表紙 だれもが利用しやすい宿泊施設を目指して 事例集 平成23年3月 神奈川県 目次 はじめに 1ページ 1.簡単にできるとり組み 2ページ 2.時期が来たらこんな設備に 9ページ 3.緊急じのための工夫 16ページ 4.段階的にバリアフリーを進めるためのアイデア 17ページ 5.障害を理解するために 18ページ おわりに 22ページ 協力していただいた宿泊施設一覧 22ページ 各項もくの始めにどなた向けの設備や工夫であるかをお知らせしています。 障害特性により以下に示す6つの名称で記載しています。 車いすなど肢体不自由者向け 知的障害者向け 視覚障害者向け 聴覚障害者向け 内部障害者向け 高齢者向け またガイドラインとは本冊子の理論編として作成されているものです。参照ページを掲載しています。(県、地域保健福祉課発行) 1ページ目 はじめに 県では、障害のあるかたも旅行や宿泊を楽しんでいただける環境づくりに取り組んでおり、県のホームページ上で、宿泊施設の皆様にご理解ご協力をお願いしています。 近年、バリアフリーなどの環境整備に取り組んでいる宿泊施設が増えてきましたが、施設の抜本的な改修工事によるバリアフリー化は費用と時間がかかり、気持ちはありつつも手をつけられない、という宿泊施設も多いのではないかと思います。 では、障害者の受け入れに実績がある宿泊施設では完璧な施設のバリアフリー化がされているのでしょうか? 本冊子では、大規模な改修工事によるハード面のバリアフリー化だけでなく、障害のあるかたに対するちょっとした工夫や配慮(ソフト面のバリアフリー)をしている宿泊施設のとり組みを皆様にご紹介させていただいており、これらのとり組みには、障害のあるかたが気持ちよく過ごせるためのアイデアが詰まっています。 皆様にとって、この事例集がヒントとなり、障害のあるかたを積極的に受け入れていただくことを考える良い機会としていただければ幸いです。 2ページ目 1 簡単にできるとり組み  道具や工夫で利用しやすく フロントにグッズ 知的障害者、聴覚障害者、高齢者向け ガイドライン2ページ、4ページ、16ページ 筆談きの写真 拡大ルーペの写真 コミュニケーションボードの写真 耳の聞こえない方には手話で対応しなくては!と思われるかもしれませんが、手話ができなくても筆談用具があれば、落ち着いて対応できます。外国のかたや知的障害のかたにはイラストを描いて説明すると分かりやすいです。 コミュニケーションボードを活用するのも便利です。高齢者には老眼きょうや拡大ルーペを用意しておくといいです。 障害者や高齢者のチェックインは、応接セットで書類などの記入をお願いすると無理なく落ち着いて書いていただけます。 コミュニケーションボードとは目的の絵をゆびさすことで話さなくても自分の意思を伝えられるものです。 約100種類のイラストから、必要なものを選ぶことのできるコミュニケーションカードとコミュニケーションボードは下記ホームページからダウンロードができます。 http://www.yokohamashakyo.jp/siencenter/safetynet/safetynet.html セイフティーネットプロジェクト横浜事務局: 社会福祉法人 横浜市社会福祉協議会障害者支援センター 3ページ目 わかりやすい館内表示 知的障害者、聴覚障害者、高齢者向け ガイドライン5ページ エレベーター、トイレを絵で示した案内板の写真 絵を用いた館内表示があると知的障害者や外国のかたにも分かりやすいです。 点字の館内表示 視覚障害者向け ガイドライン5ページ 手すりに点字表示がある写真 手すりや部屋の入口に点字表示があると視覚障害者にとって行動しやすいです。点字シールであれば点字機能のついたラベルライターで簡単に作れます。レストランのメニューや施設案内にも活用できそうです。 ラベルライター メーカー希望価格45150円 段差に配慮 肢体不自由者、視覚障害者、内部障害者、高齢者向け ガイドライン6ページ 小さな段差にスロープが置かれている写真 段差のある部分にはスロープ(市販ひん・手作り・注文ひん)を置くと、工事をしなくてもバリアフリーになります。