表紙 だれもが利用しやすい宿泊施設を目指して ガイドライン 平成23年3月 目次 はじめに 1ページ 1.予約への対応 2ページ 2.施設へのアクセス 3ページ 3.玄関までのアプローチ 3ページ 4.玄関・ロビーでの対応 4ページ 5.受付・フロントでの対応 4ページ 6.館内の案内表示 5ページ 7.館内移動への対応 6ページ 8.館内施設サービスの対応 7ページ 9.トイレでの対応 9ページ 10.浴場での対応 11ページ 11.客室での対応 13ページ 12.食事への対応 15ページ 13.チェックアウト 16ページ 14.緊急時の対応 16ページ 用語解説 17ページ おわりに 19ページ 凡例 ニジュウマル やってほしいハード面の工夫 マルジルシ できたらここまでやってほしいハード面の工夫 ホシジルシ お願いしたいソフト面での対応 注 17、18ページの用語解説で解説しています。 1ページ目 はじめに 旅行は誰にとっても楽しく過ごしたいものです。しかし、障害者や高齢者(以下、当事者 という)の中には、宿泊施設の利用に使いづらさを感じ、利用をひかえてしまったり、旅 行をあきらめざるを得ないこともしばしばです。また一方では、宿泊施設側もどのように 配慮したらよいか、どう対応したらよいのか戸惑われているとの声もよく耳にします。 そのような現状のなかで、特定非営利活動法人神奈川県障害者自立生活支援センター では、神奈川県より委託を受け、ホテルや旅館などの宿泊施設向けガイドラインを作成し ました。 このガイドラインを作成するまでの経緯として、まず「当事者支援推進事業検討委員会」 (構成員は巻末資料参照)を設置してガイドライン作成に向けた検討を重ねました。 次に、当事者(主に障害者を対象)が宿泊施設の利用にあたって良かった工夫や配慮 など、またどのような点に不便や困難さを感じたかについてアンケート調査をしました。 そして、横浜・箱根地区のホテル及び旅館にご協力をいただき、他の宿泊施設に紹介した いような当事者への対応、工夫している点などを担当者の方々にヒヤリング調査させてい ただきました。 アンケートやヒヤリングからは、改めて様々な気づきがありました。アンケートでは、場 所や物の位置がわかりにくい、物が高いところにあって取りにくいなど、思わぬところに 不便を感じていることがわかりました。逆に、仲居さんが話をよく聞いてくれた、丁寧に 対応をしてくれたなど、おもてなしにチョットした工夫をされているところなどには好意 的な印象がありました。 ヒヤリングでは、それぞれがさまざまな工夫に取り組まれていて、その中にはあまり経費 をかけず、手作りで工夫をしているところもありました。逆に、費用はかかっているのに 使いにくいと思われる設備もあるようでした。大きな改善・改修の場合には、地元の当事 者に事前のチェックをしてもらえるとよいのではないでしょうか。 このガイドラインは、当事者には社会参加支援をひとつの目的として、気兼ねなく県内の 宿泊施設を利用できること、そして、ホテル・旅館の方々には、宿泊施設の使い勝手の実 状を知っていただき、今後の工夫のヒントにしていただけたらと思います。 このガイドラインが、当事者にも宿泊施設の皆様にもご活用いただき、役立つことを願っ てやみません。 なおガイドラインを作成するにあたり、アンケートにご協力いただいた障害者団体の皆様 そして訪問調査に快く応じていただいた箱根温泉旅館協同組合の皆様、横浜のホテルの皆 さまに改めて感謝申し上げます。 平成23年3月 当事者支援推進事業検討委員会 2ページ目 1.予約への対応 1の1 的確な情報の提供 利用者ニーズの把握と提供サービスの説明 予約での対応では、利用者の希望や条件を的確に把握し、同時に宿で提供可能なサービス 内容を詳しく説明します。 ホシジルシ 旅行の目的、障害の内容と介助者の有無の確認、部屋の使用方法、食事の制 限や浴室利用の希望を聞き、さらに障害に応じた備品の案内などを説明しましょう。 また、宿までの移動(交通)手段についても確認しておきましょう。 ホシジルシ 利用者は、これらの説明内容をもとに希望に合う宿泊施設かどうかを判断し ます。そのためできること、できないことを明確に答え、できないことについては代案を 出すなどの情報提供を行いましょう。 この場合、予約の時点で曖昧にせず、不明な点についてははっきり確認しておくことが重 要です。お客様が到着してからでは遅く、クレームにつながってしまいます。 