(1ページ) 1 基本理念等 (1) 法令の根拠   この計画は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「障害者総合支援法」という。)第89条第1項の規定に基づく障害福祉計画及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)第33条の22第1項の規定に基づく障害児福祉計画を一体として策定するものです。 (2) 趣旨及び経過   障がい福祉計画は、国の「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(以下「基本指針」という。)に即して策定することとされています。  県が障がい福祉計画を策定する趣旨は、各市町村を通ずる広域的な見地から、成果目標を設定し、障がい者*1及び障がい児*2(以下「障がい者」という。)の地域生活を支える障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業、障害児通所支援等(以下「障害福祉サービス等」という。)の提供体制を計画的に確保することにあります。   県ではこれまで、第1期から第5期にわたる障がい福祉計画を策定し、市町村と連携して、その推進を図ってきました。   このたび、第5期神奈川県障がい福祉計画(以下「第5期計画」という。)までの実績や課題を踏まえ、今回の改定に当たり示された国の基本指針(令和2年厚生労働省告示第213号)の内容に即し、県民の皆様の御意見を伺いながら、第6期神奈川県障がい福祉計画(以下「第6期計画」という。)を策定します。   なお、第6期計画については、令和3年3月までに策定を予定していましたが、県内で新型コロナウイルス感染症の感染が拡大したことに伴い、市町村等との調整や意見交換が十分に行えなかったことなどから、改定作業を1年間先送りし、令和4年3月に策定したものです。 (3) 計画期間   この計画の期間は、令和3年度から令和5年度までの3年間とします。 (4) 目的   この計画は、平成31年3月に障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項の規定に基づき策定した「かながわ障がい者計画」の理念や考え方を、障害者総合支援法に基づくサービス実施計画として具体化することにより、誰もが安心して豊かに暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とします。 (2ページ) (5) 基本理念 基本理念 ひとりひとりを大切にする  障害者基本法は、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ことを目的としています。  平成31年3月に策定した「かながわ障がい者計画」では、この目的に沿って、すべての県民を対象に、「ひとりひとりを大切にする」ことを基本理念としています。  「ひとりひとりを大切にする」ということは、障がい者ひとりひとりの望みや願いに沿って、自分の生活や生き方を「自己選択・自己決定」できるようサポートし、障がい者が必要な支援を受けながら、その人らしく暮らすことを意味します。それは、当事者の幸せとともに、支援者や周りの仲間の喜びにもつながります。  その理念に基づき、医療、障がい福祉、介護、住まい、社会参加などが包括的に確保された地域包括ケアシステムを構築し、障がい者が自ら能力を最大限発揮できるよう、障がい者の自立及び社会参加、地域社会における生活を支援していきます。 (6) 基本方針 基本方針 当事者目線の支援の実践により「ともに生きる社会かながわ」の実現を目指す  県は、障がい者の自立を「障がい者が、自らの考えと判断により、地域社会の中で主体的に生き、自己実現を図っていくこと」と考えています。  この考え方を踏まえ、乳幼児期から成人・高齢期にいたるまで、障がい者のライフステージに応じた切れ目のない支援を実現することが大切です。  障がい者への支援に当たっては、「障がい者のために」という視点で、安全面のみを優先した、いわゆる「支援者目線」の支援から、本人の望みや願いを第一に考える「当事者目線」の支援への大転換を図り、そうした支援を実践していくことが必要です。  それにより、当事者と支援者の双方が喜びを感じることができ、平成28年10月、県議会と共同して策定した「ともに生きる社会かながわ憲章」に定める、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことができる「ともに生きる社会かながわ」につながります。  