手すりもあると便利です。 4ページ目 簡易ベッドを用意 肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン13ページ 和室に簡易ベッドが置かれている写真 和室でくつろぎたいけど、布団だと起き上がるのが大変!というかたには簡易ベッドを用意すると喜ばれます。 S字フックで高さを調整 肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン14ページ S字フック使用例の写真 既存のクローゼットにS字フックを付けると車いす利用のかたにも手が届きます。(S字フックは100円ショップで購入可能)扉が180度ちかく開くようにすると車いすが寄り付けます。 手すりの設置 肢体不自由者、視覚障害者、高齢者向け ガイドライン6ページ 両側に手すりが設置されている廊下の写真 右に麻痺がある人、左に麻痺がある人等、利き手は人によって違うので、できれば廊下の両側に手すりがあると利用しやすいです。(設置には、廊下幅にも影響がでますので、ご検討下さい) 5ページ目 食事の配慮 肢体不自由者、内部障害者、高齢者向け ガイドライン15ページ きざみしょくの写真 きざみ食、ミキサー食、アレルギー対応食、病後食等、要望により食事内容を工夫したり、食事場所やテーブルの高さ等を利用しやすいように変更するなど、臨機応変に対応していただくと喜ばれます。 ほじょけんセット 肢体不自由者、視覚障害者、聴覚障害者 ガイドライン14ページ ほじょけんセットの写真 ほじょけんが同行する場合は、客室内に以下の関連グッズをセットで用意してはどうでしょうか。 グランドシート(古ベッドマット) 古タオル、古新聞 洗面器2つ(水、エサ用) 消臭スプレー リードを延長するための紐 ほじょけんマーク ほじょけんマークの絵 このマークは身体障害者補助けんが、公共の施設や交通機関、一般的な施設(スーパー、デパート、ホテルなど)で同伴できることを知っていただくためのマークです。 ほじょけんとは身体障害者補助けん法で認められた盲導けん・介じょけん・聴導けんのことを言い、一般のペットとは異なります。 6ページ目 特集1 トイレの工夫いろいろ 肢体不自由者、内部障害者、高齢者向け ガイドライン9ページ、10ページ 立ち上がり補助フレームの写真 立ち上がり補助フレームは工事の必要がないものもあり、簡単に設置できます。 補助フレーム 参考価格10000から60000円 水まわり用車いすの写真 お風呂はもちろん、トイレでも使えるシャワーキャリーがあれば車いす利用のかたが既存の狭いトイレを使用できる場合もあります。 水まわり用車いす メーカー希望価格99750から119700円   トイレ改修例の写真 まずは小さな改修からしてみませんか?トイレの一番奥の個室の間仕切位置を換え、カーテンとランプを付けることで車いす用トイレとして使用できます。 しびん洗浄水栓使用じの写真 しびん洗浄水栓収納じの写真 現在使用している便き横にケアサポート水栓を取り付ければ、オストメイトのかたが洗浄に使うこともできます。 しびん洗浄水栓 メーカー希望価格76020円 7ページ目 特集2 お風呂の工夫いろいろ  肢体不自由者、視覚障害者、高齢者向け ガイドライン11ページ、12ページ   ユニットバスと入浴を助ける道具の写真 シャワーチェアーの写真 お風呂には、お客様のご要望に応じた貸出品を準備してあるというところも多くありました。 車いす利用のかたが使用される時は、シャワーを低い場所に配置しておきます。 これらは、大規模な工事をしなくても対応できる事例ですね。 挟みこみ式浴槽手すり 参考価格 9000から30000円 バスボード 参考価格 7000から30000円 浴槽内用滑り止めマット 参考価格  1800から6000円 洗い場用ソフトマット 参考価格 2000から18000円 シャワーチェアー  参考価格 3000から30000円 大浴場の手すりの写真 浴槽には段差がつきものです。