確認のためのマニュアルの作成 マルジルシ これらを確認するためのマニュアルを作成しておくとよいでしょう。 迎い入れのための心がけ ホシジルシ こうした対応は特別な扱いとせず、快く迎い入れるための心がけとして従業 員全員が共有しましょう。 1の2 障害の状況による対応や要望の確認 障害の状況により必要とされる対応や要望を把握しておきましょう。 車いす障害者の場合 ホシジルシ 車いすの種類(手動車いす、電動車いす、介護用車いす)、大きさ(特に横 幅)、また、車いすを利用していても歩行が多少できるか確認しておきましょう。 言語障害がある場合 ホシジルシ 脳梗塞や脳出血などにより話が上手にできず聞き取りにくいときでも、内容 が判るまで繰り返して確認しましょう。 聴覚障害者の場合 ニジュウマル 電話以外の連絡方法としてファックスやメールなど多様な連絡手段を用意 しておきましょう。 3ページ目 2.施設へのアクセス 2の1 アクセスのための情報提供 安全で安心な移動とアクセスの保障 ニジュウマル 最寄り駅からの道順や送迎の要不要、宿までのルートを分かりやすく知ら せましょう。 なお、駅のバリアフリー整備(エレベーター、スロープ 注1、多目的トイレ 注2  等)について把握しておきましょう。また、同様に路線バスで車いすが乗れる車両がある かも調べておくと安心です。 ニジュウマル 徒歩での来館の場合、歩行環境(距離、坂などの地形条件、危険・注意箇 所)やバリアフリーとなっている安全な道順を知らせましょう。なお車での来館に対して は、専用駐車場(車いす用駐車スペース)の場所を正確に知らせましょう。 マルジルシ 専用駐車場はできるだけ玄関の近くに確保し、雨天の際でも濡れないよう屋 根付きとすると安心です。 3.玄関までのアプローチ 3の1 移動の安全性の確保 歩行者用通路への配慮 ニジュウマル 玄関までの距離が長すぎず、また途中に段差や傾斜、勾配などが無いよう 平坦な通路の確保に努めましょう。また路面の床材は、濡れて滑りやすい材料は使用しな いよう注意しましょう。 なお段差があるときは、手すり付きのスロープが近くにあると安心です。 ニジュウマル 肢体不自由者や高齢者が安心して移動できるようアプローチのバリアフ リー(アプローチの路面の平坦化、手すりの設置など)を進めましょう。 マルジルシ 歩く距離が長い場合は、途中に休憩場所を設けておくと便利です。 マルジルシ 視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)や音声誘導装置を設置し、入口 までの経路案内の安全性を高めましょう。 4ページ目 4.玄関・ロビーでの対応 4の1 的確な対応と誘導 案内や誘導への配慮 施設の入り口は遠くからでもわかるようなデザインとします。 ホシジルシ 入口やフロントの位置を迷わないよう到着次第早々に案内を始めましょう。 ホシジルシ 視覚障害者が迷いや不安を持たないよう声をかけながら誘導しましょう。 また車いすの介助方法をあらかじめ知っておくと利用者も安心です。 5.受付・フロントでの対応 5の1 施設利用に当たっての希望・要望の確認 利用者ニーズの把握と提供サービスの確認 常に快く対応する心構えを持ちましょう。 ホシジルシ 予約内容を再確認し、宿で提供できるサービスや部屋の使用方法、バリアフ リー備品などを説明し、利用者のニーズ(希望や要望)を具体的に確認しましょう。 ホシジルシ 障害の状況に応じ、館内で必要な介助内容について確認しましょう。この場 合、できるだけ移動が少なくてすむ部屋を用意しましょう。 ホシジルシ 災害時の対応として、非常口の経路、連絡方法、誘導体制について必ず説明 しておきましょう。 マルジルシ ホシジルシ チェックインの手続きの際、車いす利用者の目線に合わせた対 応やカウンターの高さに配慮があると安心です。 ホシジルシ 聴覚障害者のため筆談での説明(筆談ボード等 注3 の準備)や手話ので きる職員がいると安心です。 ホシジルシ サービス介助士、サービス・ケア・アテンダント等 注4 取得のための従 業員研修を取り入れ専門性のある接客対応を進めましょう。 5ページ目 6.館内の案内表示 6の1 案内板の設置とデザイン 遠方からも見やすい表示 トイレやエレベーターの場所などの表示には、くずし文字などの表示だけではわかりにく いことがあります。 ニジュウマル ピクトグラム(絵文字)も表示すると、海外からのお客様にもわかりやす いです。 