バリアフリーフェスタかながわ2013結果報告書 平成26年6月 神奈川県バリアフリー街づくり推進県民会議 バリアフリーフェスタかながわに関する企画部会 第1章 「バリアフリーフェスタかながわ2013」の趣旨 1 目的 ○ 神奈川県バリアフリー街づくり推進県民会議(以下「県民会議」という。)では、障害者、高齢者、妊産婦、乳幼児連れの方などが安心して生活し、自らの意思で自由に移動し、社会に参加できる街づくりを進めている。 ○ その一環として、県内の障害者等の関係団体や事業者・NPO団体、県民からの公募委員、大学、行政の協働により、「バリアフリーフェスタかながわ2013」(以下「フェスタ」という。)を、相模原市内の商業施設において開催した。 ○ このフェスタは、県民会議内に設置された実行委員会が企画・立案したもので、その目的は、平成24年9月に県民会議が取りまとめた提案書を広く県民に周知するとともに、バリアフリーの街を体感してもらうことで、バリアフリーの街づくりに対する理解を深めていただくことにある。 〔企画・立案に当たっての考え方〕 ・ 県民会議の理念に基づき、県民・事業者・行政が協働で実施する。 ・ 県民から広く意見を募るよう、開催会場は誰もが自由に参加できるような場を設定する。 ・ 当事者団体・事業者団体からの参加を積極的に促す。 ・ 県民から多くの意見をもらう形式とする。 ・ 来場者が気軽・身近に感じられる内容や参加型・体験型の内容を中心とする。 ・ ユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、来場者の誰もが安全・安心に参加できるように配慮したイベントとする。 2 概要 (1) 日時 平成25年11月17日(日) 11:00〜16:00 (2) 場所 アリオ橋本(相模原市緑区大山町1番22号 「橋本駅南口」徒歩5分) (3) 主催 神奈川県バリアフリー街づくり推進県民会議 構成:学識経験者(4)、障害者団体(7)、関係団体(3)、事業者(8)、公募委員(2) 計24名 (4) 内容 ○ 県民会議構成団体を含む14団体が13コーナーを企画し、運営 〔主なコーナー〕 ・ 盲導犬、聴導犬、介助犬の仕事を学べるコーナー ・ 車いすの介助や乗車体験ができるコーナー ・ 簡単な手話を学べるコーナー ・ 自分の家のバリアフリーをチェックするコーナー ・ ぬりえをして色のバリアフリーについて知るコーナー など ○ スタンプを集めると景品がもらえるスタンプラリーの実施 〔スタンプラリーの達成条件〕 ・ コーナー2か所、アリオ橋本内バリアフリー設備2か所、合計4か所のスタンプを、それぞれ集めること ・ スタンプラリー台紙裏面のアンケートに回答すること (5) 参加者数 ・ コーナー参加者数 1,825名(各団体でカウントした参加者の合計人数) ・ スタンプラリー達成者数  341名(回収したスタンプラリー台紙のスタンプ押印数は、1,508個) ・ 景品交換者数  332名 3 広報 ○ 東洋大学デザインチームの協力を得て、実行委員会でイベント周知用の「ちらし」を作成した。 ○ 各団体においては、団体内の会員を始め、様々なツールを用いて広く参加を呼びかけた。具体的な広報としては次のとおりである。 1 団体内への広報用「ちらし」配付 ・各団体ホームページ ・会員へのメール 2 広報用「ちらし」の一般配布 ・アリオ橋本のインフォメーション(イトーヨーカドー) ・手話サークル(聴導犬育成の会) ・ろう学校(聴導犬育成の会) ・獣医大学祭り(聴導犬育成の会) ・街頭募金(聴導犬育成の会) ・橋本駅構内(東日本旅客鉄道) ・長津田駅広報スタンド(佐藤光良氏) ・組合事務所(神奈川県旅館生活衛生同業組合) ・産業能率大学、東洋大学(同左) 3 インターネットでの告知 ・ホームページ ・Twitter ・Facebook 4 広報媒体への掲載 ・団体定期刊行物(神奈川県視覚障害者福祉協会) ・当会発行の会報(聴導犬育成の会) ・県のたより(神奈川県) 5 テレビやラジオなどマスコミを使った告知 ・アール・エフ・ラジオ日本「夏木ゆたかのホッと歌謡曲」 ・タウンニュースさがみはら緑区版11月7日号(神奈川県) ・神奈川新聞県民の窓11月9日号(神奈川県) 6 その他 ・行きつけのラーメン屋・床屋に配架(神奈川県障害者自立生活支援センター) ・スタッフ近隣住民(聴導犬育成の会) ・神奈川県建築士事務所協会会員へメールでお知らせ(佐藤光良氏) ・アリオ橋本周辺小学校(神奈川県) ※ 後述の実行委員会構成団体向けアンケートや開催前に事務局に寄せられた情報提供を基に作成 第2章 評価 1 アンケート結果 スタンプラリーの達成条件の1つとして、参加者に対してアンケートを実施した。 