2章 神奈川県はどんなところ?  1 山あり,谷あり,平野あり  神奈川県の西には,丹沢の山々や,箱根の山々があります。  中央には相模川,西の方には酒匂川,東京都との境には多摩川が流れており,そのまわりには広い平野ができています。  南東の地域は丘陵となり,三浦半島がつき出して東京湾と相模湾を分けています。 [神奈川県の主な山] (日本の山岳標高一覧 ―1003山― 国土地理院) (海からの高さ)  蛭ヶ岳  1,673m  大室山  1,587m  丹沢山  1,567m  塔ノ岳  1,491m  神 山  1,438m  菰釣山  1, 379m  大 山  1,252m [神奈川県の主な川]  (県県土整備局調)  (県内を流れる長さ)  相模川  55.6km  境 川  52.1km  中津川  32.8km  鶴見川  32.0km  多摩川  28.4km  酒匂川  27.2km  道志川  21.7km [神奈川県の主な湖]  (県県土整備局・企業庁調)  (面積)  芦ノ湖   6.9ku  宮ヶ瀬湖  4.6ku  相模湖   3.3ku  津久井湖  2.5ku  丹沢湖   2.2ku  神奈川県の土地利用の様子をみると,住宅や工場に使われる土地の面積の割合は全国平均の約6倍もありますが,森林や農地の割合は全国平均より低くなっています。住宅地や工場に使われる土地が多く,森林や農地が少ないことが特ちょうです。 [土地利用の様子](2020年)  (県政策局・国土交通省調) (神奈川県,全国の順)  森林     39.0%  66.2%  住宅地    18.4%   3.2%  農地      7.6%  11.6%  工業用地    2.3%   0.4%  その他(道路,学校,公園,川,   海岸など) 32.7%  18.6%  2 あたたかな気候  神奈川県は,日本の中でも気候の良いところといわれています。それは,丹沢・箱根の山々が,大きなかべの役目をして冷たい風をふせぎ,太平洋側からはあたたかい空気が流れこむからです。  気候や降水量は,地形と関係があります。西の方の山地では,気温は低く,降水量はほかの地域の約2倍です。中央や東の方は,山地にくらべて気温は高く,降水量は少なくなっています。 [神奈川県の平均気温と平均降水量]  (1981年から2010年までの平均)  (横浜地方気象台調)  (平均気温,平均降水量の順)  横浜    15.8℃ 1,688.6mm  海老名   15.3℃ 1,729.9mm  相模湖     −   1,673.5mm  日吉      −  1,571.2mm  丹沢湖    −   2,188.6mm  箱根      −   3,538.5mm  小田原   15.3℃ 2,020.0mm  辻堂    16.0℃ 1,564.9mm  三浦    15.8℃ 1,556.8mm  平塚      −   1,589.6mm  相模原中央   −   1,795.6mm  3 全国で2番目の人口  2022年(令和4年)10月1日の神奈川県の人口は,約923万2千人(男:約457万9千人,女:約465万3千人)で,東京都についで全国で2番目の多さです。  これまで,神奈川県の人口はふえ続けていましたが,2021年(令和3年)以降,神奈川県の人口はへり始めています。 [人口が多い順ランキング](2022年10月1日現在) 「人口推計」(総務省統計局)  1位 東京都   1,403万8千人  2位 神奈川県    923万2千人  3位 大阪府     878万2千人  4位 愛知県     749万5千人  5位 埼玉県     733万7千人 [神奈川県の人口](1920年〜2022年) (国勢調査,2022年は「人口推計」(総務省統計局))  1920年  1,323,390人  1930年  1,619,606人  1940年  2,188,974人  1950年  2,487,665人  1960年  3,443,176人  1970年  5,472,247人  1980年  6,924,348人  1990年  7,980,391人  2000年  8,489,974人  2010年  9,048,331人  2020年  9,237,337人  2022年  9,232,489人  4 さかんに行き交う人や物  わたしたちは,学校に通ったり,買い物や旅行に出かけたり,毎日のように移動しています。また,くらしに欠かせない食料品や衣料品などは,わたしたちの手にとどくまでに,さまざまなところから運ばれてきます。一方で,県内で生産された農産物や工業製品などは,国内のいろいろな地域に運ばれていきます。  こうした人や物の移動には,車,電車,船,飛行機などが使われます。 [神奈川県に出入りする貨物の動き] (2021年) (全国貨物純流動調査) (対象地域,出,入りの順)  北海道地方  107万トン 167万トン  東北地方   532万トン 477万トン  中部地方   990万トン 839万トン  近畿地方   465万トン 559万トン  中国・四国地方 173万トン 177万トン  九州地方   136万トン 177万トン  [神奈川県からの輸送方法]  トラック  82.3%  船     13.8%  鉄道     0.6%  その他    3.3% [神奈川県の近い都県に出入りする貨物の動き] (2021年) (全国貨物純流動調査) (対象地域,出,入りの順)  茨城県  299万トン   384万トン  栃木県  318万トン   211万トン  群馬県  255万トン   133万トン  埼玉県  930万トン   561万トン  千葉県   725万トン    956万トン  東京都 2,373万トン 576万トン  山梨県   64万トン    48万トン  静岡県  309万トン   349万トン  5 便利な鉄道と道路  県内の鉄道は,JRが13路線と,その他私鉄が25路線のほか,横浜市営地下鉄が3路線あります。〔2023年(令和5年)3月31日げんざい〕。鉄道は,利用する時間や路線によってこみぐあいがちがいます。1日の中では通勤や通学で利用する朝や夕方がこんざつします。  また,県内には,新横浜と小田原に東海道新幹線の駅があるほか,羽田空港や成田空港へつながっている路線もあり,県外や海外など遠いところへも行きやすくなっています。 [1日平均鉄道駅乗車人数ランキング] (2021年度) (神奈川県交通関係資料集)  1位 横浜駅          849,005人  2位 川崎駅,京急川崎駅    214,075人  3位 武蔵溝ノ口駅,溝の口駅  190,002人  4位 武蔵小杉駅        173,945人  5位 藤沢駅          163,090人  6位 登戸駅          130,707人  7位 日吉駅          123,089人  8位 戸塚駅          120,217人  9位 海老名駅         111,189人  10位 長津田駅         104,914人  県内には国道や県道などたくさんの道路が通っています。すべての道路を合わせると2万5,902km〔2021年(令和3年)4月〕で,地球の半周よりも長いきょりになります。東名高速道路や中央自動車道などを通じて,全国のいろいろな地域とつながっています。  また,県内には約285万台の自動車(乗用車,トラックなど)があり,県外からも多くの車が入ってくることから,交通量がふえ,道がこんざつしている場所があります。  そこで,こんざつをなくすために,県は国や高速道路会社と協力して,新東名高速道路などの整備や周りの道路とのネットワークづくりを進めています。  6 神奈川県の産業  (1)産業の様子  県民で働いている人は,およそ415万3千人(2020年(令和2年))で,全国で2番目に働いている人が多くなっています。仕事の内容を分類すると,最も多くの人が,おろし売・小売業,サービス業を中心とする第3次産業で働いています。農業や漁業を中心とする第1次産業や,製造業を中心とする第2次産業で働く人が年々へっているのにくらべて,第3次産業で働く人の割合はふえています。 [産業別人口の割合のうつりかわり] (国勢調査) (年度,第1次産業,第2次産業,第3次産業,その他の順)  神奈川県  1980年 2% 38% 59% 1%  1990年 1% 35% 63% 1%  2000年 1% 28% 70% 1%  2010年 1% 22% 73% 4%  2020年 1% 20% 76% 3%  全国  2020年 3% 23% 70% 4% [主な産業の生産・はん売額(2020年)] (生産農業所得統計,経済センサス)  農業       659億円  工業  15兆8,352億円  商業(はん売額) 20兆9,689億円  (2)農業:神奈川県内でつくられる野菜やくだもの  神奈川県内でつくられた新せんで安全な農畜産物は,わたしたちの健康に役立っています。また,田や畑などの農地は,自然とのふれあいや,やすらぎの場になっています。  神奈川県の農地面積は,県全体の約7.4パーセント(2022年(令和4年))しかありませんが,かぎられた農地でいろいろな作物を工夫して育てています。しかし,人口が多く,必要としている量には足りないので,他の県や外国から食料を買っています。 [神奈川県で生産されている主な農産物] (2021年) (農林水産統計年報)  (全国の順位)  こまつな    5位  だいこん    5位  キウイフルーツ 4位  キャベツ    7位  パンジー    2位  ばら      6位  さといも    7位  ほうれんそう  8位 [県内でつくる食料の割合](2021年) (県環境農政局調) (食料,全ての県民が食べる量,県内でつくられている割合の順)  野菜   243万人分 26%  牛乳    73万人分  8%  たまご  100万人分 11%  くだもの  53万人分  6%  豚肉    44万人分  5%  米   25.4万人分  3%  (3)林業:森の役割  神奈川県の森林は,県の西部に多く,面積は県全体の約39パーセント(2023年(令和5年))となっています。  