資料3−2 津久井やまゆり園利用者の意思決定支援に関わる現場担当者の声 1 サービス管理責任者(男性) ・寮で20年勤務、男性寮の寮長。 ・事件当時も寮長だった。 【概要】 ○事件後、移転が続き生活自体が落ち着かない中で、新しい取組を始めるのは、とても大変だった。 ○チームで支援を進めることで、多くの人たちから支援のヒントをもらうことができている。 ○この取組を進める中で、今まで自分たちがいかに凝り固まっていたか、同じ目線になってしまっていたかに気付くことができた。 ○生活記録に、本人の様子や職員が感じたことを残すようにしたら、支援が充実し、本人の変化に着目するようになった。 ○「本人の望む暮らし」はなかなかわからない。だからこそ、チームで探っていく必要がある。 ○今後は、他の事業所の方々とこの取組を共有し、当たり前のことにしていきたい。 問1 意思決定支援を始めた当時の様子を教えてください。 ○事件後から移転が続き、2度目の大きな移転を経て芹が谷園舎での生活が始まった。生活を組み立て直さなければいけなかったが、一方で日中活動の担当職員が大幅に減るなど、休む間もないほどで、疲弊感の中で取り組むことについては、とても大変だった。 問2 チームで取組む中での変化を教えてください。 ○毎日の支援業務の中で感じている行き詰まりや限界について、相談支援、県・市担当者、意思決定支援専門アドバイザーなど、施設の外のチームメンバーと検討する中で、多くの人たちから支援のヒントをもらうことができている。今まで自分たちがいかに凝り固まっていたか、同じ目線になってしまっていたかに気付くことができた。 問3 支援面での変化を教えてください。 〇これまで、生活記録には支援した事実だけを簡潔に書くよう指導されてきた。 ○それを、生活記録に、外出した事実だけでなく、外出した時の本人の様子や職員が感じたことを残すようにしたら、記録されている本人の様子をもとに、次の支援が充実し、支援が充実すると記録が深まっていく…、そういうスパイラルが生まれた。 問4 職員の認識の変化について教えてください。 〇これまでは「外出する」というイベント自体が支援だと思っていた。今では、「外出する」というイベントの中で、本人がどう感じ、変化していくかに着目するようになった。その結果がまた生活記録に積み重なってきている。 問5 負担は? ○これまで、毎月15ページくらいだった生活記録が、今では多いと50ページになることもある。こうした生活記録は、複数の目で丁寧に整理して、チームで共有することで意味を持つ。生活記録を書く時間はもとより、整理するための時間も通常業務の中では確保されていないので、支援業務の合間を見て進める必要があるが、それが大変。 問6 今後、この取組を進める上で期待することを教えてください。 ○「本人の望む暮らし」を探っているのだが、それがなかなかわからない。常に、「本当に本人はそう思っているのか?」「職員の自己満足なのではないか?」…と自問自答し続けている。自分たちだけでは答えが出せないことが多い。チームで取り組むことが大切だと思っている。 ○今後は、他の事業所の人たちと、この取組や悩みを共有していきたい。そうすることで、意思決定支援が何か特別なものではなく、当たり前のものになっていくと思う。 2 相談支援専門員(男性) ・寮で3年、日中活動で6年の経験を経て、相談支援専門員として4年目。 ・平成28年4月に相談支援専門員になり、その年の7月に事件が発生した。 【概要】 ○ 「本人の望む暮らし」を探るという大きなテーマを共有することが大切。それができれば、入所施設とも対等な立場で意見交換できるし、チームが自律的に機能できるようになる。 ○ 本人を知ったり、本人の楽しそうな様子を知る喜びが、支援現場や相談支援を変えてきている。 ○ 実践する上で本当に大切なのは、本人を中心に、本人に向き合う支援者としての姿勢。本人を知ろうとする姿勢があればこそ、本人の望む暮らしの実現に近づくことができる。 ○ 本人の経験を増やしたり、人とのつながりを増やすためには、入所施設だけにリスクを背負わせない工夫があるとよい。 ○ 地域生活移行のために施設が使えるツールを増えるとよい。 ○ 入所施設の中に、外部の事業所と柔軟につながることができる別部門があるとよい。 問1 意思決定支援を始めた当時の様子を教えてください。 ○事件から転居が続き、ようやく落ち着けると思った矢先で、「なぜ、今、プラスアルファのことをやらなければいけないんだ」という雰囲気があった。 ○元来、入所施設には、安心・安定の暮らしを長く維持しようとする力が働く。