また、今後における県民会議の取組みの検討資料とするため、実行委員会構成団体に対してもアンケートを実施した。その結果は次のとおりである。 (1) 参加者アンケート Q1 今回のフェスタで、どのコーナーがよかったですか?(複数回答可) ・ 「よかった」と思った参加者数は、「体感してみよう車いす」(120名)「ぬりえで学ぶカラーバリアフリー」(118名)がともに約120名と多かった。〔図表1〕 ・ また、コーナー参加者のうち何割が「よかった」と思ったか集計したところ、「ぬりえで学ぶカラーバリアフリー」(68.5%)、「盲導犬デモンストレーション」(68.4%)、「体感してみよう車いす」(64.6%)、「気分爽快クイックマッサージ」(63.0%)、「あなたも簡単な手話を覚えてみませんか」(62.0%)がそれぞれ6割を超えて多かった。〔図表2〕 Q2 またバリアフリーフェスタに参加してみたいと思いますか? ・ 次回フェスタに「参加したい」(86.8%)が8割台に達した。〔図表3〕 Q3 本日の体験を通して、バリアフリーの取組に興味をもちましたか? ・ バリアフリーの取組みに、「興味をもった」(85.9%)が8割台に達した。〔図表4〕 Q4 本日の体験を通して、驚いたことや新しく知ったことなど、感想をお聞かせください。 〔主な意見〕 ・ 時間がなくてできなかったが、手話をやりたかった。(未就学児・男性) ・ 高さが異なる手すりを使って階段をのぼって、のぼりやすさが違って面白かった。(未就学児・男性) ・ きょうは、いろんなことをまなんでたのしかったです。とくにくるまいすがたいへんでした。(小学生・女性) ・ 車いすをおすのが自分ではたいへんなので、てつだってあげたい(小学生・女性) ・ もうどうけんのお仕事がいっぱいあると思っていたけど意外と少ない事が、わかったのでおどろいた!また、「バリアフリーフェスタ」に参加したいです。(小学生・女性) ・ 車いすはそうじゅうが難しくて自分で歩ける方がいいなと思った。手話は予想以上むずかしくて、覚えきれなそう。(小学生・女性) ・ 今学校の総合でバリアフリーの勉強がいみがわからなかったけど町にはいろんなバリアフリーがあるとしりました。(小学生・男性) ・ 私は盲導犬こうほせいをやっていたけど知らないことがあって知れてよかったです。(小学生・女性) ・ 家の中でも工夫や工夫できることを探してみようと思った。(小学生・女性) ・ もっとバリアフリーをすると、もっと良くなると思った。フェスタに行ってよかったと思う。(小学生・女性) ・ ぬりえで、いつも、自分で見ている色が、同じように、みえないことを知りました。(小学生・女性) ・ もっとスタンプがとりたかったです。(小学生・男性) ・ こうれいしゃの人は、町をあるいて、こんなにたいへんなことだな、とはじめてしりました。まえは、くるまいすにのってみたいな、とか思っていたけど、こういうたいけんをしてたいへんなことをもっとしりたいです。(小学生・女性) ・ しゅわのことがくわしくまなべました。またきたいと思いました。くるまいすもたのしかったです。(小学生・女性) ・ アリオ橋本自体でバリアフリーのとりくみをしていて、すごいと思いました。(一般20代・男性) ・ 色々体験できて、よかったです。(一般30代・女性) ・ バリアフリーは、社会全体で進めるべきことだと思う。しかし、企業が取り組まない=ダメな企業ではない、それぞれの立場で限られた予算で進めていることを知るべき。(一般30代・男性) ・ 子供が小さいこともあり、バリアフリーの大切さを日頃から、実感しています。