そこで、この計画では、「当事者目線」の支援の実践により「ともに生きる社会かながわ」の実現を目指すことを、基本方針とします。 (3ページ) 「ともに生きる社会 かながわ憲章」のポスター (4ページ) (7) 基本的な視点  県は、「当事者目線の支援の実践」を基本方針として、市町村と連携し、各種の障害福祉サービス等の提供や障がい者への支援を充実させていきます。また、法人や事業者がそれぞれの強みを生かして、地域における重度障がい者の支援体制を構築できるよう促進していきます。  さらに、障がい者が仲間や地域の人たちとのつながりの中で暮らしていけるよう、一緒に考え、準備していくという視点をもって、地域生活移行に取り組んでいきます。 ア 障がい者の自己決定の尊重と意思決定の支援  県は、津久井やまゆり園を再生する中で、人には必ず意思があるという前提に立ち、自ら意思を決定することに困難を抱える障がい者の意思決定を支援しています。  障害者の権利に関する条約にも掲げられている、障がい者の自己決定を尊重するため、この意思決定支援の考え方を、県内の障害福祉サービス事業所等に普及させていきます。 イ 地域生活への移行及び地域生活の継続に向けた支援 (ア) 地域資源の充実  障がい者本人の意思により地域での生活を希望する場合には、安心して地域での暮らしを継続することができるよう、障がい者の地域生活を支えるソフト・ハード両面の地域資源が整備される必要があります。  県では、「施設・病院から地域へ」の考え方のもとに、訪問系サービスや日中活動系サービス、地域における居住の場としてのグループホーム等の充実や、自立生活援助、地域移行支援及び地域定着支援等に対し支援するとともに、広域的・専門的な観点から人材の養成を行い、地域資源の充実を図ります。  また、地域生活支援の機能を更に強化するため、地域生活支援拠点等の整備と必要な機能の充実を推進します。 (イ) 障害者支援施設における「当事者目線の支援」の実践   障害者支援施設では、地域生活への移行が一定程度進む一方で、入所者の重度障がい者の割合が高くなっており、こうした方の入所期間が長期化しています。とりわけ、県立障害者支援施設(以下「県立施設」という。)においては、入所期間が20年を超える方が4割以上となっています。また、入所者の生活が施設内で完結するなど、地域との交流機会が少なく (5ページ)  なっています。  そこで、今後、障害者支援施設は住まいの場を提供するだけではなく、本人の意思に応じて地域生活への移行に向けた支援を一層進めるとともに、入所者が地域生活を体験できる機会を増やすため、地域の事業所や、自治体等の地域コミュニティとの連携を強めた施設とすることを求めていきます。  とりわけ県立施設においては、意思決定支援などの「当事者目線」の支援に取り組み、これまで以上に地域生活への移行を進めます。また、地域生活が困難となった障がい者を一時的に受け入れ、再び地域に帰れるようにする、いわゆる「通過型施設」として、障がい者の地域生活を支援する役割を担っていきます。  地域生活に移行した障がい者を支えるため、また、県立施設が「通過型施設」としての役割を果たすためには、施設だけでは限界があり、地域における複数の事業所や、自治体等の地域コミュニティと連携した取組を進めていきます。 ウ 障がい者の地域生活を支える支援の充実 (ア) ライフステージに沿った支援の促進  障がい者の自立と社会参加を促進するため、障がいの種別等に応じ、障がい者のライフステージに沿って、保健、医療、保育、教育、就労のほか、親元・家族からの自立等を含めた、様々な生活上の課題やニーズに対応する支援体制の整備に取り組みます。 (イ) 障がい特性等に配慮した支援  障がい者の性別や年齢、障がいの状態(障害者総合支援法が定める難病等を含む。)、障がいの特性、生活の実態等に応じた個別的な支援の必要性を踏まえて、その人が日常生活で直面している「生きにくさ・暮らしにくさ」の点から、必要な人に必要なサービスが行き届くようにしていきます。 (ウ) 相談支援体制の構築  障がい者が地域において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害福祉サービス等の適切な利用を支え、各種ニーズに対応する相談支援体制を構築します。 (6ページ) (エ) 障がい児支援体制の構築  障がい児支援に当たっては、障がい児本人の最善の利益を考慮しながら、障がい児一人ひとりに応じて支援を進めていくことが必要です。このため、障がい児及びその家族に対し、早期から、身近な地域で専門的かつ質の高い支援が提供できるように、市町村と連携し、地域における支援体制を構築していきます。  