津久井やまゆり園再生基本構想(案) 平成29年8月24日 神奈川県 目次 はじめに 1ページ Ⅰ 基本的な考え方 2ページ 1 利用者の意思決定支援 2ページ 2 利用者が安心して安全に生活できる場の確保 2ページ 3 利用者の地域生活移行の促進 2ページ Ⅱ 津久井やまゆり園利用者の意思決定支援 3ページ 1 基本的な考え方 3ページ 2 意思決定支援の仕組みと手続き 4ページ Ⅲ 津久井やまゆり園利用者が安心して安全に生活できる場の確保 8ページ 1 利用者の生活の場の確保 8ページ (1) 利用者が安心して安全に生活できる居室数の確保 8ページ (2) 施設の規模・場所 8ページ (3) 将来的な施設のあり方  10ページ 2 専門性の高い多様なサービスの提供 10ページ (1) 入所施設としての専門性の高い支援の実施 11ページ (2) 居室環境 11ページ (3) 日中活動の場について 11ページ (4) 地域生活を体験できる設備 12ページ (5) 施設内外における地域との交流や協働 12ページ (6) 外出・余暇支援の実現と充実 12ページ (7) 安全への配慮 12ページ (8) 地域生活支援の拠点としての専門性の高い支援 13ページ Ⅳ 津久井やまゆり園利用者の地域生活移行の促進 14ページ 1 地域生活における専門的支援の継続的な提供 14ページ 2 グループホームの整備促進及び運営のバックアップ 14ページ 3 社会福祉法人等との連携 14ページ (1ページ)  はじめに  平成28年7月26日、神奈川県立の障害者支援施設である津久井やまゆり園において、突然の凶行により、19人のかけがえのない尊い命が奪われ、27人が負傷するという、大変痛ましい事件が発生した。  平成28年9月、県は、津久井やまゆり園の施設に甚大な被害が及び、適切な支援が困難であると判断し、津久井やまゆり園の再生に向けて「現在地での全面的建替え」の方向性を示した。その後、様々な意見が出されたことを踏まえ、平成29年2月、神奈川県障害者施策審議会に、津久井やまゆり園再生基本構想策定に関する部会を設置し、津久井やまゆり園の再生について検討を依頼した。  部会においては、12回にわたる精力的な審議が行われ、「意思決定支援」、「安心して安全に生活できる場の確保」、「地域生活移行の促進」を柱とする部会検討結果報告書が取りまとめられた。そして、平成29年8月17日に、神奈川県障害者施策審議会において、この部会検討結果報告書が承認され、同日、会長から知事に提出された。  県は、この部会検討結果報告書の内容を尊重し、今般、「津久井やまゆり園再生基本構想」を取りまとめた。  この基本構想は、事件によって命を奪われた利用者への鎮魂、ご遺族の痛惜の念、そして心身に傷を負った利用者及び職員の尊厳の回復を念頭に置き、利用者、ご家族、職員、津久井やまゆり園を支えていただいている地域住民の方々など関係するすべての人々、さらに、社会全体として、この事件を乗り越え、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念を真に実現することを目指して取りまとめた。 (2ページ)   Ⅰ 基本的な考え方                      障害福祉施策においては、一人ひとりが大切にされ、どこで誰と生活するかの選択の機会が確保されていること、そして、本人の選択の結果を尊重し、可能な限り身近な場所で、日常生活又は社会生活を営むために必要な支援を受けられることが重要である。  津久井やまゆり園利用者の今後の生活の場についても、利用者の選択の幅を広げ、かつ、その意思を可能な限り反映できるよう複数の選択肢を用意し、入所施設においても、また、地域での居住の場においても、一人ひとりがその人らしく暮らすことができる環境を提供することが必要である。 1 利用者の意思決定支援   今後の生活の場の選択については、津久井やまゆり園利用者一人ひとりの意思を尊重すべきであり、その実現に向け、丁寧に、かつ、適切な手続きにより、利用者の意思決定支援に取り組む。 2 利用者が安心して安全に生活できる場の確保   津久井やまゆり園利用者が事件の被害者であり、大変な精神的な苦痛を受けたことを踏まえ、まず、130人のすべての利用者が安心して安全に生活できる入所施設の居室数を確保することを前提とする。   その上で、利用者本人の選択の幅を広げ、その意思を可能な限り反映できるよう複数の選択肢を用意する。   また、入所施設については、医療的ケアや強度行動障害へのケアなど専門性の高い入所支援機能に加え、短期入所や相談支援など、専門的支援力を活かして地域生活を支える拠点機能も充実強化を図る。 