ピクトグラムの標準例は、交通エコロジー・モビリティ財団のURLから検索できます。 ニジュウマル 知的障害者が、トイレの表示が「トイレット」(英語表記)だったのでわ からなかったという例がありました。英語表記には、ひらがなかカタカナも併記するとわ かりやすいです。 マルジルシ 遠方からも見えるよう、見やすい所に大きく表示されていると、分かりやす いです。 ホシジルシ はじめて来館されたお客様を想定して、一度案内板のチェックをしてみては どうでしょうか。 視覚障害者への配慮 ニジュウマル 弱視者、色覚障害者のため、サイン・文字は大きいものとし、色のコント ラストにも注意してください。黒地に白文字は見やすいと言われています。色覚障害者の 場合、「赤と緑とグレー」、「オレンジと黄緑」は区別することが困難な場合がありま す。 逆に「緑と青緑」は見分けることができる場合があります。 ニジュウマル 最低限度の点字ブロックがあるとよいでしょう。 ホシジルシ 視覚障害者が宿泊施設を利用する際に困ることの一つに、非常口や自分の部 屋などの場所がわからないということがあります。フロントでの手続きの際、館内のご案 内が必要かを尋ね、必要な場合にはご案内ください。誘導する場合には、誘導する人の肩 やひじに障害者が軽く手を添えて、一緒に歩くのが一般的です。どちら側に立つのが良い かを聞き、障害者のペースに合わせて歩いてください。 6ページ目 7.館内移動への対応 7の1 廊下の移動のしやすさ 連続した手すりの設置 ニジュウマル 手すりはできるだけ連続して設置してください。やむを得ず連続して設置 できない場合は、手すりの端と端の間の距離は40センチ以下になるようにしてください。 手すりを設置した場合、その分廊下が狭くなりますので、車いす利用を考慮した廊下の幅 が必要になります。取り付ける高さの標準は75から85センチ程度です。 平坦な通路・廊下 杖歩行などの肢体不自由者・車いす利用者、高齢者などにとって段差がない通路や廊下は 移動しやすく、喜ばれます。 ニジュウマル 館内に階段や数段の段差がある場合、スロープを設置すると移動しやすく なります。 マルジルシ 毛足の長いじゅうたんは車いす利用者の移動を困難にします。 車いすが通る場所の床材は通りやすいものにするなどの工夫が望まれます。 ホシジルシ スロープが設置できない場所や急なスロープには、ちょっと手をかしていた だけるとスムースな移動ができます。 7の2 庭園などの移動のしやすさ 庭園の玉砂利や太鼓橋などは杖歩行者・車いす利用者、高齢者などには通りにくいです。 ニジュウマル 車いすが通る部分は通りやすい道にすると、風景や風情を楽しむことがで き、喜ばれます。太鼓橋では一番高い部分で車いすの向きが変えられるように水平にな っていると上り下りがしやすくなります。 7の3 休憩場所の確保 一定間隔での休憩場所の設置 ニジュウマル エレベーターの近くにスペースがあったら、ベンチやいすを置いておくと ちょっと一息つけて喜ばれます。長い廊下の移動も疲れてしまうので、スペースを見つけ て、休憩場所をつくるといいです。 マルジルシ エレベーター内のスペースに余裕がある場合、いすを置くと、一休みできて 喜ばれます。 7ページ目 8.館内施設サービスの対応 8の1 エレベーター 設置場所の明示 ニジュウマル エレベーターがみつからずに探し回ってしまうことがないように、わかり やすく表示してください。 マルジルシ わかりやすい場所に配置されるのが望ましいです。 車いすの乗降にスムースな大きさ エレベーターは車いす利用者にとって一番便利な上下移動の手段ですので、車いすが入れ る大きさを考慮していることが望まれます。 ニジュウマル 間口は80センチ以上確保してください。90センチ以上だと望ましいです。 ニジュウマル エレベーターのドアの開閉時間が短いと乗り降りに不便を感じます。長め の設定をお願いします。 マルジルシ エレベーターの中の奥行きは135センチ以上、幅は140センチ以上が基準です が、幅は160センチ以上が望ましい水準です。 高さに配慮した操作ボタン マルジルシ 車いす利用者にとって、操作盤は低い位置にあると使いやすいです。またエ レベーターの中、正面に鏡があると、後ろを確認するのに便利です。 視覚障害者への配慮 ニジュウマル 音声案内や操作盤の階数表示の浮き出し文字または点字表記が必要です。 弱視の方のために色のコントラストにも配慮してください。 