是非、こどもセンターなどに来て、イベントをやってほしいです。(一般30代・女性) ・ カラーバリアフリーのことは今日初めてしりました。色々な意味でくらしやすい町づくりがますます進められることを望みます。(一般30代・女性) ・ もっとバリアフリーについて知りたいと思った。(一般40代・女性) ・ 小学校教諭です。総合の学習で福祉にとりくんでいる為、子どもたちにも声をかけて何人かきていました。こういう機会が身近な所でやっていただけるととてもありがたいです。(一般40代・男性) ・ 聴導犬についてくわしくしることができてよかった。手話通訳がいてたすかりました。(一般40代・女性) ・ 大変だと思いますが、年に何回かやって下さい&他の場所もお願いします(一般50代・男性) ・ 障害に対して、いろいろな解決方法があることがわかった。(一般60代以上・女性) ・ JRもきててびっくりした。内方線の実物がみたかった。(一般60代以上・女性)? Q5−1 よろしければ、あなた(アンケート回答者)のことを教えてください ア 参加者の性別 ・ 参加者の性別は、「女性」(62.8%)が6割台と多かった。〔図表5〕 イ 参加者の年代 ・ 参加者の年代は、「小学生」(35.5%)が3割台で最も多く、「その他一般40代」(15.5%)と「その他一般30代」(13.2%)が続いた。〔図表6〕 ウ 参加者の居住地 ・ 参加者の居住地は、「相模原市」(64.5%)が6割台と多かった。〔図表7〕 (参考1)コーナー参加数 ・ スタンプの押印数から1人当たりのコーナー参加数を集計したところ、「2か所」(23.2%)が最も多く、次いで「5か所」(20.2%)が多かった。〔図表8〕 (参考2)アリオ橋本バリアフリー設備ごとのスタンプ押印数 ・ アリオ橋本バリアフリー設備ごとのスタンプ押印数を集計したところ、「デジタルインフォメーションボード」(46.8%)と「お問い合わせコール」(43.7%)がともに4割台で多かった。〔図表9〕 (参考3)アリオ橋本バリアフリー設備のスタンプ押印箇所数 ・ スタンプの押印数から1人当たりのアリオ橋本バリアフリー設備押印箇所数を集計したところ、「2か所」(83.6%)が8割台に達した。〔図表10〕 (2) 実行委員会構成団体アンケート 問1 貴団体コーナーの参加人数(スタンプを押した人数)を教えてください。 ・ 第1章項番2「概要」に記載。 問2 フェスタでは、参加者に伝えたいことを伝えることはできましたか。 ・ 「伝えることができた」が回答数12団体のうち11団体に達した。〔図表11〕 問2−2 伝えることができなかった理由は何ですか。 ・ 「当日の対応時間が足りなかった」「フェスタの準備時間が足りなかった」「フェスタそのものの開催時間が足りなかった」という理由が挙げられた。 問3 貴団体以外のコーナーで、よかったと思うコーナーはどれですか。(複数回答3つまで) ・ 「よかった」と思った団体は、「あなたも簡単な手話を覚えてみませんか」、「気分爽快クイックマッサージ」、「体感してみよう車いす」がともに6団体と多かった。〔図表12〕 問4 貴団体において、今回のフェスタで行った広報を記載してください。 ・ 第1章項番4「広報」に記載。 問5 次回フェスタが開催されるとしたら、また参加したいと思いますか。 ・ 次回フェスタに「参加したい」が回答数21団体のうち13団体と多かった。〔図表13〕 問5−2 参加したいと思えなかった理由は何ですか。(複数回答可) ・ 「スタッフが確保できない」という理由が4団体と多かった。 ・ そのほかとして、「企画運営に関わるほうが適切」「他イベントとの調整」「会員からの発案が必要」「現時点では不明」といった回答があった。 2 分析 ○ 項番1で記した「参加者」及び「実行委員会構成団体」に対するアンケートなどを基に、フェスタの目的が達成できたかどうか検証する。 ○ 具体的には、第1章項番2で示した6つの「企画の考え方」、すなわち「(1) 協働」「(2) 不特定多数の参加」「(3) 当事者団体・事業者団体の参加」「(4) 多くの意見収集」「(5) 参加型・体験型」「(6) ユニバーサルデザイン」の観点から評価する。 (1) 協働 ○ 県民会議では、県民意見を基に、バリアフリーの街づくりに向けて、県民・事業者・行政が協働して取り組むべきことを、提案書としてまとめ、県民会議の構成団体を中心に、本提案に基づいた取組みを進めている。この取組みの一環として、県内の障害者等の関係団体や事業者・NPO団体、県民から公募委員、大学、行政の協働により、フェスタは開催された。 ○ 参加者から「いろいろな体験ができてよかった」と意見があったように、各団体の取組みを一堂に会したことで、参加者の多様なニーズに対応することができた。その結果、スタンプラリーの達成条件よりも多くのコーナーに参加・体験した参加者が7割台に達したことに加え、バリアフリーの取組みに「興味をもった」が8割に達するなど、高い満足度につながる一因となった。 ○ また、実行委員会構成団体から「各団体がそれぞれ主体性と責任をもって開催できた」と意見があったように、各団体ができることをフェスタの資源として提供することで、商業施設という会場設定や当事者による説得力など、一団体だけでは難しい開催形態を実現することができ、協働の相乗効果を発揮することができた。 (2) 不特定多数の参加 ○これまでバリアフリー関連のイベントは、より広く様々な立場の方々に参加を呼びかけていたものの、結果的にバリアフリーに興味のある方のみの参加にとどまることが多かった。 ○ 今回のフェスタでは、バリアフリーに興味のない方々にバリアフリーの街づくりに向けた取組みを知ってもらうため、1日数万人単位で人が集まる商業施設「アリオ橋本」を開催会場とした。 ○ 施設の特性上、子どもと若いパパ・ママという、いわゆる「ニューファミリー層」に偏りが見られたが、フェスタを目当てに来場した方だけでなく、買い物に来店したらたまたま開催していたので立ち寄ってみたという理由で来場する方もおり、不特定多数の参加を促すという目的は十分に達成された。 ○ また、コーナー参加者数約1,800名、スタンプラリー参加者数341名と、バリアフリー関連のイベントとしては、多くの人数を集客することができた。 (3) 当事者団体・事業者団体の参加 ○ 県民会議で取りまとめた提案書のテーマの1つとして、「多様な人が住まう「街」への気づき、障害者理解の促進」を挙げている。バリアフリーを推進するに当たっては、異なるニーズを持つ当事者同士が交流することにより他者への理解を深めるとともに、障害当事者の声を十分に聞くことが欠かせない。また、視覚障害の方にとって必要な視覚障害者用誘導ブロックは、高齢者や車いす利用者にとっては移動のバリアになることもあるなど、立場により考え方が相違していることから、障害当事者間の相互理解も必要である。こうした考え方を踏まえ、フェスタでは当事者団体や事業者団体の自主的な参加を促すことで、当事者同士が交流するきっかけを提供し、提案書のテーマを実践することとした。 ○ 参加者アンケートでは、バリアフリーの取組みに「興味をもった」が8割に達するなど、障害当事者の参加により説得力の効果が十分に現れた。また、実行委員会構成団体からも「こういう機会をもつことでそれぞれをつなぐことが目に見えて分かってきた」「それぞれの団体の方と話ができたことは有意義な時間でした。」と意見があったように、「当事者団体・事業者団体間」や「障害当事者間」における相互理解の促進に貢献することができた。 (4) 多くの意見収集 ○ ユニバーサルデザインの考え方に基づく街づくりを進めていくに当たっては、様々な立場の方の意見を聴き、取組みに反映していくことが重要である。そこで、フェスタでは、参加者に対してバリアフリーの街づくりに関する意見を聞けるよう、アンケートを実施し、スタンプラリーの達成条件の1つとした。 ○ スタンプラリー達成者341名のうち201名が自由意見を記載し、多くの意見を収集することができた。いただいた意見は、今後、必要に応じてバリアフリーの街づくりに向けた取組みに反映していくこととする。 (5) 参加型・体験型 ○ バリアフリー学習については、本人が実際に体験することが効果的と言われている。