3 利用者の地域生活移行の促進   地域生活への移行は、あくまでも利用者本人の意思に基づくものであり、決して強いられるものではなく、また、家庭への復帰を前提とするものでもない。 意思決定支援を進める中で、地域生活移行の希望が示された場合は、安心して地域生活を送ることができるよう、専門的支援の継続的な提供やグループホームの整備の促進などの支援に取り組む。 (3ページ)   Ⅱ 津久井やまゆり園利用者の意思決定支援            津久井やまゆり園利用者一人ひとりには、それぞれに尊重されるべき意思がある。今後、どのような暮らし、どのような支援を望むか、より丁寧に時間をかけて、かつ、適切な手続きにより、意思決定を支援する。  津久井やまゆり園利用者の意思決定支援については、厚生労働省から示された「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(平成29年3月31日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)」を参考に、以下のような手続きにより行うこととする(図1「津久井やまゆり園利用者の意思決定支援の流れ」)。 1 基本的な考え方   意思決定支援とは、自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援する仕組みである。   津久井やまゆり園利用者の意思決定支援に当たっては、以下の点を基本に手続きを進める。  ○ 本人への支援は、利用者一人ひとりの自己決定の尊重に基づき行うことが原則である。本人の自己決定にとって必要な情報の説明は、絵カードや具体物の活用、体験の機会の提供など、本人が理解できるよう工夫して行う。  ○ 本人の自己決定や意思確認が困難な場合は、本人の日常生活における表情、感情、行動に関する情報や、これまでの暮らしにおける様々な情報を把握し、根拠を明確にしながら、利用者一人ひとりの意思及び選好を推定する。  ○ 職員等の価値観からは不合理と思われる決定でも、他者への権利侵害がなければ、その選択を尊重する。  ○ 本人の意思を推定することがどうしても困難な場合は、本人にとっての最善の利益を判断する。その場合は、   ・ 複数の選択肢について本人の立場に立って、メリット・デメリットを可能な限り挙げた上で比較検討すること   ・ 一見、相反する二者択一が求められる場合でも、両立の可能性について十分に考慮し、本人の最善の利益を追求すること   ・ 自由の制限を最小化すること などを考慮する。  ○ 意思決定支援を進める上では、サービスを提供している事業者だけでなく、幅広い関係者から、本人の立場に立った客観的な意見を求めるなど、多 (4ページ) 様な視点から本人の意思決定支援を進める。 2 意思決定支援の仕組みと手続き (1) 津久井やまゆり園職員による状況整理    事件前、事件後の利用者の様子、これまでの生活史、日常生活における利用者の意思表示の状況などについて、津久井やまゆり園職員が整理する。 (2) 意思決定支援チームの設置    利用者本人の意思を確認するため、津久井やまゆり園利用者一人ひとりごとに意思決定支援チームを設置する。チームの構成員は、以下のとおりとする。   ① 相談支援専門員(チーム責任者)     本人が利用する障害福祉サービスの内容を定めるサービス等利用計画の作成者であり、サービス内容の決定に最も深く関わる者として意思決定支援チームを主宰する。   ② 津久井やまゆり園支援担当職員     津久井やまゆり園において、利用者の支援を担当している職員として、利用者の様子について報告するとともに、支援担当職員としての意見を述べる。   ③ 津久井やまゆり園サービス管理責任者     津久井やまゆり園において、利用者の障害福祉サービスに係る個別支援計画を作成している職員として、利用者の様子や家族の状況等を踏まえた支援の考え方について説明するとともに、サービス管理責任者としての意見を述べる。   ④ 市町村障害福祉主管課職員     利用者に係る障害福祉サービスの支給決定を行う機関として参加する。   ⑤ 県障害福祉主管課職員     意思決定支援の取組みを統括する立場として参加する。 (3) 意思決定支援チームに対する研修の実施    意思決定支援チームの構成員が、意思決定支援の趣旨、手続き等について十分な理解を得られるよう、障害者の権利擁護・地域生活支援の専門家等による研修会を継続的に実施する。 (5ページ)  (4) 津久井やまゆり園利用者への説明や見学、体験の機会の提供    津久井やまゆり園利用者の一人ひとりに対して、分かりやすい意思決定支援の説明を行う。また、グループホーム等での生活に関する見学や体験の機会を適宜設け、丁寧に、必要であれば繰り返しながら、意思決定支援を進める。 (5) 家族等への説明や見学、体験の機会の提供    家族等の理解を得ながら意思決定支援を進めるため、意思決定支援の趣旨や手続きの説明を行うとともに、グループホーム等の生活に関する説明会を実施し、見学、体験の機会を提供するなど、丁寧な対応を行う。 (6) 利用者の意思の確認    利用者の意思の確認に当たっては、意思決定支援チームが利用者からヒアリングを実施する。ヒアリングは、必要に応じて、複数回実施するなど、丁寧に進める。    また、家族からは、入所に至るまでの生活の状況、帰宅中の様子、家族としての思い等についてヒアリングを行うなど、本人の意思決定支援に必要な情報収集を行う。    なお、ヒアリングは、利用者や家族、職員等に過度の負担が生じないよう配慮するとともに、地域生活移行又は施設入所を強いることがないよう進める。 (7) 意思決定支援検討会議の設置    意思決定支援チームが行った意思決定支援の内容を確認した上で、津久井やまゆり園利用者一人ひとりについて、暮らしのあり方や居住の場の選択の方向性を検討し決定するために、意思決定支援検討会議を設置する。    会議の構成員として、意思決定支援チームメンバーに加えて、意思決定支援専門アドバイザーを置く。意思決定支援専門アドバイザーは、相談支援に精通する実践的な指導者、法律の専門家、障害者の権利擁護・地域生活支援に関する専門家とする。    意思決定支援検討会議は、本人の明確な意思の確認が困難な場合には、本人の意思を推定する。    なお、意思決定支援検討会議は、利用者・家族等の出席を基本とし、必要に応じ、関係事業者等の参加を可能とする。 (6ページ)  (8) 意思決定支援検討会議の結果に基づく調整    意思決定支援検討会議において、地域生活への移行の意思が確認された場合には、関係者はそれぞれ地域生活移行に向けた支援を開始する。支援に当たっては、意思決定支援チームメンバーを中心に、必要に応じて関係事業者が協力しながら、また、必要に応じて知的障害関連団体などの事業者団体等とも連携しながら、地域生活移行の実現に向けた取組みを行う。 (9) 検討方法及び検討結果の見直し    利用者の心身の状況の変化や、これに伴う意思の変化等に対応するため、継続的に意思決定支援を行う。 (10) その他の意思決定支援を推進するための取組み    津久井やまゆり園利用者を担当している相談支援事業所に対し、相談支援専門員の追加配置を支援するための取組みや、利用者の地域相談支援を実施する指定一般事業所に対し、指定地域移行支援従事者の追加配置を支援するための取組みを検討する。 (7ページ)  (図1 津久井やまゆり園利用者の意思決定支援の流れ) ≪図1の内容説明の始まり。流れの順番に沿って上から列挙します。≫ ■意思決定支援の概要について本人や家族等への説明 ■趣旨、具体の手続き等について家族等への説明会の実施 ■津久井やまゆり園職員による状況整理   ○ 次の状況を記入     ・津久井やまゆり園での様子(生活上の希望、一時帰宅から戻った様子等)    ・これまでの生活史 ・本人の意思表示の状況   ■意思決定支援チームによる利用者の意思確認   ○ メンバー   ・相談支援専門員 ・津久井やまゆり園支援担当職員、同園サービス管理責任者   ・市町村障害福祉主管課職員   ・県障害福祉主管課職員   ○ ヒアリング   ・本人や家族等への説明や見学、体験の場の提供   ・津久井やまゆり園職員が作成した記録等を資料とし、利用者へのヒアリングを実施(メンバーに対する事前の研修を実施) ■意思決定支援検討会議の開催(サービス担当者会議・個別支援会議と兼ねて開催可)   ○ メンバー   ・相談支援専門員 ・津久井やまゆり園支援担当職員 ・同園サービス管理責任者   ・市町村障害福祉主管課職員 ・県障害福祉主管課職員   ・意思決定支援専門アドバイザー  (利用者、家族等の出席を基本とし、必要に応じて関係事業者等の参加)   ○ 検討   ・利用者の意思確認の結果等を踏まえ、最善の利益を判断 ■意思決定の結果を反映したサービス等利用計画・個別支援計画の作成とサービスの提供、支援結果等の記録   支援から把握される表情や感情、行動等から読み取れる意思と選好等の記録 ■意思決定支援に関する記録のフィードバック ≪図1の内容説明の終わり。