また、障がい児のライフステージに沿って、地域の保健、医療、保育、教育、就労支援等の関係機関との連携を図り、切れ目のない一貫した支援を提供する体制を構築するとともに、保育所等訪問支援の活用等により、障がい児の地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進していきます。    (オ) 医療的ケア児等への包括的な支援体制の構築  人工呼吸器を装着している障がい児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障がい児及び同様の状態にある障がい者(以下「医療的ケア児等」という。)が、その心身の状態に応じた適切な支援を円滑に受けられるようにするため、保健、医療、障がい福祉、保育、教育等の各関連分野が協働する包括的な支援体制を構築します。  令和3年9月に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)(以下「医療的ケア児支援法」という。)が施行されたことを踏まえ、医療的ケア児等及びその家族が個々の医療的ケア児等の心身の状況等に応じた適切な支援を受けられるよう、「医療的ケア児支援センター」の設置など法で規定された施策を実施していきます。   (カ) 発達障がいに対する支援  発達障がい児者が可能な限り身近な地域で必要な支援を受けられるよう、市町村と連携し、発達障害者支援センター*3等を中心にした支援を行うとともに、発達障害者地域支援マネジャー*4の適切な配置を進めていきます。  また、発達障がいを早期かつ正確に診断し、適切な発達支援につなげられるよう発達障がいの診断等を専門的に行うことができる医師の確保を進めていきます。 (キ) 専門的な支援を必要とする方に対する地域支援体制の充実  強度行動障がい*5や高次脳機能障がい*6など、専門的な支援が必要となる障がい者であっても、仲間や地域の人たちとのつながりの中で生活する  (7ページ)  ことができるよう、グループホームや日中活動の場において専門的支援が提供できる必要な人材育成等を行います。 (ク) ケアラーへの支援  障がい者等の介護をしている家族等(ケアラー)の社会的な孤立が問題となっています。また、近年は、ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちの存在も明らかになってきており、こうしたケアラーが、地域で孤立することなく、自分の希望する人生や日々の暮らしが送れるよう支援することが必要です。  県では、障がい福祉だけでなく、関係分野と連携して、ケアラーの負担の軽減を図り、地域での自立した生活を継続することができるよう必要な支援を行います。 (ケ) 市町村や関係機関との連携  障がい者が、住み慣れた地域で必要なサービスを受けられるよう、障害福祉サービス等の提供主体である市町村との連携を更に推進していきます。  また、「当事者目線の支援」を実践していくためには、障がい福祉の観点だけでなく、保健、医療、教育、雇用等の分野を超えた総合的な取組が不可欠ですので、これらの分野の関係機関との連携を深めながら様々な取組を推進していきます。    (コ) 障がい保健福祉圏域における支援  国、県及び障害福祉サービス等の実施主体である市町村がそれぞれの役割を分担するだけでなく、障がい者の地域生活を支えるため、重層的な支援体制を構築することが重要です。  このため、県では、様々な取組において、障がい保健福祉圏域におけるネットワークを充実させ、圏域レベルでの支援を強化していきます。     (サ) 障がい福祉人材の確保、育成及び定着  障がい者の重度化・高齢化が進む中においても、将来にわたって安定的に障害福祉サービス等を提供し、様々な障がい福祉に関する事業を実施していくためには、提供体制の確保と併せて、それを担う人材の確保、育成及 (8ページ)   び定着を図る必要があります。  そこで、若い世代を含むあらゆる層に対して、障がい福祉の現場が働きがいのある魅力的な職場であることを周知・広報するとともに、専門性を高めるための研修を実施するなど、障がい福祉を担う人材の確保、育成及び定着に向け、教育機関などの関係機関と協力しながら取り組んでいきます。   (シ) 障がい者の社会参加の促進  障がい者の地域における社会参加を促進するためには、障がい者の多様なニーズを踏まえた支援が必要です。  県では、障がい者がライフステージに応じて、その人らしい働き方を選択できるよう、福祉的就労とともに、一般就労への支援の充実に取り組みます。  