資料18 〇県立中井やまゆり園における利用者支援等の改善について 令和5年7月末に策定し、令和6年7月に改定した「県立中井やまゆり園当事者目線の支援アクションプラン〜一人ひとりの人生を支援する〜」(以下「アクションプラン」という。)に基づく利用者支援等の改善について報告する。 (1)アクションプランの推進 ア 現状 アクションプランに掲げる4つの柱ごとに取組を進めている。 (ア) 人生に共感し、チームで支援する これまでどのような人生を歩んできたのか、生育歴から利用者の人生を理解し共感するため、まずは、生育歴の充実に向けて取組を進めている。 a支援改善アドバイザーとのカンファレンスを通じた生育歴の理解と人となりシートの作成 利用者86名中18名のカンファレンスを実施し、26名について園内での事前協議を実施(令和7年1月現在) (イ) 暮らしをつくる 施設の中だけで完結していた暮らしから、当たり前に地域で活動する暮らしに向け、次の取組を進めている。 a 秦野駅前拠点「らっかせい」での活動の充実 ・花壇整備や公園清掃に加え、商店街でのリサイクル活動等の開始 ・利用者実人数51名、延べ967名が参加(令和6年4月〜令和7年1月) b 近隣農家や他事業所との連携による、農作業を通じた地域連携の取組 ・農業に精通した社会福祉法人の指導のもと、夏野菜の苗植えから収穫に利用者が参加 ・利用者と地域の小学生らが一緒に麦畑で農作業を実施 c 園外の事業所への通所 ・体験利用を含め、通所事業所へ25名、グループホームへ2名が利用(令和5年8月〜令和7年1月。この間、グループホームへ移行した利用者は除く。) (ウ) いのちを守る施設運営 下記(3)のとおり (エ) 施設運営を支える仕組みの改善 a 利用者満足度調査の実施に向けた調査方法の検討 b ICF(国際生活機能分類)の評価シートの作成 イ 課題への対応 ・停滞しているアクションプランの取組を進めるため、園と本庁の幹部職員がチームを組み、まずは利用者の生育歴の作成等を進めている。 ・取組内容ごとに進捗状況や停滞する課題を把握できるよう、園とともにTODOリストを作成している。 (例)生育歴の作成 TODOリスト、進捗状況(実施日を記載)、課題・懸案の順に記載 入所前の暮らしを訪問(自宅、学校等)、 日付、課題空欄 家族や前施設担当者から生育歴を聞き取り、日付、聞き取り相手の協力姿勢に温度差がある。 担当者が成育歴を作成、寮会議で説明し、共有、日付、担当によって出来栄えにばらつきがある。 課長・寮長が内容を確認・把握、日付、課寮長が支援現場に入ってしまい、確認できない。 園長・副園長・支援部長を交えた事前協議の実施、日付、カンファレンスに出せない未成熟なものも多い。 アドバイザーカンファレンスの実施、日付、課題空欄 誰でも確認できるよう、園内で共有、日付、課題空欄 随時、エピソードの追加・更新、日付、課題空欄 ・また、令和7年4月には、アクションプランの取組を積極的に進めるため、モデル寮を園内に設置し、当事者目線に立った支援を実践し、効果的な取組を園全体に広げていく予定である。 (2) 職場環境の改善 ア 現状 ・職員の不安等を解消するための取組として、アクションプランに基づき、園職員向けアンケートを実施した。 ・仕事をする中で困っていることとして回答があった上位4項目(組織体制、ハラスメント、利用者支援、勤務体制)の改善を進めている。 イ 課題への対応 ・令和6年12月6日、園職員向けにアンケート結果についての説明会を開催し、職場環境の改善に向けた意見交換を実施した。 ・令和7年1月29日、知事が園を訪問し、職員から支援現場の生の訴えを聞き、現場で起きている問題を把握した。 今後、知事が先頭に立って、問題解決を図っていく。 (3) 医療・健康管理問題改革委員会等 ア いのちに係る深刻な課題 (ア) 利用者の機能低下に関する課題 ・ 園の再整備(平成12年)で入所した20〜30代の利用者が現在40〜50代の若さで歩行機能の低下により車椅子を利用するようになった。 ・現在、車椅子を利用している利用者24名のうち、16名は、40〜50代である。 また、車椅子を利用している24名のうち、17名は入所後に車椅子を利用するようになった。 (イ) 栄養に関する課題 ・低栄養が懸念される利用者は34名、食事形態に配慮が必要な利用者は57名と食事リスクのある利用者が多い。 (ウ) 医療に関する場面での課題 ・眼科検診で白内障の所見を受ける利用者は年々増加(令和5年度42名、令和6年度44名)している。(令和6年10月現在) ・てんかん薬の処方にあたって、園では定期的に脳波検査をしているが、一部利用者は障害特性のため脳波検査を受けられないと職員が判断し、検査せずに服薬しているケースがある。 ・健康管理に必要な知識が不十分で、職員が日常の生活場面において健康面の変化に気づくことができていなかった。 イ 改革委員会の状況 (ア) 開催状況 (第1回)令和6年12月18日水曜日 議題 園での健康課題の検討、事例に基づく検討 (第2回)令和7年1月28日火曜日 議題 施設で起こるエラー(不適切支援)の定義・改善に向けた対応、個別事例に基づく検討、指摘を受けての園の改善事項、中間報告に向けて 等 (イ) 主な意見 ・園の医療体制そのものや情報共有のあり方、医療従事者同士及び医療従事者と福祉職との連携に関するガイドラインやマニュアル等のルール作りが急務である。 ・記録が不十分であり、PDCAがうまく機能していない。 ・言葉で意思表示できない利用者の体調変化に気付けるよう、支援員は家庭看護レベルの対応をしっかりできるようにする必要がある。 ・通院や受診の際、話すことのできない利用者の代わりに症状を説明するため、職員の伝える力の育成が必要である。 ・第1回で議論した事例の検討を継続すべきである。 (ウ) 今後の対応 今年度中に第3回の改革委員会を開催し、健康課題に係るガイドラインを作成するとともに、様々な事故等を職員がためらわず報告できる仕組みの構築を目指し、中間報告書をまとめる予定。 ウ 園の医療体制の拡充 ・ 障害福祉分野で活躍していた医師である医務統括は、週1回程度、利用者の健康状態を直接確認した上で、健康診断や服薬状況などの客観的なデータをもとに、利用者の健康上の問題等について園職員に対して助言を行っている。 ・また、看護師である医務統括補佐は、医務統括が速やかに医療の判断するための情報提供等の役割に加え、医療安全管理などの知見に基づき、健康診断データの注意点等について園職員に対して助言を行っている。 (参考:改革委員会 委員一覧) 名前、所属の順に記載 植田 耕一郎、学校法人日本大学歯学部特任教授、医療法人社団光生会陵南診療所摂食リハビリテーション嚥下部長 上野 正文、中井やまゆり園医務統括補佐 大川 貴志、社会福祉法人同愛会支援力向上推進室 児玉 安司(委員長)、学校法人東京医科大学理事、一橋大学法科大学院客員教授、社会福祉法人武蔵野理事 佐藤 彰一、学校法人國學院大學名誉教授 椎 崇、学校法人北里大学研究所北里大学病院薬剤部 原 浩、フェスティーナレンテ株式会社代表取締役CEO、統括施設長 田中 和美、県立保健福祉大学栄養学科長 中西 晴之、社会福祉法人グリーン理事長 名倉 美紀、株式会社コロロ発達療育センター公認心理士 野崎 秀次、医療法人社団康心会汐見台病院、精神保健指定医 羽生 裕子、社会福祉法人コロロ学舎児童支援部長 森 俊樹、社会福祉法人恩賜財団済生会神奈川県病院副院長 山崎 元靖、健康医療局医務担当部長 以上