の向上(身体拘束によらない支援) 行動障がいとは、自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど本人の健康を損ねる行動、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が、高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態である。その行動の背景としては、重度の知的障がいや自閉症の人の障がい特性に、環境が合っていないことにより、「分からない」「伝わらない」経験が積み重なり、自傷や他害といった要配慮行動が表出してしまうものと考えられている。 行動障がいのある人の要配慮行動を軽減し、生活の質の向上を図るには、一人ひとりの障がい特性や学習方法を理解し、適切なアセスメントに基づいた支援が必要不可欠である。具体的には、生活環境の中で見通しが立たず不安を感じている状況に対して、今何をするべきか、次にどうなるのかという活動や生活の仕組みなどを本人の理解度や特性に配慮したツール等を使用して、安心して生活できるような環境整備が必要である。 しかしながら、障害者支援施設において、行動障がいのある人への環境整備が十分でなく、身体拘束が依然として行われてしまっている原因として、次の点が挙げられる。 1点目として、行動障がいとは障がい特性と環境要因との相互作用の結果であり、その視点を踏まえた専門性の高いアセスメントが不十分であること。 2点目として、利用者の障がい特性上、変化が苦手であることを理由に、施設が閉鎖的になり、外部の目が入りづらく、不適切な生活日課や支援の内容が表面化しにくい傾向があること。 行動障がいにおける要配慮行動や身体拘束を減らすためには、利用者目線に立った支援や体制整備が必須となる。 利用者目線に立った支援や体制整備とは、利用者本人の障がい特性を理解して、本人が自信を持ってできるようになることを増やし、地域の中で様々な活動や参加につなげ、本人にとって過ごしやすい環境を提供する支援体制を整備することである。行動障がいに対する支援の質を高めるためには、強度行動障害支援者養成研修等の受講を促進できる体制や、施設・事業所間の意見交換等、交流機会の設定により、適切な支援方法に関する理解や専門性を深め、障害者支援施設や障害福祉サービス事業所の人材育成及び全体的なスキルアップを図る必要がある。 地域生活移行においては、本人のアセスメントを集中的かつ効率的に行い、地域生活移行に向けたアプローチを積極的に行なわなければならない。特に障害者支援施設においては、地域生活移行に向けた段階的な体制整備(行動障がいのある人へ必要な支援内容の周知及び浸透、地域生活移行に向けた準備のための支援環境の構築、移行先の確保及び多職種連携の体制整備等)が求められる。地域生活移行における受け皿としては、行動障がいのある人が過ごしやすい、少人数での生活環境や障がい特性に合った建物の構造など、ハード面の整備が必要であり、地域におけるグループホーム等の機能拡充により、地域支援体制の充実を促進することが必要である。 (4)意思決定支援の推進 ア意思決定支援について (ア)意思決定支援の重要性 意思決定支援とは、「すべての人には、それぞれに尊重されるべき意思がある」ということを前提に、本人が理解できるように説明を尽くし、本人の判断や決定を汲み取っていくものである。これは最も基本的な権利擁護のひとつであり、支援者として常に大切にすべきものである。 津久井やまゆり園の現場職員からのヒアリングでは、意思決定支援に丁寧に取り組むことによって、支援者中心の支援から本人中心の支援に変わるきっかけになったことが明らかになった。 このことから、全ての支援者に本人中心の支援を浸透させることは可能であり、県の責務として、時間をかけてでも着実に取り組むことが必要である。 また、今後、全ての県立障害者支援施設においては、率先して意思決定を推進していくことが必要である。そのため、既に入所されている方はもとより、新たに県立障害者支援施設に入所される方についても、本人の意思を丁寧に、かつ、適切な手続きにより確認する必要がある。 (イ) 本人中心の支援 意思決定支援は、「支援する」「支援される」という一方的なものではなく、本人を中心に、家族を含む支援に関与する人たちが協働して進めていくもので、そのプロセスには、全般にわたり支援者が関与する。 そのため、支援者には、自分自身がこの意思決定を大きく左右してしまうことに十分留意し、本人の主体性を尊重する姿勢が常に求められる。 イ支援現場に必要なこと (ア)チーム支援とマネジメント 意思決定支援を進めていくためには、本人の意思決定を丁寧に支援していく姿勢を、本人や家族も含めたチームで共有する必要がある。 特に、意思決定支援会議により多くの関係者が参加し、開かれた場とすることで透明性を高めると同時に、本人中心の支援のあり方を根本的かつ客観的に考え直すことが重要である。 津久井やまゆり園の取組みでは、外部から、客観性・専門性を担保するための「意思決定支援専門アドバイザー」が配置され有効に機能していた。