(13ページ) 2 令和5年度の成果目標の設定 (1) 福祉施設の入所者の地域生活への移行 <現状及びこれまでの取組> ○ 障がい者の自立支援の観点から、地域生活を希望する障がい者が、地域で安心して暮らすことができるよう、必要な障害福祉サービス等が提供される体制を整備する必要があります。 ○ 福祉施設に入所している障がい者(以下「施設入所者」という。)の人口に占める割合は、都道府県によって大きな差があり、特に大都市がある都府県において施設入所者が少ない傾向があります。 ○ 人口10万人当たりの施設入所者数は、全国平均の100.9人に対し、本県は全国最少の51.7人となっていますが、これには、大都市があるという地域事情に加え、早い時期から入所者の地域生活への移行を進めてきた背景があると考えています。 (都道府県人口に占める施設入所者の割合) 上記の棒グラフを掲載 全国平均 100.9 人/10 万人 神奈川県 51.7 人/10 万人(全国最少) ※ 施設入所者数については、令和2年10月の国保連請求データ*9から抽出。都道府県人口は、令和2年度国勢調査結果に基づく。 ○ 本県における施設入所者は、令和2年10月時点で4,778名となっていますが、障害支援区分*10の構成では、重度とされる区分5及び区分6の入所者は全体の約88.7%と、施設入所者の重度化が進んでおり、地域移行が比較的しやすい中軽度の方が少なくなっています。 (14ページ)   (施設入所者の障害支援区分) (以下、表) 令和2年度 障害支援区分 人数 構成比 区分1 1人 0.0% 区分2 5人 0.1% 区分3 67人 1.4% 区分4 452人 9.5% 区分5  1,096人 22.9% 区分6 3,143人 65.8% その他 14人 0.3% 計 4,778人 100% 区分5及び6計  88.7% ※ 令和2年10月の国保連請求データ*9 ○ 県では、これまで、施設入所者の地域生活への移行を進めるため、自立訓練や地域移行支援等の障害福祉サービスを活用して、グループホームや一般住宅等への移行を推進することとし、障害福祉サービス等の基盤整備等に取り組んできました。 ○ また、地域生活移行後の主な生活の場となるグループホームについては、「障害者グループホーム等サポートセンター*11」を設置し、グループホームの開設を検討している法人等への助言等を行うとともに、市町村を通じたグループホームの整備・運営に係る費用の補助や、重度障がい者を受け入れた場合の人件費補助などの実施により、設置・利用の促進に取り組んできました。 ○ さらに、グループホーム等において、強度行動障がい*5のある方や医療的ケアを要する方等に対応できる職員が不足していることから、こうした重度障がい者の地域生活への移行を支える人材の育成に取り組んできました。 <取組による成果> ○ 第5期計画では、平成28年度末の施設入所者(4,899人)のうち470人(約10%)が、令和2年度末までに地域生活に移行するという成果目標を掲げて取組を推進してきましたが、実績は175人(3.6%)の移行となり、目標を達成できませんでした。このうち、県立施設においては63人が地域生活に移行するという目標を掲げましたが、実績は15人となりました。 (15ページ) ○ また、令和2年度末の施設入所者数を、平成28年度末の施設入所者(4,899人)に対し74人(約2%)減少を見込むという成果目標については、実績となる令和2年度末の施設入所者数が4,745人で、154人(3.1%)の減少となり、目標を達成しています。 ○ グループホーム等の職員を対象に、強度行動障がい支援者養成研修や喀痰吸引等研修を実施し、令和2年度末における研修修了者数の累計は、強度行動障がい支援者養成研修(基礎研修)が3,594名、同(実践研修)が1,128名、喀痰吸引等研修が2,232名(平成29年度〜令和2年度の累計)となっています。 <課題> ○ 本県の施設入所者の障害支援区分別の状況から、中軽度の方に比べて、重度の方の地域移行が進んでいないと考えられるため、重度障がい者の地域生活への移行を更に促進することが必要となっています。   ○ 第5期計画において地域生活へ移行した175人の移行後の住まいの場は、グループホーム(共同生活援助)が最も多くなっていますが、グループホーム利用者の障害支援区分をみると、中軽度の方に比べて重度の方の利用が十分に進んでいるとは言えない状況があるため、重度障がい者を受け入れることができるグループホームを更に増やしていく必要があります。 ○ 強度行動障がい*5等、専門的な支援が必要となる方を地域のグループホーム等で受け入れることができるよう、専門的な知識や技術を有する人材育成など、体制の整備が必要となっています。    (第5期計画における地域生活移行者の移行後の住まいの場) 移行先 地域生活移行者数 人数 割合 共同生活援助 136人 77.7% 家庭復帰 27人 15.4% 公営/一般住宅 12人 6.9% その他 0人 0% 合計 175人   (16ページ) (共同生活援助利用者の障害支援区分) 障害支援区分 人数 構成比 区分1 146人 1.5% 区分2 2,121人 21.2% 区分3 2,528人 25.2% 区分4 2,212人 22.1% 区分5 1,510人 15.1% 区分6 1,382人 13.8% その他 117人 1.2% 計 10,016人 100%  ※ 令和2年10月の国保連請求データ*9 ○ 地域生活への移行を進めていくに当たっては、障がい者本人の自己決定を踏まえることが必要であることから、本人の意思決定を支援する要となる相談支援専門員*12及び相談支援事業者の数を更に増やしていく必要があります。 ○ 県立施設では、日中活動が施設内で行われ、大半の利用者が施設内だけで生活しており、利用者が地域生活をイメージできず、入所期間が長期化しているとの指摘があります。そこで、入所中に地域での様々な体験や経験の機会を増やすよう支援していく必要があります。 <成果目標>  国の基本指針、本県の現状、課題等及び県立施設等における地域生活への移行促進の取組を踏まえ、次のとおり成果目標を設定します。 ア 地域生活への移行者数     成果目標 令和元年度末時点の施設入所者(4,818人)のうち地域生活に移行する人の数 令和5年度末の目標 436人が地域生活に移行(令和元年度末時点の施設入所者の9%) <地域生活への移行者数について> 市町村がそれぞれの障がい福祉計画において設定した地域生活への移行者数に係る成果目標の合計339 人に、県が「当事者目線の支援」を実践し、県立施設を「通過型施設」とすること等により、独自に地域生活への移行を目指す97 人を加えた436 人(令和元年度末時点の施設入所者の9%)が令和5年度末までに地域生活に移行することを目指します。 (17ページ) イ 施設入所者の減少数 成果目標 令和元年度末時点の施設入所者(4,818人)に対する減少数 令和5年度末の目標 170人減(4,734人)(令和元年度末時点の施設入所者の3.5%)※ ※ 施設入所者数の減少数についても、上記の地域生活への移行者数と同様の考え方により、市町村障がい福祉計画の目標値の合計73人に97人を加えた170人の減少を目標としています。 <目標達成のための方策>   成果目標の達成に向けて、次のような方策を実施します。   (当事者目線の支援の推進) ○ 「当事者目線の支援」の基本となる意思決定支援の考え方を、県内の事業所等に広げていくため、担い手の養成を行うとともに、アドバイザーの派遣や県版ガイドラインの作成等により事業者が行う意思決定支援を促進します。 ○ 意思決定支援の要となる相談支援専門員*10について、相談支援従事者養成研修等の実施により数と質の充実を図ります。 〇 県立施設において、居室施錠等の廃止に向けて職員の意識改革を図るとともに、利用者一人ひとりに応じた施設の改修を行います。 ○ 県立施設については、地域の事業所との連携により施設外の活動の場を確保するなど、日中活動の充実を図るとともに、地域での様々な体験や経験の機会を確保しながら入所者の地域生活への移行を後押ししていきます。 (グループホーム等の充実) ○ 「障害者グループホーム等サポートセンター」における、グループホームの開設を検討している法人等への助言や、グループホーム等の整備・運営に係る費用の補助等の支援を通じ、市町村と協力して、グループホームの設置・利用の促進とサービスの充実を継続して図っていきます。特に、課題である重度障がい者の地域生活への移行に向けて、バリアフリー化工事に係る費用の補助など、重度障がい者の受入れが可能なグループホームの整備に向けた支援に引き続き取り組みます。 (18ページ)  ○ 多様な形態のグループホームの整備を促進し、重度障がい者にも対応できる支援体制の充実を図ります。また、地域生活への移行や住み慣れた地域での生活の継続に対する障がい者やその家族等の不安を解消するため、体験利用の促進等により住まいの場の選択肢の拡大を図ります。 ○ 行動障がいのある方への適切な支援方法を習得する強度行動障害支援者養成研修等を実施し、グループホーム等において重度障がい者に対する適切な支援が提供されるよう、引き続き専門的な知識や技術を有した人材の育成に取り組みます。 〇 県立施設入所者の地域生活への移行を促進するため、入所者を受け入れるグループホームについて、受入体制の整備を支援します。   (地域生活を支えるサービス等の充実) ○ 地域生活に必要なホームヘルプサービスの充実を図るための精神障がいや医療的ケアに対応した人材の養成、生活介護など日中活動の場を確保するための施設整備の支援など、障害福祉サービス等の基盤整備を進めます。 ○ 相談支援専門員を計画的に養成するとともに、地域生活への移行に関する専門的知識を有した相談支援専門員を増やすことにより、地域相談支援(地域生活移行支援・地域定着支援)の提供体制の充実を図ります。また、訪問系サービスについては、ホームヘルパー等の養成や、特に重度訪問介護について事業者の理解促進を図ることなどを通じて、サービスを提供する事業者等の拡大を図ります。 ○ 障がい者の意思に基づき、家族の高齢化や親が亡くなった後も地域で生活できるよう、障がい者のニーズ及び実態に応じて、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、自立生活援助等の支援を行うとともに、短期入所及び日中活動の場の確保等により、在宅サービスの量的・質的充実を図ります。 ○ 常時介護を必要とする障がい者が、自らが選択する地域で生活できるよう、日中及び夜間における医療的ケアを含む支援の充実を図るとともに、体調の変化や支援者の状況等に応じて一時的に利用することができる医療型短期入所*13などの整備を進めます。