平成14年6月
「生活環境税制のあり方に関する報告書」の要旨
はじめに
○ 豊かな自然や快適な生活環境を次世代に引き継ぐために、私たちの世代が何をすべき
なのか考える時。
○ 水や大気の問題を県民の皆さんの間で活発に議論していただきたい。また、環境対策
や財源のあり方について、より専門的な立場から、さらに検討が行われることを期待す
る。
Ⅰ 生活環境税制の基本的考え方について
○ 生活環境税制は、分権社会において、県民が自分たちの住む生活空間にどのような
快適さを求めるのかという意志を基盤として構築するもの。
○ 水については、森林の荒廃やダム湖の堆砂、生活排水対策などが、大気については、
自動車の走行が原因となる大気汚染への対策や地球温暖化対策などが課題。
○ 環境保全のための財源確保が困難な状況を県民に説明するとともに、新たな費用負
担のあり方として税制措置等の検討が必要。
Ⅱ 水に関するテーマ
<水の安定的確保と供給の取組み>
○ 森林は、水源かん養機能のみならず、酸素供給や土壌保全、生態系の保護等様々な
機能があり、各々の機能を全体として高めるため、県外上流域の森林保全も視野に入
れつつ、私有林の公的管理や担い手の確保等の対策が必要。
○ 森林の土砂流出防止機能の低下等がダム湖のしゅんせつ費用の高騰に反映すること
から、河川への土砂流入を抑制することが重要。
○ 地下水の量的な確保も重要である。また、地下水の保全の効果が広域に及ぶ場合に
あっては、県と市町村が協調しながら、地下水の保全施策や費用負担のあり方を十分
検討すべき。
<水質保全の取組み>
○ 生活排水対策は地域の特性に最もふさわしい手法が選択されるべき。また、その対
策には膨大な費用がかかることから、水質改善の便益を受ける都市住民の費用負担も
視野に入れて検討すべき。
○ 水質保全には家庭での取組が必要である。
○ 地下水の汚染は改善が容易でないことから、汚染を未然に防ぐ取組が重要。
<施策を促進するための税制措置等>
○ 一般財源の組み替えや行政改革の徹底などによって、水源環境保全施策を講ずるた
めの財源を捻出すべきとの考え方もある。県の努力によっても財源が確保できない場
合には、県民への十分な説明と理解を前提に新たな独自財源を県民に求めていくこと
を検討すべき。
○ 法定外目的税としての水源環境税は分かりやすい。しかし、対象とする施策の内容
や規模、地域、徴収コスト等を幅広く検討し、県民からの直接徴収や水道料金での特
別徴収など、県民や市町村等に理解される方策を考えることが必要。
Ⅲ 大気に関するテーマ
<大気汚染対策>
○ 工場等から排出される窒素酸化物、硫黄酸化物等の排出削減については、対策の充
実について検討が必要。
<自動車交通公害対策>
○ ディーゼル車対策については、様々な方法で自動車交通の抑制・平準化等を強力に
進めるとともに、近隣都県との連携・協調を検討すべき。
○ 低公害車や低燃費車の普及に向けて、導入の義務づけや支援措置を行うべき。
<地球温暖化対策>
○ 県民や事業者が自主的に環境に配慮した行動を行うことが必要で、県はそうした取
組を促進すべき。また、総合的な都市緑化策が必要。
○ 具体的な取組みを促す明確な目標を提示し、これを踏まえて県民や事業者が各々の
責任を果たす、全県的取組みを進めることが県の役割。
<施策を促進するための税制措置等>
○ 炭素税は地球温暖化対策の視点から検討されていることから、施策の実施主体であ
る地方自治体としても独自の検討を行い国に提言すべき。
○ 大気汚染対策等のための独自課税については、ディーゼル車等の影響が大きい神奈
川の地域特性を考慮した施策や税負担のあり方について議論を進めることが必要。
Ⅳ 今後の課題
<県民参加の必要性>
○ 生活環境税制に関する必要な施策と税制は、県民自らが参加して積極的に議論を行
うべき。県は県民が意見を交わすことができるような様々な機会を設けるべき。
<今後の施策の方向>
○ 水源環境保全に関する取組を県民の理解を得て進めていくためには、長期的・体系
的な計画を県民に提示することが必要。
○ 大気汚染対策や地球温暖化対策をより一層進めるためには、社会経済システムや生
活スタイルの転換など幅広い施策を検討し、県民に提示することが必要。