森林は緑のダムと呼ばれ,水源や自然かんきょうのほか,さまざまな生き物を守る大切な役割を果たしています。また、木材などの生産や,どしゃくずれなどの自然さい害をふせぐはたらきもあります。  一度人間の手の加わった森林は,間ばつなどの手入れをしないとあれてしまうので,県では自然かんきょうをこわさないような方法で,林道をつくり,手入れをする手伝いをしています。森林をあずかったり,県民のみなさんにボランティアとして参加してもらい森林の手入れを進めています。また,木を使うことで森林を守り育てようとしています。  林業で働く人は,1970年度(昭和45 年度)は692人いましたが,長期的には減少しています。また,60歳以上の割合が,2000年度(平成12年度)には約33 パーセントを占めていましたが,近年は若返りが進み,2021年度(令和3年度)は約19パーセントとなっています。 〇花粉の少ないスギ・ヒノキ  戦後,神奈川県をはじめ日本各地では,木材を生産するためにたくさんのスギ・ヒノキが植えられました。神奈川の森の,約4割がこういったスギ・ヒノキの林です。近年はスギやヒノキが大きく成長して,たくさんの花粉を飛ばすようになりました。  スギ・ヒノキから飛散する花粉は花粉症の原因にもなることから,近年では県内で生産されるスギ・ヒノキの苗木は,全て花粉の少ない品種になっています。  (4)水産業:ゆたかな海のめぐみ  神奈川県の海岸には多くの漁港があります。三浦半島の三崎漁港は,まぐろ漁船を中心とした遠洋漁業の基地として有名です。  東京湾では,たちうお,すずき,あなご,かれいなどがとれます。相模湾では,あじ,さば,いわしなどを定置網でとっています。岩や石の多い海岸では,あわびやさざえがとれます。このように地域ごとに特色のある漁業をしています。  「つくり・育てる漁業」にも力をそそいでいます。まだい,とらふぐ,あわびなどを卵から育てて相模湾や東京湾に放流しています。また,のりやわかめなどの養しょくも行われています。芦ノ湖では、わかさぎ,相模川などではあゆを放流しています。自然豊かな海や川でないと,おいしい魚は育ちません。  神奈川県の漁業生産量は約2.4万トン〔2021年(令和3年)〕で,漁業種類ごとの割合は, 沿岸漁業が約46%,沖合漁業が約2%,遠洋漁業が約49%,養しょくが約4%となっています。 沿岸漁業  沿岸漁業は,陸から近い海域で行われる漁業で, 基本的に日帰りで行われます。  定置網は神奈川県の沿岸漁業の生産量の7割を占める,重要な漁業です。一定の場所に長く網を張っておき,中に入った魚を漁獲するものです。 沖合漁業  1回の操業は,2,3日〜1週間くらいです。主に伊豆諸島や四国沖などを漁場としています。 遠洋漁業  1回の航海は数か月から1年以上になります。 [神奈川県の漁業データ(2021年)] (出典:「平成30年漁業センサス」,「海面漁業生産統計調査」,「内水面漁業生産統計調査」,「漁業産出額」,県水産課調べ) (項目、神奈川県総量、都道府県順位 の順) 漁業就業者数   1,848人  28位 漁船せき数    1,779せき 27位 漁業生産量※  23,748t  29位 ※海面漁業・養しょく業の生産量の合計  (5)工業:全国第4位の出荷額  神奈川県は,工業がたいへんさかんな県であり,出荷額(工場で生産された物のうち,送り出された物の金額)は,全国第4位です(2020年(令和2年))。  どんなものが出荷されているかを調べてみると,トラック,自動車などの輸送機が多くなっています。  特に,川崎市や横浜市の海岸のうめ立て地を中心とした京浜工業地帯は,石油コンビナートや自動車工場などがたちならんでいて,日本で工業のさかんなところの一つです。  [工業での出荷額の多い都道府県] (2020年) (工業統計調査)  愛知県  43兆9,879億円  神奈川県 16兆9,757億円  大阪府  16兆4,512億円  静岡県  15兆8,352億円  兵庫県  15兆2,498億円 [県内の主な製造品と出荷額]  (2020年) (経済センサス)  輸送機(トラック,自動車など)             3兆897億円  化学(化粧品,洗剤など)           1兆8,445億円  石油(ガソリン,灯油など)           1兆6,444億円  食料(菓子,パン,チーズなど)           1兆5,753億円  生産用機器(建設用機械など)             1兆860億円  情報機器(電話,テレビなど)             8,499億円  はん用機器(ボイラー,ポンプなど)             7,628億円  電気機器(発電機,変圧器など)             6,966億円    また,湘南地域や県央地域には,広いしき地にいろいろな工場が集まる工業団地があり,電気製品や自動車などが生産されています。