聴覚障害者への配慮 マルジルシ 通常の緊急時の呼び出しボタンではコミュニケーションがとれません。緊急 時、聴覚障害者が乗っていることがわかるボタンにより、従業員が駆けつけられるような 工夫が望まれます。 8ページ目 8の2 階段 案内表示 ニジュウマル 階段の案内表示の他に、各階数の表示が行われると望ましいです。 手すりの設置と転倒防止の設備 ニジュウマル 床面は濡れても滑りにくいものとしてください。段鼻(だんばな)が飛び 出していると危険です。 高齢者や視覚障害者にわかりやすいように周りと踏面(ふみづら)の端の色使いに配慮し てください。 マルジルシ 手すりは階段の両側に、床から手すりの上端まで75から85センチの高さのと ころに、連続して設置するのが望ましいです。回り階段は避けてください。 ホシジルシ 手すりに点字による各階の案内表示があるとよいでしょう。 安全でゆとりのある踏面(ふみづら)とけあげ マルジルシ 踏面は30センチ以上、けあげは16センチ程度が安心です。同じ階段の中で踏 面(ふみづら)やけあげの寸法がバラバラだと危険です。 8の3 売店 通路の配慮とわかりやすい表示 ホシジルシ 車いす利用者が通りやすい商品陳列などの配慮をお願いします。 ホシジルシ わかりやすい表示に配慮するとともに、お客様がなにか探しているような様 子を見かけたらお声をかけ、必要な場合には誘導をお願いします。 手が届きやすい高さの陳列 マルジルシ 自動販売機のお金を入れるところや取りだし口の高さに配慮してください。 ホシジルシ 点字が読める視覚障害者には商品の点字表示があると便利です。 ホシジルシ 車いす利用者には高いところのものは取れません。杖歩行者などはかがんで 下にある物をとることが難しいです。陳列の工夫をお願いします。 ホシジルシ 商品が取りにくいところにある場合や両手を使いづらい方の場合には、従業 員からお声をかけてもらい、手伝いがあると助かります。 9ページ目 9.トイレでの対応 9の1 客室トイレ・共用トイレ 共通のことについて 便器の形態、手すりの設置、温水洗浄機、ボタンの統一 ニジュウマル 便座は40から45センチが座りやすい高さです。 ニジュウマル 手すりは便座の両脇につけておくのが望ましいです。 ニジュウマル 便器洗浄のフラッシュボタンは、手の届きやすい場所で、2か所以上の取 り付けが望ましいです。 ニジュウマル 温水洗浄機は、前向きに座る方の足が操作盤にあたらないように取り付け てください。 ニジュウマル 救急呼び出しボタンをわかりやすい場所、押しやすい位置に設置し、統一 しておくと安心です。 ホシジルシ ボタンには点字がついているとわかりやすい方もいます。 9の2 共用トイレについて 便器の配置、手すりの配置 ニジュウマル 小便器に手すりがあることで、使いやすくなる方もいます。 ニジュウマル 手すりは便座の両脇につけ、少なくとも片方は可動式とします。 9の3 多目的トイレの設置 マルジルシ 共用トイレには多目的トイレの設置が望まれます。出入り口の幅は、80セン チが基準ですが、90センチが望ましいです。 わかりやすく、個室内を移動しやすい構造 ニジュウマル ドアは引き戸が望ましく、ストッパーがかかると出入りしやすくなります。 マルジルシ 内部の広さは車いすの回転を考慮し、また各種設備の取り付けのためにも 200センチかける200センチは必要です。 ホシジルシ 視覚障害者にとっては広い多目的トイレが使いにくいことが多いです。お客 様の希望を確認してご案内してください。 洗面器下の高さ等への配慮 マルジルシ 洗面器下に車いすが入るようなスペースを確保してください。 マルジルシ 荷物を置く棚や傘などをかけるフックがあると便利です。設置の高さにも配 慮してください。 10ページ目 オストメイト対応の設備、ベビーシート等の設置 ニジュウマル 人工肛門や人工膀胱を持つオストメイト 注5 のため、洗浄用汚物流し の設置さが望まれます。 マルジルシ パブリックシート(介助シート)やベビーシートの設置があると便利です。 トイレの詳細については、JIS高齢者・障害者配慮設計指針S0026「公共トイレにおける 便房内操作部・機器形状・色及び配置」を参照してください。 JIS S0026とは、「鉄道駅、公園、集会場、病院、百貨店、事務所などに設置される不特 定多数の人が利用する公共トイレ(一般便房及び多機能便房)の腰掛便器の横壁面に、便 器洗浄ボタン及び呼出しボタンの両方又はいずれか一つを設置する場合の操作部(便器洗 浄ボタン及び呼出しボタン)の形状・色並びに操作部及び紙巻器の配置」について規定。 