(表紙) 神奈川県相談支援従事者人材育成ビジョン(案) 令和7年3月改訂(予定) はじめに 本県では、神奈川県障害者自立支援協議会研修企画部会を通じて、相談支援従事者研修の実施方法や内容等について検討を行い、横浜市、川崎市、県域の3か所で研修を実施し、相談支援従事者の養成に取り組んできました。 そして、相談支援従事者の養成に加え、地域における相談支援の実施体制の整備についても検討を進め、その過程において、相談支援従事者一人一人が日々の実践の中での拠り所となる基盤(軸)が必要であることや、質の高い相談支援を行える人材を養成していけるよう、相談支援専門員の養成に関する目指すべき方向性を明確にし、共有していく取組が必要なため、平成27年3月に「神奈川県相談支援専門員人材育成ビジョン」を策定しました。 国においては、令和6年4月、障害者総合支援法等の一部改正により、基幹相談支援センターの設置が市町村の努力義務となったことや、主任相談支援専門員の役割がより明確となる等、相談支援体制に関するさらなる法制度等の充実が図られました。 また、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定により、支援の質の高い相談支援事業所の整備を促進するため、相談支援専門員等の配置を手厚くすることによる基本報酬の充実や、保健、医療、教育、就労等の他機関との連携の促進のための各種加算の拡充等、相談支援体制に関する見直しが大幅に行われ、同時に複雑化していることから、相談支援従事者には正確に制度を理解することが求められています。 こうした状況から、「神奈川県相談支援専門員人材育成ビジョン」の基本的な考えを維持しつつ、今後のキャリアアップのビジョンを示すために内容の見直しを行い、令和7年3月、「相談支援従事者人材育成ビジョン」へ改訂を行いました。 令和7年3月 神奈川県福祉子どもみらい局福祉部障害福祉課   ● 読み方・活用方法 本ビジョンは、令和6年3月に厚生労働省から発出された「相談支援業務に関する手引き」及び「(自立支援)協議会の設置・運営ガイドライン」をもとに、令和元年7月に改訂した「神奈川県相談支援専門員人材育成ビジョン(Ver.2)」の内容をさらに改訂したものです。 相談支援従事者研修や、地域における実地研修(OJT)等で活用いただき、県内で共通の認識・目標を持ち、相談支援体制の整備の推進を図りたいと考えています。 なお、本ビジョン内の障害の「害」の字の表記については、統一性の観点から漢字表記とします。 加えて、本ビジョンでは以下の用語について一部略称を活用しています。 活用する略称等、正式名称・説明の順に記載 障害者総合支援法 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 圏域 障害保健福祉圏域 圏ナビ 障害保健福祉圏域地域生活ナビゲーションセンター 県協議会 神奈川県障害者自立支援協議会 圏域協議会 障害保健福祉圏域障害者自立支援協議会 市区町村協議会 市区町村地域自立支援協議会 自立支援協議会 県・圏域・市区町村協議会を含めた自立支援協議会 基幹 基幹相談支援センター 拠点 地域生活支援拠点 プレ研修 相談支援従事者プレ研修 初任者研修 相談支援従事者初任者研修 現任研修 相談支援従事者現任研修 主任研修 主任相談支援専門員養成研修 OJT 地域や、相談支援の現場で実践されている実地研修 目  次  はじめに 1 神奈川県相談支援従事者人材育成ビジョンについて (1)位置づけ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 (2)構成(イメージ図) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 相談支援の概要 (1)相談支援とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (2)相談支援事業とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 (3)相談支援の基本的な流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3 神奈川県が求める相談支援従事者の視点 (1)当事者目線の障害福祉の視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 (2)エンパワメントの視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (3)意思決定支援の視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (4)ライフステージに合わせた支援の視点 ・・・・・・・・・・・・・・・9 (5)相談支援体制整備(地域づくり)の視点 ・・・・・・・・・・・・・・9 (6)経営の視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 4 相談支援事業に求められる役割 (1)相談支援事業所の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (2)基幹相談支援センターの役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 (3)障害保健福祉圏域地域生活ナビゲーションセンターの役割 ・・・・・・18 (4)行政の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 5 研修体系(人材育成のプロセス) (1)ステップごとに身につけるスキル(基礎、実践、応用、主任) ・・・・21 (2)相談支援従事者研修と実地研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 (3)主任相談支援専門員養成研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 (4)専門コース別研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 6 地域における人材育成 (1)地域における実地研修(OJT) ・・・・・・・・・・・・・・・・・31 (2)自立支援協議会による地域づくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・33 7 連携・協働が求められる関係機関等 (1)サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者 ・・・・・・・・・・・39 (2)発達障害者地域支援マネジャー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 (3)医療的ケア児等コーディネーター ・・・・・・・・・・・・・・・・・41 (4)障害当事者等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 まとめ 段階ごとに読んで欲しいポイント 本ビジョンを手に取る方は、相談支援の業務に興味を持っていただいている方のほか、現在、実際に相談支援の業務に携わっている方等、様々だと思います。 本ビジョンでは、相談支援の前提から、人材育成を行う上での視点等を1冊にまとめた構成となっています。是非、皆様には、全体を読んでいただきたいところですが、それぞれの相談支援従事者としての熟練度や職種ごとに理解すべき優先度は異なると思いますので、下記の相談支援従事者としての「4つの段階」と「行政職員」に区分し、優先的に学んで欲しいポイントを示しましたので参考にしてください。   ステップ1 基礎 初任者研修受講に向けて実務経験を積んでいる方 ステップ2 実践 初任者研修を受講する方 ステップ3 応用 現任研修を受講する方 ステップ4 主任 人材育成等の中核を担い、主任研修を受講する方 その他   行政職員 初めて障害福祉分野に携わる方 ※ 4つの段階の詳細については、21ページ「ステップごとに身につけるスキル」を参照してください。   区分、テーマ(キーワード)、優先項目の順に記載 基礎 相談支援の概要・全体像について 2(1)・(2)、3(1)、5(1)キーワードは相談支援とは何か、自己理解・他者理解、障害特性の理解、本人主体 実践 相談支援従事者に求められる視点・役割について 3(1)〜(3)、4(1)、5(1)・(2)、6(1)キーワードは相談支援の価値、意思決定支援、アセスメント、本人主体 応用 他機関との連携・人材育成の視点について  3(3)〜(6)、4(2)・(3)、5(1)〜(4)、6(1)キーワードは個から地域へ広げる視点、多職種連携、 チームアプローチ、地域の特性理解 主任 人材育成と地域づくりの視点について 3(5)・(6)、4(2)・(3)、5(1)〜(4)、6(2)キーワードは他職種連携、人材育成、スーパーバイズ、支援者支援 行政職員 相談支援の全体像・相談支援体制整備について 3(1)〜(6)、4(4)、5(1)・(2)、6(2)キーワードは個から地域へ広げる視点、地域の特性理解、相談支援体制の整備、自立支援協議会 (1ページ) 1 神奈川県相談支援従事者人材育成ビジョンについて (1)位置づけ 本県では、当事者目線の障害福祉の推進を図り、地域共生社会の実現に資することを目的として、令和5年4月1日に「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例〜ともに生きる社会を目指して〜」を施行しました。 また、障害者が日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることを支援する上では、標準的なプロセスに基づく意思決定支援を推進していくことが重要であるため、「神奈川県版意思決定支援ガイドライン」を策定し、「意思決定支援人材育成方針」を定めました。 加えて、相談支援においては、より専門性の高い相談支援従事者の養成や、地域の相談支援体制の方向性を示すため、上記の理念をもとに今回、「神奈川県相談支援従事者人材育成ビジョン」を策定しました。 ※ 神奈川県のウェブサイト 『神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例〜ともに生きる社会を目指して〜』 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m8u/tojisya-jourei/top.html (2ページ) 2 相談支援の概要 障害者総合支援法は、障害者自立支援法を改正し、「地域社会における共生の実現に向けて、障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、新たな障害保健福祉施策を構ずる」ことを趣旨として、平成25年4月1日(一部は平成26年4月1日)から施行されました。 この目的を達成するプロセスにおいて、重要な役割を果たすのが相談支援です。   【障害者総合支援法の目的(障害者総合支援法第1条)】 ・障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図る ・障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する (1)相談支援とは 障害者の生活を支えるための相談支援は、障害者総合支援法では、計画相談支援、地域相談支援、障害者相談支援事業及び基幹について規定されており、児童福祉法では障害児相談支援が規定されています。 このほかに、障害者の地域生活を支えるための体制整備を行うためには、自立支援協議会や拠点等があり、これらの総合的な整備を図っていく必要があります。 基幹や市町村障害者相談支援事業は、平成24年の障害者総合支援法施行から10年以上が経過し、当該業務が担うべき役割の重要性は一層高まっています。 相談支援従事者がその責務を果たすためには、適切な人員配置が必要となることから、人員及び運営等に係る運営費のあり方について検討することが重要です。 そのためには、配置されていく相談支援に従事する人材の経験値や、配置後の継続性が担保され、総合的な事業として市町村が行う相談支援業務や、相談支援従事者に対する助言等の支援者支援、自立支援協議会の運営への関与を通じた「地域づくり」業務が果たせるよう、業務内容の見直しを図り、地域での連携体制をより強化していくことが必要です。 県では、相談支援専門員を養成する「初任者研修」及びその資格を更新するための「現任研修」を横浜市、川崎市、県域の3つの地域で実施し、これまでに6千人以上の方が初任者研修を修了しています。 また、地域における人材育成の中核を担うことが期待されている主任相談支援専門員の創設に伴い、本県では、令和3年度から「主任研修」を県全体で実施しています。 (3ページ) (2)相談支援事業とは 障害者総合支援法及び児童福祉法における相談支援事業は、大きく「指定一般相談支援事業」「指定特定相談支援事業」「指定障害児相談支援事業」と、地域生活支援事業における「障害者相談支援事業」の4つに分けられます。 