≫ (8ページ)  Ⅲ 津久井やまゆり園利用者が安心して安全に生活できる場の確保  1 利用者の生活の場の確保 (1) 利用者が安心して安全に生活できる居室数の確保    津久井やまゆり園利用者の今後の生活の場については、130人のすべての利用者が安心して安全に生活できる入所施設の居室数を確保することを前提とする。 (2) 施設の規模・場所   ア 入所施設の小規模化     現在の障害福祉施策の中では、入所施設は小規模化している傾向がある。この理由としては、ノーマライゼーションの考え方の下、かつての1箇所の大規模施設に障害者を集めての昼夜完結した集団的な支援から、より身近な地域における生活を実現するための支援が志向されるようになったこと、居住単位の小規模化・居室の個室化が志向される中で、施設の規模についても小規模化を図り、施設全体の風通しを良くし、お互いに目が届きやすくする必要があること、などが挙げられる。   イ 複数の選択肢・地域生活支援の拠点化     津久井やまゆり園の再生においては、130人のすべての利用者の居室数の確保を前提とした上で、利用者本人の選択の幅を広げ、かつ、その意思が可能な限り反映できるよう、複数の選択肢を用意することが必要である。     また、県立の入所施設に求められる機能は、医療的ケアや強度行動障害へのケアなど専門性の高い入所支援機能に加え、短期入所や相談支援など、専門的支援力を活かして地域生活を支える拠点機能が重要となっており、こうした機能を有する施設を複数箇所に整備することが求められている。   ウ 千木良地域、芹が谷地域及び既存の県立障害者支援施設     以上のような、複数の選択肢の確保及び地域生活支援の拠点化の観点から、津久井やまゆり園の再生に当たっては、これまで利用者が生活していた千木良地域における入所施設に加え、利用者の仮居住先となっている芹が谷地域における入所施設の整備を進めるほか、既存の県立障害者支援施設においても、利用者の生活の場を確保する。     このうち、千木良地域と芹が谷地域については、120人分の利用者の居室数を確保し、これに短期入所12人分を加え、132人分の居室数を確保す (9ページ)  る(11人を一つの居住単位とする居住棟を12棟整備)。     なお、県所管域における新たな拠点施設の整備については、将来的課題として検討を進める。 ≪以下、表の説明≫ 区分:新設(千木良地域と芹が谷地域の合計) 利用者の受皿120人、短期入所12人、合計132人 区分:既存の県立障害者支援施設 利用者の受皿10人 、短期入所なし、合計10人 区分:合計 利用者の受皿130人、短期入所12人   エ 入所定員の考え方     千木良地域と芹が谷地域の施設のそれぞれの入所定員については、130人すべての利用者が安心して安全に生活できる場の確保、意思決定支援により確認された本人の意向の尊重、さらに、施設のあり方として小規模化・拠点化ということを考慮する必要がある。     一方、意思決定支援には数年単位の期間を要することから、千木良地域の施設、芹が谷地域の施設及び既存の県立障害者支援施設を希望する利用者数は、現段階では把握できていない。     こうしたことを勘案し、設計段階においては、千木良地域及び芹が谷地域いずれについても、意思決定支援の状況に応じて施設規模を選択できるように設計することとする。そして、意思決定支援の進行に伴う利用者の選択の傾向を踏まえた上で、千木良地域及び芹が谷地域それぞれの入所定員を設定し、建築工事を行うことを検討する。こうした方法により、利用者の希望が可能な限り実現できるよう配慮する。     なお、意思決定支援については、厚生労働省のガイドラインに基づき既に手続きを進めており、平成29年9月からは意思決定支援チームによるヒアリングを開始する予定である。その後、概ね2年程度を経過した時点での利用者の選択の傾向を踏まえて、入所定員を判断する。     また、利用者の入所については、平成33年度から順次開始し、遅くとも同年度中にはすべての利用者の入所が完了できるよう努める。   オ 工事費用、工事期間の縮減     建築工事に当たっては、千木良地域における既存の体育館、厨房棟及び管理棟については事件の直接の被害を受けていないことから、改修を (10ページ)  加えた上で再利用を検討するなど、工事費用及び工事期間の縮減に努める。   カ 設置者及び運営主体     千木良地域及び芹が谷地域の施設は県立施設とし、運営については、引き続き指定管理とする。   キ 政令指定都市との役割分担の整理     千木良地域及び芹が谷地域の施設については、いずれも政令指定都市域内における整備となるため、政令指定都市との役割分担について調整を行う。   