JIS規格は、財団法人日本規格協会で購入できます。 11ページ目 10.浴場での対応 10の1 共用風呂・客室内風呂 共通のことについて ニジュウマル 共用風呂、客室内風呂ともに、救急呼び出しボタンをわかりやすい場所、 倒れた時にも押しやすい位置に設置しておくと安心です。 ニジュウマル 手すりの設置や浴槽内の段差を緩やかにすると高齢者や子どもも入りやす くなります。 ニジュウマル 浴槽内が深い場合、「浴槽台」 注6 を置くと、入りやすくなります。 ニジュウマル 小さい浴槽では「バスボード」 注7 を置いてあると浴槽の出入りが楽 になる方もいます。 マルジルシ 「介助用リフト」の設置があると、入れる方が増えます。 10の2 共用風呂(大浴場・貸切風呂・露天風呂) 脱衣室の使いやすさ、表示の見やすさ ニジュウマル 入口に段差がある場合、スロープの設置があると出入りしやすくなりま す。 ニジュウマル ベンチやいすがあると、着替えや腰かけて休むのに便利です。 マルジルシ 脱衣ロッカーやかごは高いところや低いところだけだと、使いにくい方が います。高さに配慮してください。ロッカーの扉は自然に閉まらないものが使いやすいで す。 ホシジルシ 床に腰掛けて着替える方のために予備の大判のバスタオルなどがあるとよい でしょう。 ホシジルシ 男女別や利用時間などわかりやすい表示が必要です。 転倒防止のための手すりの設置や滑り止めの配慮 ニジュウマル 脱衣室から洗い場の水洗器具まで、洗い場から浴槽まで、浴槽内にも手す りがあると転倒防止に役立ちます。 ニジュウマル 洗い場の床は滑りにくい材料で仕上げてください。 12ページ目 ニジュウマル 露天ぶろは特にすべりやすく、足場の悪いところが多いので、手すりやつ かまるところがあると移動しやすいです。できれば足場の悪くない通路もつくるとよいで しょう。 ホシジルシ 弱視の方や高齢者には湯気で浴室内が見えなくなる危険があります。照明に 配慮してください。 多目的トイレの設置 マルジルシ 脱衣場には多目的トイレが設置されていると便利です。 トイレの中着替えができるベッドやオムツを捨てる所があると役立ちます。 洗い場の使いやすさ ニジュウマル 高齢者や障害者には風呂いすの座面が高い方が使いやすいようです。 ニジュウマル 「シャワーベンチ」、「シャワーチェア」、「シャワーキャリー」注8  の用意があると、より多くの方が入浴できます。 ニジュウマル シャワーフックが複数の高さにあると使いやすいです。 ホシジルシ 視覚障害者のため、シャンプー・リンス・ボディソープの容器が同じ大き さ・形の場合には輪ゴムをかけ、本数で区別できるようにすると良いでしょう。 10の3客室内風呂 段差の解消、間口の幅 マルジルシ 段差の解消や間口が80センチ以上あることで使える方が多くなります。 転倒防止のための手すりの設置や使いやすさ ニジュウマル L字型手すりがあると縦横どちらにもつかむことができます。 ホシジルシ バスボード、シャワーチェア、シャワーベンチ、スポンジ製バスマットなど は宿泊施設でいくつか用意をし、貸出しできるようにすると使いやすくなるでしょう。 シャワーやタオルの位置、シャンプーなどの配慮 ホシジルシ シャワーノズル・シャワーヘッド、バスタオルが高い所にあると届かない方 もいます。低い所で操作・利用できるよう、事前に準備しておくとよいでしょう。 ホシジルシ シャンプー容器などが壁の高い位置に固定設置されていると届かない方もい ます。低い所に設置するか、代替の容器を提供するなどの配慮をお願いします。 13ページ目 11.客室での対応 11の1 バリアフリーの工夫 客室ドアの工夫と十分な幅 ニジュウマル ドアの部屋番号表示は浮き出し文字にすると視覚障害者にわかりやすく、 便利です。鍵にも同様の工夫があると良いでしょう。 マルジルシ ドアの間口の幅は80センチ以上が基準ですが、90センチ以上が望ましい です。 ドアノブは上肢の不自由な方にはレバー式が便利です。ドアはストッパーがかかるように なっていると出入りしやすいです。ドアスコープは低い位置にもあると車いす利用者や子 どもにも利用できます。 段差のない床の仕上げ ニジュウマル 和室の場合、入口の段差にスロープを準備するといいでしょう。 マルジルシ 客室への入り口やトイレ・風呂との間のドアに段差がないと使いやすくなり ます。 