また、フェスタでは別の目的をもって来場した、不特定多数の方を呼び込む必要があったため、来場者が気軽・身近に感じられる内容とする必要があった。 ○ 各コーナーでは、車いす乗車・介助体験、手話教室、階段の昇降など、参加型・体験型の内容が多く、受入可能最大人数に近い参加者数を集客することができた上、参加者アンケートでもバリアフリーの取組みに「興味をもった」率が高かった。 ○ しかしながら、参加者アンケートの自由意見では、「大変だった」「楽しかった」「かわいそうだった」という内容が多く、「心のバリアフリー」の理解促進という点では物足りないところもあった。? (6) ユニバーサルデザイン ○ 県民会議の議論を踏まえ、フェスタでは来場者又はスタッフの誰もが安全・安心に参加できるように配慮したイベントとすることとした。 ○ 具体的には、 ・ 開催会場は、バリアフリー設備が充実した、アリオ橋本(第3回バリアフリー街づくり賞表彰施設)を設定 ・ 150cm以上の通路幅を確保 ・ 会場ごとに手話通訳者を配置 ・ 「ちらし」にSPコードを貼付 ・ 配布物・掲示物はカラーバリアフリーに配慮するとともに、できるだけふりがなを記載 といったように、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた運営としたことから、参加者からバリアを感じたという意見は寄せられなかった。 ○ なお、車いすのスタッフに対して、十分な施設内の駐車場を確保することができなかった。不特定多数の方が使う商業施設であるため、多数の駐車場を占有できないという制約はあったものの、課題の1つとして挙げられる。 3 まとめ フェスタについて、これまで6つの観点から検証してきたが、一部に課題はあったものの、おおむね高い評価が与えられるものであった。バリアフリーの街づくりに対する理解を深めるに当たって、フェスタは有効な手段であったと思われる。 また、参加者アンケートでは、次回フェスタに「参加したい」が8割に達し、実行委員会構成団体アンケートでも、13団体が「参加したい」と回答している。自由意見でも参加者・実行委員会構成団体ともに次回開催を望む声が多く寄せられた。 このように、フェスタの有効性・ニーズが高いことから、第1章項番2で示した6つの「企画の考え方」の考え方を踏まえつつ、継続的にフェスタを開催していくとよい。 第3章 今後の実施に当たっての課題 次回フェスタを開催するに当たり、検討すべき課題について、「実行委員会構成団体」に対するアンケートなどを基に、「概要」「運営面」の区分で記載する。 1 概要 (1) 企画の考え方 〔主な検討課題〕 ・ 根付きのための新たな「企画・立案に当たっての考え方」の検討 ○ バリアフリーの街づくりに向けたソフト的な取組みは、定期的に継続していくことが重要であり、フェスタについても継続性が求められる。今回のフェスタでは手探りで実施したものを、根付かせていく必要がある。 ○ そこで、今回の「企画・立案に当たっての考え方」は継承しつつ、根付きのための新たな「考え方」を付加することを検討する。 ○ なお、「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「継続学習に向けた興味を持続させるための仕掛けが必要」、「今後のバリアフリーフェスタかながわでは、その回毎に主題となるテーマを掲げるとよい」といった趣旨の意見もあった。 (2) 日程 ○ 天気に恵まれたこともあり、例年どおりの気温で、参加者及びスタッフから時期についての意見はなかった。開催会場の空き状況を踏まえながら、比較的過ごしやすい10月又は11月を念頭に検討するとよい。 ○ なお、「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「スタッフの代休を取ることが難しいため、開催は土曜日のほうが、次の日に休めてありがたい。」といった意見もあった。 (3) 開催会場 ○ 「参加者」及び「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「また参加したい」「次は○○を体験したい」など、同じ会場での開催を前提とする意見が寄せられた一方で、「他の場所でもやってほしい」「県内の場所を替えていろいろなところで行うことがよい」など、別会場での開催を望む意見もあった。 ○ 同会場で開催するメリットとしては、参加者に対して定期的かつ継続的に働きかけることにより、バリアフリーの街づくりに向けた取組みを効果的に普及できることや、参加団体が会場・参加者の特性を把握できているため、コーナー内容の充実を図りやすいことが挙げられる。一方、デメリットとしては、普及範囲が限られ、他の地域でのバリアフリーの街づくりの取組みが広がりにくいことなどが挙げられる。 2 運営面 (1) 運営体制 〔主な検討課題〕 ・ 全体運営の体制強化に向けた検討 ○ 「統括」3名、「統括補助」6名、「その他スタッフ」17名から構成される、「全体運営スタッフ」と、「各コーナースタッフ」77名の計103名の体制となった。全体運営と各コーナーとの調整は、「統括補助」と「コーナーリーダー」が行うこととした。「全体運営スタッフ」は、人数不足が見込まれていたため、産業能率大学と東洋大学から、学生ボランティアを募ることとした。 ○ 「実行委員会構成団体」に対するアンケートで意見があったように、今回は「学生の協力で成功裏に終わった」が、ボランティアという特性上、個人の資質に頼るところが大きいため、趣旨を踏まえた臨機応変な対応や、安定性を求めることは難しい。また、単純作業の人数は確保できたものの、一部の「統括補助」がボランティアに対する指揮監督に専念することとなったため、各コーナーリーダーと調整できる「統括補助」の人数がさらに不足した。 また、「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、統括補助が調整の役割を十分に果たせず、全体運営と各コーナーとの連携が弱まっていたという意見がいくつか見受けられた。 ○ 今後の対応として、実行委員会委員が「全体運営スタッフ」になるなど、全体運営の体制強化を図る必要がある。これにより「実行委員会構成団体」の主体性を促進することも期待できる。 (2) スケジュール 〔主な検討課題〕 ・ スタッフ及び参加者に配慮した開催時間の検討 ○ 設営準備スタッフは8時45分、その他スタッフは10時集合とし、11時からの開催に向けて準備を進めたが、設営準備スタッフの人数不足・設営準備の時間不足により、その他スタッフ集合時に全体運営の管理が行き届かなかった。 ○ 「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「準備の時間にもう少しゆとりがあれば、企画や当日の搬入搬出の人材確保がもっとできた」と意見もあったことから、設営準備時間を30分程度延長するとともに、設営準備スタッフの集合時間を踏まえながら、フェスタ開催時間を検討する必要がある。 ○ なお、フェスタ開催時間を遅くしたときは、参加者から「もっと多くのコーナーを体験したかった」という意見があったことも踏まえつつ、十分な体験時間を確保できるよう、終了時間にも配慮する必要がある。 (3) 会場レイアウト・備品 〔主な検討課題〕 ・ 会場レイアウト・備品・音響施設について、各団体による主体的な調整 ・ 2会場制としたときの一体感を高める方策の検討 ○ 各コーナーのレイアウトや、机・椅子・パーテーションなどの備品については、実行委員会で事前調整をしたものではあったが、「実行委員会構成団体」に対するアンケートによると、「もう少し広いスペースがほしかった」「掲示するためのパーテーション(壁面)がほしかった」など、実際に実施すると、不足感があったようである。会場全体の音響設備をコーナー運営に利用していたため、他コーナーでの説明が聞き取りにくいこともあった。 ○ また、今回はアクアガーデン・フロントガーデンの2会場で開催したが、フロントガーデンの参加者数がフロントガーデンに比べて少なく、参加団体やスタッフからも、アクアガーデンの盛り上がりがフロントガーデンに伝わらず、両会場の一体感があまり感じられなかったという声が寄せられた。 ○ まず、会場面積や備品数については、限りがあり、すべての団体の要望を満たすことは難しいため、各団体が主体的に実行委員会などの事前調整に参加する必要がある。