地域生活支援事業は、障害者及び障害児が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村等が実施主体となり、地域の特性や利用者の状況に応じ、柔軟な形態により計画的に実施する事業です。 地域生活支援事業の障害者相談支援事業は、平成8年から実施されてきた「障害児(者)地域療育等支援事業」、「精神障害者地域生活支援事業」及び「市町村障害者生活支援事業」に由来します。 さらに、障害者自立支援法によって、障害種別に関わらず「障害者相談支援事業」として市町村が一元的に実施することとなりました。 平成24年4月、改正障害者自立支援法の策定により、サービス等利用計画の作成が明記され、障害者総合支援法において、障害福祉サービスを利用する全ての方に対して、サービス等利用計画案の提出が義務化されました。 また、全ての障害福祉サービスを利用する方へのサービス等利用計画の作成が開始されたこと等に伴い、市町村は、相談支援専門員の確保と質の担保等、相談支援の体制整備が必要となり、相談支援の中核的存在として基幹の設置が進められてきました。 「相談支援業務に関する手引き」より引用した相談支援事業の全体像の図 (4ページ) 「相談支援業務に関する手引き」より引用した個別給付で提供される相談支援と地域生活支援事業により実施される相談支援の一覧表 個別給付で提供される相談支援 障害者総合支援法は指定一般相談支援事業と指定特定相談支援事業。 指定一般相談支援事業は基本相談支援と地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)。 指定特定相談支援事業は基本相談と計画相談支援。 基本相談支援は個別給付対象外。 計画相談支援はサービス利用支援と継続サービス利用支援。 児童福祉法は指定障害相談支援事業として、障害児支援利用援助、継続障害児支援利用援助。 地域生活支援事業により実施される相談支援(実施主体は市町村) 地域生活支援事業は障害者相談支援事業(必須事業)、基幹相談支援センター、基幹相談支援センター機能強化事業等。 障害者相談支援事業、基幹相談支援センターは地方交付税措置、基幹相談支援センター機能強化事業等は補助金。 (3)相談支援の基本的な流れ 相談支援は、市町村や相談支援事業所が相談窓口として、障害者本人のみならず、家族・親族や地域住民、関係機関等からの相談を受け止め、丁寧に話を聞き、相談の内容を整理することから始まります。 相談内容によっては、比較的短期間で解決できる課題もありますが、一般に、継続した相談支援が必要な場合が多くみられます。 継続した相談支援には、障害福祉サービス等を利用しない場合(市町村障害者相談支援事業)、あるいは利用する場合(特定相談支援事業、指定障害児相談支援事業)があり、いずれの場合においても、ケアマネジメントを提供することを基本とし、その過程で、並行して面談や同行等を通じて本人の不安を解消し、自ら主体的に取り組む方向に進めるよう働きかけるとともに、本人の希望する暮らしのイメージを具体化するための取組等を支援します。 さらに、必要に応じて、地域にある様々な障害福祉サービス等の調整や他の専門機関等へのつなぎを行い、利用者が希望する日常生活を継続するために必要な支援を直接行うこともあります。 また、「相談者はどこが窓口なのかをわからない場合がある」ことを前提とした上で、障害者相談支援事業の窓口はもとより、地域の相談支援事業所、基幹、市町村の関係部署(特にソーシャルワークを業務とする部署等)、各種関係機関の窓口と連携を密に行い、相談者にとって分かりやすくアクセスしやすい相談支援の体制づくりが求められます。 行政や相談支援事業所は、こうした支援を通じて、本人の希望する暮らしのイメージ形成や実現に伴走していくことになります。 (5ページ) 「相談支援業務に関する手引き」より引用した相談支援の流れの図 地域資源の状況等によって、自治体ごとに相談窓口は異なるが、最初に相談を受けてから相談内容に応じてサービスを調整し、適切なサービスへつなぐ。 さらに、必要に応じてより専門的な支援につないで行くという考え方は同じ。 (6ページ) 厚生労働省のウェブサイト『地域生活支援事業』 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/index.html 地域生活支援事業令和6年度予算ベースの事業一覧表 市町村事業 必須事業 1 理解促進研修・啓発事業 2 自発的活動支援事業 3 相談支援事業 (1)基幹相談支援センター機能強化事業 (2)住宅入居等支援事業(居住サポート事業) 4 成年後見制度利用支援事業 5 成年後見制度法人後見支援事業 6 意思疎通支援事業 7 日常生活用具給付等事業 8 手話奉仕員養成研修事業 9 移動支援事業 10 地域活動支援センター機能強化事業 任意事業 1 日常生活支援 2 社会参加支援 3 就業・就労支援 都道府県事業 必須事業 1 専門性の高い相談支援事業 (1)発達障害者支援センター運営事業 (2)高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業 2 専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成研修事業 (1)手話通訳者・要約筆記者養成研修事業 (2)盲ろう者向け通訳・介助員養成研修事業 (3)失語症者向け意思疎通支援者養成研修事業 3 専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業 (1)手話通訳者・要約筆記者派遣事業 (2)盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業 (3)失語症者向け意思疎通支援者派遣事業 4 意思疎通支援を行う者の派遣に係る市町村相互間の連絡調整事業 5 広域的な支援事業 (1)都道府県相談支援体制整備事業 (2)精神障害者地域生活支援広域調整等事業 (3)発達障害者支援地域協議会による体制整備事業 任意事業 1 サービス・相談支援者、指導者育成事業 2 日常生活支援 3 社会参加支援 4 就業・就労支援 5 重度障害者に係る市町村特別支援 事業内容は年度ごとに変動する可能性があります。 (7ページ) 3 神奈川県が求める相談支援従事者の視点 本県では、障害者が安心して生活が送れるよう、障害者の気持ちや希望に寄り添い、その実現に向けた支援を行うほか、相談支援体制やネットワーク等の地域づくりを推進するための幅広い知識と併せて、以下の「6つの視点」を持った人材を求めています。 【6つの視点】 (1)当事者目線の障害福祉の視点 (2)エンパワメントの視点 (3)意思決定支援の視点 (4)ライフステージに合わせた支援の視点 (5)相談支援体制整備(地域づくり)の視点 (6)経営の視点   (1)当事者目線の障害福祉の視点 平成28年7月26日、県立障害者支援施設である津久井やまゆり園において、19名の生命が奪われるという大変痛ましい事件が発生しました。 県はこのような事件が二度と繰り返されないよう、県議会の議決を経て「ともに生きる社会かながわ憲章」を策定し、ともに生きる社会の実現を目指すとともに、津久井やまゆり園の再生と当事者目線の障害福祉の推進に取り組んできました。 この過程において、障害者一人一人の立場に立ち、その望みや願いを尊重し、支援者や周りの人が工夫をしながら支援することが、障害者のみならず障害者に関わる人々の喜びにつながり、その実践こそがお互いの心が輝く「当事者目線の障害福祉」であるとの考えに至りました。 しかしながら、全ての障害者が自分らしく暮らしていくことができる社会環境の整備は、道半ばです。 このような認識のもと、当事者目線の障害福祉の推進がともに生きる社会かながわ憲章の実現につながるものと確信し、「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例〜ともに生きる社会を目指して〜」を制定しました。 この条例は、当事者目線の障害福祉の推進についての基本理念を定め、県、県民、事業者等の責務を明らかにするとともに、当事者目線の障害福祉を推進するための基本となる事項を定めることにより、当事者目線の障害福祉の推進を図り、障害者が障害を理由とするいかなる差別及び虐待を受けることなく、自らの望む暮らしを実現することができ、障害者のみならず誰もが喜びを実感できる地域共生社会の実現に資することを目的としています。 相談支援専門員は、障害者を「障害のある人」と括るのではなく、その人のこれまで生きてきた歴史を唯一無二のものとして深く理解し、障害者の立場に立ち、その人の見ている世界を理解するために「当事者目線の障害福祉」の視点を持つことが大切です。 (8ページ) (2)エンパワメントの視点 障害者や家族等の自己実現を目指すため、その方の有するハンディキャップ等のネガティブな面に着目した支援を行うのではなく、長所や、力、強みに着目し、それらを活かしていけるよう支援を進めていくことを「エンパワメント」と言います。 相談支援従事者は、支援を行う中で、障害者や家族等と同じ立場に立ち、支援を通じて、障害者や家族等が持つ自らの能力や長所等の強みを活かせる支援を進め、自分に自信を持って、主体的に生活を送れるようになることを目指します。   (3)意思決定支援の視点 意思決定支援とは、「自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援すること」を言います。 本県では、厚生労働省から示された「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(平成29年3月31日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)を参考にして作られた「津久井やまゆり園再生基本構想(平成29年10月)」をもとに、津久井やまゆり園を利用する方の意思決定支援に取り組んできました。 こうした取組を通して、意思決定支援には「本人中心支援の徹底」、「障害者ケアマネジメントの適切な実施」が不可欠であることが明らかになりました。 障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドラインを基盤として意思決定支援の取組を進める中では、具体的な留意点などを数多く見出すことができ、取組の中から紡ぎだされた実践で得られた知見をもとに「神奈川県版意思決定ガイドライン」を策定しています。 この神奈川県版意思決定ガイドラインは、意思決定支援の全県展開の第一歩として、障害者支援施設における意思決定支援の取組の促進を目的として策定しています。 障害者本人の意思やニーズを踏まえずに社会資源へつなぐことは、時に本人の権利を奪うことになります。 相談支援従事者は、障害者本人を中心にした相談支援を徹底することで自己決定を支え、障害者ケアマネジメントで関わる事業所等に対し、サービス等利用計画の中にある本人中心の考え方を共有していくこと等、意思決定支援の視点を持つことが大切です。    神奈川県のウェブサイト『当事者目線の障がい福祉』 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m8u/shien/top.html ※神奈川県のウェブサイト『障がいのある方の意思決定支援』 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m8u/info_ishi_tukui.html (9ページ)  (4)ライフステージに合わせた支援の視点 幼年期から高齢期にまたがるライフステージにおいて、障害者が感じる日常生活・社会生活上の不自由さは、障害の種類や程度のみならず、それまでの本人の経験や家族との関係等、様々な要因が絡み合うことによって生み出されています。 また、生まれてから18歳までの児童福祉、65歳以降の高齢福祉といった福祉制度のほか、障害者は、18歳までは児童福祉、それ以降は障害者福祉といったように、様々な障害福祉サービスや、制度等の社会福祉と関わりながら生活を送っています。 それぞれのステージでは、障害福祉サービスや、関連する法令が異なるため、制度が移り変わる時に零れ落ちないように、相談支援従事者等の支援者は、次のステージへつなぎを行う必要性があります。 また、行政職員を含む相談支援従事者は、障害者について十分理解を深める必要があると同時に、単に障害の種別に当てはめて支援の内容を考えるのではなく、それぞれの個別性を重視するという基本的視点が不可欠です。 (5)相談支援体制整備(地域づくり)の視点 障害者の意思を尊重し、支援を行う上では、福祉分野だけではなく、保健、医療、教育、就労等、様々なサービス提供を行う関係機関との連携・連動を図り、職業分野の垣根を越えたネットワークを形成し、スムーズな情報共有が図れる体制をつくることが大切です。 また、ネットワークを形成する上では、フォーマル、インフォーマルな社会資源を有効に活用していくために、日頃から連携強化のための相談支援体制の形成を図ることが大切です。 