ホシジルシ 車いす利用のまま和室を使う場合、床にシート(マット)を敷くこともでき るでしょう。 わかりやすく使いやすく見やすい備品の表示と配置 ニジュウマル 和室の場合、補助ベッドを用意しておくなどの工夫が望まれます。 マルジルシ エアコンや照明などの操作がベッドサイドでできるようにすると便利です。 マルジルシ ベッドの高さが45センチくらいだと車いす利用者は移乗しやすいです。高さ の調整ができるとよりいいでしょう。起き上がりを補助するギャッジベッド 注9 も便 利です。人によってはベッド柵があると安心して利用できます。 マルジルシ ツインの部屋のベッドの間隔ができれば90センチだと車いす利用者に使い やすいです。 14ページ目 マルジルシ 空調の調整が高い場所にあると車いす利用者には届きません。またコンセン トなどが低い所についていると使いにくいです。使いやすい高さ、わかりやすい場所の配 慮をお願いします。 マルジルシ 冷蔵庫(ミニバー)が低いと杖歩行者などには取り出しにくいことがありま す。 マルジルシ 非常ボタンを押すと従業員が駆け付けられる体制があると、聴覚障害者にも 安心です。 ホシジルシ 視覚障害者が初めて利用する場合、到着時に客室内の説明をすると良いでし ょう。鍵の使い方、電話のかけ方、テレビやエアコン、セーフティボックスの操作方法、 洗面・風呂でのお湯と水の区別やトイレ・風呂の利用の仕方、物の配置など。 実際に手に触れていただき確認しましょう。 ホシジルシ 車いす利用者には、クローゼットのハンガーの位置が高くて使えないことが あります。ハンガーをかけるバーにS字フックをつけるだけで使いやすくなります。 ホシジルシ 和室にもいすが置いてあると、便利です。 ホシジルシ 和洋室のある客室では、お茶のセットが和室に用意してあることが多いです が、車いす利用者には使えないことが多いので、洋室に置く配慮をお願いします。 聴覚障害者への配慮 ニジュウマル 客やスタッフが来たことがわかるよう、ノックセンサー・フラッシュライ ト 注10 があると便利です。テレビの文字放送、振動式目覚まし時計、振動式枕も便利 です。 ニジュウマル 部屋にファックス付き電話があると便利です。宿泊施設でいくつか用意し ておくとよいでしょう。 補助犬について 注11 ホシジルシ 補助犬を利用している方には、犬用のシートやタオル、餌皿などを用意して おくとよいでしょう。トイレスペースも考えておくと役立ちます。 ホシジルシ 補助犬への対応について従業員の研修をしておくとよいでしょう。また、他 のお客様への説明も考えておくとよいと思います。 15ページ目 12.食事への対応 12の1 食堂、宴会場の形態 食事の場所の選択 ホシジルシ 食事は部屋食(部屋出し)か食堂や宴会場で摂るかが選べると喜ばれます。 ホシジルシ 部屋食の場合、机やいすの高さにも配慮をお願いします。 段差のないスムースな移動性 ニジュウマル 入口に段差がある場合、スロープの設置が必要です。 車いす利用者のための食事テーブルの設置(高さの調整) ニジュウマル テーブルやいすは動かせるものにします。 ニジュウマル テーブルの下部が60センチから70センチあると車いす利用者に使いやすい です。 12の2 料理の内容 視覚障害者やアレルギー疾患など配慮が必要な方への対応 ホシジルシ アレルギー、糖尿病、生活習慣病などに応じた食事の配慮をお願いします。 予約時に確認できるとよいでしょう。 ホシジルシ きざみ食、とろみ食などの希望にも応じられると喜ばれます。 ホシジルシ 視覚障害者へは、料理の配置を時計の文字盤に見立てて説明するとわかりや すいようです。(クロックポジション) ホシジルシ バイキング形式(ビュッフェスタイル)の食事では、視覚障害者や車いす利 用者、まひのある方など、料理が取りにくくて困る方が多いです。お手伝いの必要性を確 認して、積極的にお手伝いをお願いします。 ホシジルシ 箸を使いにくいお客様もいます。スプーンやフォークを用意しておいてくだ さい。 ホシジルシ 聴覚障害者には写真付きのメニューがあると、細かく料理の内容を聞かなく てメニューを選ぶことができ、便利です。また、出された調味料が何にかけるものなのか などを紙に書いて渡してもらえるとスムースで喜ばれます。 16ページ目 13.チェックアウト 13の1 料金の支払い 余裕のある清算 ホシジルシ 移動や会話が不自由なお客様は、清算に時間を要することがあります。電話 やファックスであらかじめ料金をお伝えしておくこともできるでしょう。