浴槽への部分に手すりがあれば大浴場を利用できる人もいます。 8ページ目 特集3 その他の工夫いろいろ  肢体不自由者、視覚障害者、高齢者向け ガイドライン全般   お話を聞いた宿泊施設では、次のようないろいろなとり組み・工夫がされていました。 予約じに貸出品(車いす、シャワーチェアー、滑り止めマット、高座いす等)の情報提供をするとともに、食事制限等の要望に沿った対応をしています。 車いす用タクシーやリフトつき大型バスを紹介できるようにしています。 送迎用車両のステップが高めなので送迎バスに踏み台を用意しました。 館内入口近くに駐車スペースを確保しています。 車いす利用のお客様にはチェックイン書類をバインダーに挟んで膝に乗せながら手元で記入できるように工夫しています。 浴場、レストラン、エレベーターなどに近い移動の少ない部屋に案内しています。 1階で全てのことができるように整備しました。 段差のある部分は従業員で車いすを持ち上げています。 時間帯により大浴場を貸し切りとして対応することもあります。 着脱い等に時間がかかるかたもいるため、家族風呂などの貸し切り専用風呂の貸し切り時間を長めに設定することもできます。 ユニットバスや家族風呂の洗い場にスノコやマットを敷いて浴室入口の段差をなくす工夫をしています。(入口で車いすから移乗し、お尻でずって浴槽へ移動できる) 視覚に障害のあるかたのために、シャンプー、リンス、ボディソープの容器が同じ場合は輪ゴムをかけて、本数で区別できるようにしています。 希望により入浴介じょのヘルパーさんを派遣できるよう提携しています。 使用後のオムツ入れを用意しています。(高齢者や乳幼児向け) トイレやバスルームのドア幅が狭い場合は扉をカーテンへ取り替えたり、180度開きになるようなものとの交換をしました。(車いすに乗ったまま寄り付ける) 現在多機能トイレがない場合、納戸等のスペースを活用して多機能トイレに改修しました。 「ホテルや旅館は福祉施設とは違うし、障害のあるお客様も福祉施設を求めているわけではないでしょう。障害のあるかたと話して、できることにはしっかりと対応するのは、他のお客様と同じですよ」という声もありました。 9ページ目 2 時期が来たらこんな設備に 特集4 バリアフリールーム  肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン13ページ、14ページ 戸棚から引き倒して出すベッドの写真 収納式のベッド(介じょしゃ用)があると部屋が広く使えます。 電動ベッドの写真 電動ベッドがあると介じょがしやすくなり、起きあがりも楽になるので安心できる方もいます。 参考価格 20000から500000円   緊急ボタンの写真 室内やバスルームには瞬時にフロントと連絡が付くように、緊急ボタンを設置しておくと安心です。 10ページ目 車いすでも使いやすい洗面台の写真 洗面台の下にスペースがあれば車いすのフットレスト(足を置く部分)が入るので、奥の水道まで手が届きます。 洗面ボウルは浅めのものが使いやすいです。 隣の部屋と繋がる扉の写真 親子2世帯での利用や介じょしゃ同行の場合も多いので、鍵付きのドアでバリアフリールームと隣の部屋がつながるようにしておくと状況に合わせた使い方ができます。 他にもあるよ、こんなとり組み。 スイッチの位置は少し低めに、コンセントの位置は少し高めにしました。 部屋のドアには低い位置にも覗き穴を作りました。 施設内に2部屋以上バリアフリールームを作る時に、違う景色が見えるように部屋を配置して飽きられないように工夫しています。 11ページ目 特集5 お風呂 パート2  肢体不自由者、視覚障害者、高齢者向け ガイドライン11ページ、12ページ 浴室内の壁際にある連続した手すりの写真 段差を極力なくした出入りぐちの写真 ふちに座れる浴槽の写真 脱衣所、浴室間に段差を無くしたり、入口からの連続した手すりと浴槽に入るための手すりを設けるなどの工夫があります。 浴槽のふちを低くしたり、座ることができるように幅を持たせたものもありました。 