資料19 〇今後の県立障害者支援施設のあり方について 今後の県立障害者支援施設のあり方の検討状況は、次のとおり。 (1)新たな地方独立行政法人の設立について 令和5年12月に策定した「県立障害者支援施設の方向性ビジョン」に基づき、令和8年4月に新たな地方独立行政法人(以下「法人」という。)を設立し、同時に中井やまゆり園を同法人による運営に移行することを目指しており、同法人の取組や設立準備の状況等を報告する。 ア 地方独立行政法人制度の概要 ・地方独立行政法人は、公共上の見地から確実に実施される必要のある事務及び事業で、地方公共団体が自ら実施する必要はないが、民間主体にゆだねた場合には実施されないおそれがあるものを効率的かつ効果的に行わせるために、地方独立行政法人法に基づき地方公共団体が設立する。 ・都道府県が新たな地方独立行政法人を設立する場合には、その議会の議決を経て定款を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。 イ設立目的 ・神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例〜ともに生きる社会を目指して〜の基本理念に基づき、障害者の地域生活を支援するとともに、科学的な福祉を研究及び実践し、そのために必要な人材を育成する拠点となり、福祉に関する諸課題の解決に広く貢献することにより、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域共生社会を実現する。 ・こうした新たな福祉施策に全国に先駆けて取り組んでいくフロントランナーとなるために、新たな地方独立行政法人を設立する。 ウ設立時期 ・科学の視点を取り入れ、再現性のある当事者目線に立ったやさしくあたたかい支援を実践し、必要な人材を育成するといった全国に先駆けた福祉の大改革を一日でも早く進めていくためには、速やかに法人を設立する必要がある。 ・法人の設立準備には最短でも方針決定から2年程度の期間を要するため、令和8年4月に設立する。 エ法人の取組 (ア) 科学的な福祉の研究及び実践 福祉の現場に科学の視点を取り入れ、再現性のある当事者目線に立ったやさしくあたたかい支援を確立し、障害者の可能性を広げる。 (取組例) ・どういった支援が利用者への共感力や利用者・支援者双方の満足度の向上につながるかを定量化する。 ・福祉が大切にしている「やさしさ」や「思いやり」のある支援がどのような効果を上げたのかを定量化する。 (イ) 人材育成 科学の視点を取り入れた支援を実践し、それを広めていくことができる人材を育成し、広く輩出する。 オ 設立準備の状況 (ア) 検討状況 a 法人の基本的事項 組織の基本的事項を定める定款について、今定例会に議案として提出した。 b 組織体制 法人の取組である科学的な福祉の研究及び実践、人材育成の実行性を高めるために、研究部門と中井やまゆり園を含む生活支援・人材育成部門を柱とする組織体制の検討を進めている。 c 人事・給与制度 職員の給与、勤務時間、休暇等の勤務条件は、基本的に県の制度に準拠する方向で進めている。 d 財務・会計制度 財務・会計制度の検討及び法人に出資する財産の整理・測量等を進めている。 e 情報システム 情報システム基本計画に基づき、事業者に対して情報提供依頼(RFI)を実施し、調達に向けての準備を進めている。 (イ) 科学的な福祉の研究及び実践、人材育成の実施に向けた取組 ・令和7年度に、地域資源の活用が利用者の健康やQOLの向上に与える影響の検証や、利用者の機能回復プログラムの作成、利用者や支援者の幸福度の定量化による分析等のプレ研究を実施する。 ・法人職員のキャリアパスや研修体系等の人材育成計画の検討を進めている。 (ウ) 職員確保に向けた取組 法人設立当初の職員の構成は、県派遣職員とプロパー職員からなる。 a 県職員の派遣 新たな法人は、中井やまゆり園を母体とするものであり、法人職員のプロパー化を進める間、プロパー職員の採用状況に応じて、職員を派遣する。 そのため、令和7年1月16日に第1回福祉職向け説明会を実施するとともに、庁内ポータルを開設して法人に関する情報の発信を行っている。 b プロパー職員の確保 法人の職員募集案内を作成し、大学等に広く周知するとともに、職員採用試験の募集を令和7年3月3日から開始した。 (第1回職員採用試験の概要) 募集分野は福祉職 募集人数は40名程度 募集期間は令和7年3月3日から4月30日 採用予定日は令和8年4月1日 ※ 第2回職員採用試験の募集については、令和7年5月中旬から6月下旬に予定している。 (エ) 施設整備等 ・令和7年度に法人の役員室や研究部門等の職員の執務スペースの整備、看板の架け替えを行う。 ・法人の使命等を印象付けるため、法人のシンボルとなるロゴマークを作成する。 (オ) 今後のスケジュール 令和7年中神奈川県地方独立行政法人神奈川県立福祉機構評価委員会(仮称)を設置 以下の議案を上程 ・中期目標案 ・法人に承継させる権利を定める議案 ・法人に係る重要な財産を定める条例案 ・県立の障害者支援施設に関する条例の改正案 令和8年3月総務大臣による法人の設立認可、4月法人の設立 (2) 愛名やまゆり園 ア 現状とこれまでの取組 ・県全域からアクセスがしやすく、障害福祉サービス事業所をはじめ、地域資源が豊富な県央地域に立地している。 ・建物は築38年が経過し、定員120名の大規模施設で、4人部屋が中心の多床室となっており、老朽化が進んでいることから、再整備が必要となっている。 ・再整備するにあたっては、将来的に、利用者の方々が地域に溶け込んで暮らせるようにするためには、どのようなあり方がふさわしいか、外部有識者等の意見を伺いながら、検討を進める。 ・県立施設として存続し、中井やまゆり園とともに、地方独立行政法人が一体的に運営することを視野に入れて検討を進める。 ・指定管理は令和7年度までであり、令和8年度以降の運営方針を示す必要がある。 ・県は、かながわ共同会より提出された「かながわ共同会法人改革・愛名改善等実行プラン」との整合性を図りながら、対応策をまとめた。 ・将来的に目指す「地域に溶け込んだ暮らし」のイメージや再整備について、利用者、ご家族、関係団体等と意見交換を行った。  <いただいたご意見> 利用者:2人部屋で狭い、外の活動をしたい 等 ご家族:人員配置体制をしっかりやってほしい、日中活動を充実させてほしい、地域生活移行や規模縮小は丁寧に進めてほしい等 当事者:施設は、地域に障がい者を受け入れる受け皿ができるまでは必要かもしれないが、将来的には廃止し、地域で暮らせると示す方が良い等 イ 今後の対応  指定期間を2年間延長し、再整備や地方独立行政法人による運営を視野に入れ、引き続き、以下の検討を行う。 ・地域に溶け込んだ暮らしの検討 ・地域生活移行の推進 ・組織執行体制の検討 (3) 厚木精華園 ア 現状とこれまでの取組 ・市街地から離れた立地であり、園外での日中活動の機会や地域との交流の場が少ない状況である。 また、高齢の知的障害者支援のモデル施設であったことから高齢者が多く、地域生活移行が進んでいない。 ・隣接地は土砂災害特別警戒区域に指定されている。 ・建物は築29年が経過し、定員112名の大規模施設で、2人部屋が中心の多床室となっている。 ・指定管理は令和7年度までであり、令和8年度以降の運営方針を示す必要がある。 ・利用者、ご家族等の意見を伺い、また、民間法人等と意見交換を重ねながら、移譲方針等を検討している。 ・民間移譲にあたって、この地域での事業展開を検討するため、近隣で障害福祉サービス事業所を運営する複数の民間法人から、現在の運営状況、課題、今後の運営の方向性等のヒアリングを行った。 イ 今後の対応 指定期間が満了する令和8年度以降の運営体制については、指定期間を2年間延長し、引き続き、民間移譲に向け次の検討を行う。 ・地域に溶け込んだ暮らしの検討 ・地域生活移行の推進 ・移譲条件の整理        (4) 愛名やまゆり園及び厚木精華園へのチェック体制について これまで、県は、愛名やまゆり園及び厚木精華園で虐待事案が発生するたびに、指定管理者制度に基づく随時モニタリング等を実施してきたが、今後、指定期間を延長する間は、次のとおり改善状況のチェック体制を強化する。 ・当事者目線の支援の実践、日中活動の充実及び地域生活移行を推進するため、県職員の派遣等を計画し、法人指導を実施 ・県による随時モニタリングの強化(専門家、障害当事者) ・改善策の進捗管理をする法人の第三者委員会の選任にも県が関与 ・定期的な議会への報告         地方独立行政法人制度の概要 1 地方独立行政法人の定義 住民の生活、地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものと地方公共団体が認めるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律の定めるところにより地方公共団体が設立する法人(地方独立行政法人法(以下「法」という。)第2条第1項抜粋)。 2 地方独立行政法人の種類(下線が新たな法人に該当する分類) (1) 職員の身分による分類 ア 一般地方独立行政法人(非公務員) イ 特定地方独立行政法人(公務員) ※ 特定地方独立行政法人は、「その業務の停滞が住民の生活、地域社会若しくは地域経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすため、又はその業務運営における中立性及び公正性を特に確保する必要があるため、その役員及び職員に地方公務員の身分を与える必要があるもの(法第2条第2項抜粋)」に限定される。 (2) 業務による分類 ア 公立大学法人 イ 公営企業型地方独立行政法人(病院事業の経営など) ウ その他の地方独立行政法人(試験研究、社会福祉事業の経営、公共的な施設の設置及び管理など) (3) 設立形態による分類 ア 移行型地方独立行政法人 ※法人成立の日の前日において現に設立団体が行っている業務に相当する業務を法人成立の日以後行うもの。 ※県職員の引継ぎ(承継又は非承継)については、職種や採用時の条件に応じて今後調整していく。 イ 新設型地方独立行政法人 3 運営体制(県と地方独立行政法人との関係) ・県が法人を設立し、県知事が法人の理事長を任命。 ・県が議会の議決を経て法人に中期目標を示し、その目標に対して法人が策定する中期計画を知事が認可して、その計画に基づき法人が運営。 ・県が法人の業務実績について地方独立行政法人評価委員会に意見を聴取した上で評価。 ・県は、法人に対し、その業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付。 新たな地方独立行政法人の組織イメージ図を掲載(現在と法人設立後) 以上