また、障がい者が、学校卒業後も生涯を通じて文化芸術活動やスポーツ等に触れることができる機会の提供、充実を図ります。  特に、文化芸術活動については、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成30年法律第47号)を踏まえ、障がい者が文化芸術を享受鑑賞し、又は創造や発表等の多様な活動に参加する機会の確保等を通じて、障がい者の個性や能力の発揮及び社会参加の促進を図っていきます。 (ス) 持続可能な障害福祉サービス等の提供  障がい者が安心して暮らしていくためには、新型コロナウイルス感染症などの新たな感染症等のまん延や、災害等の発生時においても、障害福祉サービス等が継続して提供されることが必要です。  このため、県では、持続可能な障害福祉サービス等の提供に向けて、事業所等における業務継続計画*7の策定等を支援していきます。  また、新型コロナウイルス感染症への対応として、事業所等からの感染防止対策に関する相談へ対応するとともに、国の補助制度の活用等により、事業所等における感染防止対策の継続を支援していきます。  さらに、陽性者や濃厚接触者が発生した事業所等については、感染拡大防止の措置を講じた上でのサービス継続に必要となる経費を補助するとともに、法人・事業所間の応援職員の派遣等により、サービスの継続を支援していきます。 エ 障がい者虐待の防止及び差別解消の推進 (ア) 障がい者虐待の防止  障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」という。)を踏まえて、市町村や神奈川労働局など関係機関と連携し、障がい者虐待の未然防止や早期発見、虐待が発生した場合の迅速かつ適切な対応を図るとともに、障害福 (9ページ)  祉サービス等の従事者への研修を実施し、障がい者の権利擁護の取組、通報義務や通報者の保護に関する法の趣旨について周知徹底を図り、障害者虐待防止法の適切な運用を図ります。  また、県立施設においては、「利用者のために」という、利用者の安全を優先した支援者の目線で、長時間の居室施錠等の身体拘束が行われてきたとの指摘を受けました。身体拘束が日常化してしまうと、そのことが契機となって、利用者に対する身体的虐待や心理的虐待に至ってしまう危険があります。そのため、県立施設での身体拘束ゼロの実現に向けて、令和2年12月からは身体拘束の実施状況をホームページで公表するとともに、よりよい支援を進めるため、専門家や市町村等の第三者の視点を入れながら支援内容の検証を行っています。引き続き、こうした取組を進めるとともに、身体拘束の廃止に向けた具体的な取組事例を県ホームページに掲載し、民間施設における取組を促していきます。 (イ) 障がいを理由とする差別の解消の推進  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下「障害者差別解消法」という。)では、障がい者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮*8の不提供を差別と規定するとともに、対象となる障がい者は、障害者手帳の所持者に限られるものではないとしています。  平成28年4月の障害者差別解消法の施行を踏まえ、県では法の趣旨・目的等に関する普及啓発に取り組んできましたが、障がい者差別の解消や障がい者への県民・事業者等の理解は、まだ十分とは言えない状況です。  そうした中、令和3年6月に障害者差別解消法が改正され、民間事業者への合理的配慮が義務化されました(公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行)。合理的配慮は、障がいの特性や社会的障壁の除去が求められる状況によって異なる多様かつ個別性の高いものであり、双方の建設的対話による相互理解を通じて柔軟に対応することが求められます。このため、当事者を含めた県民や民間事業者等の理解の更なる促進を図るとともに、社会的障壁の除去や、ともに生きる社会の実現に向けた対話が促進されるよう働きかけを行い、障がい者差別の解消に引き続き取り組みます。 オ 「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念の普及  県では、従来から「かながわ障がい者計画」に基づき、「ともに生きる社会かながわ」の実現を目指して取組を進めてきましたが、平成28年7月に「津 (10ページ)  久井やまゆり園」で19人が死亡するという大変痛ましい事件が発生しました。このような事件が二度と繰り返されないよう、断固とした決意をもって、「ともに生きる社会かながわ」を目指すため、県議会とともに、「ともに生きる社会かながわ憲章」を策定しました。  