障害のあるかたは、大浴場には入りにくく時間も掛かるので、1時間程度の貸切り利用ができれば、お風呂を楽しむことができます。 このような配慮が喜ばれているのですね。今すぐには無理でも将来的にはこんな風にしてみてはいかがでしょうか。 12ページ目 車いすのまま入浴 肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン11ページ、12ページ 車いすのままはいれる浴槽の写真 入浴用車いすの写真 入浴用車いすに乗り、スロープをくだり車いすのまま浴槽に入ることができるお風呂もあります。 本格的な福祉機器を使う  肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン11ページ、12ページ 入浴リフトの写真 中には、障害の重いかたのために、入浴リフトを設置しているところもあります。 入浴リフトがあれば、今まで入浴をあきらめていたかたも入浴できます。バリアフリールームや貸切り風呂に設置すると喜ばれるのではないでしょうか。 13ページ目 エレベーターを使いやすく 肢体不自由者、視覚障害者、聴覚障害者、高齢者向け ガイドライン7ページ 機能付きエレベーターの写真 車いす利用者は後ろ向きで降りる為、正面に鏡があると利用しやすいです。また低位置操作盤、点字表示、音声案内、椅子があると、いろいろなかたが利用しやすいです。 ドアの開放時間も一般よりも長めに設定しておくと落ち着いて利用していただけます。 段差を解消 肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン6ページ スロープ設置例の写真 昇降機の写真 入口付近の数段の階段には昇降機やスロープを設置すると車いすもベビーカーも動きやすいです。 14ページ目 みんなのトイレ 肢体不自由者、内部障害者、高齢者向け ガイドライン9ページ、10ページ かながわみんなのトイレのマークの絵 みんなのトイレの写真 みんなが使いやすいトイレの基準があります 主な整備内容 出入口の有効ふくいん80センチメートル以上 200センチメートル以上×200センチメートル以上の広さ 腰掛便座を配置 手すりの設置 水洗装置のレバー等は障害者等が使いやすい形状 洗面器・鏡の設置 簡単に操作できる水栓 フックや手荷物を置ける棚の設置 パウチ等の洗浄装置(温水の出るものが望ましい)が必ず必要 汚物流し 全身が写る鏡 等 ベビーベッド又は介護用ベッド、ベビーチェア みんなのトイレについては下記のホームページをご参照ください。 神奈川県 http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/15/1321/mati/07-torikumi.html#toilet 多目的トイレを2つ以上設置する場合はペーパーの位置など左右反転したタイプを作るといろいろなかたに使いやすいトイレになります。 15ページ目 光と振動でお知らせ 聴覚障害者向け ガイドライン13ページ、14ページ パトライトの写真 アラートマスターの写真 ベッドシェイカーの写真 ドアノック、目覚まし時計、電話、ファックスの着信音などを、ライトの点滅やシェイカーの振動に変換する器具で聴覚障害者に情報提供できます。 いくつかの機器を組み合わせて使用しますが、セットになっているものもあります。 ノックセンサー ドアの内側に取り付け、訪問者のドアノックを検知する振動センサー。 参考価格 12500から20000円 フラッシュライト、パトライト ノックセンサーが検知した情報などをライトの点滅や回転により伝える。 参考価格 5000から20000円 アラートマスター 各種センサー(電話着信、ノックセンサー、目覚まし時計など)と、発信機(フラッシュライト・パトライト、ベッドシェイカーなど)とを中継する機器。 参考価格 16000から50000円 腕時計型受信機 各種センサー(電話着信、ノックセンサーなど)からの情報を検知し文字と振動で知らせる機器。 