さらに、継続性のある相談支援体制を維持・向上させていくための仕組づくりを計画的に構築するために、人材の確保と同時に、地域におけるOJT(実地指導)の体制づくりのためには、行政や基幹等と協働体制を構築することが大切です。 (6)経営の視点 障害者の生活を支え、一人でも多くの方に相談支援を届けるためには、相談支援従事者を増やすと共に、相談支援事業所の新規開設を増やし、既存の相談支援事業所においても事業拡大を図る必要性があります。 しかし、相談支援事業所の経営に関しては、全国的に「計画相談だけでは採算が取れず、独立した経営が難しい」というイメージが強く、県内においてもこの考え方は根強く染み付いており、相談支援専門員の養成者数に対して相談支援専門員の実人数は増えていない状況です。 令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定により、基本報酬等の見直しや充実が図られ、「安定した経営につながった」という報告が出ています。 適切な人員配置や、業務管理等を行う等、質の高い支援の実践に併せて、機能強化型基本報酬や、各種加算等を積極的に取得し、業務効率を上げる等、計画相談支援を一つの事業として成立させる環境を整える経営の視点を持つことも大切です。 地域では、質と経営のバランスをとった事業所が増えつつあり、互いに実践を共有する等、学びを深めることも望まれます。 (10ページ) 令和6年4月現在 機能強化型基本報酬単位 報酬区分、サービス種類、計画相談支援、障害児相談支援の順に記載 機能強化(T)サービス利用支援 2,014単位 2,201単位、継続サービス利用支援 1,761単位 1,896単位 機能強化(U)サービス利用支援 914単位 2,101単位、継続サービス利用支援 1,661単位 1,796単位 機能強化(V)サービス利用支援 1,822単位 2,016単位、継続サービス利用支援 1,558単位 1,699単位 機能強化(W)サービス利用支援 1,672単位 1,866単位、継続サービス利用支援 1,408単位 1,548単位 支援費(T) サービス利用支援 1,572単位 1,766単位、継続サービス利用支援 1,308単位 1,448単位 支援費(U)※ 取扱件数40件以上の部分 サービス利用支援 732単位 815単位、継続サービス利用支援 606単位、662単位 専門性の高い相談支援等の事業所体制を評価する加算 加算名(T)(U)の順に記載 主任相談支援専門員配置加算 300単位/月 100単位/月 要医療児者支援体制加算 60単位/月 30単位/月 行動障害支援体制加算 60単位/月 30単位/月 精神障害者支援体制加算 60単位/月 30単位/月 高次脳機能障害支援体制加算 60単位/月 30単位/月 ピアサポート体制加算 100単位/月 100単位/月 医療・保育・教育機関等連携加算 算定場面、計画作成月、モニタリング月の順に記載 面談・会議 200単位/月 300単位/月 通院同行 300単位/月 300単位/月 福祉サービス等提供機関への情報提供 150単位/月 150単位/月 集中支援加算 算定場面、算定時期、単位数の順に記載 訪問(※ 月2回以上) 計画作成月・モニタリング月以外 300単位/月 サービス担当者会議開催 計画作成月・モニタリング月以外 300単位/月 関係機関が開催する会議等への参加 計画作成月・モニタリング月以外 300単位/月 通院同行 計画作成月・モニタリング月以外 300単位/月 福祉サービス等提供機関への情報提供 計画作成月・モニタリング月以外 150単位/月 その他加算 加算名、単位数の順に記載 入院時情報連携加算(T)300単位/月 (U)150単位/月  (T)は訪問、(U)は訪問以外の方法での情報提供 退院・退所加算 300単位/月 (計画相談)居宅介護事業所連携加算 300単位/月(月に2回以上訪問・面接、会議への参加) 150単位/月(情報提供) (障害児相談)保育・教育等移行支援加算 300単位/月(月に2回以上訪問・面接、会議への参加)150単位/月(情報提供) 算定要件の詳細については『障害者総合支援法事業者ハンドブック』等をご参照ください。 (11ページ) 機能強化型基本報酬(T)〜(W)の算定要件 要件、T、U、V、Wの順に記載 常勤専従の相談支援専門員を2〜4名以上配置し、そのうち1名が現任研修修了者 該当4名 該当3名 該当2名 非該当 24時間の連絡体制の確保 該当 該当 非該当 非該当 留意事項にかかる伝達等を目的とした会議を定期的に開催 該当 該当 該当 該当 新規採用した相談支援専門員に対する主任相談支援専門員(現任研修修了者)の同行による研修の実施 該当 該当 該当 該当  支援困難な方に対する計画相談の提供 該当 該当 該当 該当 基幹等が実施する事例検討会等への参加 該当 該当 該当 該当 計画相談支援と障害児相談支援の取扱件数が40件/月未満 該当 該当 該当 該当 基幹が行う地域の相談支援体制の強化の取組への参画 該当 該当 該当 非該当 複数事業所の協働による相談支援体制の整備 一つの事業所だけでは機能強化型基本報酬を算定することができない場合でも、複数の事業所が協定を結び、要件を満たすことで機能強化型基本報酬を算定することができます。 基本報酬が増加するだけではなく、相談支援専門員の孤立を防ぎ、人材育成の体制を確保でき、支援の質の向上や、地域の相談支援体制の強化を図ることができます。 協働が可能な事業所の要件 以下の@Aのいずれも満たす任意の相談支援事業所間で協働可。 @ 以下のa、bのいずれかを満たす事業所間で a 同一地域の拠点等を構成する事業所 b 同一地域の自立支援協議会に構成員として定期的に参画している事業所 拠点との連携体制の確保は必要。 令和9年3月末までは拠点等が未整備場合の経過措置有。 A 全ての事業所が常勤専従の相談支援専門員を1名以上配置すること。 協働する事業所間で実施しなければならないこと 協定の締結 協働体制(協定の内容)が維持できているかどうかの確認 月1回 全職員の参加するケース共有会議、事例検討会の開催 月2回以上 県の取組の紹介 相談支援事業所開設促進セミナー 本セミナーは、相談支援事業の概要等の基本的知識に加え、相談支援の現状や、報酬・加算の仕組、収支モデルの提示等、相談支援事業所の運営のポイントについて触れるほか、地域ごとの現状と課題といった内容で構成されています。 障害福祉を取り巻く環境や制度は日々変化しており、令和6年度の障害者総合支援法の改正や、障害福祉サービス等報酬改定によって、大幅に報酬や制度の見直しが行われました。 相談支援事業所を経営する上では、制度等に関して正しい知識や、解釈を有していることが求められます。 主なカリキュラム 相談支援事業の概要、報酬改定の概要、開設までの流れ、経営のポイント、収支モデル、相談支援専門員を支える仕組、地域ごとの相談支援体制の課題等 カリキュラムの内容は、開催地域により変更があります。 (12ページ) 4 相談支援事業に求められる役割 相談支援事業は、障害者や家族から地域で暮らしていく中での困りごとや、悩みごと等の相談に応じ、助言や情報提供、計画の作成、関係機関との連絡調整等を行います。 相談支援事業所はこうした支援を通じて、本人の希望する暮らしのイメージを形成することやその実現に向けて伴走した支援を行うことが求められています。   (1)相談支援事業所の役割 相談支援事業所には、大きく分けて地域相談支援を提供する「指定一般相談支援事業所」と計画相談支援を提供する「指定特定相談支援事業所」の2種類があります。 また、市町村は、地域生活支援事業の一環で、あらゆる困りごとに対応するよろず相談の「障害者相談支援事業(委託相談支援)」を実施しています。 これらの事業を受託している相談支援事業所では、障害福祉サービス利用の有無に関わらず、障害者や家族等からの相談を受けつけています。 加えて、地域における相談支援の中核的な役割を担う基幹があり、基幹の設置は市町村の努力義務となっています。 相談支援事業の種類 地域相談支援 地域での安心した生活を実現するための「地域移行支援」や「地域定着支援」の2つの支援から構成され、主に指定一般相談支援事業所で提供されます。 計画相談支援 障害福祉サービスの利用申請を行う際に必要なサービス等利用計画を作成する等、障害福祉サービスの利用に関する相談に応じ、関係機関との連絡調整等を行い、主に指定特定相談支援事業所で提供されます。 委託相談支援 市町村から委託を受け、福祉サービス利用や、生活を送る上での困りごと等についての相談や、情報提供等を行います。   ア 指定一般相談支援事業所(地域相談支援) 障害者支援施設等の入所者や、精神科病院に入院している方が、スムーズに地域に移行し、安心して地域で生活できるよう支援を行います。 @ 地域移行支援 地域で暮らしたいという希望を持つ障害者(障害者支援施設に入所中あるいは精神科病院に入院中の障害者)に寄り添い、住宅の確保や、行政等の手続き、障害福祉サービスの体験利用、体験宿泊等地域生活への移行を支援します。 A 地域定着支援 主に自宅で一人暮らしの障害者を対象に、24時間365日、常に連絡が取れる体制を確保し、不安な時やトラブルが発生した時等に援助を行い、緊急訪問を含む相談支援を行います。 (13ページ) イ 指定特定相談支援事業所(計画相談支援) 平成27年4月以降、原則、障害児通所支援及び障害福祉サービスを利用する全ての方が、「サービス等利用計画案」を提出することが必要となり、サービスの利用等に関するケアマネジメント等を提供する計画相談支援の利用時には当該費用を給付することとなりました。 この計画相談支援の対象者には、適切な相談支援が提供する地域の体制整備が、障害福祉サービス等を利用する方の中には多様かつ複雑な課題を抱えている方も少なくないため、障害者本人の希望等を踏まえ、必要に応じて関係機関と連携するとともに、計画相談支援においても相談者からの多様な相談内容に対して、広い視野で対応する必要があります。 また、相談支援事業所が計画相談支援を担うことになった場合、計画の作成に際しては、利用者の情報提供に関する同意を得た上で評価(アセスメント)を行います。 今後の支援の展開を考える上で、いわゆる入口のアセスメントをしっかりと行うことが大切です。 その際、支援者は、障害者と家族等と関わりを始めたころから行政や基幹との間でコミュニケーションをとり、個々の相談者の情報を関係者で共有する仕組をつくる必要があります。 行政担当者には、サービス申請を希望する相談者が何に困っているのか、今までどのような状況下にあったのか等について正しく情報を取得するスキルが求められ、状況に応じて相談の場に行政担当者が同席することもケアマネジメント等を提供する上では有効です。 市町村は、障害福祉サービスの支給決定権者(障害者総合支援法第22条)としてだけではなく、計画相談支援における事業者指定権者としてサービス提供体制や事業所の計画的整備を行う責任があります。 そのため、市町村には、障害福祉サービス等の量的確保と質を担保し、市町村自ら、あるいは委託によって相談支援を提供する役割があります。 計画相談支援については、専門性を有した相談支援専門員によるきめ細やかなモニタリングが大切であり、そのモニタリングを含めた支援の検討・検証等の相談支援の充実・強化の取組は市町村の役割とされています。 行政担当者は、提出された書類等(サービス等利用計画、モニタリング)を読み取るスキルと知識が必要であり、記載された内容について、常になぜこのサービスなのか、なぜこの頻度なのかといった「なぜの視点」を持つことが大切です。 さらには、収集した情報及びこれに対する判断について、部署内で共有する仕組を構築しておく必要があります。 (14ページ) ウ 障害者相談支援事業(委託相談支援) 「障害者相談支援事業(委託相談支援)」は、いわゆる「一般的な相談」として、計画相談に繋ぐまで、あるいは障害福祉サービスの利用を必要としていない方の継続相談等、計画相談支援の対象とならない方を主な対象とします。 このような方への相談支援の流れは、障害福祉サービスを利用する方と同様に通常の流れで相談者に関わり、障害福祉サービスの利用を必要としていない方においても、相談の目的や障害福祉サービスの利用を含めた、安心して生活を送る上でのニーズは何かということをしっかり把握する必要があります。 例えば、家族の対人関係、虐待、権利侵害、差別等、問題は様々ですが、その一つ一つを受け止め、専門相談が必要なケースについては、適切な支援者に速やかに結び付けていきます。 また、相談者の事情によっては、相談支援を長期にわたって継続するケースもあります。 相談支援の基底となるプランニングが不可欠となることから、相談支援専門員には専門性が求められます。 また、障害者相談支援事業の実施は、サービス利用申請者の支給決定と実際に計画相談支援を行う事業所の指定と併せて、市町村の役割です。 事業を相談支援事業者に委託して実施する場合、行政においては定期的な人事異動があり、また、必ずしも福祉の専門職が本事業を担当するとは限らないため、時間の経過とともに障害者相談支援事業(委託相談支援)の実施主体が市町村であることの認識が希薄になりがちです。  