余裕を持った対 応をお願いします。 ホシジルシ 視覚障害者には紙に記載の請求明細の内容がわからないので、必要な場合に は読み上げるなどの配慮をお願いします。 ホシジルシ バスやタクシーの乗り場の案内、車いす利用者が乗れるタクシーを呼ぶなど の配慮は喜ばれます。 13.2利用者の声 施設サービスへの評価とその検証 ホシジルシ お客様が施設利用上気づいたことを伺って、改善につなげるように努めてく ださい。 14.緊急時の対応 ニジュウマル 光と音で知らせる装置の付いている非常口は視覚障害者、聴覚障害者に有 効です。 マルジルシ 客室には非常ベル等の音声以外の警報装置があると聴覚障害者には助かりま す。 マルジルシ 客室テレビの文字放送により、緊急事態を知らせることもできます。 ホシジルシ 視覚障害者、聴覚障害者その他介助を要する方の緊急時対応を最初に話し合 っておくとよいでしょう。緊急時にはスタッフが鍵を開けて入ることをあらかじめ了解し てもらうこともよいかもしれません。 ホシジルシ 日頃から障害者や高齢者のお客様を想定した訓練を行うとよいでしょう。地 域の障害者団体や自立生活センターも協力します。 17ページ目 用語解説 1 スロープ 傾斜のきついスロープの上り下りは車いす利用者にとって困難ですので、配慮が必要 です。 また長いスロープになる場合には踊場が必要になります。県の基準では「スロープ(傾斜 路)のこう配(傾斜)は12分の1を超えない。段差が16センチ以下の場合は8分の1を超 えない」「高低差が75センチを超える場合、75センチ以内ごとに踏幅150センチ以上の踊 場を設けること」としています。 2 多目的トイレ(みんなのトイレ) 神奈川県では、平成14年4月1日から、ユニバーサルデザインの考えを取り入れ、 障害者、高齢者はもとより、だれもが円滑に利用しやすいトイレを「みんなのトイレ」 と定め、整備をお願いしています。 「みんなのトイレ」では、手すり、洗面器、鏡、オストメイト対応の水洗器具などを適切 に配置するほか、異性による介助の場合にも配慮し、男女共用としています。 3 筆談ボード 書いたり消したりが簡単にできる携帯タイプのボードとペンです。主に聴覚障害者とのコ ミュニケーションツールとして使えます。紙とペンを準備しておくことでも代用できます。 4 サービス介助士、サービス・ケア・アテンダント サービス介助士は「比較的元気な高齢の方や障害をもつ方をお客様としてお迎えするとき の介助技術」をNPO法人日本ケアフィットサービス協会が認定する資格です。「入浴・排 泄・食事」などの介護を担うホームヘルパーとは異なり、「おもてなしの心」と「介助技 術」で、誰もが暮らしやすい社会の実現のために重要な役割を担います。 サービス・ケア・アテンダントは社団法人公開経営指導協会が試験実施・運営をする資格 です。ノーマライゼーション社会におけるユニバーサルサービスの考え方を基に、困って いる全ての人々へのサービスに主眼をおき、単なる介助技術だけではなく、コミュニケー ションの手法から人的対応能力に重点を置き、マインドとスキルを融合しサービス品質の レベルアップを図るものです。 5 オストメイト 大腸がんや膀胱がんの治療のため、手術で腹部にストーマ(排泄口)をつくった方(人工 肛門・人工膀胱保有者)のことを言います。排泄物を受け止めるための袋(パウチ)の処 理等のため、トイレに洗浄装置や汚物流しを必要とします。 18ページ目 6 浴槽台 浴槽が深い場合、浴槽内外の踏み台代わりになります。浴槽内では、腰掛けとしても使用 でき、立ち上がりも楽になります。 7 バスボード 浴槽の外側に置き、座りながら身体の向きを変えて浴槽に入れます。片足立ちの不安定な 姿勢にならずに湯船に浸かることができます。 8 シャワーチェア・シャワーベンチ、シャワーキャリー(入浴用車いす) シャワーチェア・シャワーベンチは入浴用のいすです。体を洗うときだけでなく、浴槽へ の出入りの際、浴槽の高さにそろえて入浴台として兼用することもあります。 シャワーチェア・シャワーベンチのうち、キャスターのついたものを特にシャワーキャ リーまたは可動式シャワーベンチと言います。座ったままでベッドから浴室まで移動しそ のまま入浴することができます。陰部を介助者が洗いやすいように座面をカットしてある ものなど、座る姿勢の不安定さや移乗介助のしやすさにより様々な種類があります。 9 ギャッジベッド 起き上がり等の動作を補助するため、床板が上下に可動するベッドです。 