参考価格 87400円 16ページ目 点字ブロック 視覚障害者向け ガイドライン3ページ 点字ブロックの写真 入口や館内などにある点字ブロックは視覚障害のあるかたが単独行動をするとき大きな助けとなります。 絨毯の毛の長さに注意 肢体不自由者、高齢者向け ガイドライン6ページ 毛足の短い絨毯の写真 改装や建て替えじには絨毯にもご配慮ください。毛足の長い絨毯では、車いすが動かしにくいのです。 3 緊急時のための工夫 ガイドライン16ページ 聴覚障害のかたと約束事を決めておく(メルアド交換、受話器が上がればスタッフが部屋へ駆けつける等)。 緊急時はマスターキーで部屋に入らせてもらう旨約束しておく。 障害者や高齢者を最優先で避難、誘導するよう従業員間の連絡を徹底する。 緊急ボタンをお渡しする。 AEDを設置する。 廊下に誘導灯を設置する。 障害者や高齢者を想定した避難訓練をする。 緊急時マニュアルを作成する。 17ページ 4 段階的にバリアフリーを進めるためのアイデア ガイドライン16ページ(利用者の声) 大掛かりな改修をしたのに、使いやすい設備とならなかった場合も。 まずはご要望いただいた中で、できることからはじめてみてはいかがでしょうか。 取材で伺った話では、利用された障害のあるかたからご意見を頂き、それをもとに少しずつ対応を進めたところ、いつのまにかバリアフリーが整っている施設といわれるようになったとのこと。 部屋も施設全体も障害者だけでなく健じょうしゃも利用するものなので、障害者にとって100%満足できる設備でなくていいのです。障害者にも健じょうしゃにもどちらにも少しだけ譲歩してもらうことが「誰にでも使いやすいイコール人にやさしい」ということなのかもしれません。 ステップ1 まずは、会議・打ち合わせなどで、できること、できないことを皆で考えてみましょう。また、社内研修のテーマとして障害や障害者への対応について考えてみましょう。 ステップ2 利用者のかた々の意見を聞いてみてはいかがでしょうか。障害のあるかたにモニターとして宿泊してもらうのも良いかもしれません。 ステップ3 簡単な工夫をするのであれば、本冊子を参考に、様々なとり組みをしていただければと思いますが、費用のかかる大規模な改修工事を進めるときには、障害当事者やバリアフリーアドバイザーなどの専門家の意見を聞きながら進めましょう。 ステップ4 ホームページなどにバリアフリー情報を載せるなど、集客力アップを目指して、アピールしてみましょう。内容が詳しくわかれば利用者は安心して利用できます。 そして、いつかは。 「人に優しい宿サイト」シルバースターへ登録しさらなる集客力アップ。 http://yadonet2.jp/ 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会 18ページ目 5 障害を理解するために 障害の特性と接し方 肢体不自由 肢体不自由のあるかたの中には立ったり座ったりする姿勢保持が困難なかた、書類の記入など細かい作業が困難なかた、自分の意思とは関係なく体が動く不随意運動を伴うかた、身体にマヒがあるかたなどがいます。 @先ず声を掛けて本人の意思を確認してから対応してください。 A車いすを使用しているかたは目線が低いので見上げなければならず、疲労感がありますので、身をかがめるなど出来るだけ目線を合わせて話をしてください。 B自分の意思を伝えにくいかたも、一生懸命伝えようとしていますので、くり返し良く聞いて理解してください。 青地に車いすが描いてある国際シンボルマークの絵 障害のある人々が利用できる建物や施設であることを明確に示す全世界共通のマークです。このマークはすべての障害者を対象にしたもので、特に車いすを利用する障害者を限定し使用されるものではありません。建築物にマークを設置する際は、国(バリアフリー新法)や自治体(まちづくり条例)などの設置きじゅんにもとづき使用することを推奨しています。マークの樹脂板やステッカーを購入し、設置することもできます。 財団法人 日本障害者リハビリテーション協会  視覚障害 視覚障害のあるかたの中には、全く見えない方と見えづらい方とがいます。