ク 地域生活移行の支援     利用者一人ひとりについて意思決定支援を行う中で、グループホーム等での暮らしを希望する利用者については、130人すべての利用者の居室数の確保を前提とした上で、円滑な地域生活移行を支援する。 (3) 将来的な施設のあり方   ア 居室等の地域生活支援への転用・活用     地域生活移行を支援していく中で、将来的に津久井やまゆり園の利用者が減少した場合には、居室等の用途を変更し、地域で生活する障害者を支援するための短期入所への活用のほか、地域生活移行のための体験の場、家族や地域住民との交流の場、日中活動の場への転用など、施設の機能を転換できる構造とし、入所定員を柔軟に変更できるよう構造を工夫する。   イ 再入所の仕組みづくり     地域生活に移行した津久井やまゆり園利用者について、再入所が必要になった場合には速やかに受け入れるなど、安心して地域生活に移行できる仕組みを構築する。   ウ 新規入所者の受入れ     新たに入所者を受け入れる際には、あらかじめ本人の意向を確認し、利用目的を明確にするなど、一定のルールを設けることを検討する。 2 専門性の高い多様なサービスの提供   整備する施設の規模にかかわらず、医療的ケアや強度行動障害のある利用者への対応など、県立障害者支援施設としての専門性の高い入所支援機能は維持する。   これに加え、短期入所や相談支援など専門的支援力を活かして地域生活を (11ページ)  支える拠点機能についても充実強化を図る。 (1) 入所施設としての専門性の高い支援の実施   ア 医療的ケアが必要な利用者への専門性の高い支援    ○ 県立障害者支援施設として、民間施設では対応困難な重度重複等の知的障害者の受入れ、医療的ケアが必要な利用者への対応などの機能については引き続き維持することとし、利用者の高齢化等に対応できる医療的機能や、日常の健康管理のみならず、体調の急変時に対応ができる医療体制を構築する。    ○ このような医療的機能の構築に当たっては、施設内の医療的機能だけでなく、地域の医療機関など、地域の社会資源との連携を推進する。   イ 強度行動障害のある利用者等への専門性の高い支援    ○ 強度行動障害など、支援が難しい利用者の支援方法については、外部講師による研修や定期的なコンサルテーションを受けるなど、より質の高い支援方法を蓄積する。    ○ 施設全体及び全職員が支援技術を高めていくために、施設内研修のほか、積極的に外部の社会資源を活用する。 (2) 居室環境   ○ 利用者の人権に配慮し、居室は原則として個室とし、プライバシーに配慮した環境づくりを推進する。   ○ 小規模な暮らしを実現するため、居住単位は11人とし、このうち1人を短期入所の定員とする。この居住単位を1棟とし、一人ひとりが落ち着いて生活できる環境づくりを推進する。   ○ 強度行動障害や自閉症スペクトラムの方、高齢者等は、居室環境により落ち着いて安心した生活が可能になることから、障害特性に応じた工夫をする。   ○ 居住棟は、可能な限り一般の住居に近い構造や外観とするなど、地域での暮らしを感じることができるように工夫する。   ○ 施設全体として、空間的なゆとりを設けるように工夫する。 (3) 日中活動の場   ○ 施設の整備に当たっては、日中活動の場と生活の場を、それぞれ分けて整備する工夫を行う。   ○ 利用者の個別の支援計画に合わせて、外部の日中活動の場に通うなど、 (12ページ)  利用者の経験、選択肢を広げるため、近隣の他の複数の事業所との連携を推進する。 (4) 地域生活を体験できる設備   ○ 地域生活を体験できる設備を整備し、利用者が将来の地域生活をイメージした体験が気軽にできるような工夫を行う。   ○ また、こうした設備を活用した地域生活移行プログラムを整備し、地域生活移行を積極的に促進する。 (5) 施設内外における地域との交流や協働   ○ 地域との交流が自然に生まれる空間づくりのため、敷地の境界は塀ではなく植栽や花壇で区画する、敷地内にベンチを点在させるなどの工夫を行う。   ○ 事件を風化させないため、事件で命を奪われた利用者への鎮魂のモニュメントを整備する。   ○ ともに生きる社会における障害者支援施設のモデルとなるよう、施設内外における地域との連携を推進する。   ○ 窓口については、外部からの来訪者に対応しやすく、親しみやすい形状とするなどの工夫を検討する。 (6) 外出・余暇支援の実現と充実   ○ 意思決定支援を通じ、利用者一人ひとりの余暇の選好がより明らかになる中で、利用者の余暇や楽しみを大切にする支援に取り組む。   ○ そのためには、施設内の余暇支援にとどまらず、地域の社会資源を活用した施設外、休日を含めた多様な余暇支援を進めるなど、利用者の経験、選択肢を広げるための工夫を行う。   ○ 特に、医療的ケアの必要な利用者や強度行動障害のある利用者に対する余暇活動の機会の提供に、積極的に取り組む。 (7) 安全への配慮   ○ 安全面において万全の施設とするため、津久井やまゆり園事件検証報告書(平成28年11月25日付け津久井やまゆり園事件検証委員会)を踏まえ、防犯ガラスの取付けや、警備会社と連動したセンサー付防犯カメラ、周囲に異常を知らせる防犯ブザーなど、必要な防犯設備を整備した上で、警察とも日頃から十分な連携を進める。 (13ページ)    ○ 災害時において、利用者の安全がしっかりと確保できるように努める。   ○ 安全対策と地域交流を両立させるため、居住ゾーンと交流ゾーンを明確に整理するとともに、来訪者用の入口・受付を明示し、外部からの人の出入を確認することや、特に夜間における出入口の制限など動線管理を徹底する。 (8) 地域生活支援の拠点としての専門性の高い支援   ア 短期入所機能の充実     地域で生活する障害者を支援するための短期入所は重要であり、千木良地域及び芹が谷地域の施設において一定の定員を確保するとともに、緊急時の受入れ等、サービス内容の充実を図る。   イ 事業所支援(コンサルテーション)の機能     地域生活に移行した津久井やまゆり園利用者のほか、入所施設から地域生活に移行した方が、グループホームでの生活がうまくいかない場合等に、事業所を訪問するなどして利用者のアセスメントを行い、支援方法の検討や、必要に応じて一旦入所させて支援するなどの取組みを行う。   ウ 家族支援の機能     家族や同居人からの相談を受けたり、アドバイスを積極的に行う機能の整備を図る。   エ 相談支援の機能の充実及び近隣の他の多様な事業所との連携     地域生活支援の拠点として、相談支援の機能の充実を図る。加えて、近隣の他の事業所との連携を積極的に推進する。 (14ページ)   Ⅳ 津久井やまゆり園利用者の地域生活移行の促進         地域生活への移行は、あくまでも利用者本人の意思に基づくものであり、決して強いられるものではなく、また、家庭への復帰を前提とするものでもない。  津久井やまゆり園の利用者については、入所施設の居室数を確保した上で、意思決定支援により地域生活移行の希望が示された場合は、安心して地域生活を送ることができるよう、積極的な支援を行う。 1 地域生活における専門的支援の継続的な提供   津久井やまゆり園利用者が、地域のグループホーム等での生活に移行した場合、行動障害のある方への専門的な知識を有する生活支援員の配置や養成、医療的ケアの必要な方への地域の医療スタッフによる手厚い支援等を引き続き受けることができるような仕組みづくりに取り組む。 2 グループホームの整備促進及び運営のバックアップ   以下の各項目に関し、県が直接補助することを検討する。  ① 津久井やまゆり園利用者を受け入れるために、新たにグループホームを開設したり、既存事業所の改修を行う事業者に対する支援  ② 津久井やまゆり園利用者を受け入れるために、基準を超える職員を配置するグループホームに対する支援  ③ 津久井やまゆり園利用者を受け入れるグループホームに対して、支援方法の助言や世話人等の研修等のバックアップ体制の整備を行う社会福祉法人等に対する支援 3 社会福祉法人等との連携   地域生活移行を希望する津久井やまゆり園利用者の受入れについて、積極的な姿勢を示している法人や団体等との調整を進めるとともに、その他の法人や団体等とも連携しながら、地域生活移行を促進する。 (15ページ)  (図2 地域生活を支える拠点機能) ≪以下図2の内容説明≫ 左上に「現在の県立施設」、右上に「千木良地域」、右下に「芹が谷地域」、左下に「県所管域(将来的課題)」についての施設の拠点機能をイメージした図がある。 千木良地域、芹が谷地域、県所管域の3つの地域について、 施設を表す敷地の枠の中に、センター棟が真ん中にあり、その周りにコテージ(小規模居住棟)が6つ配置されている。 センター棟の説明: 日中活動の場、医療的ケア、地域生活支援拠点機能 それぞれの地域の施設の敷地外には、グループホーム等がある。 施設からグループホーム等に対する矢印の説明: 地域生活移行、相談支援 グループホームから施設に対する矢印の説明: 短期入所、日中活動 現在の県立施設の説明: 生活の場、日中活動の場、医療的ケア