建築物の整備基準解説 1 敷地内通路等 ●基本的な考え方 ・道路又は駐車場から主要な出入口に至る敷地内通路は、だれもが目的の施設を安全かつ 円滑に利用できるように整備する。 ・敷地内通路は、非常時における避難移動にも十分対応できるように安全な通路として整 備する。 ・敷地内通路は、原則として歩車道分離とする。 ●整備基準 (1)不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する敷地内の通路は、 次に掲げるものであること。ただし、別表第1の2の項(3)の項に掲げる動物園等にあ っては、この限りでない。 ●解説 ・「不特定多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する」の意義は、高齢者、障 害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の例による。なお、共同住宅については、同 じく「多数の者が利用する」とする。 ●整備基準 ア 表面の仕上げ:表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、雨滴等による濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選 択すること。 ●望ましい水準 ・石畳やれんが敷きでは、表面に凹凸がある材料は避け、目地部にも段差が生じないよう 施工すること。 ●整備基準 イ 段:段がある部分は、次に掲げるものであること。 (ア)手すりを設けること。 (イ)踏面の端部とその周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより 段を容易に識別できるものとすること。 (ウ)段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものを設けない構造とすること。 ●望ましい水準 段がある場合は、次に掲げるものであること。 ・幅は140センチメートル以上とすること。 ・蹴上げの寸法は16センチメートル以下、踏面の寸法は30センチメートル以上とすること。 両側に手すりを設置すること。 ●整備基準 ウ 傾斜路:傾斜路は、次に掲げるものであること。 (ア)こう配が12分の1を超え、又は高さが16センチメートルを超え、かつ、こう配が20 分の1を超える傾斜がある部分には、手すりを設けること。 (イ)その前後の通路との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容 易に識別できるものとすること。 ●解説 ・傾斜路の上端、下端又は傾斜路全体を、注意喚起のため、通路の他の部分と色彩、色相 又は明度、輝度比等に差がある材料で仕上げること。 ●整備基準 (2)道又は公園、広場その他の空き地(以下「道等」という。)から不特定かつ多数の 者が利用し、又は主として障害者等が利用する居室(以下「利用居室」という。)まで及 び駐車場から利用居室又は道等までの経路のうち、それぞれ1以上の経路を障害者等が円 滑に利用できる経路(以下「主たる経路」という。)とし、当該主たる経路を構成する敷 地内の通路は、(1)に定めるほか、次に掲げるものであること。 ●解説 ・「主たる経路」とは、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第 18条に規定する移動等円滑化経路に該当し、この場合、居室には10の項に定める等の客室 等を含む。 ●望ましい水準 ・必要に応じて手すりを設けること。 ・敷地が広く、敷地内に建築物が複数ある場合などは、触知図を設置すること。 ・施設の地理的特性によっては、凍結、積雪防止の融雪装置や上屋を設けること。 ・整備された出入口に通ずる敷地内通路は、地形の特殊性により困難な場合以外は整備す ること。 ・補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)利用者への配慮として、補助犬の排泄スペース、出 入口の幅員に配慮すること。 ●整備基準 ア 有効幅員:有効幅員(内のりをいう。以下同じ。)は、140センチメートル以上とす ること。 ●望ましい水準 ・段がある部分及び傾斜路を除き、幅は、180センチメートル以上とすること。 ●整備基準 イ 階段、段:階段又は段を設けないこと。ただし、傾斜路又は7の項に定める構造のエ レベーター及びそれ以外の昇降機(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法 律施行令(平成18年政令第379号。以下、「政令」という。)第18条第2項第6号に規定 する車いす使用者が円滑に利用することができるものとして国土交通大臣が定める構造の ものに限る。)(以下「エレベーター等」という。)を併設する場合は、この限りでない。 ●整備基準 ウ 傾斜路:傾斜路は、次に掲げるものであること。 (ア)有効幅員は、段に代わるものにあっては140センチメートル以上、段に併設するも のにあっては90センチメートル以上とすること。 (イ)こう配は、12分の1を超えないこと。ただし、高さが16センチメートル以下のもの にあっては、8分の1を超えないこと。 (ウ)高さが75センチメートルを超えるもの(こう配が20分の1を超えるものに限る。) にあっては、高さ75センチメートル以内ごとに踏幅が150センチメートル以上の踊場を設 けること。 ●解説 車いす使用者の通行を妨げるため、進行方向以外への側面へ傾斜させないこと。 ・こう配:車いす使用者が自力で登坂できるこう配は12分の1以下である。 ・踊場:通行の安全、休憩、方向転換等のため、水平な踊場が必要となる。 ●望ましい水準 傾斜路は次に掲げるものであること ・幅は段に代わるものにあっては150センチメートル以上、段に併設するものにあっては1 20センチメートル以上とすること。 ・縦断こう配は15分の1を超えないこと。 ・高さが16センチメートルを超え、かつ、こう配が20分の1を超える傾斜がある部分には 両側に手すりを設けること。 ●整備基準 エ 戸:戸を設ける場合には、次に掲げるものであること。 (ア)有効幅員は、90センチメートル以上とすること。 (イ)自動的に開閉する構造その他の障害者等が容易に開閉して通過できる構造とし、か つ、その前後に高低差がないこと。 ●解説 4の項(1)参照。 ●整備基準 オ 排水溝の溝ぶた:排水溝を設ける場合は、盲人安全つえ、車いすのキャスター等(以 下「つえ等」という。)が落ち込まない構造の溝ぶたを設けること。 ●整備基準 (3)別表第1の2の項(3)の項に掲げる動物園等において、動物園等の敷地に接する 道へ通ずる出入口又は駐車場へ通ずる出入口を設ける場合は、それぞれ1以上の出入口及 び主要な敷地内通路は、別表第2の4の表1の項、2の項及び9の項(1)に定める構造 とすること。この場合において、「園路」とあるのは、「敷地内の通路」と読み替えるも のとする。 2 傾斜路 ●基本的な考え方 ・敷地内通路、建築物内の廊下等に高低差や段が生じている場合には、利用者が安全かつ 円滑に利用できるように傾斜路を整備する。 ・傾斜路の勾配はできる限り緩やかに設ける。また、滑りにくい仕上げ材を使用する。 ・敷地等の形状により傾斜路の距離が著しく長い場合、若しくは進路方向が見えにくい傾 斜路にあっては、傾斜路の長さ等を分かりやすく表示するなど利用しやすさを工夫する。 ●整備基準 ・不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する傾斜路(階段に代わり、 又はこれに併設するものに限る。)を設ける場合は、次に定める構造とすること。 ●整備基準 (1)有効幅員:有効幅員は、120センチメートル以上とすること。ただし、6の項に定 める構造の段に併設するものにあっては、90センチメートル以上とすることができる。 ●望ましい水準 ・有効幅員は、150センチメートル以上(段を併設する場合は、120センチメートル 以 上)とすること。 ●整備基準 (2)縦断こう配:縦断こう配は、12分の1を超えないこと。ただし、高低差が16センチ メートル以下の場合は、8分の1を超えないこと。 ●解説 ・車いす使用者の通行を妨げるため、進行方向以外の側面へ傾斜させないこと。 ●望ましい水準 ・縦断こう配は、15分の1を超えないこと。 ●整備基準 (3)踊場:高低差が75センチメートルを超える場合は、75センチメートル以内ごとに踏 幅が150センチメートル以上の踊場を設けること。 ●整備基準 (4)転落防止装置:両側には、側壁又は高さ5センチメートル以上の立ち上がり部を設 けること。ただし、側面が壁面である場合は、この限りでない。 ●整備基準 (5)手すり:手すりを適切な高さに設けること。 ●解説 手すりは、肢体不自由者の右半身麻痺、左半身麻痺等の利用を考慮し、傾斜路の両側に連 続して設けることが基本であるが、構造上困難な場合には、片側に設け、連続性のあるも のとすること。 ・床仕上げ面から手すりの上端までの高さは、原則として、2段の場合は、上段75 〜85 センチメートル 程度、下段60 〜65センチメートル程度とし、一段の場合は、75 〜85セ ンチメートル 程度とすること。 ・原則として、断面が円形(直径3〜4センチメートル 程度)か楕円型とすること。 ・壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを4 〜5センチメートル 程度とすること。手 すりの端部は、壁面側又は下方に巻き込むなど端部が突出しない構造とすること。 ●望ましい水準 ・手すりは、両側に連続して設置すること。 ●整備基準 (6)表面の仕上げ:表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、雨滴等による濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選 択すること。 ●整備基準 (7)廊下等:その前後の廊下等との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりそ の存在を容易に識別できるものとすること。 ●整備基準 (8)端部の構造:傾斜路の端部は、車いすの転回に支障がない構造とすること。 ●解説 ・傾斜路の水平面が出入口に直結している場合には、戸の開閉に必要なスペースを確保す ること。 ・端部は床に対して段を生じない構造とし、通路を移動する人との衝突を避けかつ車いす が転回できるよう、長さ150センチメートル程度の踊場を設けること。 3 駐車場 ●基本的な考え方 ・車いす使用者等が利用できる駐車区画の確保は大変重要である。 ・車いす使用者等が利用できる駐車区画は主要な出入口に最も近い場所に設ける。 ・施設の用途・規模によっては、多くの車いす使用者が同時に複数の区画を利用すること を想定して可能な限り多くの区画数を確保する。 ・車いす使用者が利用できる駐車区画表示は道路からも容易に視認できるよう配慮する。 ●整備基準 ・不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する駐車場(機械式駐車場 を除く。以下同じ。)を設ける場合は、次に定める構造の車いす使用者の利用しやすい駐 車区画(以下「車いす使用者用駐車区画」という。)を1(駐車台数の合計が100台を超 えるときは、駐車台数の合計に100分の1を乗じて得た数。ただし、その数に1未満の端 数があるときは、これを1に切り上げるものとする。)以上設けること。ただし、別表第 1の8の項に掲げる公共的施設のうち寄宿舎及び用途面積が2,000平方メートル未満の共 同住宅(以下「小規模共同住宅」という。)並びに同表の9の項及び16の項に掲げる公共 的施設にあっては、この限りでない。 ●解説 ・駐車場には、施設に附属する駐車場、路外駐車場の双方が含まれる。 ●望ましい水準 ・発券所等は、曲がり角や斜路部分に設けないように計画するなど、障害者等が円滑に利 用できるよう配慮すること。 ・2台分以上のスペースを並べて設けること。 ・見通しの悪いカーブなどの箇所には、ミラーを設けること。 ・雨の日でも濡れずに利用できるよう上屋を設けること。 ・車いす使用者用駐車区画を次のとおり設けること。  200台以下の場合は50分の1以上。  200台を超える場合は100分の1プラス2以上。 ・全ての公共的施設においては、本項に定める駐車場を設けること。 ●整備基準 (1) 区画の幅:幅は、350センチメートル以上とすること。 ●解説 ・標準的な車いす使用者用駐車区画は、幅350センチメートル以上×奥行き500センチメー トル以上である。 ●望ましい水準 ・奥行きは、600センチメートル以上とすること。 ・車いす使用者用区画が、1以上の場合は、乗降用スペースを両側に設けること。 ・乗降用スペースは、有効幅員100センチメートル以上とすること。 ●整備基準 (2)設置場所:駐車場の出入口又は4の項に定める構造の出入口等までの経路の長さが できるだけ短くなる位置であって、水平な場所に設け、かつ、車いす使用者用駐車区画か ら4の項に定める構造の出入口等に至る通路のうち、1以上の通路は、1の項(2)に定 める構造とすること。ただし、別表第1の2の項(3)の項に掲げる動物園等にあっては、 車いす使用者用駐車区画から1の項(3)に定める構造の敷地内通路へ通ずる通路又は4 の項に定める構造の出入口等に至る通路は、1の項(3)に定める構造とすること。 ●解説 必要に応じて、車止めを適切に処置すること。 ・他の自動車との動線と車いす使用者用駐車区画からの動線の交差を避け、駐車区画はで きるだけ出入口に近い位置に設ける。 ・車いすと自動車の座席との乗り移りの際に、車いす使用者が体制を安定でき、車いすが 自走しないように傾斜した場所には設けないこと。 4 出入口等 ●基本的な考え方 ・だれもが円滑に利用できるように、主要な出入口等を整備する。 ・主要な出入口等付近には、案内看板や受付を適切に設ける。 ・主要な出入口等付近には、利用者に分かりやすい施設の案内板を適切に配置する。 ・出入口の戸の構造は、視覚障害者や車いす使用者の通行に十分配慮する。 ・戸の構造は、上肢の障害のある人にもできる限り円滑に利用できるものとする。 ・客室等の出入口には、視覚障害者にも認識しやすい浮文字の部屋番号や点字付き室名板 を設ける。 ・主要な出入口以外の出入口においても、緊急時等を考慮し利用者の円滑な利用に配慮す る。 ●整備基準 (1)主たる経路を構成する出入口のうち直接屋外へ通ずる主要な出入口、改札口及びレ ジ通路(以下「主要な出入口等」という。)を設ける場合は、次に定める構造の主要な出 入口等をそれぞれ1以上設けること。 ●解説 ・「改札口」とは、有料施設等の入場口を指し、「レジ通路」とは、スーパー等に設けら れるような代金支払い時に通過する通路部分を指す。 ・改札口及びレジ通路には、屋外へ通ずるもののほか、屋内に設置するものも含む。 ●望ましい水準 ・施設の出入口等には、屋根、庇を設けること。 ・風除室には、必要に応じて、衝突防止用の措置(注意喚起サイン、手すり等)を講ずる こと。 ・上下足の履き替え所には、下肢障害者のためのいすを常備すること。 ・すべての出入口等を4の項(1)に定める構造とすること ●整備基準 ア 有効幅員:有効幅員は、90センチメートル以上とすること。 ●望ましい水準 ・1以上の直接屋外に通ずる出入口等の有効幅員は、120センチメートル以上とすること。 ●整備基準 イ 段:障害者等の通行の支障となるような段を設けないこと。 ●解説 ・雨仕舞の関係から段が生じる場合は、高低差1センチメートル程度で丸みを持たせる、 すりつける等の配慮を行う必要がある。 ●整備基準 ウ 戸の構造:戸を設ける場合には、1の項(2)エ(イ)に掲げるものであること。 ●解説 ・開閉動作のしやすさから見た推奨順位は、1自動式引戸、2手動式引戸、3開き戸であ る。 ・ドアチェックは、ゆるやかに作動し、操作の軽いものとすること。 ・ドアハンドルは、車いす使用者や子どもにも使いやすい高さに設けること。また、円形 のものは上肢や手に障害のある人が使いにくいので避けること。 ・手動ドアには、指つめ防止の配慮を行うこと。 ・戸の全面が透明な場合は、衝突を防止するための措置を講ずること。 ・窓ガラスの選定には、割れにくい材料を用いるなど配慮すること。 ・戸の前後には、車いす使用者が戸の開閉をするために水平面を設けること。水平面は、 原則として150センチメートル程度×150センチメートル程度設けること。 ●望ましい水準 ・扉ガラスには、キックプレートを設けること。 ・自動ドアには、非常時対応手動ドアを設けること。 ・有効幅員120センチメートル 以上の直接屋外へ通ずる出入口等のうち1以上は自動的に 開閉する構造自動式とすること。 ・開閉により当該戸の一部が廊下等の当該戸がある側の壁面線を越えない構造とすること。 ●整備基準 エ 床面の仕上げ:床面は、滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選択すること。 ●整備基準 (2)屋外若しくは駐車場へ通ずる出入口(主要な出入口等を除く。)及び主たる経路を 構成する出入口(直接屋外へ通ずる主要な出入口を除く。)は、有効幅員を80センチメー トル以上とし、(1)のイからエまでに定める構造とすること。ただし、別表第1の3の 項に掲げる医療施設のうち病室(患者を収容する施設をいう。)を有しないもの(以下 「無床診療所」という。)で用途面積が500平方メートル未満のもの(以下「小規模無床 診療所」という。)、同表の5の項(3)の項に掲げる商業施設のうち用途面積が200平 方メートル以上500平方メートル未満のもの(以下「小規模店舗」という。)及び同表の1 4の項に掲げる興行・遊興施設のうち用途面積が300平方メートル以上1,000平方メートル 未満のもの(以下「小規模興行・遊興施設」という。)にあっては、この限りでない。 ●解説 ・ひとつの居室に複数の出入口がある場合は、1以上の出入口の整備が必要となる。 ●望ましい水準 ・公共的施設において主要な出入口以外の出入口を設ける場合にあっては、4の項(2) に定める構造とすること。 ・有効幅員は、90センチメートル以上とすること。 ・公共的施設の出入口には、屋根・庇を設ける。 ・風除室には、必要に応じて、衝突防止用の措置(注意喚起サイン、手すり等)を講ずる こと。 ・上下足履き替え所には、下肢障害者のためのいすを常備すること。 