さらに、この取組みが一定の成果を上げたのは、単に外部の目が入ったためだけではなく、チームに入った意思決定支援専門アドバイザーや県職員などが、一緒に考え、支援を進める共同作業があったからである。こうした外部の専門家を配置できなくても、地域と連携し、外部関係者とチームを形成しつつ、で意思決定を支援していくことは効果的である。 また、津久井やまゆり園利用者に対するこれまでの取組みをみると、チームによる意思決定支援を進めたことで支援現場の意識や行動を変えることはできたが、管理職の意識や行動の変化までは確認できなかった。 支援現場で質の高い支援を継続していくためには、支援現場を孤立させない適切なマネジメントが不可欠である。 (イ)支援の手法 あらゆる支援と同様に、一人ひとりを丁寧にアセスメントし、個別支援計画を立て、計画に基づき支援を行い、定期的にその結果を評価する、いわゆる「ケアマネジメントプロセス」を、チームで確認しながら着実に進めていくことが重要である。 こうした本人中心の支援を、支援現場で根付かせるためには、施設等で働く支援者はもとより、全ての支援者が定期的に学びなおし、基本に立ち返ることができる機会などを確保することが必要である。 ウ支援現場を支える仕組み 津久井やまゆり園の取組みは大がかりで、持続可能な仕組みとはいえないが、まずは、官民一体となって、意思決定支援会議のようなケース・カンファレンスの場に、異なる事業所が相互に参加する機会を確保することも効果的と思われる。 また、意思決定支援を広く定着させるためには、障害者支援施設単独の努力だけでなく、意思決定支援専門アドバイザー等の専門家の派遣や事業所間相互の連携など、意思決定支援に取り組むことができる全県的な仕組みが必要である。 (5) 利用者目線の支援を支えるための組織的な体制づくり ア支援人材の育成 組織として、明確な理念やミッションをもった人材育成が重要である。特に、人を育てることが組織の成長につながるという視点をもった組織運営が必要不可欠である。 支援者の質を考えるときに、個人、組織、政策と3つのレベルに分けて考える必要があり、特に組織のレベルでの対応が重要である。いくら個人の力量があっても、組織がその人を活かせるシステムを整備できていなければ、その支援を損なってしまい、力を発揮させることが難しいこともある。 組織のレベルでは、利用者目線に立っているか、適材適所の配置になっているか、OJT・OFF-JT・自己研鑽がどのように行われているのか、組織内のコミュニケーションが健全かどうか、建設的かどうか、同調圧力はないか、外に開かれているか、抑圧的ではないか、といったことについて、人材育成の視点から、モニタリングを行い、現状を振り返り評価することが重要である。 個人のレベルでは、職員一人ひとりに、権利擁護者としての自覚があるかどうか、地域に開かれた施設となっているのかどうか、第三者機関等によるモニタリングも含め、確認していくことが必要である。さらに、非常勤職員に対しても、時間をかけて丁寧に人材育成を行うことで、定着を期待することができる。 また、地域生活移行支援や意思決定支援といった取組みをさらに進めていくには、施設内に留まらず、地域の関係機関との連携がこれまで以上重要であり、こうした関係機関の人たちとチームになり、取組みを進めることができる人材の育成が必要である。 さらに、支援者の積極的な取組みを支えるためには、支援者をエンパワメントすることができる、スーパーバイザーの役割を担う人材育成も重要である。 イガバナンスのあり方  検討部会では、6つの県立障害者支援施設において、利用者支援に当たる生活支援員、その職員を直接指導する課長や部長、管理者である施設長に対して、身体拘束の廃止に向けた取組みを中心にヒアリングを行い、それぞれの施設のガバナンスの状況を確認した。とりわけ、身体拘束の廃止に向けた取組みが進んでいる施設では、施設長がリーダーシップを発揮して、拘束廃止の目標を明確に打ち出していた。また、なぜ身体拘束を廃止しなければいけないのか、現場職員に繰り返し伝えており、中間管理職である部長や課長は、施設長とは異なる役割を理解して、現場職員に助言や指導を行うなど、組織が一体となって同じ目標に向かって取組みが進められていることが確認できた。 障害者支援施設の運営において、個別支援の充実を図るためにも虐待事案の発生を防止するためにも、ガバナンスがいかに機能しているかが重要であると考える。 ガバナンスのあり方については、「理念」「組織体制」「風通しのよい職場環境」「文化の醸成・外部の第三者から評価してもらう機会の確保」などが重要な視点となる。 まず、理念については、明確な倫理に基づく概念として制定されていることが必要である。内容としては、地域の中で社会的存在として生きるための使命を遂行できる組織であることを掲げ、その使命のために支援者が存在しているということが認識できる内容が求められる。また、その理念を支援者一人ひとりが適切に認識できるよう不断の取組みが必要である。 組織体制としては、理念に掲げたとおり、利用者が地域で望む暮らしを実現するために必要な取組みを組織として一丸となって推進できる体制が求められる。