10 ノックセンサー・フラッシュライト ドアの内側に取り付けます。ドアノックの振動をキャッチして明るいフラッシュライトが 点滅し、来訪者を通知します。小型・軽量で両面テープやビスなどで簡単に取り付けられ ます。 11 補助犬 視覚障害者の安全な歩行をサポートする盲導犬、肢体不自由者の暮らしのサポートをする 介助犬、聴覚障害者に音を知らせる聴導犬の総称です。「身体障害者補助犬法」に基づい て認定された犬で、特別な訓練を受けています。大勢の人が利用する施設では著しい損害 発生のおそれがない限り、受け入れが義務付けられています。 12 ユニバーサルデザイン 年齢、性別、身体、国籍など、人々が持つ様々な特性や違いを越えて、はじめからできる だけすべての人が利用しやすい、すべての人に配慮した、環境、建物・施設、製品等のデ ザインをしていこうとする考え方です。 19ページ目 おわりに お客様が望んでいるのは、そして宿泊施設を利用して喜ばれるのは、一番に従業員の快い 対応のおもてなしだと思います。 そして、障害特性を理解しておくのも大切ですし、お一人おひとりにより異なることも念 頭に置き、お客様に応じた対応をしていただきたいと思います。 障害特性、バリアフリー・ユニバーサルデザイン 注12 の理解のためには、サービス介 助士などを目指した研修を宿泊施設内外で行うこと、研修に参加することも役立つのでは ないでしょうか。 予約の際に、どんなご要望があるかを伺い、宿泊施設側にできること・できないこと、オ プションのものが有料か無料かも明確に伝えることが必要だと思います。 また、近くの観光施設のバリアフリーなどの情報も知っておくと喜ばれると思います。 本冊子は、障害者や高齢者の方など誰でもが県内どこでも行楽したい場所で宿泊できるよ うな環境づくりの一助とするために作成をしたものです。本冊子と同様の趣旨で「だれも が利用しやすい宿泊施設を目指して〜事例集〜」が作成されており、2つの冊子は、理論 編と実践編として相互に補完しています。2つの冊子を一緒にご覧いただくことによっ て、より具体的な知識とアイデアをご参考にしていただけることと思いますので、本冊子 と一緒に「だれもが利用しやすい宿泊施設を目指して 事例集」もぜひ、ご活用いただけ れば幸いです。 また、様々な整備基準の詳細につきましては、神奈川県発行の「みんなのバリアフリーま ちづくり整備ガイドブック」を参照いたしました。 本ガイドライン作成にあたり、次の施設にご協力をいただきました。 箱根湯本ホテル明日香湯本富士屋ホテル ホテルハーヴェスト箱根明神平 箱根千代田荘 四季の宿箱根路開雲 武蔵野本館箱根吟遊 強羅文の郷 強羅アサヒホテル 横浜平和プラザホテル ウィリング横浜 (順不同) 当事者支援推進事業検討委員 氏名、所属、役職 斉藤 進、産業能率大学、情報マネジメント学部教授 今西 正義、NPO法人DPI日本会議、バリアフリー担当アドバイザー 鈴木 孝幸、NPO法人神奈川県視覚障害者福祉協会、理事長 小川 美紀雄、社会福祉法人神奈川県社会福祉事業団、事務局長 若林 伸二、神奈川県旅館生活衛生同業組合、専務理事 鈴木 和夫、社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会、事務局長 岡村 道夫、福祉農園合同会社、代表 参考文献 神奈川県「みんなのバリアフリーのまちづくり整備ガイドブック」 静岡県「みんなが喜ぶ宿づくり」ユニバーサルデザインによるアイデア・ヒント集(宿泊 施設編) 参考インターネットホームページ 福祉環境サポートチームの「応答願います!」 nite 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 株式会社プラスヴォイス 快適空間スクリオ 学校法人産業能率大学総合研究所 介護用品の志水商会 ケアマネージャーポータルネット パラマウントベッド 裏表紙 「だれもが使いやすい宿泊施設を目指して ガイドライン」 平成23年3月 編集 当事者支援推進事業検討委員会 事務局 特定非営利活動法人 神奈川県障害者自立生活支援センター 住所 郵便番号243-0035 神奈川県厚木市愛甲953−2 電話 046-247-7503 ファックス 046-247-7508 ホームページ:http://www.kilc.org Eメール info@kilc.org 発行 神奈川県保健福祉局地域保健福祉部地域保健福祉課