憲章では、「あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にすること」、「誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現すること」、「障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除すること」、「憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組むこと」を定めています。  市町村や団体、教育委員会等と連携を図り、この憲章の理念を普及するとともに、「ともに生きる社会かながわ」の実現に向けて、取組を一層進めていきます。 <当事者目線の障がい福祉実現宣言>  県では、津久井やまゆり園の再生を進める中で、利用者の方々がそれぞれの望む暮らしを実現できるよう、意思決定支援の取組に力を入れてきましたが、こうした取組を通じて、本人の望みや願いを第一に考え、本人の可能性を最大限に引き出すためには、障がい当事者の目線に立った支援や施策が重要であることを改めて認識しました。  そして、津久井やまゆり園及び芹が谷やまゆり園の開所を、新しい障がい福祉のスタートと位置づけ、芹が谷やまゆり園の開所式を行った令和3年11月16日、障がい福祉のあり方を、これまでの「支援者目線」から「当事者目線」に大転換を図り、「ともに生きる社会」の実現に全力を尽くすことを誓う「当事者目線の障がい福祉実現宣言」を発出しました。 (11ページ)  当事者目線の障がい福祉実現宣言本文 当事者目線の障がい福祉実現宣言 〜あなたの心の声に耳を傾け、お互いの心が輝くことを目指します〜 私たちは、津久井やまゆり園事件のような悲惨な事件を二度と起こさないために、これまでの障がい福祉のあり方を根本的に見直し、「当事者目線の障がい福祉」に大転換することを誓います。それは「あなたの心の声に耳を傾け、お互いの心が輝くことを目指す障がい福祉」です。 私たちは「虐待」は絶対に認めません。強度の行動障がいの方に対して、周りの人や自分を傷つけるから、音や光などに過敏に反応し過ぎるから、長時間、部屋に閉じ込めておく、車いすに縛り付けておく、安全安心のためにはやむをえないということで、これまではそんな支援が当たり前のように行なわれていました。 しかし、それは明らかに「虐待」です。時代は大きく変わり、法律も変わりました。「虐待」の定義も変わりました。それにも関わらず、現場では同じような支援、すなわち「虐待」が続いていたのです。 それは県立施設においても例外ではありませんでした。県として、障がい者のみなさんに対して、心からお詫びいたします。そんな支援を続けていた事業者は、みんな反省し、支援のあり方を変えなければならないと私たちは思います。 「虐待」は絶対に許されることではありません。あなたは障がい者であるまえに、人間です。人間だからこそ、一人の人間として尊重されるのは当然の権利です。 私たちは部屋に閉じ込められている当事者ご本人の目線に立って考えます。なぜ、あなたは周りの人や自分を傷つけるような行動をしてしまうのでしょうか。もしかしたら、あなたは自分の気持ちをうまく表せないだけかもしれません。自分の気持ちを聞いて欲しいと訴えているに違いないと考えて接すれば、全然違ったサポートができるはずです。 (12ページ) 私たちはそんなあなたの心の声に一生懸命、耳を傾けます。あなたの思いを受け止め、工夫をしながらサポートします。そうすればきっとあなたは安心してくれるに違いない。それが私たちにとっても大きな喜びにつながるはずです。それがお互いの心が輝く障がい福祉です。   施設はあなたが地域の仲間たちとのつながりの中で暮らしていけるよう、一緒に考え、みんなで支え、準備をする場です。一生そこで過ごしていただく場ではありません。あなたは自分の住む場所を自分で決めることができます。 かつて、周りの人を傷つけるからという理由で、ずっと部屋に閉じ込められていた人が、「当事者目線の支援」を受けることになったことで、生き生きと働けるようになっていました。 支援のあり方によって、こんなに変わるんだ。それは希望の光でした。こういう支援が拡がっていけば、必ずや、「当事者目線の障がい福祉」は実現できるに違いないと、私たちは確信しました。 どんな障がいがあっても、支えあい、愛と思いやりにあふれ、みんなのいのちが輝く、「ともに生きる社会」を実現するべく全力を尽くすことを障がい当事者、福祉関係者、そしてすべての県民の皆様に誓います。 令和3年11月16日 神奈川県知事 黒岩祐治