また、そのためには、トップダウンのみの体制ではなく、現場の支援者から意見を発信し、幹部職員がしっかり受け止めることのできる体制が求められる。特に県立障害者支援施設のように規模の大きい施設では、現場で支援を提供するセクション毎に幹部職員で決定した運営方針をきちんと現場職員に伝え浸透させる、あるいは現場の実情や意見を管理者に伝える役割を担う中間管理職がきちんと機能することも重要となってくる。 風通しのよい職場環境については、支援者が自身の役割遂行のために遺憾なく力を発揮できる体制が求められ、支援者が試行錯誤を重ね支援の分析をした上で必要に応じて、従来のその施設が行っている支援の枠組みを変えて、新たな支援を再構築すること(リフレーミング)ができる環境が必要である。例えば、「利用者Aさんは昔からこういった支援をしてきており、この支援でないといけない」といった固定観念による根拠のないアセスメントや支援検討に陥らない体制にするために、法人内外に支援者が積極的に事例検討等の発表を行う、会議等で意見を発信するといった環境整備が重要である。 施設の“文化”については、各施設でこれまで培ってきた支援体制や苦慮した出来事などを経て醸成されるが、いつの間にか悪しき文化に陥っていたということがないよう、常にこれまでの振り返りと検証を重ね、外部の第三者から評価してもらう機会を確保する必要がある。家族や行政等の関係機関とのやりとりも意見や指摘をいただける機会とできるよう、意見を言いやすい環境や場を日頃から意識的に設ける必要もある。 こうした視点から法人幹部職員はじめ、施設の管理者が健全な施設運営が継続されるようリーダーシップを発揮しガバナンスが効いている状態を維持していく必要がある。ガバナンス強化のためにも、第三者からの客観的な評価を真摯に受け止める姿勢が肝要である。 ウ他機関・多職種・有識者との積極的な連携 利用者本人に適切な支援を提供するためには、本人をよく知る必要がある。本人をよく知るためには多面的に見る必要がある。そのために必要なことは利用者本人に適切なアセスメントを行うことである。 アセスメントは本人にとって必要な支援を行うための重要な評価であるため、施設内の支援者以外にも本人をよく知る関係者からの意見も積極的に聴取していく必要がある。利用者本人の生育歴には様々な人が関わり、生活を支えてきた経過がある。本人の生活を支えてきた様々な関係者からの情報を収集することで、今まで知らなかった情報や本人が表出できない意思を推測するヒントになることもある。 施設内の支援だけでは支援に行き詰まったり、客観的な評価ができず、本人にとって不適切な支援に至る危険性もある。そうしたことを防ぐためには、有識者らによるコンサルテーションの実施や外部評価委員、オンブズマンや第三者委員の制度の導入等、外部の目を積極的に取り入れていく必要がある。 他機関・多職種・有識者等と積極的に連携していくことで、客観的な視点による支援の評価が得られるとともに、支援者のスキルアップや虐待防止のほか、何より利用者本人の生活の質の向上を図ることができるというメリットがある。 また、県に所在する障害者支援施設において、高齢化、障がいの重度化が進んでいる。そうした中、医療的ケアが必要な利用者も増加傾向にある。精神科医師や理学療法士、言語聴覚士、看護師等の医療職との連携を図ることも重要である。 個別支援計画を作成する上で、家族や後見人、相談支援専門員や行政といった関係者と連携を図っているが、第三者に利用者支援について点検をしてもらう機会として捉え、個別支援計画の見直し時期だけでなく、頻度を高めて関係者と連携を図る取組みも必要である。 また、地域生活移行支援を進めるに当たっては、支援に必要なサービスをつなげる役割がある相談支援専門員をはじめ、関係者との連携が不可欠である。 (6)県の取組みについて 施設への運営指導等のあり方 W今後に向けて(さらなる検討の方向性) 1県におけるこれまでの障がい福祉行政の振り返り 県立障害者支援施設の支援の停滞や利用者目線の支援に転換できなかった原因について、検証していく必要がある。 また、これまでの障がい福祉行政を振り返り、同じことを繰り返すことなく、変化していく時代の波に対応していけるような組織体制をつくる必要がある。 2今後の障害者支援施設のあり方を踏まえた県立障害者支援施設の役割について 県立障害者支援施設の役割として、民間施設で受け入れ困難な重度の障がい者を受け入れてきたが、大規模施設に集約して支援することは限界である。今後の障害者支援施設のあり方について、民間施設や事業者を含めて県全体で議論する必要がある。 3地域共生社会の実現に向けて 県では、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念の普及が進められているが、今後、意思決定支援や地域生活移行支援などに取り組む中では、地域共生社会の考え方が、より重要となっていく。 地域共生社会の実現に向け、市町村では、多様で複合的な支援ニーズに対応するため、障がい福祉などの分野を超えた、包括的な支援体制の整備を進めようとしており、こうした状況も視野に入れる必要がある。