こうしたことの防止策として、行政担当者は個々の相談支援に直接関わる機会を設ける等の工夫を行う必要があります。このことが、行政担当者がサービスの支給決定の根拠と事業所の指定に責任を持ち、サービスの利用者にとって望ましい状況を確保し、維持する役割をしっかり担うことにつながります。 したがって、常に委託相談支援事業者との情報交換や地域の実態掌握に努めることが必要であり、定期的に提出される報告書や実績について、十分に考察や、分析を行う責任があります。 (15ページ) (2)基幹相談支援センターの役割 基幹は、地域における相談支援の中核的な役割を担う機関として、下記の事業及び業務を総合的に行うことを目的とする施設です。 基幹が担う主な事業及び業務 障害者相談支援事業・成年後見制度利用事業 他法において市町村が行うとされる障害者等への相談支援の業務 地域の相談支援従事者に対する助言等の支援者支援 自立支援協議会の運営への関与を通じた「地域づくり」の業務 他法:身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第9条第5項第2号及び第3号、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第9条第5項第2号及び第3号並びに精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第49条第1項に基づく相談支援等の業務   設置主体は、市町村または市町村から事業及び業務実施の委託を受けた一般相談支援事業もしくは特定相談支援事業を行う者であり、市町村は基幹の設置に努めるものとされています。 総合的に行う事業及び業務 @地域生活支援事業に関する業務 障害者等、障害児の保護者等の相談に応じ、必要な情報の提供、助言、その他の便宜供与 虐待防止及び早期発見のための関係機関との連絡調整、必要な援助 成年後見制度の利用が困難であるものに対する費用の支給 A3障害に対する情報提供、助言、指導に関する業務 身体障害者、知的障害者、精神障害者について 障害者の福祉に関し、必要な情報の提供 障害者の相談に応じ、必要な調査を行い、本人に対して、直接・間接に助言、指導等を実施 BCは基幹の中核をなす業務 B地域の相談支援事業者等の後方支援に関する業務 地域における相談支援、障害児相談支援に従事する者に対する相談、必要な助言、指導等の実施 C自立支援協議会の活動の推進に関する業務 関係機関等(関係機関、関係団体、障害者等及びその家族、障害者等の福祉・医療・教育・雇用に関連する職務に従事する者等)の連携の緊密化を促進 (16ページ) 令和4年12月の改正によって、基幹の中核をなす障害者総合支援法第77条の2第3号と第4号の業務が新たに追加されたことで、基幹の役割はより明確に規定されました。 「事業及び業務を総合的に行う」とは、「前頁BとCの業務を中核として、@とAを含む4つの業務を総合的に実施する」ということであり、地域の相談支援体制の強化に向け、総合的に事業及び業務を実施、展開することを意味します。 地域の相談支援体制の構築に当たっては、人材育成を含めた「地域の相談支援事業所・相談支援専門員への後方支援」と各種関係機関による「地域のネットワーク構築」が不可欠であり、これらが基幹の中核となる業務です。 これら2つの業務を実施、展開するため、基幹は必然的に地域の相談支援事業者や、相談支援専門員のほか、各種関係機関の相談窓口等が取得した相談者に関する様々な情報を吸い上げ、地域の課題として可視化し、地域資源をうまく活用しながら課題の解決につながる取組を推進する役割を担うことになります。 また、障害者に相談支援を届けるとともに、地域の相談支援ニーズを掘り起こす上では、個々の相談者に対する総合相談窓口や、ワンストップ機能といった地域における効果的な相談の入口を整備することも重要です。 そのため、障害者や家族等はもちろんのこと、「地域住民や関係機関等にとってわかりやすく、相談しやすい窓口設置の在り方」を検討しておく必要があります。 なお、地域におけるこれまでの支援体制構築の形や、その背景は様々であることから、基幹の設置については様々な柔軟な形が考えられます。 それぞれの地域の経緯を適切に踏まえた上で、地域の実情に応じた総合的な相談支援の体制を構築することが求められます。 今後、重層的支援体制整備事業を実施する市町村が増えることを視野に入れ、あらためて、障害者や家族等の相談支援の専門性を担保する上で、基幹の役割の重要性を確認するとともに、相談支援に携わる各主体が果たす役割や、機能を整理し、他法・他施策による相談支援等との連携強化を図る必要があります。 (17ページ) 県内の基幹相談支援センター(令和6年4月1日時点) 横浜市 設置主体、名称の順に記載 1鶴見区 鶴見区基幹相談支援センター 2神奈川区 神奈川区基幹相談支援センター 3西区 西区基幹相談支援センター 4中区 中区基幹相談支援センター 5南区 南区基幹相談支援センター 6港南区 港南区基幹相談支援センター 7保土ケ谷区 保土ケ谷区基幹相談支援センター 8旭区 旭区基幹相談支援センター 9磯子区 磯子区基幹相談支援センター 10金沢区 金沢区基幹相談支援センター 11港北区 港北区基幹相談支援センター 12緑区 緑区基幹相談支援センター 13青葉区 青葉区基幹相談支援センター 14都筑区 都筑区基幹相談支援センター 15戸塚区 戸塚区基幹相談支援センター 16栄区 栄区基幹相談支援センター 17泉区 泉区基幹相談支援センター 18瀬谷区 瀬谷区基幹相談支援センター 川崎市  設置主体は川崎市 19川崎市南部基幹相談支援センター 20川崎市中部基幹相談支援センター 21川崎市北部基幹相談支援センター 相模原市 設置主体は相模原市 22相模原市基幹相談支援センター 横須賀市 設置主体は横須賀市 23横須賀市障害者基幹相談支援センター 平塚市 設置主体は平塚市 24平塚市障がい者基幹相談支援センター 鎌倉市 設置主体は鎌倉市 25鎌倉市基幹相談支援センター 藤沢市 設置主体は藤沢市 26ふじさわ基幹相談支援センターえぽめいく 小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町の合同設置 27小田原市基幹相談支援センター 茅ヶ崎市 設置主体は茅ヶ崎市 28ちがさき基幹相談支援センターナル 逗子市 設置主体は逗子市 29逗子市基幹相談支援センター 三浦市 設置主体は三浦市 30三浦市基幹相談支援センター 秦野市 設置主体は秦野市 31秦野市障害者基幹相談支援センター障害福祉なんでも相談室 厚木市 設置主体は厚木市 32厚木市障がい者基幹相談支援センター 大和市 設置主体は大和市 33大和市障害者自立支援センター 伊勢原市 設置主体は伊勢原市 34伊勢原市基幹相談支援センター 35伊勢原市児童発達支援センターおおきな樹 海老名市 設置主体は海老名市 36海老名市障がい者基幹相談支援センタービナサポート未来 座間市 設置主体は座間市 37座間市障がい児・者基幹相談支援センター 綾瀬市 設置主体は綾瀬市 38綾瀬市障がい児者相談支援センター 葉山町 設置主体は葉山町 39葉山町基幹相談支援センター 寒川町 設置主体は寒川町 40さむかわ基幹相談支援センター 大磯町 設置主体は大磯町 41地域支援センターそしん 二宮町 設置主体は二宮町 42地域支援センターそしん 松田町 設置主体は松田町 43松田町基幹相談支援センター 山北町 設置主体は山北町 44山北町障害者基幹相談支援センター 設置済み市町村数27市町村 設置件数44件 (18ページ) (3)障害保健福祉圏域地域生活ナビゲーションセンターの役割 国の事業の一つに地域のネットワーク構築に向けた指導・調整等の広域的な支援を行うことにより、地域における相談支援体制を整備することを目的として、相談支援に関するアドバイザーを配置する都道府県相談支援体制整備事業(都道府県アドバイザー事業)があります。 本県では、市町村の枠を越えた圏域における相談支援等の体制整備のために、圏域協議会等によりネットワーク構築し、広域的かつ専門的な支援の推進を行うことを目的として、政令市を除いた5つの圏域に「圏ナビ」を設置しています。 この圏ナビは、圏域内の指定相談支援事業者、地域就労援助センター、特別支援学校、市町村、保健福祉事務所等で構成する圏域協議会を運営することで、相談支援等のネットワークの形成を推進しています。 障害保健福祉圏域相談支援ネットワーク形成等事業実施要綱及び要領の抜粋 目的 圏域における相談支援のネットワークの形成等を通じて、重層的な相談支援体制を構築し、広域的かつ専門的な支援を行うことにより、障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。 事業内容 圏ナビの設置・運営 圏域協議会の運営 相談支援及び地域課題に基づくネットワーク形成 圏ナビ連絡会議の設置・運営 圏ナビの役割 本県では、自立支援協議会を市区町村協議会、圏域協議会、県協議会の三層構造で構築をしており、そのうちの圏域協議会は、市町村協議会と県協議会の中間に設置されています。 この圏域協議会を運営し、相談支援及び地域の課題に基づくネットワーク形成が事業の中心である圏ナビには、下記の@〜Bのような役割があります。 @ 国や県の施策等の促進を図る役割 意思決定支援の推進や、拠点の整備等、圏域協議会で情報提供と課題の提言を行い、各市町村や基幹の職員等で構成された課題別の専門部会を設置し、地域の相談支援体制の整備に向けて、課題を共有しながら協議・検討を行い、施策の推進を図っています。 A 協議会間をつなぐ役割 各市町村で確認された地域課題等を圏域協議会で集約し、県協議会に提起し、全県的な取組へとつなげていく役割があります。 (19ページ) 各市町村協議会で抱える相談支援体制の整備や、障害者の地域生活を支える社会資源、支援人材の不足、障害福祉サービスの支援の質の課題など、多様な地域課題を圏域協議会で集約し、それらを圏域全体の課題として協議し、全県的な取組へつなげていくことが必要なものは県協議会に挙げることで、取組の推進を図っています。 B 他の地域へ取組を広げる役割 地域課題の解決や、課題の軽減に向けて、他の地域においても今後の取組の参考となるような好事例等を紹介し、取組を広げていく役割です。 グループホームの質の課題に対して、「課題の背景にはグループホームが地域から孤立してしまい、その結果、閉鎖的な環境になりやすくなり、支援の内容が外から見えにくくなってしまうことも要因の一つである」と捉え、市町村単位でグループホーム連絡会を設定した地域もあります。 こうした取組を圏域協議会で報告し、他の市町村でも設置を試みる等、他の地域へ取組を広げる役割を担っています。 そのほかにも、相談支援専門員を対象とした、アセスメントやプランニング力の向上を目指した勉強会や事例検討会等の開催や、各市町村の基幹等の中核的な機関が スーパービジョンを地域で展開していけるように、圏ナビが研修会や連絡会を開催する等、地域における相談支援体制の整備に向けた人材育成の一端を担っています。 令和6年度からは、いくつかの圏域において主任相談支援専門員を対象に、法定研修のインターバル実習の受け入れ方法や、具体的なスーパービジョンのあり方について、意見交換会や、研修会を実施しています。 圏ナビの所管地域(政令市を除く5つの圏域に設置) 圏域、所管地域の順に記載 横須賀・三浦 横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、葉山町 湘南東部 藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町 湘南西部 平塚市、秦野市、伊勢原市、大磯町、二宮町 県央 厚木市、大和市、海老名市、座間市、綾瀬市、愛川町、清川村 県西  足柄上地区 南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町 足柄下地区 小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町 (20ページ) (4)行政の役割 相談支援における都道府県の責務については、障害者総合支援法第2条第2項において、以下のように規定されています。 都道府県の責務 @ 市町村が行う自立支援給付及び地域生活支援事業が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行う。 A 市町村と連携を図りつつ、必要な自立支援医療費の支給及び地域生活支援事業を総合的に行う。 B 障害者等に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行う。 C 市町村と協力して障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うとともに、市町村が行う障害者等の権利の擁護のために必要な援助が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行う。   