また、特定の色が分かりにくい方もいます。移動については、白杖や盲導犬を使用するかたなどがいます。 @先ず声をかけて軽く肩を叩くなどしてください。突然腕を掴んだり荷物をもったりせずに、本人の意思を確認してから対応してください。 A行き先や物の場所を教える時には、「あそこ」「むこう」などや目線や指で方向を示されてもわかりませんので、前後左右と共に距離などを具体的に伝えてください。 19ページ目 聴覚障害 聴覚障害のあるかたの中には、全く聞こえない方と補聴器等を使用することで音が分かるかたとがいます。また、聴力の程度や失聴した時期により話せるかたはいますが、聞こえていない場合もあります。 @コミュニケーションの方法としては、手話、筆談(話の内容を紙等に書く)口話(ゆっくりはっきりした口形で話す)があります。分かりやすい身振りを加えたり、絵図等を使用するなどそのかたにあった方法で対応してください。 A補聴器をつけているかたもいますが、聞こえているとは限りません。出来るだけ静かな場所で顔を向き合って話してください。また複数いる場合は一人ずつ発言するなどの配慮をしてください。 B聞こえないことは外から見ても分からないので、緊急時や災害時での助けが遅れてしまいます。常に聞こえない人もいることを意識してください。 耳マークの絵 聞こえない人々の存在と立場を社会一般に認知してもらい、コミュニケーションの配慮などの理解を求めていくためのシンボルマークです。このマークを見たり表示された場合は【相手がきこえにくい】【聞こえない】ことを理解し【手招きして呼ぶ】【大きな声ではっきり話す】【筆談をする】などにご協力をお願いします。耳マーク表示板等を購入し掲示することもできます。 社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 知的障害 知的障害のあるかたの中には、日常生活に支障が生じ何らかの特別な支援を必要とするかたもいます。さらに、視力や聴力、言葉や運動機能などの障害を合わせ持つ場合もあります。 話の内容を理解できなかったり、困ったことが起きても自分の意見を言うのが苦手であったりと、コミュニケーションを上手にとれない場合があります。 @笑顔でゆっくり具体的に話しかけ、内容を理解しているか確認します。 A相手の言うことをよく聞き、言葉が出ない時は状況を推測し、こちらから「はい」「いいえ」で答えられるように質問し、確認します。 B言葉だけでなく絵や実物を見せるなどして目的に合った方法を教えてください。 20ページ目 オストメイトマークの絵 内部障害 内部障害とは内臓機能の障害であり、身体障害者福祉法では心臓、肝臓、呼吸器、腎臓、ぼうこう・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能の7種類の機能障害が定められています。 一見、健じょうしゃと区別がつきませんが、突然具合が悪くなる時があります。またオストメイト(人工肛門保有者、人工膀胱保有者)は一般のトイレでは排泄処理ができないため、みんなのトイレ(多機能トイレ)を利用します。排泄物の処理に時間が掛かることをご理解下さい。心臓ペースメーカーなどの機器を使用している内部障害者は、携帯電話などの電磁波により機器が誤作動する場合もありますので、マナーの周知も大切です。 視覚と聴覚の重複障害(盲ろう) 視覚と聴覚の両方に障害のあるかたの中には、全盲ろう(全く見えなくて、全く聞こえない)、全盲難聴(全く見えなくて、少し聞こえる)、弱視ろう(少し見えて、全く聞こえない)、弱視難聴(少し見えて、少し聞こえる)のかたがいます。 前述の視覚及び聴覚障害の特徴が重複していますが、障害の程度とその組み合わせによりコミュニケーションの方法は様々です。一般に大きく分けて、@触手話・接近手話A点字B手のひら書きC音声D筆談E指文字Fその他に分類されます。盲ろうのかたは、これらの中から一つ、あるいは複数の方法を組み合わせて会話をしています。 