「利用者の健康や安定のための支援はやっている」と考えている入所施設の人たちに対して、「それでも本人中心に考えると意思決定支援に取組むことは必要」と、サービス管理責任者と足並みをそろえながら進めてきている。大変だが、今後も大切にしていく必要がある。 問2 今回の取組の特徴を教えてください。 ○通常、施設入所者のモニタリングでは、「施設でどう暮らしているか」が取り扱われることが多く、施設側から一方的に教えてもらう立場になりがち。加えて、家族も学校も市町村も、入所施設に対してどうしても「預かってもらっている」という感覚が拭えない場合が多い。 ○今回は、「本人の望む暮らし」を探るという、施設側もがわからないような大きなテーマを取り扱っている。そのテーマが共有できれば、入所施設とも対等な立場で意見交換できるようになる。 問3 支援現場が良くなってきた理由は何だと思いますか? 〇一般的に、相談支援の現場では「困りごと」を扱うことが多いが、この取組では、チームで「こういう良いことがあった」「こうしたらできた」というような、ポジティブな情報を集めたり、プラスに向かうための議論が多い。 ○その中で、本人を知ったり、本人の楽しそうな様子を知る喜びが、支援現場や相談支援を変えてきているのかな、と思う。 問4 チームで支援を進める上で大切にしていることを教えてください。 ○「本人の望む暮らし」を目指すというような大きな目標を、チームで共有することがとても大切。目標が共有できていれば、チームにある多様な価値観が武器になるが、目標を共有できていないと、価値観をぶつけ合うだけでバラバラになってしまう。 問5 チームがよい方向に変化するために必要なことは何だと思いますか? ○会議のたびに設定される必達目標は、「本人の望む暮らし」を実現するという大きな目標を実現するためのスモールステップに過ぎないのだが、当初は、この大きな目標が共有できていないまま、支援現場が必達目標の達成だけに追われていた。そうなってしまうと、「県や相談支援専門員に言われた、必達目標をこなさなければいけない」と「やらされ感」だけが強くなってしまう。 ○チームとして大きな目標が共有できるようになると、新型コロナウイルスのような想定外の状況があって必達目標が達成できなくても、より大きな目標に向かってチームが自律的に機能できるようになる。 問6 この取組を進めていく上で、大切にしていることを教えてください。 ○意思決定支援というと、意思表出や意思実現といったことが着目されるが、実践する上で本当に大切なのは職員の姿勢だと思う。どんなにがんばっても、わからないことの方がはるかに多い。それでもなお、本人を中心に、本人に向き合う姿勢を、支援者側が維持し続けられるかどうか、いかに本人を知ろうとして、本人の声を聴く姿勢を維持できるか。本人を知ろうとする姿勢があればこそ、本人の望む暮らしの実現に近づくことができる。 ○これを楽しいと思えるか、それとも「落ち着いているのにそこまで考える必要があるのか?」と負担と感じてしまうかで、全然違ってくる。 問7 この取組を進めていく上で感じている難しさを教えてください。 ○よく「自ら望んで入所された方はいない」と言われるが、入所させざるを得なかった家族にも歴史がある。そういう家族の苦労や苦悩を抜きに、「本人の希望を実現する」とは軽々しく言えない。いくら本人にとってグループホームが相応しいとしても、それを家族にも実感してもらうことが大切で、それに向けてチーム一丸となって取り組むことが必要。 ○いろいろなことを丁寧にひも解いて、家族も含め、みんなで進んでいく難しさがある。 問8この取組を進める上での、入所施設の役割を教えてください。 ○本人が入所された経緯等を踏まえ、まずは本人が入所施設に求めているものを入所施設が自らの役割として整理し、支援を組み立ててみることが必要。 ○その中で、入所施設できないことがあれば、相談支援はヘルパーや通所先など、他の社会資源を探すことができるようになる。 問9今後、この取組を進める上で期待することを教えてください。 ○「経験を増やす」「人とのつながりを増やす」というのはとても大切だが、入所施設で何か起こると施設が責められる。入所施設だけにリスクを背負わせない工夫があるとよいのではないか。 〇地域生活に移行した方の多くは、どこかで制度外の努力がある。今後、これを当たり前にしていくためには、移行先を用意するのはもちろんのこと、地域生活移行のために施設が使えるツールを増やすことが必要だと思う。 ○入所施設の中に、計画相談や外部の事業所と柔軟につながることができて、かつサービス管理責任者とも協働できる別部門があるとよいと思う。