都道府県においては、市町村が実施する自立支援給付及び地域生活支援事業が適正かつ円滑に行われるよう、特に「人材育成」と「広域的支援」、「市町村支援」を効果的に推進することが大切です。 また、市町村においては、相談支援の第一義的な実施主体であり、障害者総合支援法第2条には、市町村等の責務について定められています。 こうした責務を果たす上で、市町村の役割は以下のとおりです。 市町村(特別区を含む)の責務 「相談支援業務に関する手引き」より引用 障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児が自立した日常 生活又は社会生活を営むことができるよう、 @ 当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、公共職業安定所その他の職業リハビリテーションの措置を実施する機関、教育機関その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行う。 A 障害者等の福祉に関し、必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行い、並びにこれらに付随する業務を行う。 B 意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう必要な便宜を供与する。 C 障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のために関係機関と連絡調整を行う。 Dその他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う。 (21ページ) 5 研修体系(人材育成のプロセス) 相談支援専門員になるためには、実務経験のほか、法令等に定められた相談支援従事者研修を修了することが制度上必須となっています。 この相談支援従事者研修は、相談支援専門員を養成するための研修であり、障害者相談支援の事業に従事し、相談支援の業務を行うために必要な価値・知識・技術を身につけるための手段の一つです。 職種の中には、研修等による初期教育を受けた後、すぐには一人前として業務を遂行できないものがあり、対人援助職である相談支援専門員はその典型的なものの一つです。 初任者研修は、相談支援専門員となるための入口となる研修で、初任者研修修了後の相談支援の熟達化には、経験を積むこと、実践場面の内外で教育を受けること、自らの日々の業務を振り返る機会を持つこと等、複数の機会や方法による学びを継続し、研鑽を積んでいくことが必要となります。 研修受講も研鑽方法の一つです。 そのため、相談支援専門員には、初任者研修、現任研修、主任研修、専門コース別研修といったいくつもの法定研修が用意されています。 また、法定研修の他にも、圏ナビや自治体等が地域の実態に合わせて、相談支援の力をさらに高めるための階層別やテーマ別の研修や事例検討会等を実施しています。 このような研修や、実地教育の場を効果的に活用しつつ、本県が求める相談支援専門員像を研修受講者に示すため、本ビジョンを活用していただきたいと考えています。 (1)ステップごとに身につけるスキル(基礎、実践、応用、主任) 相談支援専門員の業務に就くためには、一定の実務経験を経て、初任者研修を修了する必要があります。 ここでは、相談支援専門員としての業務に就く前、そして、就いてからの各キャリアステージに合わせて身につけて欲しいスキル、あるいは周囲から求められるスキル等について触れていきます。 相談支援専門員のキャリアステップ 基礎 障害福祉の分野に携わってから、初任者研修受講のための実務経験要件を満たすまでの5〜10年目の期間。障害福祉の制度や支援等に関する基礎的な知識・技術について学ぶ。 実践 初任者研修を修了し、相談支援専門員の業務を開始した時期。事例検討会へ事例を提供し、スーパーバイズを受ける等、相談支援を実践するための知識や技術等について学ぶ。 応用 初任者研修修了後、実務を積む中で、地域の社会資源等の地域の状況を知り、現任研修を受講する時期。事例検討会等で助言を行う等、人材育成についても関わりが求められる。 主任 (管理者)地域の人材育成等の中核を担えるようになり、主任研修を受講する時期。 人材育成のための研修の実施等、地域において指導的役割を担い、相談支援の仕組を支える中核的な役割が求められる。 (22ページ) ステップ1 「基礎」で身につけるスキル 相談支援専門員の業務に就くためには、初任者研修を修了することに加えて、保健、医療、福祉、就労、教育等の分野において、相談支援や介護等の業務を5〜10年程度経験していることが必須の要件(実務経験要件)となっています。 この段階では、この実務経験要件を満たすため、日々の業務の中で積み上げる業務上の経験値だけではなく、障害福祉に関する知識を広げるとともに、相談支援を行っていく上で大切となる視点や、倫理観等を身につけ、支援者としての土台を形成する大切な期間となります。 これらのスキルを身につけた上で初任者研修を受講することが望まれます。 また、この基礎のステップの早い段階から効果的に実務経験を積む仕組として、「相談支援員」が令和6年度に新たに創設され、今後の活用について関心が集まっています。 相談支援員の役割 相談支援に従事する人材を確保し、段階的に育成していくため、適切にOJTが実施できる体制を確保している等、一定の要件のもと、相談支援専門員になる前の段階から相談支援員として、計画相談支援の一部の業務に従事できます。 相談支援員の配置要件 @ 事業所の要件 機能強化型基本報酬を算定していること 主任相談支援専門員の指導助言を受ける体制を確保していること 事業所に主任相談支援専門員が配置されていること 研修への参加ではなく、OJTで育成・質を担保されていること A 相談支援員の要件 社会福祉士又は精神保健福祉士である者 常勤専従で配置すること。 業務及び育成に支障がないと市町村が認める範囲で兼務可能。 相談支援専門員と相談支援員の従事可能な業務の比較 主な業務、相談支援専門員に該当、相談支援員に該当 の順に記載 アセスメント(訪問・面談)該当 該当 サービス等利用計画案の作成 該当 該当 説明及び同意 該当 単独では非該当 サービス担当者会議の開催 該当 単独では非該当 サービス等利用計画の交付 該当 単独では非該当 モニタリング 該当 該当 サービス等利用計画及びモニタリング期間の変更 該当 単独では非該当 意思決定支援 該当 該当 (23ページ) ステップ2 「実践」で身につけるスキル 初任者研修を修了することで、相談支援専門員として計画相談支援の業務に携わることができるようになります。 計画相談支援の業務では、初任者研修等を通じて身につけたケアマネジメントに基盤を置いた相談支援の技術をもとに、障害者の生きがいや希望等を見いだしながら、サービス等利用計画を作成する等の支援を行うことが求められます。 なお、ケアマネジメントを実践する上では、「個別性を重視すること」「障害者本人を中心とした考え方」「生活の質を重視すること」「意思決定を中心に据えた自立の考え」「権利擁護」について実践することが一貫して大切です。 さらに、支援を行う上では、支援の難しさや、疑問に思うことも出てくると思います。 所属している事業所内のOJTに加えて、基幹等が開催している個別スーパービジョンや事例検討会等では、客観的な助言を受けることにより、自身の日々の業務を振り返る機会となり、よりよい支援の提供につながります。 このような地域の活動を効果的に活用しながら、専門性の向上に努めることも非常に大切です。 ステップ3 「応用」で身につけるスキル 個別の支援に加えて、障害者が地域で安心した生活が送れるよう、障害福祉サービスや、行政、医療等、様々な関係機関が連携し、地域資源の活用や、地域住民の理解が得られるよう、障害者本人を中心とした多職種連携が増えていくことになります。 そのため、チームアプローチを実践するための技術と能力が求められてきます。 また、相談支援専門員としての専門性や技術等が熟達していく中では、事例検討会で実践のステップの相談支援専門員へ助言を行うことや、初任者研修で演習講師を行う等、スーパーバイズを行うことを通じて、人材育成の一端を担う能力が求められてきます。 ステップ4 「主任」で身につけるスキル これまでの基礎・実践・応用のそれぞれの段階を通じて積み上げてきた相談支援の実践経験や、相談支援に関する幅広い知識や視点等のスキルを活かし、スーパービジョンの場で地域の相談支援従事者や、関係機関等に助言を行う等の指導的役割や、地域の相談支援体制の充実に向けた研修や自立支援協議会の企画・運営に携わる等、課題解決に向けて、個から地域へ広げていく視点を持った地域づくりの推進的な役割、さらには、人材育成の中核を担うことが求められます。 加えて、地域の特性や課題について熟知し、これまでの実績が主任相談支援専門員の業務を担う上で主任相談支援専門員としての知識やスキル等を有し、地域における中核的な役割を担っていること認められて市町村の推薦を受けることで主任研修を受講することができます。 (24ページ) 継続的な学びのなかでの獲得目標 障害者相談支援従事者研修テキスト(初任者研修編)より一部改変し引用した図 相談支援専門員資格の有効期限 初任者研修を修了した翌年度から5年間有効。 有効期間中に現任研修を受講し、資格を更新する。 5年間どこで修了しても、6から10年目の有効期間が延長される。 例 令和7年度に初任者研修を修了すると令和13年3月31日まで有効 (25ページ) (2)相談支援従事者研修と実地研修 令和2年4月より、地域を基盤とした質の高いケアマネジメントを含めたソーシャルワークを実践できる相談支援専門員を養成するため、法定研修のカリキュラムの内容を充実させる改定が行われました。 具体的には、相談支援専門員には実践の積み重ねを行いながらスキルアップできるよう、5年毎の現任研修の受講にあたり、「現任研修受講に係る実務経験要件」として、相談支援に関する一定の実務経験の要件(「過去5年間に2年以上の相談支援の実務経験がある」、「現に相談支援業務に従事している」)が追加されました。   現任研修受講に係る実務経験要件 初任者研修修了後の初回の現任研修受講者は、実務経験要件@「過去5年間に2年以上の相談支援の実務経験がある」のみが実務経験要件となりますが、2回目以降の現任研修の受講の際は、実務経験要件A「現に相談支援業務に従事している」が実務経験要件に加えられます。 現任研修における過去5年間の考え方 現任研修の開始日の前日までの過去5年間のうち、通算して2年以上の相談支援の実務経験が必要。 例 令和7年6月1日に現任研修開始の場合、過去5年間は令和2年6月1日から令和7年5月31日の間を指す。   また、地域づくり、人材育成、困難事例への対応など地域の中核的な役割を担う専門職を育成するとともに、相談支援専門員のキャリアパスを明確にし、目指すべき将来像や、やりがいをもって長期的に働ける環境を整えるため、主任研修が創設されました。 主任相談支援専門員が助言等の指導的役割を果たすためには、適切な指導や助言を行う技術が必要であり、こうした技術を習得する機会が確保されるよう、県や基幹等が中心となって人材育成に関する方向性を示し、事業者の理解を得ながらそれぞれの地域における相談支援従事者への段階的な人材育成に取り組む必要があります。 さらには、障害者の高齢化や「親亡き後」への支援の必要性の高まりを踏まえ、地域のケア会議等を通じて、多職種との連携を図るなど、制度間のスムーズな接続により、当事者への支援やサービス提供の早めの準備・対応が求められます。 市町村における障害者相談支援事業又は基幹の業務に従事する相談支援専門員の配置に当たっては、計画性のある人材育成が求められるとともに、都道府県においては、市町村支援の観点からも人材養成のための継続的な各種研修事業の企画・実施が不可欠となります。 主任相談支援専門員については、基幹に配置される人材のみならず、地域の各事業所において実践される相談支援において、高度な知識と豊富な経験を活かし、活躍できる環境の創出が市町村及び都道府県に求められます。 加えて、初任者研修を受講する前の準備として、県独自に「プレ研修」を実施しています。 プレ研修では、基本的な相談支援に関する知識や技法、姿勢等、相談支援に必要となる職業倫理や価値観等について学ぶことにより、初任者研修を受講する上での受講者の共通の土台となり、初任者研修の研修効果を高めることを目的としています。 初任者研修及び現任研修においては、研修修了後の実務の一助となるよう、地域の人材育成や、相談支援体制を構築する上で中核を担う基幹等の相談支援専門員や、主任相談支援専門員等と顔の見える関係を作ることを目的とした実地研修として「インターバル実習」がプログラムに盛り込まれています。 初任者研修におけるインターバル実習では、アセスメントとサービス等利用計画案及び地域資源の調査を行い、実習受け入れ先でスーパーバイズを受けることになりますが、現任研修のインターバル実習では、地域の社会資源や相談支援体制、自立支援協議会の役割について情報収集し、報告書を作成します。(各研修のプログラムの概要は30ページに記載しています。) 