音響設備の使い方についても検討する必要がある。 ○ また、2会場制とした場合でも、一方の会場の盛り上がりをもう一方の会場にも伝わりやするなど、一体感を高める工夫を検討したい。 (4) 集客手段(スタンプラリー・補助犬・乗り物・ゆるキャラ) 〔主な検討課題〕 ・ 主たる対象者に対して、効果的な集客手段の検討 ○ 参加者の3分の1が小学生であったこともあり、スタンプラリー・福引きのワクワク感、動物のかわいさ、乗り物への好奇心などを利用した、分かりやすい集客手段は有効であったと思われる。参加者のアンケートでも、「もっとスタンプが取りたかった」「盲導犬がかわいかった」「駅の工事が夜中にやっていて驚いた」と、集客手段として有効であったことがうかがえた。 ○ 今回のように子どもが主な対象となる場合は、普段から馴染みのある分かりやすい集客手段を検討し、さらなる充実を図るとよい。これらの集客手段は、実際に子育て中の方からの助言をきっかけに立案されたものである。集客手段の検討に当たっては、主な対象をよく知る方の意見が大切となる。 ○ なお、スタンプラリーの達成条件については、達成条件以上のコーナーに参加・体験した参加者が7割台に達したことを踏まえ、より多くのコーナーを参加・体験を促す達成条件を検討したい。 ○ また、ゆるキャラの効果については、「参加者」及び「実行委員会構成団体」に対するアンケートに記載はなかったが、小さな子どもを連れた家族が足を止め、ゆるキャラとの触れ合い後、会場に立ち寄っていたことから、集客手段として効果があったと思われる。なお、ゆるキャラ担当者によると、フェスタとゆるキャラの関係が伝わりにくかったということなので、増員した介添えにのぼりを持たせるなど、フェスタとの関連性を高める方策についても検討したい。 (5) 事前広報 〔主な検討課題〕 ・ 広報時期の検討 ・ 広報効果についての分析方法の検討 ・ 「実行委員会構成団体」による主体的なちらしの作成 ○ イベント周知用の「ちらし」は、東洋大学デザインチームで案を作成し、実行委員会で決定した。各団体においては、「ちらし」などを使って、第1章項番4で述べたように、団体内の会員を始め広く参加を呼びかけた。特徴的な点として、アリオ橋本周辺の小学校11校・約8,300名に、「ちらし」を配布した。 ○ 結果的に、小学生約120名が参加し、参加者の3分の1を小学生が占めた。また、参加者アンケートでは、「子どもたちにも声をかけて参加を促した。バリアフリーを体験する機会となり、とても有難かった。」という小学生教諭からの意見もあった。小学校配布による集客効果が高かったことがうかがえることから、小学校への広報は継続したい。 ○ なお、「実行委員会構成団体」に対するアンケートで、「もっと早くから事前周知してほしい。今回知らない人が多かった。」という意見が寄せられたことも踏まえ、広報の開始時期についても検討することとしたい。 また、今回は参加者アンケート用紙の文量に限りがあり、フェスタを知ったきっかけを確認することはできなかったが、効果的な広報について分析が必要なときはアンケートに項目追加を検討したい。 ○ また、「ちらし」のデザインは、個人の資質に頼るところが大きいため、フェスタの根付きを見据えて、「実行委員会構成団体」が主体的に作成できるよう、検討したい。 (6) 当日広報 〔主な検討課題〕 ・ 効果的な誘導方法・体制の検討 ○ アリオ橋本における当日の広報としては、各種掲示板への「ちらし」掲載と、来客者への「ちらし」配布を行った。 ○ 参加者から、「アリオ橋本のインフォメーションパネルでフェスタの案内を検索したが、案内が出なかった」と意見が寄せられたことから、多くの方が利用する施設案内板等に掲示するなどの誘導を調整・検討したい。 ○ また、「参加者」及び「実行委員会構成団体」に対するアンケートに記載はなかったが、ちらし配布担当によると、「ちらし」を受け取り、会場に足を向けてくれたという感触があまり得られず、効果があったとは言い難かったということなので、呼び込みを中心とするなど、より効果的な集客方法・体制を検討したい。