5 廊下その他これに類するもの(以下「廊下等」という) ●基本的な考え方 ・廊下等には利用者の事故につながるような不用意な突起物を設けない。 ・廊下等の手すりは、設置が必要な箇所を十分考慮して設ける。また、設置が必要と思わ れる箇所にいつでも容易に設置できるように壁下地を補強しておく。 ●整備基準 (1)不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する廊下等の表面は、 粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、雨滴等による濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選 択すること。 ・マットを設ける場合は、埋込み式とするなど足を取られたり、車いすの通行の支障とな らないよう配慮すること ・利用者の事故につながるような突出物を設けないこと。ただし、視覚障害者の通行の安 全上支障が生じないよう必要な措置を講じた場合は、この限りでない。 ●望ましい水準 ・公共的施設において廊下等を設ける場合にあっては、5の項に定める構造とすること。 ・すべての経路上の廊下等を整備すること。 ・休憩用設備を適切な位置に設けること。 ・必要に応じて、足元灯等を設置すること。 ●整備基準 (2)主たる経路を構成する廊下等(7の項に定める構造のエレベーターを設ける場合に あっては、当該エレベーターの昇降路に至る廊下等を含む。)は、(1)に定めるほか、 次に掲げるものであること。ただし、小規模無床診療所、小規模店舗及び小規模興行・遊 興施設にあっては、この限りでない。 ●整備基準 ア 有効幅員:有効幅員は、120センチメートル以上とすること。 ●望ましい水準 ・有効幅員は、180センチメートル以上とすること。ただし、末端の付近及び区間50メー トル以内ごとに2人の車いす使用者がすれ違うことができる構造の部分を設ける場合は14 0センチメートル以上とすることができる。 ●整備基準 イ 段:段を設けないこと。ただし、2の項に定める構造の傾斜路又はエレベーター等を 設ける場合は、この限りでない。 ●整備基準 ウ 車いすスペースの転回スペース:端部は、車いすの転回に支障のない構造とし、かつ、 50メートル以内ごとに車いすの転回に支障がない場所を設けること。 ●解説 ・車いす使用者が転回できる幅140センチメートル以上の部分を設けること。(有効幅員 が140センチメートル以上のときは、転回できるため、ことさら設ける必要はない。) ・曲がり角は車いすの転回に支障がない構造とすること。(面取り、すみ切り等の処理が 考えられる。) ●望ましい水準 ・曲がり角には鏡を設けるなどにより、衝突防止の配慮をすること。 ●整備基準 エ 手すりの設置:別表第1の3の項に掲げる医療施設(無床診療所を除く。)にあって は、適切な高さに手すりを設けること。●解説 ・床仕上げ面から手すりの上端までの高さは、原則として、2段の場合は、上段75 〜85 センチメートル 程度、下段60 〜65センチメートル程度とし、一段の場合は、75 〜85セ ンチメートル 程度とすること。 ・原則として、断面が円形(直径3〜4センチメートル 程度)か楕円型とすること。 ・壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを4 〜5センチメートル 程度とすること。 手すりの端部は、壁面側又は下方に巻き込むなど端部が突出しない構造とすること。 ・4の項(1)ウ参照。 ●望ましい水準 ・その他の公共的施設にあっても手すりを設けること。 ・手すりは、両側に連続して設置すること。 ●整備基準 オ 戸の構造:戸を設ける場合には、1の項(2)エ(イ)に掲げるものであること。 ●望ましい水準 ・側面に廊下等に向かって開く戸を設ける場合には、当該戸の開閉により高齢者、障害者 等の通行の安全上支障がないよう必要な措置を講ずること。 6 階段 ●基本的な考え方 ・階段には手すりを両側に連続して設ける。 ・階段での転倒事故を防ぐためには段鼻は容易に見分けがつく構造とする。 ・階段手すりの始終端部には現在地若しくは行き先等を点字で表記する。 ●整備基準 ・不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する階段を設ける場合は、 次に定める構造とすること。 ●解説 ・らせん階段や踊場部分に段を設けた階段とせず、安全な水平面が確保された直階段又は 折れ階段とすること。 ●望ましい水準 ・必要に応じて、足元灯等を設置すること。 ・踊場には、鏡を設けるなどにより、衝突防止の配慮をすること。 ・有効幅員は、150センチメートル以上とすること。 ●整備基準 (1)主たる階段の形状:主たる階段は、回り階段としないこと。 ●解説 ・主たる階段とは、施設内の移動において主に利用される可能性の高いものをいう。 ●望ましい水準 ・主たる階段以外の階段においても回り階段は設けないこと。 ●整備基準 (2)階段の構造:段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものを設けない構造と すること。 ●解説 ・同一階段は、同一寸法とすること。 ・段鼻は、踏面及びけこみ板の面とそろえてつまずきにくい構造とすること。金属製のも のはつえ等が滑るので避けること。 ・1以上の階段においては、けこみ板は、つえ等や足の落ち込みを防止するために必ず設 けること。 ・手すり子形式の階段は、両側に2センチメートル以上(5センチメートル以上が望まし い)の立ち上がりを設け、つえ等や足の踏み外しを防止すること。 ●望ましい水準 ・けこみは2センチメートル以下とすること。 ・けあげ16センチメートル程度、踏面30センチメートル以上とすること。 ●整備基準 (3)手すりの設置:手すりを適切な高さに設けること。 ●解説 ・手すりは階段の踊場を含め設置する。 ・手すりは、肢体不自由者の右半身麻痺、左半身麻痺等の利用を考慮し、傾斜路の両側に 連続して設けることが基本であるが、構造上困難な場合には、片側に設け、連続性のある ものとすること。 ・床仕上げ面から手すりの上端までの高さは、原則として、2段の場合は、上段75 〜85 センチメートル 程度、下段60 〜65センチメートル程度とし、一段の場合は、75 〜85セ ンチメートル 程度とすること。 ・原則として、断面が円形(直径3〜4センチメートル程度)か楕円型とすること。 ・壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを4〜5センチメートル程度とすること。手 すりの端部は、壁面側又は下方に巻き込むなど端部が突出しない構造とすること。 ●望ましい水準 ・両側に連続して設置すること。 ●整備基準 (4)表面の仕上げ:表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、雨滴等による濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選 択すること。 ●整備基準 (5)明度差等の確保:踏面の端部とその周囲の部分との色の明度、色相又は彩度の差が 大きいことにより段を容易に識別できるものとすること。 ●解説 ・高齢者や視覚障害者等が認知しやすいよう、明度、色相、彩度(輝度比の確保)に配慮 する。 7 エレベーター ●基本的な考え方 ・エレベーターは、車いす使用者にとって最も円滑に垂直移動できる設備である。エレ ベーターの設置にあたっては、設置場所等を十分考慮すること。 ・エレベーターは、原則として2階以上の階に利用者の利用に供する居室等が設けられて いる場合には設置する。 ・百貨店、集会施設及び劇場等同時に多数が利用することのあるエレベーターは、車いす 使用者等が円滑に利用できる台数を増やすこと。また、より大きなかご面積のエレベー ターを採用する。 ・エレベーターの操作盤(特に緊急通報ボタン)は、車いす使用者、子ども、視覚障害者、 高齢者等の利用に配慮する。 ●整備基準 (1)不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用し、かつ、直接屋外へ 通ずる4の項(1)に定める構造の主要な出入口等がない階を有する公共的施設で、床面 積の合計が1,000平方メートル以上であるもの(別表第1の8の項、9の項、16の項及び1 8の項(8の項、9の項又は16の項に掲げる公共的施設を含むものに限る。)に掲げる公 共的施設にあっては、4階以上の階を有するものに限る。)にあっては、かごが当該階に 停止する次に定める構造のエレベーターを1以上設けること。ただし、不特定かつ多数の 者又は主として障害者等が直接屋外へ通ずる4の項(1)に定める構造の主要な出入口等 のある階でサービスの提供を受け、又は商品等を購入することができる等の措置を講じる 場合は、この限りでない。 ●解説 ・「別表第1の8の項、9の項、16の項及び18に掲げる公共的施設」とは、共同住宅、事 務所、工場及び複合用途建築物のことをいう。 ・措置を講じる場合には、例えば2階で行っている窓口業務内容を適宜1階で行える体制 を整えている場合、代替手段により2階に上がることが可能な場合等が考えられるが、い ずれの場合にも、措置が講じられていることが客観的にも明らかであることが必要である。 ●整備基準 ア かご及び昇降路の出入口の構造:かご及び昇降路の出入口の有効幅員は、80センチ メートル以上とすること。 ●望ましい水準 ・かご及び昇降路の出入口の有効幅員は、90センチメートル以上とすること。 ●整備基準 イ かごの大きさ:かごの内のり幅は140センチメートル以上とし、かごの内のり奥行き は135センチメートル以上とし、及びかごの構造は車いすの転回に支障がない構造とする こと。ただし、別表第1の8の項、9の項、16の項及び18の項(8の項、9の項又は16の 項に掲げる公共的施設を含むものに限る。)に掲げる公共的施設において、電動車いす使 用者が乗降できる構造のかごを設ける場合は、この限りでない。 ●望ましい水準 ・かごの内のり幅は160センチメートル以上、内のり奥行きは135センチメートル以上とす ること。 ●整備基準 ウ 戸の構造:戸は、障害者等が円滑に利用できる構造とし、戸の開閉時間を制御する装 置を設けること。 ●望ましい水準 ・定員オーバーの視覚表示を行うこと。 ・かご及び昇降路の出入口の戸に、ガラスその他これに類するものがはめ込まれているこ とにより、かご内からかご外が視覚的に確認できる構造であること。 ●整備基準 エ かご内の構造:かご内には、適切な高さに手すりを設置するとともに、戸の開閉状態 等を確認することができる鏡を配置すること。 ●解説 ・手すりは高さ75〜85センチメートル程度に設置すること。 ・手すりは握りやすい形状とすること。 ●整備基準 オ かご内及び乗降ロビーの制御装置:かご内及び乗降ロビーには、車いす使用者が利用 しやすい位置に制御装置を設けること。 ●解説 ・操作盤(制御装置)のボタンは、押しボタン式とし、静電式タッチボタンは避けること。 ・かご内及び乗降ロビーには、車いす使用者が円滑に操作できる位置(高さ90〜100セン チメートル程度)に操作盤が設けられていること。 ・かご及び昇降路の出入口の戸の開閉時間を延長する機能を有したものであること。 ●望ましい水準 ・聴覚障害者のための情報伝達手段として、視覚による双方向モニター等を設置すること。 縦列に配置する階数ボタンは、下から千鳥に配列し、点字表示はボタンの左側を原則とす る。 ・呼び出しボタンは開閉ボタンの下部に設ける。 ●整備基準 カ 制御装置の構造及び音声案内:かご内及び乗降ロビーに設ける制御装置(車いす使用 者が利用しやすい位置及びその他の位置に制御装置を設ける場合にあっては、当該その他 の位置に設けるものに限る。)は、点字及び文字等の浮き彫り、音による案内等により視 覚障害者が円滑に操作することができる構造とすること。 ●整備基準 キ 位置表示の装置:かご内に、かごが停止する予定の階及びかごの現在位置を表示する 装置を設けること。 ●整備基準 ク 出入口の戸の音声装置:かご内に、かごが到着する階並びにかご及び昇降路の出入口 の戸の閉鎖を音声により知らせる装置を設けること。 ●整備基準 ケ 昇降方向表示の装置:乗降ロビーに、到着するかごの昇降方向を表示する装置を設け ること。 ●解説 ・乗降ロビーへの装置の設置については、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた 時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベー ターの停止する階が2のみである場合は、この限りでない。 ●望ましい水準 ・乗降ロビーの有効幅員及び有効奥行きは、それぞれ180センチメートル以上とすること。 ●整備基準 コ 昇降方向の音声装置:かご内又は乗降ロビーに、到着するかごの昇降方向を音声によ り知らせる装置を設けること。 ●解説 ・乗降ロビーへの装置の設置については、かご内にかご及び昇降路の出入口の戸が開いた 時にかごの昇降方向を音声により知らせる設備が設けられている場合又は当該エレベー ターの停止する階が2のみである場合は、この限りでない。 ●整備基準 サ 乗降ロビーの構造:乗降ロビーは、高低差がないものとし、その有効幅員及び有効奥 行き(内のりをいう。)は、150センチメートル以上とすること。 ●整備基準 (2)不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用し、かつ、直接屋外へ 通ずる4の項(1)に定める構造の主要な出入口等がない階を有する公共的施設((1) に該当する施設を除く。)にあっては、かごが当該階に停止する(1)に定める構造のエ レベーターを1以上設けるよう努めること。 8 便所 ●基本的な考え方 ・ユニバーサルデザインの考え方に基づき、車いす使用者をはじめ、だれもが利用しやす い便所「みんなのトイレ」を1以上整備する。 ・みんなのトイレが整備されていることを知らせる表示を分かりやすく行う。 ・みんなのトイレ以外の便所を設ける場合にも、障害者、高齢者及び小さな子どもを連れ た人が利用しやすい便房を1以上整備する。 ・便所が男女別に設けられている場合は、利用しやすい便房をそれぞれ1以上整備する。 ●整備基準 (1)不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する便所を設ける場合 (無床診療所、小規模店舗及び小規模興行・遊興施設において設ける場合を除く。)は、 だれもが円滑に利用することができるように、次に定める構造の便房(以下「みんなのト イレ」という。)を1以上設けた便所を1以上設けること。ただし、当該便所内に、主た る経路に接続して車いす使用者用便房(政令第14条第1項第1号に規定する車いす使用者 が円滑に利用することができるものとして国土交通大臣が定める構造の便房をいう。以下 同じ)及び障害者等が円滑に利用できる構造の水洗器具を設けた便房をそれぞれ1以上設 けることにより、みんなのトイレを設けた場合と同等以上の機能を有すると認められる場 合は、この限りでない。 ●解説 ・ユニバーサルデザインの考え方に基づき、車いす使用者をはじめ誰もが利用しやすい 「みんなのトイレ」を整備することとする。ただし、高齢者、障害者等の移動等の円滑化 の促進に関する法律等の考え方も踏まえ、主たる経路に接続して車いす使用者用便房やオ ストメイト対応便房の個別機能に応じた専用便房を設置し、誰もが利用しやすい便所を整 備する場合はこの限りではない。なお、この場合でも、便房内にベビーベッド・ベビーチ ェアを設置し、より幅広い利用が可能となるよう努めること。 ●望ましい水準 ・公共的施設においては、みんなのトイレを設けること。 ・みんなのトイレは、各階ごとに設けるなど利用者の利用に配慮して複数設けること。 (但し書き適用の場合も同じ) ●整備基準 ア 出入口の構造:出入口の有効幅員は、80センチメートル以上とすること。 ●望ましい水準 ・有効幅員は、90センチメートル以上とすること。 ●整備基準 イ 戸の構造:戸を設ける場合には、1の項(2)エ(イ)に掲げるものであること。 ●解説 ・出入口の戸は、原則として引き戸とすること。 ・鍵は、指の動きが不自由な人でも容易に施錠できる構造のものとし、非常時に外から開 錠できるようにすること。 ●望ましい水準 ・便所の戸は、開閉時間の調整ができるものとすること。 ・ドアノックセンサーを設置すること。 ・施錠を示す色は、色の識別をしにくい者が円滑に利用できるよう、文字を併記するか、 赤と青の組み合わせなどにすること。(赤と緑は見分けにくい) ●整備基準 ウ 接続する経路:出入口は、主たる経路に接続すること。 ●整備基準 エ 便房の構造:腰掛便座、手すり、洗面器、鏡等を適切に配置すること。 ●解説 腰掛便座:腰掛便座の形状は、車いすのフットレストがあたることで使用時の障害になり にくいものとすること。 手すり: ・腰掛便座には、車いすからの移乗を補助したり、用便中の姿勢を安定させる手すりを設 けること。 ・手すりは、握りやすいものとすること。 洗面器: ・洗面器は、移動の支障とならない場所に設けること。手洗い器を便座から手の届く位置 に設置することも有効である。 ・洗面器の下部には、原則として、車いす前部の収納を考慮した、高さ65センチメートル 程度、奥行き45センチメートル程度のけこみを設けること。 ・洗面所の水栓は、レバー式、光感応式など簡単に操作できるものとすること。 付属器具: ・洗浄装置のレバー等は、障害者等が操作しやすい形状とし、適切な位置に設置すること。 ・ペーパーホルダーは、適切な位置に設置すること。 ・便器の横側面に洗浄ボタン、ペーパーホルダー、呼び出しボタンを設ける場合は、JI S S0026に基づく配置とすること。  ・手荷物を置ける棚又はフックを設置すること。フックは、立位者、車いす使用者の顔面 に危険のない形状、位置とするとともに、1以上は、車いすに乗った状態で使用できるも のとすること。 ●望ましい水準 付属器具: ・全身の映る鏡を設置すること。 ・介護用のベッドを設けること。 通報装置: ・呼び出しボタン、フラシュベルなどの緊急通報装置を便房内に設けること。 ●整備基準 オ 乳幼児等の対応:乳幼児用のベッド及びいすを設置するよう努めること。 ●望ましい水準 ・便房内に子ども用の便器又は便座を併設すること。 ●整備基準 カ 空間の確保:車いす使用者が円滑に利用することができる空間を確保すること。 ●解説 ・手動車いすで方向転換が可能なスペース(200センチメートル以上×200センチメートル 以上)を確保すること。このスペースが確保できない場合は、150センチメートル以上×2 00センチメートル以上程度を確保すること。 ●整備基準 キ 床面の仕上げ:障害者等が円滑に利用することができる構造の水洗器具を設けること。 ●解説 ・水洗器具とは、オストメイト(人工肛門、人口膀胱造設者)対応の設備である。 ・既存建築物の改修以外は簡易型設備による対応は行わないこと。 ・パウチや汚れた物、しびん等を洗浄するための汚物流し、またはこれにかわる洗浄装置 を設置すること。 ・洗浄のため温水がでるように努めること。 ・大きめの汚物入れを便座及び車椅子に座った状態から手の届く範囲に設けるよう努める こと。 ・全身を写すことができるような鏡を設置するよう努めること。 ●整備基準 ケ 出入口の表示:出入口には、だれもが利用できる旨を分かりやすい方法で表示するこ と。 ●望ましい水準 ・車いす使用者だけでなく、だれもが利用できる便所である旨を点字等で表示すること ●整備基準 (2)不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害者等が利用する便所(みんなのト イレ((1)ただし書きの場合を含む。)のみで構成されているものを除く。)を設ける 場合は、次に定める構造の便所を1以上(男女用の区別があるときは、それぞれ1以上) 設けること。 ●解説 ・(1)のみんなのトイレ(ただし書きの場合を含む)が2箇所以上設置されている場合 は、2箇所目については、(2)に定める構造の便所を整備したものとみなす。 ●望ましい水準 ・公共的施設においてみんなのトイレ以外のトイレを設ける場合にあっては、それぞれの 階に1以上を8の項(2)に定める構造とすること。 ●整備基準 ア 出入口の構造:便所の出入口の有効幅員は、80センチメートル以上とすること。 ●望ましい水準 ・便所内の通路等は車いす使用者が利用できる幅員を十分に確保すること。 ●整備基準 イ 戸の構造:便所及び便房の出入口の戸は、1の項(2)エ(イ)に掲げるものである こと。 ●整備基準 ウ 床面の仕上げ:床面は、滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、雨滴等による濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選 択すること ●整備基準 エ 便房の構造:障害者等が円滑に利用できる構造の腰掛便座及び手すりを適切に配置し、 4の項(2)に定める構造の出入口を設けた便房を1以上設けること。 ●望ましい水準 ・温水洗浄便座を設置すること。 ・乳児用いす等を設置すること。 ・呼び出しボタン、フラッシュベルなどの緊急通報装置を設置すること。 ・便器の背後に背もたれを設けること。 ●整備基準 オ 男子用小便器の構造:男子用小便器を設ける場合は、手すり付きの床置式の小便器、 壁掛式の小便器(受け口の高さが35センチメートル以下のものに限る。)その他これらに 類する小便器を1以上設けること。 ●解説 ・手すり付き床置式等の小便器は、便所の入口の一番近いところに設置すること。 ・小便器の手すりは、つえ使用者等の歩行困難者が左右の手すりにつかまるか、胸あて用 の手すりに胸をつけて不安定な身体を支えながら用を足せる構造とすること。 ●整備基準 カ 洗面器の構造:障害者等が円滑に利用できる構造とし、かつ、手すり及び鏡を適切に 配置した洗面器を1以上設けること。 ●解説 ・洗面器は、通行の支障とならない場所に設け、手すりは、原則として、両側に取り付け ること。 ・車いすでの使用に配慮し、洗面器の下部は床上65センチメートル程度の高さを確保し、 洗面器上面の標準的高さを75センチメートル程度とすること。 ・洗面所の水栓は、レバー式、光感応式など簡単に操作できるものとすること。 9 浴室、シャワー室等 ●基本的な考え方 ・浴室又はシャワー室等を設ける場合は、高齢者、障害者等が円滑に利用できる構造のも のを1以上整備する。 ・浴室等は転倒などによる事故が多い場所であるため、出入口の段の解消、手すりの設置、 滑りにくい床材の使用、不用意な突起物を設けないことなどについて十分考慮する。 ●整備基準 別表第1の3の項に掲げる医療施設(無床診療所を除く。)、4の項、10の項、11の項及 び13の項に掲げる公共的施設において、不特定かつ多数の者が利用し、又は主として障害 者等が利用する浴室、シャワー室等を設ける場合は、次に定める構造の浴室、シャワー室 をそれぞれ1以上(男女用の区別があるときは、それぞれ1以上)設けること。 ●解説 ・別表第1の4の項、10の項、11の項及び13の項に掲げる公共的施設」とは、福祉施設、 宿泊施設、公衆浴場及び運動施設のことである。 ・浴室、シャワー室等には、浴室、シャワー室のほか脱衣室、更衣室が含まれる。 ●望ましい水準 ・公共的施設において浴室・シャワー室等を設置する場合にあっては、9の項に定める構 造とすること。 ・必要に応じて、腰掛台、脱衣ベンチを設置すること。 ●整備基準 (1)出入口の構造:出入口は、次に掲げるものであること。 ア 有効幅員は、80センチメートル以上とすること。 イ 戸を設ける場合には、1の項(2)エ(イ)に掲げるものであること。 ●望ましい水準 ・有効幅員は90センチメートル以上とすること。 ●整備基準 (2)浴槽等の設置:浴槽、シャワー、手すり等が適切に配置されていること。 ●解説 ・浴槽を設ける場合は、障害者等の円滑な利用に配慮した高さとすること。車いす使用者 が浴槽に移動しやすいよう移乗用腰掛台等を設けるなど配慮する必要がある。 ・シャワー及び水栓を設ける場合は、障害者等が円滑に利用できる構造とすること。 ・シャワー及び水栓は、座ったままで利用できるようにし、水栓はレバー式等操作のしや すいものとすること。 ・手すりは、一連の動作が円滑にできるよう連続して設けるなど配慮すること。 ・床仕上げ面から手すりの上端までの高さは、原則として、2段の場合は、上段75〜85セ ンチメートル程度、下段60〜65センチメートル程度とし、一段の場合は、75〜85センチ メートル程度とすること。 ・原則として、断面が円形(直径3〜4センチメートル程度)か楕円型とすること。 ・壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを4〜5センチメートル程度とすること。 ・手すりの端部は、壁面側又は下方に巻き込むなど端部が突出しない構造とすること。 ●望ましい水準 ・給湯設備は、温水の温度を容易に変えることができるものとすること。 ・手すりは出入口から水洗器具まで連続して設けること。 ●整備基準 (3)空間の確保:車いす使用者が円滑に利用することができるよう十分な空間が確保さ れていること。 ●解説 ・浴室室内で車いす使用者が回転できるスペース(径150センチメートル以上)を確保す る。 ●整備基準 (4)床面の仕上げ:床面は、滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・ノンスリップ加工を施す等、濡れた状態でも滑りにくい仕上げ、材料を選択すること。 ・マットを設ける場合は、埋込み式とするなど足を取られたり、車いすの通行の支障とな らないよう配慮すること。 10 客室 ●基本的な考え方 ・利用者の休憩若しくは宿泊に供する客室等を設ける場合は、高齢者、障害者等が円滑に 利用できる客室を一定数以上整備する。 ・高齢者、障害者等が利用する客室は、移動の困難を考慮して、避難上有効な廊下又は階 段に接近して設ける。 ・車いす使用者、視覚障害者、聴覚障害者の緊急時の対応として、視覚・音声伝達設備の 設置や誘導職員の適正な配置を行う。 ・宿泊施設の職員は、高齢者や障害者への対応方法に関する知識の習得に努め、利用者に 安心してくつろげる施設を提供する。 ●整備基準 ・別表第1の4の項及び10の項に掲げる公共的施設において、不特定かつ多数の者が利用 し、又は主として障害者等が利用する客室を設ける場合は、次に定める構造の客室を1 (客室数の合計が100室を超えるときは、客室数の合計に100分の1を乗じて得た数、ただ し、その数に1未満の端数があるときは、これを1に切り上げるものとする。)以上設け ること。 ●解説 ・「別表第1の4の項及び10の項に掲げる公共的施設」とは、福祉施設および宿泊施設の ことである。 ・ホテル又は旅館には、客室の総数が200以下の場合は当該客室の総数に50分の1を乗じて 得た数以上、客室の総数が200を超える場合は当該客室の総数に100分の1を乗じて得た数 に2を加えた数以上の車いす使用者用客室を設けること。 ・視覚障害者や聴覚障害者に配慮した構造の電話機、又はファクシミリ等を設置すること。 ・非常呼び出しボタン、フラッシュベルなどの緊急通報装置を室内に設けること。 ●整備基準 (1)出入口の構造:出入口は、次に掲げるものであること。 ア 有効幅員は、80センチメートル以上とすること。 イ 戸を設ける場合には、1の項(2)エ(イ)に掲げるものであること。 ●望ましい水準 ・有効幅員は90センチメートル以上とすること。 ・ドアノックをフラッシュベルに変える装置を設置すること。 ●整備基準 (2)床面の仕上げ:床面は、滑りにくい材料で仕上げること。 ●整備基準 (3)手すりの設置:必要に応じて、手すりを設けること。 ●整備基準 (4)客室の広さ:車いす使用者が円滑に移動し、回転できるように十分な広さを確保す ること。 ●整備基準 (5)ベットの高さ:ベッドを設ける場合は、車いすの座面の高さと同程度の高さを確保 すること。 ●整備基準 (6)便所の構造:便所は、次に掲げるものであること。ただし、別表第1の4の項に掲 げる公共的施設において客室の外部にみんなのトイレを設ける場合及び別表第1の10の項 に掲げる公共的施設において当該客室が設けられている階に不特定かつ多数の者が利用す る便所(車いす使用者用便房が設けられたものに限る。)が1以上(男子用及び女子用の 区別があるときは、それぞれ1以上)設けられている場合は、この限りでない。 ア 便所内に車いす使用者用便房を設けること。 イ 車いす使用者用便房及び当該便房が設けられている便所の出入口は、次に掲げるもの であること。 (ア)有効幅員は、80センチメートル以上とすること。 (イ)戸を設ける場合には、1の項(2)エ(イ)に掲げるものであること。 ●解説 ・8の項(1)に定める便所(みんなのトイレ)ほどの床面積までは要求しないが、少な くとも車いすに乗ったまま進入し、利用できる構造とすること。 ●整備基準 (7)浴室の構造:浴室、シャワー室等は、次に掲げるものであること。ただし、当該客 室が設けられている建築物に不特定かつ多数の者が利用する浴室、シャワー室等(次に掲 げるものに限る。)が1以上(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ1以上) 設けられている場合は、この限りでない。 ア 浴槽、シャワー、手すり等が適切に配置されていること。 イ 車いす使用者が円滑に利用することができるよう十分な空間が確保されていること。 ウ 出入口は、(6)イに掲げるものであること。 エ 床面は、滑りにくい材料で仕上げること。 ●解説 ・シャワー及び水栓は、座ったままで利用できるようにし、水栓はレバー式等操作のしや すいものとすること。 ・床面は、滑りにくい仕上げとすること。 ・マットを設ける場合は、埋込み式とするなど足をとられたり、車いすの通行の支障とな らないよう配慮すること。 ・必要に応じて手すりを設けること。 ・床仕上げ面から手すりの上端までの高さは、原則として、2段の場合は、上段75〜85セ ンチメートル程度、下段60〜65センチメートル程度とし、一段の場合は、75〜85センチ メートル程度とすること。 ・原則として、断面が円形(直径3〜4センチメートル程度)か楕円型とすること。 ・壁面に設置する場合は、壁と手すりのあきを4〜5センチメートル程度とすること。 ・手すりの端部は、壁面側又は下方に巻き込むなど端部が突出しない構造とすること。 ●望ましい水準 ・給湯設備は、温水の温度を容易に変えることができるものとすること。 11 客席及び舞台 ●基本的な考え方 ・利用者の利用に供する客席及び舞台を設ける場合は、高齢者、障害者等が円滑に利用で きる客席を一定数以上整備するとともに、舞台への移動経路を確保する。 ・客席の計画にあたっては、高齢者や障害者等が友人や家族とともに利用できるように配 慮する。 ・客席は、避難出入口が円滑に利用できる位置とし、利用者が客席を選択できるよう配慮 する。 ・聴覚障害者のための集団補聴装置、字幕等について配慮する。 ●整備基準 別表第1の1の項、2の項、4の項及び13の項から15の項までに掲げる公共的施設におい て、不特定多数の者又は主として障害者等の利用に供する客席及び舞台を設ける場合は、 次に定める構造とすること。 ●解説 ・総客席数、車いす使用者客席数には、固定式客席数のほか、可動式客席数を含む。 ●望ましい水準 ・公共的施設において客席及び舞台を設置する場合にあっては、11の項に定める構造とす ること。 ●整備基準 (1)車いす使用者用客席の設置:次に定める構造の車いすで利用できる席(以下「車い す使用者用客席」という。)を2(客席数の合計が500席を超えるときは、客席数の合計 に200分の1を乗じて得た数。ただし、その数に1未満の端数があるときは、これを1に 切り上げるものとする。)以上設けること。 ア 1席当たりの幅は90センチメートル以上、奥行きは140センチメートル以上とするこ と。 イ 床面は、滑りにくい材料で仕上げること。 ウ 車いす使用者用客席に至る通路は、5の項(2)アからウに定める構造とすること。 ●解説 ・車いすのJIS規格における最大値(全幅70センチメートル、全長120センチメート ル)に余裕幅を加えたものだが、可動式の席に車いす使用者席を設けた場合はこの限りで ない。 ・マットを設ける場合は、埋込み式とするなど足を取られたり、車いす使用者の通行の支 障とならないよう配慮すること。 ●望ましい水準 ・取外しができる客席を設け様々な状況に対応できるようにすること。 ・親子席ブース等を設置すること。 ・車いす使用者用客席は車いす使用者の目線を確保するなど観覧しやすい位置に設けるこ と。 ●整備基準 (2)舞台への経路:障害者等が支障なく客席又は舞台そで口から舞台に上がることがで きるような経路をそれぞれ1以上確保すること。 ●解説 ・障害者等が容易に舞台に上がれるよう、傾斜路や昇降機の設置等により経路を確保する こと。 ・舞台に上がる経路には、転落防止措置を講ずること。 ・楽屋においても障害者等の利用に配慮し、楽屋と舞台の円滑な経路を確保すること。 12 案内板等 ●基本的な考え方 ・案内板及び案内表示等を設ける場合は、高齢者、障害者等が、建築物を円滑に利用でき るよう表示する。 ・案内・誘導表示については、設置場所・高さ・文字の大きさ・形状、分かりやすさなど 十分に配慮する。 ・車いす使用者、視覚障害者、聴覚障害者が緊急時の避難から取り残されないよう、音 声・振動情報伝達設備など適切に設ける。 ●整備基準 (1)車いす使用者用駐車区画等の標識の設置:障害者等が円滑に利用できるように、車 いす使用者用駐車区画、エレベーター等又はみんなのトイレの付近には、それぞれ当該車 いす使用者用駐車区画、エレベーター等又はみんなのトイレがあることを表示する標識を 設けること。ただし、小規模無床診療所、小規模店舗、小規模共同住宅及び小規模興行・ 遊興施設並びに別表第1の7の項、8の項(寄宿舎の用に供するものに限る。)、9の項、 12の項、16の項から18の項までに掲げる公共的施設にあっては、この限りでない。 ●解説 ・標識は、障害者等の見やすい位置に設けること。 ・当該標識に表示すべき内容が容易に識別できるもの(当該内容が日本工業規格Z8210に 定められているときは、これに適合するもの)とすること。 ・車いす使用者用駐車区画の表示は、区画内の路面及び立て看板等により分かりやすい方 法で表示すること。 ●望ましい水準 ・公共的施設において標識及び案内設備を設ける場合にあっては、12の項に定める構造と すること。 ●整備基準 (2)案内板その他の設備の設置:障害者等が円滑に利用できるよう案内板その他の設備 を次のように設けること。ただし、案内所を設ける場合はこの限りでない。 ア 建築物(小規模無床診療所、小規模店舗、小規模共同住宅及び小規模興行・遊興施設 並びに別表第1の7の項、8の項(寄宿舎の用に供するものに限る。)、9の項、12の項、 16の項から18の項までに掲げる公共的施設を除く。以下(2)において同じ。)又はその 敷地には、当該建築物又はその敷地内の車いす使用者用駐車区画、エレベーター等又はみ んなのトイレの配置を表示した案内板その他の設備を設けること。ただし、当該車いす使 用者用駐車区画、エレベーター等又はみんなのトイレの配置を容易に視認できる場合はこ の限りでない。 イ 建築物又はその敷地には、当該建築物又はその敷地内のエレベーター等又はみんなの トイレの配置を点字及び文字等の浮き彫り、音声等(条例第4章の規定の適用を受ける特 別特定建築物(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第 91号)第2条第17項に規定する特別特定建築物及び条例第29条各号に掲げる同法第2条第 16号に規定する特定建築物をいう。)以外の公共的施設にあっては、点字)により視覚障 害者に示すための設備を設けること。 ●解説 ・特に駐車区画が多数あり、複数の場所にわたる大規模な駐車場にあっては、当該出入口 から車いす使用者用駐車区画に至る経路について誘導のための表示を行うこと。 ・大きく分かりやすい平易な文字、記号、図等で表記し、これらの色彩は地色と対比効果 があるものとすることにより、子どもや知的障害者を含む、より多くの人が理解できるよ うに配慮すること。 ・案内板表示面の高さは、原則として床面より50センチメートルから150センチメートル 程度の範囲とし、車いす使用者や弱視者等に見やすい高さに設けること。(この基準は利 用者が板面から100センチメートル程度の距離から見ることを想定している。) ・弱視者等が接近して読むことができる位置に設置すること。 ・障害者等の通行の支障にならないような位置に設け、車いす使用者が近づけるよう十分 なスペースを確保すること。 ・照明装置を設ける場合は、十分な照度を確保すること。 ●望ましい水準 ・知的障害者に分かりやすい文字、大きさ、言葉の統一を行うこと。 ・漢字、ひらがな、ピクトなどを組み合わせて案内すること。 ・案内板付近には触知図等を設置すること。 ●整備基準 (3)明度差等の確保:前2項に定める標識及び案内板その他の設備の設置にあたっては、 その表記内容について、色の識別をしにくい者が円滑に利用できるように、見分けやすい 色の組み合わせを用いて表示要素ごとの明度、色相、及び彩度の差を確保するよう配慮す ること。 ●解説 ・「表記内容について色の識別をしにくい者が円滑に利用できるように、見分けやすい色 の組み合わせを用いて」とは、標識や案内板において、障害者等が円滑に利用できるエレ ベーターその他の昇降機、便所又は駐車場があることを示す文字や図記号、区画表示等が、 背景色と対比して視認しやすいものであることをいう。 見分けやすい色の組み合わせについては、次の項目について、適切な方法により確認する こと。 1見分けにくい色の組み合わせ(赤と黒、赤と緑、緑と茶色、黄緑と黄色、紫と青、赤と 茶色、水色とピンク色など、パステル調どうし、蛍光色どうしの色の組み合わせなど)が されていないこと。 2上記によりがたい場合は、文字や図記号の併記又は色と色との境界への縁取りなどの措 置がとられていること。  適切な方法とは、案内板の種類や想定される利用者、表示内容、情報量、色使いの多寡 に応じ、目視、白黒コピー、シミュレーションソフト、利用者の意見聴取の実施等をいう。  上記によりがたい場合とは、従前より情報として用いてきた色を変更することが難しい 場合等の対応をいう。 (参考) ・色の選択  視認しにくい色:濃い赤(⇔朱墨の色、オレンジ)、黄緑色、暗い緑(⇔青みの強い 緑)、青紫(⇔赤紫)、黄色や水色(細い線や小さい字の時) ・組み合わせ:暖色系と寒色系、明るい色と暗い色を対比 13 誘導設備 ●基本的な考え方 ・非常時における誘導用設備は、高齢者や障害者等の利用特性を考慮し、円滑な避難誘導 が行われ、安全に建物外部に出られるように配慮する。 ・特に、高齢者や車いす使用者の場合は、移動しやすい避難通路の確保、視覚障害者や聴 覚障害者については、視覚及び音声を利用した誘導案内を設ける。 ●整備基準 ・非常時に障害者等が安全に外部に出られるように、次に定める構造とすること。 ●整備基準 (1)非常口の構造:非常口とするものについては、段を設けないこと。 ●解説 ・雨仕舞等による段差は、段と見なさない。 ●整備基準 (2)非常口等における点滅灯等の設置:非常口、廊下等及び階段の必要な箇所には、非 常時を知らせる点滅灯又は点滅灯と連動した電光表示板を設けるよう努めること。 ●整備基準 (3)一斉放送設備:一斉放送できる設備を設けるよう努めること。 14 カウンター及び記載台又は公衆電話台 ●基本的な考え方 ・カウンター及び記載台若しくは公衆電話台を設ける場合は、高齢者、障害者等が円滑に 利用できる構造とする。 ・車いす使用者、視覚障害者、聴覚障害者の利用に配慮して、高さ、見やすさ、使いやす さに十分配慮する。 ●整備基準 ・カウンター及び記載台又は公衆電話台を設ける場合は、次に定める構造のカウンター及 び記載台又は公衆電話台をそれぞれ1以上設けること。ただし、無床診療所、小規模店舗、 小規模興行・遊興施設及び別表第1の8の項に掲げる共同住宅にあっては、この限りでな い。 ●望ましい水準 ・公共的施設においてカウンター及び記載台又は公衆電話台を設ける場合にあっては、14 の項に定める構造とすること。 ●整備基準 (1)カウンター等の構造:カウンター及び記載台又は公衆電話台の高さは、車いす使用 者が利用しやすい高さとし、かつ、下部には、車いす使用者が円滑に利用できる構造のけ こみを設けること。 ●解説 ・けこみの一部は、高さ65センチメートル程度、奥行き45センチメートル程度とすること。 ・筆談用のメモなどを準備し、聴覚障害者とのコミュニケーションに配慮すること。 ・車いす使用者が利用できるようカウンターの一部は、高さ75センチメートル程度とする こと。 ●望ましい水準 ・視覚障害者等に配慮し、立位のカウンターを設けること。 ●整備基準 (2)公衆電話機の構造:公衆電話機は、障害者等が円滑に利用できる構造とすること。 ●解説 ・公衆電話台の高さは、75センチメートル程度とし、台下の高さを65センチメートル程度 とすること。 ・ダイヤルやボタンの中心の高さは、100センチメートル程度とする。 ・けこみの奥行きは、45センチメートル程度確保すること。 ・音声増幅装置付き電話機を設置するよう努めること。この場合、分かりやすい位置にそ の旨表示すること。 ●望ましい水準 ・必要に応じて、施設の受付等にファクシミリを備えること。 (自動販売機等の構造) ・車いす使用者が接近できるよう十分なスペースを確保し、前面に段や障害物がないよう に配慮すること。 ・操作ボタン、金銭投入・取出口等は、障害者等が円滑に利用できる構造とすること。 ・現金自動預入・支払機の操作はタッチパネル式でないものも置くこととし、点字表示も 行うこと。 (水飲みの構造) ・水飲みの構造は壁掛け式とするなどにより下部に車いす使用者のひざが入るスペース (高さ65センチメートル程度、奥行き45センチメートル程度)を確保すること。 ・給水栓は、光電式、ボタン又はレバー式とし、足踏み式のものは手動式のものも併設す ること。 15 視覚障害者の安全かつ円滑な利用に必要な設備 ●基本的な考え方 ・視覚障害者が施設を安全かつ円滑に利用できるよう、音声案内、視覚障害者誘導用ブロ ック等を適切に設ける。 ・視覚に代わる情報伝達方式は、複数の方法を併用して活用する。 ・白杖等の使用者は、歩行中足下から上部の情報が入手しにくい。上部のみに突出した構 築物は衝突の危険があるので避ける。 ●整備基準 (1)視覚障害者用誘導ブロックの敷設等:道等から12の項(2)イに定める構造の設備 又は案内所までの経路(駐車場から4の項に定める構造の出入口等に至る経路を除く。) は、そのうち1以上を、次に掲げる視覚障害者が円滑に利用できる経路とすること。ただ し、小規模無床診療所及び小規模店舗及び小規模興行・遊興施設並びに別表第1の7の項 から9の項まで及び16の項に掲げる公共的施設にあっては、この限りでない。 ●望ましい水準 ・公共的施設においては、15の項に定める設備を設けること。 ・会議等では、点字資料や録音テープ等を用意すること。 ●整備基準 ア 視覚障害者用誘導ブロックの敷設:視覚障害者の誘導を行うために、線状ブロック等 (床面に敷設されるブロックその他これに類するものであって、線状の突起が設けられて おり、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別 できるものをいう。以下同じ。)及び点状ブロック等(床面に敷設されるブロックその他 これに類するものであって、点状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明 度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものをいう。以下同じ。)を 適切に組み合わせて敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設 けること。ただし、進行方向を変更する必要がない風除室内においては、この限りでない。 ●解説 (視覚障害者誘導用ブロックの構造) ・形状については、JIS T9251によるものを使用する。 ・色は、黄色を原則とすること。ただし、周辺の床材との対比を考慮して、明度差あるい は輝度比などが十分に確保できず、かつ安全で連続的な道すじを明示できない場合は、こ の限りではない。 ・十分な強度を有し、滑りにくく、耐久性、耐摩耗性に優れたものとすること。 (視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法) ・車いす使用者やベビーカー等での通行に支障がないよう敷設するとともに、構築物等の 壁面から通行の支障とならない距離を確保すること。 ・病院や高齢者が入所する福祉施設、幼児が利用する保育所等の施設においては、視覚障 害者誘導用ブロックの敷設が利用者の利用に支障をきたさないようにすること。もっぱら 高齢者等が利用する入所型高齢者施設における誘導措置については、誘導用ブロックを整 備する代わりに手すり・音声による案内設備等を設置することも考えられる。 (敷設位置) ・受付等の前に敷設する点状ブロックの位置は、受付等の前端から30センチメートル程度 離れた箇所とすること。 (音声その他の方法) ・音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備とは、音声装置、誘導チャイム等を いう。 ●望ましい水準 ・視覚障害者が利用することの多い施設の出入口の1以上には音声誘導装置を設けること。 ●整備基準 イ 敷地内通路:経路を構成する敷地内の通路の次に掲げる部分には、視覚障害者に対し 警告を行うために、点状ブロック等を敷設すること。 (ア)車路に近接する部分 (イ)段がある部分又は傾斜(こう配が20分の1を超えないもの及び高さが16センチメー トルを超えず、かつ、こう配が12分の1を超えないものを除く。)がある部分の上端に近 接する部分 ●整備基準 (2)傾斜路等の敷設:次の場所(別表第1の8の項に掲げる公共的施設のうち、共同住 宅(小規模共同住宅を除く。)にあっては、ア(6の項に定める構造の階段の上端に近接 する廊下等の部分に限る。)及びエに掲げる場所に限る。)は、視覚障害者が円滑に利用 できるように、点状ブロック等を敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導 する設備を設けること。ただし、小規模無床診療所、小規模店舗、小規模共同住宅及び小 規模興行・遊興施設並びに別表第1の7の項、8の項(寄宿舎の用に供するものに限 る。)、9の項及び16の項に掲げる公共的施設にあっては、この限りでない。 ●整備基準 ア 傾斜路等の上端及び下端:2の項に定める構造の傾斜路及び6の項に定める構造の階 段の上端及び下端に近接する廊下等の部分 ●解説 ・傾斜路の上端及び下端に敷設する点状ブロックの位置は、傾斜路の始終端部から30セン チメートル程度離れた箇所とすること。 ・階段の上端及び下端に敷設する点状ブロックの位置は、階段の始終端部から30センチ メートル程度離れた箇所とすること。 ●整備基準 イ 踊場:2の項に定める構造の傾斜路の傾斜(こう配が20分の1を超えないもの及び高 さが16センチメートルを超えず、かつ、こう配が12分の1を超えないものを除く。)があ る部分の上端に近接する踊場(駐車場に設けるものを除く。)の部分(傾斜がある部分と 連続して手すりを設ける場合はこの限りでない。) ●整備基準 ウ 主要な出入口等の戸の構造:4の項(1)に定める構造の主要な出入口等のうち、そ れぞれ1以上の主要な出入口等(屋内に設ける改札口及びレジ通路を除く。) 又は各利 用居室相互間の経路の出口の戸の前後 ●整備基準 エ 階段の上端及び下端:6の項に定める構造の階段(駐車場に設けるものを除く。)の 段がある部分の上端に近接する踊場の部分(段がある部分と連続して手すりを設ける場合 はこの限りでない。) ●整備基準 オ エスカレーターの端部等:エスカレーターの端部等、特に視覚障害者の注意を喚起す ることが必要である場所 ●解説 ・エスカレーター前に敷設する点状ブロックの位置は、エスカレーター始終端部の点検蓋 から30センチメートル程度離れた箇所とすること。 ●望ましい水準 ・エスカレーターの始終端部では、音声等により視覚障害者等へ注意を喚起すること。 ・逆乗り防止のセンサーを設けること。 ・乗降口に誘導柵を設けること。 ●整備基準 (3)手すりへの点字その他の案内設備の設置:2の項に定める構造の傾斜路、5の項に 定める構造の廊下等及び6の項に定める構造の階段に設ける手すりの端部には、必要に応 じて、点字その他の案内設備を設けること。 ●解説 ・「点字その他の案内設備」とは、点字のほか、音声案内等をいう。 手すりの点字その他の案内設備においては、現在位置や行き先、上下階の情報を確認でき、 目的地への移動の支援となるような内容とすること。 ・点字は、はがれにくいものとすること。 ●整備基準 (4)出入り口への点字その他の案内設備の設置:8の項に定める構造の便所及び10の項 に定める構造の客室の出入口には、点字その他の案内設備を設けること。 ●解説 ・8の項(1)に定める構造の便所(みんなのトイレ)においては、現在位置や構造及び だれもが利用できる便所である旨を案内すること。 ・8の項(2)に定める構造の便所においては、現在位置や構造及び男女の区別があると きは、当該区別を案内すること。 ・10の項に定める構造の客室においては、現在位置及び部屋番号等を案内すること。 ・点字による案内設備は、床から中心までの高さを140〜150センチメートルとすること。 ・点字は、はがれにくいものとすること。 ●望ましい水準 ・集会、案内機能を有する居室(事務室、集会室、相談室など)等を設ける場合は、出入 口に点字等により、現在位置及び部屋番号等を表示すること。 ●整備基準 (5)エスカレーターのくし板:エスカレーターを設ける場合には、くし板をステップ部 と区別しやすい色とすること。 16 聴覚障害者の安全かつ円滑な利用に必要な設備 ●基本的な考え方 ・聴覚障害者が施設を安全かつ円滑に利用できるように、文字情報表示を適切に行う。 ・視覚による情報入手が不可欠なため、見通しのよい空間計画が求められる。 ・緊急誘導などの情報伝達は、光又は振動などを併用し、かつ連続的に行う。 ・聴覚障害者の施設利用への対応としては、手話通訳者を適宜配置する。 ●整備基準 ・聴覚障害者が安全かつ円滑に利用できるように、次のように整備すること。 ●望ましい水準 ・主要な階段の踊場、廊下・地下街等の曲がり角には必要に応じて衝突を防止するための 鏡を設置すること。 ●整備基準 (1)文字情報表示設備の設置:別表第1の3の項に掲げる医療施設(無床診療所を除 く。)及び5の項((1)又は(2)の用に供するものに限る。)に掲げる商業施設にお いて、利用者(施設を利用し、当該施設においてサービス等の提供を受ける者をいう。以 下同じ。)の案内、呼び出しのための窓口等を設ける場合は、文字により情報を表示する 設備を1以上の窓口等に設けること。 ●解説 ・別表第1の3の項に掲げる医療施設(無床診療所を除く。)及び5の項((1)又は (2)の用に供するものに限る。)に掲げる商業施設」とは、無床診療所を除く医療施設、 公益事業所及び金融機関のことである。 ・窓口等とは、病院、金融機関等において診察や支払い等の順番の呼び出し等を行う場所 をいう。 ・「文字情報を表示するための設備」には、発光ダイオードや液晶等の電光表示板等が考 えられる。 ・あわせて、ソフト面として、筆談ができる備品の整備等がある。 ●望ましい水準 ・その他の公共的施設においても、音声での情報を提供する際は、文字による情報提供を 行うこと。 ●整備基準 (2)文字表示設備の設置:別表第1の1の項、2の((2)から(4)までの用に供す るものに限る。)及び4の項に掲げる公共的施設において、利用者の利用に供する会議室 を設ける場合は、スクリーン等を備え、スクリーン等に文字を映し出せる機器を設けるこ と。 ●解説 ・「別表第1の1の項、2の項((2)から(4)までの用に供するものに限る。)及び 4の項に掲げる公共的施設」とは、官公庁施設、図書館等、動物園等、集会場及び福祉施 設のことである。 ・「文字を映し出せる機器」には、OHP、パソコンプロジェクター等がある。 ●望ましい水準 ・その他の公共的施設においても会議室を設ける場合にあっては文字表示設備を設けるこ と。 ●整備基準 (3)難聴者の聴力を補う設備の設置:別表第1の1の項、2の項、4の項及び13の項か ら15の項までに掲げる公共的施設において、利用者の利用に供する客席を設ける場合は、 難聴者の聴力を補う設備を設けるよう努めること。 ●解説 ・「別表第1の1の項、2の項、4の項及び13の項から15の項までに掲げる公共的施設」 とは、官公庁施設、教育文化施設、福祉施設、運動施設、興行・遊興施設および展示施設 のことである。 ・「難聴者の聴力を補う設備」には、磁気ループ等を利用した集団補聴装置や、FM補聴 装置、赤外線補聴装置、字幕、文字情報等を表示する装置等がある。 ●望ましい水準 ・音声放送の文字化(字幕等)を行うこと。 ・その他の公共的施設においても客席を設ける場合にあっては難聴者の聴力を補う設備を 設けること。 ●整備基準 (4)手話通訳者の配置:別表第1の1の項に掲げる官公庁施設、2の項(2)に掲げる 教育文化施設、3の項に掲げる医療施設(無床診療所を除く。)及び4の項に掲げる福祉 施設において、受付等を設ける場合は、手話通訳者を配置するよう努めること。 ●望ましい水準 ・その他の公共的施設においても受付を設ける場合にあっては、手話通訳者を配置し、聴 覚障害者への対応を図るようにすること。 17 休憩、授乳場所等 ●基本的な考え方 ・高齢者、障害者をはじめ、すべての人が円滑に利用できる休憩及び授乳場所等を1以上 整備する。 ・休憩室には、妊産婦も休憩できるスペースを設ける。 ●整備基準 ・利用者の利用に供する休憩、授乳のための場所等を設けるように努めること。 ●解説 ・「休憩、授乳のための場所等」には、休憩及び 授乳場所のほか、おむつ替えの場所等 が含まれる。 ・休憩、授乳場所等の出入口の付近には、分かりやすい案内表示を行うこと。 ●解説 (休憩場所) ・場所や形態については、施設の空間を有効に活用し、利用者の状況に即したものを設け ることが望ましい。障害者等が円滑に利用できるものとし、廊下等の有効幅員が不足する ことのないよう注意する必要がある。 (授乳場所) ・乳幼児を連れた者が長時間利用する施設にあっては、授乳、おむつ替え等のできる場所 を設けること。 ・授乳のための場所は、カーテンやついたて等によりプライバシーを確保し、腰掛を備え ること。 ・乳幼児を立たせておむつ替えを行うための着替え台を設置すること。 ・乳幼児用のベッドやいすは、転落防止措置に配慮し適切に配置するとともに、ベビー カー等での通行にも配慮すること。 ・手洗い、流し台、給湯器のほか、おむつ等を捨てるための大きめの汚物入れを設けるこ と。