「相談支援業務に関する手引きより引用した相談支援専門員研修制度(令和2年4月1日〜)の図 (27ページ) 相談支援専門員の配置に係る実務経験要件 業務範囲、業務の内容、経験年数の順に記載 障害児者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における支援業務 @相談支援の業務 ア 平成18年10月1日時点で、下記に掲げる事業等において、同年9月30日までの間に相談支援の業務及びその他準ずる業務に従事している者で必要経験年数を満たす者 旧障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業 精神障害者地域相談支援センター  その他これに準ずる事業等(a) 3年以上 イ 相談支援機関・施設等において相談支援の業務に従事する者 一般相談支援事業、特定相談支援事業、障害児相談支援事業、旧障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業、居宅介護支援事業、介護予防支援事業 児童相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、精神障害者地域生活支援センター、福祉事務所 障害児入所施設、障害者支援施設、老人福祉施設、精神保健福祉センター、救護施設、更生施設、介護老人保健施設、介護医療院 その他これに準ずる事業等(b) 5年以上 ウ 病院若しくは診療所において、相談支援の業務に従事する者で以下のいずれかに該当する者 (1)社会福祉主事任用資格を有する者 (2)介護職員初任者研修・訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者 (3)国家資格等※3を有する者 (4)イに掲げる業務に1年以上従事した者 5年以上 エ 就労支援に関する施設において、相談支援業務や、その他これに準ずる業務に従事する者 障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター その他これに準ずる業務(c) 5年以上 オ 特別支援学校その他これに準ずる機関において、就学相談・教育相談・進路相談の業務に従事する者 特別支援学校 その他これに準ずる施設(d) 5年以上 A介護等の業務 カ 施設及び医療機関等における介護の業務に従事する者 障害児入所施設、障害者支援施設、老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、医療法に規定する療養病床、その他これに準ずる施設 障害児通所支援事業、障害福祉サービス事業、老人居宅介護等事業、その他これに準ずる事業 病院若しくは診療所、薬局、訪問看護事業所 その他これに準ずる施設(e) 10年以上 B有資格者等 キ 上記A直接支援の業務に従事する者で、次のいずれかに該当する者 (1)社会福祉主事任用資格を有する者 (2)相談支援の業務を行うために必要な知識及び技術を修得したものと認められる者(介護職員初任者研修・訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者) (3)保育士 (4)児童指導員任用資格、精神障害者社会復帰施設指導員任用資格者 5年以上 ク 上記@の相談支援の業務及び上記Aの介護等の業務に従事している期間が通算して3年以上かつ国家資格等※3による業務に5年以上従事している者 なし 「その他これに準ずる事業(業務・施設)」については次頁参照。 必要な経験年数は、通算期間のことを指す。 (28ページ) その他これに準ずる事業(業務・施設)の例 a障害児(者)地域療育等事業、市町村障害者生活支援事業 等 b保健所、市町村の相談窓口業務、児童発達支援センター、身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設、身体障害者福祉センター、知的障害者援護施設、知的障害者地域生活援助、精神障害者社会復帰施設、精神障害者地域生活援助、福祉型及び医療型障害児入所支援(知的障害児施設、自閉症児施設(第一種、第二種)、盲児施設、ろうあ児施設、肢体不自由児施設、肢体不自由児療護施設、重症心身障害児施設)、知的障害児通園施設、指定発達支援医療機関、地域活動支援センター、市町村から補助または委託を受けている作業所等、旧身体障害者福祉ホーム、旧知的障害者福祉ホーム 等 c地域就労援助センター 等 d小学校及び中学校の特別支援学級等 e身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設、身体障害者福祉センター、旧知的障害者デイサービスセンター、知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮、旧知的障害者福祉ホーム、知的障害者地域生活援助、精神障害者社会復帰施設、精神障害者地域生活援助、福祉型及び医療型障害児入所支援(詳細、前述のとおり)、指定発達支援医療機関、地域活動支援センター、市町村から補助または委託を受けている作業所等、障害者自立支援法施行以前の身体障害者居宅介護・知的障害者居宅介護・児童居宅介護・精神障害者居宅介護・身体障害者デイサービス、障害児通所支援(児童デイサービス、知的障害児通園施設、難聴幼児通園施設、肢体不自由児通所施設、児童発達支援事業所、重症心身障害児(者)通園事業(補助事業)、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援)、児童発達支援センター等 1 相談支援の業務 身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の日常生活の自立に関する相談に応じ、助言、指導その他の支援を行う業務その他これに準ずる業務 2 介護等の業務 身体上若しくは精神上の障害がある者につき、入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う業務 3 国家資格等 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士、公認心理師 4 必要な経験年数の従事日数の考え方 1年以上の実務経験とは、業務に従事した期間が1年以上であり、かつ、実際に業務に従事した日数が1年当たり180日以上であることを言うものとする。 例えば、5年以上の実務経験であれば、業務に従事した期間が5年以上であり、かつ、実際に業務に従事した日数が900日以上であることを言う。 (H18.8.24「障害保健福祉関係主管課長会議」参考資料Aより参照) 本資料は、初任者研修受講希望者向けに神奈川県で作成した実務経験の参考資料です。 詳細については、「指定障害児相談支援の提供に当たる者としてこども家庭庁長官が定めるもの(平成24年3月30日厚生労働省告示第225号)」、「指定地域相談支援の提供に当たる者として厚生労働大臣が定めるもの(平成24年3月30日厚生労働省告示第226号)」、「指定計画相談支援の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの(平成24年3月30日厚生労働省告示第227号)」をご確認ください。 (29ページ) (3)主任相談支援専門員養成研修 平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定により、地域の中核的な役割を担う人材として創設された主任相談支援専門員を養成するため、一定の実務経験に加え、主任研修を修了したことが主任相談支援専門員となるための要件となりました。 主任研修は、地域の障害者等の意向に基づく地域生活を実現するために必要な保健、医療、福祉、就労、教育等のサービスを総合的かつ適切な利用支援等の援助技術を向上させ、困難事例に対する支援方法について修得するとともに、地域の相談支援体制において、地域課題についての協議や相談支援従事者への助言・指導等を実施する等の中核的な役割を果たす者を養成するため、障害福祉施策等の動向や、より高度な知識・技術が身につけられるような内容となっています。 なお、本県では、地域の人材育成の中核となる者を養成するため、受講に際して、これまでの活動の実績を加味し、各市町村の障害福祉主管課からの推薦をもって受講者の選定を行っています。 (4)専門コース別研修 専門コース別研修は、相談支援専門員として従事するために必要な知識や支援方法等のスキルを向上するための研修です。障害者が地域で安心して生活が送れるよう、保健、医療、福祉、就労、教育等のサービスに関する利用支援等の知識や援助技術を身につけ、相談支援業務の質の向上を図ることを目的としています。 相談支援専門員の多角的な成長(イメージ図) (30ページ) 相談支援従事者研修のプログラム 研修名、目的の順に記載 プレ研修 初任者研修を受講する上での土台を身につけるための研修。 相談支援を行うための基礎的な知識や倫理、価値等を学ぶ。 初任者研修 相談支援専門員になるための研修。 サービス等利用計画案を作成するための知識や技術等を学ぶ。 現任研修 相談支援専門員の資格の更新のための研修。 日々の業務を振り返り、人材育成や地域づくり、より専門的な相談支援技術等を学ぶ。 主任研修 主任相談支援専門員になるための研修。 地域づくりの視点、法制度、相談支援の展開等、地域の中核を担うための多角的な視点について学ぶ。 専門コース別研修 専門的知識の習得及びスキルアップを目的とした研修。 以下は専門コース別研修に含まれる研修 障害児支援 障害児の相談支援における基本姿勢や、支援の目指す方向性等を理解し、障害児相談支援でも役割のポイントについて学ぶ。 権利擁護、成年後見制度 権利養護に関する県の取組みや、障害者が侵害されやすい権利について理解を深め、虐待防止の視点等を学ぶ。 地域移行・定着、触法 地域移行・定着支援の仕組みや制度、現状について理解し、触法障害者支援の取組について学ぶ。  「精神障害者支援体制加算」の対象となる研修 セルフマネジメント 日々の業務を振り返る中で、支援者目線の支援ではなく、当事者目線のエンパワメントの視点を重視した支援について学ぶ。 スーパービジョン・管理・面接技術 相談支援現場におけるスーパービジョンについて学び、人材育成に必要な知識や、技術、視点を習得する。 意思決定支援 意思決定支援の定義、基本的な考え方、サービス等利用計画等の作成における意思決定支援のプロセス等を学ぶ。 就労支援 就労支援のプロセスや、終業後の生活を支えるための支援の考え方等、就労系サービスを利用する上での各機関との連携や、必要な視点について学ぶ。 介護支援専門員との連携 障害福祉や介護保険制度の制度や、支援を行う上で基盤としている価値や倫理、連携に当たっての留意点等について学ぶ。 プレ研修は、神奈川県独自の取組みとして初任者研修と一連のプログラムで実施しています。 初任者研修及び現任研修において、インターバル実習を実施しています。 (31ページ) 6 地域における人材育成 (1)地域における実地研修(OJT) 「OJT」と言われても、具体的なイメージや実践が読み取りづらいこともあります。 ここでは、OJTを「地域で実践されている相談支援の知識と技術を成熟させ、相談支援の価値を共有していくため、実践現場(地域で行われている個別の相談支援)を通じた人材育成すること」と位置づけます。 地域においては、計画相談支援、委託相談支援、基幹、自立支援協議会等といった相談支援の体制整備が整いつつありますが、一人一人の相談支援従事者の育成体制や支援体制については引き続き整備を進めていく必要性があります。 障害者や家族等の望む生活の実現のためには、相談支援専門員が実践する相談支援事業は必要不可欠であると言えますが、日々の相談支援の実践の中で、時に孤立し、答えのない問いに一人で頭を抱えているような状況も多いことが推察されます。 このような状況の中、相談支援従事者養成研修のカリキュラムにおいては、OJTが必須となり、基幹や主任相談支援専門員の役割に人材育成が明確に位置付けられました。 このことから、今後の相談支援体制の整備及び拡充には、地域における人材育成が不可欠であり、実践現場での人材育成の手法を3つに別け、その効果とともに示します。 人材育成の3つの手法とその効果 @ 個別に行われるスーパーバイズ及び実践事例の検証 相談支援の実践現場では、面接相談(訪問や来所等)や、電話による相談、通院等への同行等、相談支援専門員が単独で相談者と対峙する場面は多くあります。 支援を進める上では、所属している事業所の管理者や同僚に相談しながらスーパーバイズを受けることが一般的ですが、障害者本人に了解を得た上で、地域の相談支援専門員と協働することや、面接や訪問等の内容を共有し、互いに振り返りを行う環境を整えることも有効な方法です。 相談支援は事業所内で完結するものではなく、地域の資源を活用することは地域づくりのための第一歩であり、今後の連携のための基盤づくりにもなります。 また、スーパーバイズの場では「なぜそのようなアプローチをしたのか」等と面接内容を振り返ることや、障害者を支援する前の準備や心づもり等、様々な考えや想いの共有を行います。 