加齢に伴うこと 高齢者は、加齢に伴い身体的な低下が起こり、行動が遅くなり、疲れやすくなったり、段差を超えることが困難になったり、転倒しやすくなったりします。また、環境の変化への適応も困難になることもあります。高齢者への配慮としては、基本的には、肢体不自由なかたや聴覚障害のかた、視覚障害のかたへの対応と同じですが、それらを総合的に組み合わせた対応が必要です。 21ページ目 経験を踏まえてマニュアルを作ってみましょう 某旅館のマニュアルより 車いすをご利用のお客様への対応のポイント @車いすを押しているかたがいても、意向は本人に伺うようにする。 A目線は高いところから見下ろさないように、ひざを曲げるなどする。 B車いすを押しているときには、頭の上からではなく、顔の横から話しかける。 C電動車いすはご自身で操作されるので、ななめ前数歩の位置で誘導する。 Dフットレストへご自分で足を乗せられるか見てからお手伝いをする。                    目のご不自由なお客様への対応のポイント @挨拶に続けて自己紹介をする。「いらっしゃいませ。私はフロントの○○○と申します、何かお手伝いできることはございますか」 A明るい声で対応する。 B見えているものをことばに置き換えて情報を伝える。 C離れる時はひと声掛けてから離れる。 D金銭の授受は種類ごとに言葉に出して確認する。 耳のご不自由なお客様への対応のポイント @聞こえない方がいることを理解する。 A後ろからの声がけに反応が無い場合、お客様の前方にまわり、あらためて声をかける。また、他の方法を試したりしながら理解していただく。 B筆記用具さえ持ち歩いていればいつでも筆談できる。 高齢のお客様への対応のポイント @尊敬の念を持ち、なるべくお名前でお呼びする。 Aゆっくり、はっきり話す。 B聞き役になる場面をつくる。 C外来語やカタカナ言葉に注意し、お客様の言われた言葉を言い換えない。 D会計は慌てなくてよいように配慮する。 Eトイレ案内は急いで対応する。 F忘れ物をしやすいので、荷物はまとめておく、確認のお声掛けをする。 22ページ目 おわりに 障害者が宿を決めるのは大変なことです。廊下に手すりがあるのか、ベッドがあるのか、車いすのままエレベーターに乗れるのか、お風呂にはいれるのか、制限食に対応してもらえるのか、たくさんの条件をクリアした宿を選ばなければなりません。本当に利用できるのか、また受け入れてもらえるのか。自分の好みや行きたい場所、予算で旅を決めるという普通のことが難しいのが現状です。この普通の希望を叶えて欲しいだけなのです。この冊子がバリア解消のきっかけ、ヒントとしてお役に立てればうれしく思います。障害者がリラックスして、宿泊できることは、どれ程うれしく幸せなことでしょう。今回の調査にあたり、たくさんの宿泊施設にアンケートや取材の協力をして頂きました。この紙面を借り、心からお礼を申し上げます。 本冊子は、障害者や高齢者のかたなど誰でもが県内どこでも行楽したい場所で宿泊できるような環境づくりの一助とするために作成したものです。本冊子と同様の趣旨で「だれもが利用しやすい宿泊施設を目指して〜ガイドライン〜」が作成されており、2つの冊子は理論編と実践編として相互に補完しています。2つの冊子を一緒にご覧いただくことによって、より具体的な知識とアイデアをご参考にしていただけることと思いますので、本冊子と一緒に「だれもが利用しやすい宿泊施設を目指して〜ガイドライン〜」もぜひ、ご活用いただければ幸いです。 ご協力いただいた宿泊施設 (順不同) 京成ホテルミラマーレ ウィリング横浜 花いっぱい温泉 熱川ハイツ 熱川プリンスホテル 横浜あゆみ荘 伊豆長岡天坊 箱根千代田荘 箱根湯本ホテル明日香 うら表紙 だれもが利用しやすい宿泊施設を目指して 事例集 平成23年3月 編集 財団法人神奈川県身体障害者連合会 郵便番号 221-0844 横浜市神奈川区沢渡4番地の2 電話 045-311-8736 ファックス 045-316-6860 ホームページ http://www32.ocn.ne.jp/~kanagawa_sinsho/ 発行 神奈川県保健福祉局福祉・次世代育成部障害福祉課