これらの工場では,大型の機械を使って,生産が行われています。  また,最近は新しいぎじゅつの開発をめざす研究所が県内各地でふえています。  (6)商業:さまざまな生活にあった商業  神奈川県の商店の数は,6万1,012店〔2021年(令和3年)6月1日時点〕で,全国第4位ですが,はん売額で見るとおよそ22兆円〔2020年(令和2年)〕で,全国第4位となっています。 [全国の商店の数と年間はん売額] (2021年) (経済センサス―活動調査)  商店の数 (順位,都道府県,商店の数の順)  1位 東京都  14万1,055店  2位 大阪府       9万8店  3位 愛知県     7万359店  4位 神奈川県   6万1012店  5位 福岡県   5万4,567店  6位 埼玉県   5万1,720店  7位 北海道   5万1,407店  年間はん売額 (順位,都道府県,はん売額の順)  1位 東京都 180兆9,393億円  2位 大阪府  55兆5,303億円  3位 愛知県  40兆5,604億円  4位 神奈川県 22兆3,192億円  5位 福岡県  22兆0,983億円  6位 北海道  17兆7,327億円  7位 埼玉県  17兆2,479億円  最近は,さまざまな生活にあわせた店が多く見られるようになりました。  通りにそって,たくさんの店がならんでいる商店街では,お店の人と相談しながら,必要な量だけを買うことができます。  いつでも開いていて便利なコンビニエンスストアや,広いちゅう車場をもつ大きなスーパーマーケットでは,買い物だけではなく,チケット予約や宅配便の申しこみ,銀行ふりこみといったさまざまなサービスを取り入れています。  さまざまな種類の店が集まっているショッピングセンターには,買い物ができる場所のほかに,遊ぶ場所や,いろいろな飲食店が集まったフードコートなどもあります。  (7)貿易:原料を輸入して製品を輸出  日本の産業は,外国から原料などを買い,それを製品にして外国に売るという貿易のしかたによって発展してきました。  神奈川県には,横浜港,川崎港,横須賀港の3か所の貿易港があります。  特に,横浜港は,日本を代表する貿易港であり,約160年の歴史をもっています。毎年およそ9千せきの外国からの船が入港し,200以上の国や地域と貿易を行っています。横浜港の2022年(令和4年)の貿易額は,成田空港,東京港,名古屋港に次いで全国第4位です。  横浜港で取りあつかう輸出品(外国へ送り出すもの)のほとんどは工業製品です。中でも,自動車やその部品,工場などで使う産業機械が多く輸出されています。  また,輸入品(外国から運ばれてくるもの)で多いのは,原油や液化天然ガス,鉄鋼やアルミニウムといった原料と食料品です。  横浜港は,近くに京浜工業地帯があり,工場でできた製品を船で外国へ運ぶのにとても便利な場所にあります。  ふ頭には,近代的なコンテナターミナルがあり,機械によって多くの荷物が積みおろしされています。大きなコンテナ船には,およそ2万4千個のコンテナを乗せることができます。  また,石油などはタンカーという大きな船で運びます。  横浜港の輸出量が最も多い貿易の相手の国は中国で,化学工業品や産業機械の輸出が多くなっています。輸入量が最も多い貿易の相手国も中国で,電気機械や産業機械が多くなっています。 [横浜港の貿易相手国](2021年) (横浜市港湾局調) (国、輸出,輸入の順) 中国      426万トン   818万トン アメリカ合衆国 172万トン   425万トン サウジアラビア  46万トン   389万トン オーストラリア 217万トン   640万トン マレーシア    92万トン   122万トン 韓国      131万トン   102万トン ベトナム    109万トン     88万トン タイ      160万トン   206万トン メキシコ    116万トン   132万トン フィリピン   103万トン    61万トン その他   1,320万トン 1,513万トン  (8)観光:楽しさいっぱいの神奈川県  神奈川県には,変化の多い海岸や,箱根・丹沢の山々などの美しい自然,歴史的に有名な鎌倉,国際港や中華街のある横浜など,多くの観光地があり,国内ばかりでなく外国からも,たくさんの観光客がおとずれています。 [県内各地の観光客数](2022年) (入込観光客調査)  横浜・川崎エリア    5,743万人   三浦半島エリア     1,353万人   湘南エリア       4,106万人   相模湖・相模川エリア    707万人  丹沢大山エリア     1,184万人  足柄エリア         368万人  箱根エリア       2,947万人