その中で、相談支援の価値の共有や技術の習得となり、日常的に無意識に行っている見立てや手法、根拠等を客観的な視点で見つめ直すことにつながり、他者の実践と合わせることで相談支援の可能性を広げることにつながります。 (32ページ) また、基幹の職員や主任相談支援専門員には、地域の相談支援専門員がどのような想いや考えのもの地域で相談支援を実践し、どのような課題と感じているのか等を把握するきっかけとなり、地域における人材育成の具体的な取組につながります。 A グループでの事例検討やスーパービジョン 障害者の望む暮らしや希望を実現するために、グループで問題の解決や希望の実現に向けたアイデア等を深めていくための障害者本人の希望や問題、環境等の実現や解決に向けた視点を中心とした事例検討会だけではなく、相談支援専門員が行き詰っている事柄や、困難と感じているようなアプローチに視点を置き換え、「支援者を支援する視点」を取り入れたグループスーパービジョンは有効な方法です。 そういった場では、事例を提供した相談支援専門員だけではなく、参加している相談支援専門員も「一人ではない」「私だけではなかった」といった孤立感の解消や、モチベーションの向上につながります。 そして、参加者同士が並列な関係で対等に 意見を出し合うため、誰もが共感と賞賛を得られる時間となり、実践を動かすための原動力にもつながると言われています。 加えて、基幹の職員や主任相談支援専門員が、アセスメントシートの作成や、面接の場に同席すること等は、個別のスーパーバイズの機能も併せ持ちます。   B 多職種連携を通じた人材育成 地域で実践されている相談支援は、相談の内容が多岐に渡り、かつ複雑になってきています。 家族支援を含め、障害福祉分野や障害福祉サービスだけでは解決できない問題に直面した際、必然的に障害福祉分野以外の関係機関や支援者と協働してチームアプローチを実践していくことになります。 障害福祉分野以外の支援者とチームアプローチを行うことそのものが、スーパーバイズや、スーパービジョンの機能を有しており、上記の@、Aで述べた効果を相談支援の実践の中で得ることができる大切な場面とも言えます。 しかしながら、相談支援の実践においては、多職種によるチームアプローチを実践しただけでは人材育成の効果につながるのではなく、自身の日々の実践を振り返り、検証していく必要があり、@、Aの実践を積み上げていくことが非常に大切です。   これまで、地域における人材育成についての手法や効果について述べましたが、最も相談支援従事者を育成してくれるのは、目の前にいる障害者やその家族であり、相談支援を支えているのは地域であり、相談支援専門員の仲間です。 この事を忘れずに日々の相談支援に向き合うことが大切です。 答えが見えず、自問自答しながら苦しむのではなく、相談できる仲間や、目指すべき指導者を地域の中で見出し、本ビジョンを参考の一つとしながら一歩ずつ進み、その一歩が、地域における人材育成の体制整備につながると考えています。 (33ページ) (2)自立支援協議会による地域づくり 自立支援協議会は、当事者、地域の相談支援事業所や、障害福祉サービス事業者、教育、医療、有識者等の関係機関で構成されています。 関係機関等が相互の連携を図ることにより、地域における障害者等への適切な支援に関する情報及び支援体制に関する課題についての情報を共有し、地域の実情に応じた相談支援体制の整備を推進するために設置されています。 本県における自立支援協議会は、市区町村協議会、圏域協議会、県協議会の三層構造を構築し、地域の相談支援体制の整備に努めています。 この構造に加え、令和6年度からは、自立支援協議会のより一層の活性化を図るため、「運営会議」及び「圏ナビ連絡会議」を設置しました。 「運営会議」は、県全体の課題を整理・分析する中で、自立支援協議会の向かうべき方向性を示す機能があります。 また、「圏ナビ連絡会議」は、地域  課題の分析を行い、地域への情報の発信し、どのように地域に還元していくのか等の方法について検討し、県協議会に報告を行う機能があります。 それぞれの会議では、各地域の課題の整理を行い、効率的に議論が図れるよう、県内の情報の循環を円滑なものにするための歯車の中心を担っていく機能が期待されています。 自立支援協議会に相談支援専門員が参画することで、地域とのネットワークを活かした相談支援がより効率的に行うことができるとともに、個別事例を提供することで、より専門的な支援を地域で展開しやすくなることが期待されています。 また、自立支援協議会の機能については令和4年度の障害者総合支援法の改正により、大きく見直しが行われました。 自立支援協議会は、相談支援体制の検討に関する情報共有のみを規定していた障害者総合支援法第89条の3第2項では、自立支援協議会を通じた「地域づくり」において「個から地域へ」の取組が重要であることが明確となりました。 自立支援協議会の役割・機能 厚生労働省の資料を引用 @ 協議会を通じた「地域づくり」にとっては「個から地域へ」の取組が重要。 協議会は関係機関等が相互の連絡を図ることにより、地域における障害者等への適切な支援に関する情報及び支援体制に関する課題についての情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について 協議を行うものとする。 A 協議会は地域の関係機関等に情報提供や意見の表明等の協力を求めることができることとし、協力を求められた関係機関等がこの求めに応じることについて努力義務を課す。 B 個別の支援に係る検討に基づく地域の支援体制の検討を明確化したことに伴い、 協議会関係者に対し、守秘義務を課す。   (34ページ) 加えて、令和6年4月の同法の改正により、新設された第3項、第4項で「自立支援協議会は地域の関係機関等に情報提供や意見の表明等の協力を求めることができる」とされ、協力を求められた関係機関等が協力に応じることが努力義務として課されました。 さらに、第5項の新設により、個別の支援に係る検討に基づく地域の支援体制の検討を明確化したことに伴い、自立支援協議会の関係者に対して守秘義務を課すこととなり、個別的な課題に関して、地域で積極的に議論を行うことができるようになりました。 このように、支援の検討・検証の場を自立支援協議会に位置付けることで、情報管理を徹底することになり、自立支援協議会の活動の円滑化と活性化が期待されています。 なお、第3項から第6項までの規定は、社会福祉法(重層的支援会議等)・生活困窮者自立支援法(支援会議)・介護保険法(地域ケア会議)と同旨の規定をもつものとなりました。 運営会議を通じた「地域づくり」の取組イメージ図 ※ 神奈川県のウェブサイト『神奈川県障害者自立支援協議会』 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/yv4/cnt/f536582/index.html (35ページ) 三層構造の運営イメージ図 階層を越えた県全体の情報循環のイメージ図 (36ページ) 県内の協議会 設置自治体・圏域、協議会名の順に記載 県 神奈川県障害者自立支援協議会 圏域 横浜 横浜市障害者地域自立支援協議会 川崎 川崎市地域自立支援協議会 相模原 相模原市障害者自立支援協議会 横須賀・三浦 横須賀・三浦障害保健福祉圏域障害者自立支援協議会 湘南東部 湘南東部障害保健福祉圏域障害者自立支援協議会 湘南西部 湘南西部障害保健福祉圏域障害者自立支援協議会 県央 県央障害保健福祉圏域障害者自立支援協議会 県西 県西障害保健福祉圏域障害者自立支援協議会 市区町村 横浜市内 鶴見区地域自立支援協議会 神奈川区地域自立支援協議会 西区地域自立支援協議会 中区障害者自立支援協議会 南区自立支援協議会 港南区自立支援協議会 保土ケ谷区障害者地域自立支援協議会 旭区自立支援協議会 磯子区自立支援協議会 金沢区自立支援協議会 港北区地域自立支援協議会 緑区自立支援協議会 青葉区地域自立支援協議会 都筑区自立支援協議会 戸塚区地域自立支援協議会 栄区自立支援協議会 泉区障害福祉自立支援協議会 瀬谷区障害者自立支援協議会 川崎市内 川崎区地域自立支援協議会 幸区地域自立支援協議会 中原区地域自立支援協議会 高津区地域自立支援協議会 宮前区地域自立支援協議会 多摩区地域自立支援協議 麻生区地域自立支援協議会 横須賀市 横須賀市障害とくらしの支援協議会 平塚市 平塚市障がい者自立支援協議会 鎌倉市 鎌倉市障害者支援協議会 (37ページ) 藤沢市 藤沢市障がい者総合支援協議会 小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町 小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町地域障害者自立支援協議会 茅ヶ崎市 茅ヶ崎市自立支援協議会 逗子市 逗子市自立支援会議 三浦市 三浦市自立支援協議会 秦野市 秦野市障害者支援委員会 厚木市 厚木市障害者協議会 大和市 大和市障害者自立支援協議会 伊勢原市 伊勢原市障がい者とくらしを考える協議会 海老名市 海老名市自立支援協議会 座間市 座間市障がい児・者笑顔増進協議会〜にこにこざま〜 南足柄市、中井町、大井町、山北町、開成町 足柄上地区地域自立支援協議会 綾瀬市 障害があっても障害がなくても共に生きる綾瀬を創る協議会 葉山町 葉山町自立支援協議会 寒川町 寒川町地域自立支援協議会 大磯町、二宮町 二宮町・大磯町障害者自立支援協議会 愛川町 愛川町障がい者協議会 清川村 清川村障がい者協議会   県内の設置状況(令和7年3月31日現在) 県 1協議会 圏域 8協議会 市町村(横浜市・川崎市含む )25協議会(合同設置3協議会) 区(横浜市・川崎市が設置) 25協議会 県内の33市町村全てが自立支援協議会を設置しています。 (38ページ) 県の取組の紹介≫ 神奈川県障害者自立支援協議会の取組 基幹相談支援センター連絡会の開催 県内の基幹の連携や、それぞれの機能の強化等を図るため、「基幹相談支援センター連絡会」を県協議会研修企画部会の活動の一つとして開催しています。 基幹相談支援センター連絡会では、広域的な支援体制構築の視点を持つため、基幹同士の連携及び地域の相談支援体制整備に関する機能の強化や、地域ごとの人材育成に関する取組の情報交換等を主なテーマとして実施しています。 また、県内の人材育成の体制をより充実したものとするために、令和5年度からは、基幹の職員に加えて、地域の相談支援体制の中核を担う主任相談支援専門員や、行政職員もこの連絡会の参加対象に加え、人材育成に関する取組や地域の相談支援体制整備に関する取組の実践報告や、他県における地域づくりに関する実施状況の共有を行い、共有した情報をもとにグループワークを行うことで、参加者が情報交換を行うなかで横のつながりを形成できるようにしています。 参加者からは地域の課題解決に向けた前向きな意見が出されており、積極的な情報交換等が行われています。 本県では、引き続き定期的に連絡会を開催し、県全体で地域の相談支援体制づくりや、人材育成等について検討していきたいと考えています。 基幹相談支援センター連絡会の様子の写真を掲載 (39ページ) 7 連携・協働が求められる関係機関等 相談支援を行う上では、相談支援従事者一人一人が相談支援の業務のほか、障害について十分に理解するとともに、障害者が暮らす地域社会において、よりよい支援体制を組み立てるために、関係機関や他の専門職等、地域の社会資源についての理解を広げ、連携強化を図ることとても大切です。 ここでは、相談支援従事者が連携を図る必要性が高い関係機関の一部について紹介します。 (1)サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者 障害福祉に係る相談支援や、障害福祉サービスの利用調整、サービス等利用計画の作成、関係機関との連携支援等、幅広い業務を担う相談支援従事者に対し、サービス管理責任者は、障害者支援の現場において、適切なサービスを提供するため、サービス内容や品質の管理、関係機関との連携や調整、人材育成等の業務を行っています。また、児童発達支援管理責任者は、障害児療育の現場において、それぞれの発達の状況や状態に応じた個別支援計画の作成、保護者や支援員、関係機関と連携を行っています。 サービス管理責任者や児童発達管理責任者とは、障害者が適切なサービスを利用する上で連携が欠かせない専門職とはいえ、日頃から連携ができているか、その確認が非常に大切となります。 また、サービス管理責任者と児童発達管理責任者として働くためには、相談支援専門員と同様にこれまでの実務経験と、所定の研修の修了が必要となります。 サービス管理責任者及び児童発達管理責任の主なサービス等 サービス管理責任者(障害者総合支援法) 療養介護、生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助、障害者支援施設 児童発達管理責任者(児童福祉法) 児童発達支援(児童発達支援センター含む)、居宅訪問型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援、障害児入所施設(福祉型・医療型) 神奈川県ウェブサイト『神奈川県サービス管理責任者等研修について』 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dn6/cnt/f535712/index.html (40ページ) (2)発達障害者地域支援マネジャー 本県では、市町村等の発達障害の支援関係機関に対し、発達障害を抱える方へ支援を行う上での知識や支援技術等の普及を推進しています。 発達障害を抱える方や家族等が、身近な窓口で相談や支援が受けられる体制の整備を図るため、専門的な助言を行う「発達障害者地域支援マネジャー」を圏域ごとに配置しています。 この発達障害者地域支援マネジャーが中心となり、発達障害支援センター「かながわA(エース)」と連携し、定期的に地域の関係機関を巡回し、新規の支援依頼を受けるほか、地域の支援ニーズや課題等を収集し、地域の実態の把握に努めています。 相談支援従事者においても、発達障害に関する専門的な助言や支援が必要な場合、発達障害者地域支援マネジャーと連動する必要があります。 発達障害者地域支援マネジャーの業務イメージ図を掲載 発達障害者地域支援マネジャーの活動内容 地域巡回 地域の関係機関への訪問、地域連絡会等を通して、地域の関係機関との意見交換や研修会等の情報提供を行います。 さらに、事例検討の場等で助言を行うことや、意見交換の中でコンサルテーションや相談を受け付けることもあり、地域の関係機関との関係構築の入口となっています。 機関コンサルテーション 地域の関係機関の要請にもとづき、地域の事業所を訪問し、発達障害のある方やそのご家族等に関する支援方法等の助言を行います。 また、必要に応じて様子の確認に赴くことや ケース会議や自立支援協議会等に参画します。 このほかに、発達障害支援センターが個別支援を行ってきた相談者を発達障害支援センターと共に地域の関係機関に引継を行います。 加えて、地域の関係機関で発達障害支援センターが引き継いだ相談者に不適応等が生じた場合、発達障害者地域支援マネジャーを窓口として、発達障害支援センターと連携しながらバックアップを行っています。 ネットワーク構築 関係機関相互の横のつながりを構築するため、圏域内の関係機関で構成する地域連絡会や事例検討会に参加しています。 (41ページ) (3)医療的ケア児等コーディネーター 医療的ケア児とは、日常生活において、人工呼吸による喀痰(かくたん)吸引等の医療的なケアを要する状態にある障害児や重症心身障害児等のことです。 こうした医療的ケア児等が地域で安心して暮らしていけるよう、医療的ケア児等に対する支援を総合的に調整する「医療的ケア児等コーディネーター」を、県では平成30年度より養成しています。 医療的ケア児を支援する上では、医療等多くの関係機関と連携を図る必要があり、支援内容の整理・調整を円滑に進めるために、相談支援従事者は、専門的な知識を有した医療的ケア児等コーディネーターと連携を図る必要があります。 医療的ケア児等コーディネーターに求められている資質・役割 医療的ケア児等に関する専門的な知識と経験の蓄積 多職種連携を実現するための水平関係(パートナーシップ)の構築力 本人中心支援と自立支援を継続していくための家族との信頼関係づくり 医療的ケア児等の相談支援業務(基本相談、計画相談、ソーシャルワーク) 本人のサービス等利用計画(障害児支援利用計画)を作成する相談支援専門員のバックアップ 地域に必要な資源等の改善、開発に向けての実践力   (4)障害当事者等 ア 障害者ピアサポーター ピアとは、「同じ立場にある仲間」という意味であり、ピアサポートとは、「同じ立場にある・同じ課題に直面している仲間としての支え合うこと」とされています。 障害者ピアサポーターは、障害や疾病のある人生に直面し、同じ立場や課題を経験してきたことを活かして、仲間として支えることを指し、地域での生活のサポートや、病院からの地域移行を支えるための入院者訪問支援事業等の活動を行っています。 このことから、相談支援従事者は、障害者の地域移行・定着支援を支えるため、障害者ピアサポーターと連携を図ることが大切です。 ピアサポート研修 ピアサポート研修は、ピアサポーターの中でも、自分の経験を活かして有償で働く方、及び働きたいと考えている方を対象としています。 本県が実施する「障がい者ピアサポート研修」の研修カリキュラムを受講・修了したと認められる障害者等及び職員(管理者等)を配置することで、障害福祉サービス事業所等の報酬算定時の加算(ピアサポート体制加算)として評価されます。 イ 身体障害者相談員及び知的障害者相談員 障害者当事者の安定した地域生活を支えるためや、その家族等の身近な相談相手として、日常生活の中での悩み事や、心配事等を相談できる「障害福祉相談員(身体障害者相談員及び知的障害者相談員)」を市町村ごとに配置しています。 身体障害者相談員(身体障害者福祉法) 身体障害者相談員 第十二条の三 市町村は、身体に障害のある者の福祉の増進を図るため、身体に障害のある者の相談に応じ、及び身体に障害のある者の更生のために必要な援助を行うこと(次項において「相談援助」という。)を、社会的信望があり、かつ、身体に障害のある者の更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。 2 前項の規定にかかわらず、都道府県は、障害の特性その他の事情に応じた相談援助を委託することが困難であると認められる市町村がある場合にあつては、当該市町村の区域における当該相談援助を、社会的信望があり、かつ、身体に障害のある者の更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。 3・4(略) 知的障害者相談員(知的障害者福祉法) 知的障害者相談員 第十五条の二 市町村は、知的障害者の福祉の増進を図るため、知的障害者又はその保護者(配偶者、親権を行う者、後見人その他の者で、知的障害者を現に保護するものをいう。以下同じ。)の相談に応じ、及び知的障害者の更生のために必要な援助を行うこと(次項において「相談援助」という。)を、社会的信望があり、かつ、知的障害者に対する更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。 2 前項の規定にかかわらず、都道府県は、障害の特性その他の事情に応じた相談 援助を委託することが困難であると認められる市町村がある場合にあつては、当該 市町村の区域における当該相談援助を、社会的信望があり、かつ、知的障害者に対する更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。 3・4(略) 神奈川県ウェブサイト 『かながわ医療的ケア児支援センター公式ホームページ』 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/yv4/cnt/mccs/index.html 関係機関等との連携・調整の実際については、神奈川県ウェブサイト 『支援困難事例に関する対応事例集』をご参照ください。 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/yv4/20210406.html まとめ 相談支援事業は、平成2年から「コーディネーター事業(知的分野)」が始まり、平成7年には「障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年戦略〜」に、障害児・者地域療育等支援事業(知的障害分野)、市町村障害者生活支援事業(身体障害分野) 、精神障害者地域生活支援センター事業 (精神障害分野)が位置付けられて約30年が経過したことになります。 この事業開始当時から、障害のある人が抱える問題を、個人レベルだけでの問題として捉えるだけではなく、地域社会全体を含めた包括的なレベルで捉え直し、 地域での暮らしを継続するための相談支援体制の整備が重要と考えられていました。 実際には、官民が協力し、その体制整備の先頭に立つ相談支援専門員の養成、育成、資質向上が急務でありました。 次に、平成24年には計画相談支援が始まり、平成27年3月までに、障害福祉サービスを利用する全ての人に対して、サービス等利用計画を作成する目標が国から示されました。 この当時はまだまだ、相談支援体制の基盤整備が弱い自治体が多い中でのスタートだったために、作成率アップに追われることになりました。 この計画作成については、現在でも地域差があり、サービス等利用計画の作成を希望しても、セルフプランになってしまう自治体があることは残念でなりません。   サービス等利用計画の作成過程において目指すべきことは、障害のある人の自己選択・意思決定を尊重することで、どのような配慮や環境作りが行えるのか自覚した活動が求められています。 そこで、このような現状を少しでも改善するために、相談支援専門員の資質向上は必要不可欠ですし、相談支援事業の拡充が必要な自治体を支えることも重要となっています。 そのため、基幹相談支援センターの設置の努力義務化と主任相談支援専門員による実地指導が始まっています。 今回の人材育成ビジョンの大きな改訂ポイントは、この点にあるといってもよいでしょう。 一方、相談支援事業は、障害のある人の意思決定を尊重し、その人らしく暮らすために社会資源を調整する活動において、障害者福祉の要とも言われ非常に重要な事業であると期待が寄せられてきました。 障害福祉サービス等をコーディネートすることで、社会参加を促し自己実現のお手伝いをすることは、文字や言葉にすることは容易でも、実際の支援場面においては高い専門性とそれを支える知識や技術が必要になります。 そして、事業としての目的や役割、責任などは明示されていたものの、その事業を中心となり担う人材育成のあり方については、あまり明確なものが存在せず、自治体や事業所任せの現状にあったのかもしれません。 そこで、多くの都道府県では目標を見失い、地域差が生じないよう「人材育成ビジョン」の策定が進められてきました。 神奈川県においても平成27年から策定されてきましたが、今回の人材育成のあり方だけではなく、障害のある方を取り巻く社会環境の変化や国全体での社会保障のあり方等、さまざまなことが再考される時期を迎えていることが指摘されています。 以上のような経過を踏まえ、相談支援事業に求められる役割や責任は増えているにも関わらず、相談支援専門員は増えにくい現状にあります。 相談支援専門員一人一人が「ここはどこ?」「私は誰?」といった方向感覚を失って、バーンアウトしてしまわないように、日々の実践における目標や基盤(軸)を共有した実践が重要になっています。 相談支援専門員に関する目指すべき方向性・キャリアアップのビジョンを明確にすることで、相談支援の提供体制についてもアップデートが行われ、日々の実践の中での拠り所となるでしょう。 そしてこれまでのように、自治体や事業所、個人任せではなく、官民が協力して自己の地域に責任を持つことが必要となっています。 そのため、今回の改訂は相談支援に関わる自治体職員と初任者からベテランまでが内容を理解することで、地域づくりの一助としたいものです。 そして、すべての関係者が、自分たちが安心して暮らし、働き続けられる、神奈川県の障害者福祉の実現を、それぞれの立場から考えるきっかけ作りになることを期待しています。 令和7年3月 令和6年度神奈川県障害者自立支援協議会 研修企画部会 座長 菊本 圭一 令和6年度神奈川県障害者自立支援協議会研修企画部会 神奈川県相談支援専門員人材育成ビジョン改訂ワーキンググループ委員 所属、氏名(敬称略)の順に記載 特定非営利活動法人日本相談支援専門員協会顧問、神奈川県障害者自立支援協議会研修企画部会座長 菊本圭一 社会福祉法人唐池学園貴志園相談センターゆいまーる課長、綾瀬市障がい児者支援センター所長、障害保健福祉圏域地域生活ナビゲーションセンター代表 八重樫譲 公立大学法人神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部社会福祉学科教授 行實志都子 特定非営利活動法人藤沢相談支援ネットワークふじさわ基幹相談支援センターえぽめいく所長、神奈川県障害者自立支援協議会研修企画部会副座長 吉田展章 オブザーバー 特定非営利活動法人かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク 岡西博一、柏美樹 神奈川県障害者自立支援協議会研修企画部会 所属 横浜市健康福祉局障害福祉部障害施策推進課 川崎市総合リハビリテーション推進センター企画連携推進課 相模原市健康福祉局地域包括ケア推進部福祉基盤課 横須賀市民生部こども部障害福祉課 事務局 所属 神奈川県福祉子どもみらい局福祉部障害福祉課企画グループ (裏表紙) 神奈川県相談支援従事者人材育成ビジョン 平成27年3月 令和 元年7月 改訂 令和 7年3月 改訂(予定) 作成 神奈川県障害者自立支援協議会 事務局 神奈川県福祉子どもみらい局福祉部障害福祉課 郵便番号 231-8588  住所 神奈川県横浜市中区日本大通1 電話 (045)210-1111 企画グループ内線5087 ファクシミリ (045)201-2051 以上