〇 県立中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証の中間報告書概要について  県立中井やまゆり園(以下「園」という。)の元利用者が、令和6年7月4日に転居先の千葉県長生村で死亡した事案について、県内の支援機関を構成員とする検証チームの会議を3回開催し、このたび、中間報告書を取りまとめたので、報告する。 (1) 検証チームの設置  元利用者と関わりのある県内の支援機関とともに、転居前の生活や支援状況を振り返り、地域での生活を支えるために必要な支援等について検証をするため、「中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証チーム」を設置した。 ア 構成員 ( 座 長 )佐藤 彰一氏(國學院大學名誉教授) (支援機関)中井やまゆり園、支給決定自治体、相談支援事業所、短期入所事業所、障害サービス課  イ 開催状況   (第1回)令和6年8月27日(火) 議 題 〇 検証チームの進め方   〇 支援機関ごとの検証   (第2回)令和6年9月12日(木)    議 題 ○ 検証チームの進め方        〇 支援機関ごとの検証        〇 支援機関の連携についての検証        〇 制度や仕組みの検証   (第3回)令和6年10月28日(月)    議 題 〇 中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証チーム中間報告書(案)について        〇 今後の検証について (2) 中間報告書について ア これまでの検証チームの議論 (ア) 支援機関ごとの振り返り (園・県本庁) ・ 本人の生き辛さや人生を理解しようとせず、ケースワークの視点を持った支援がなく、親身になって本人に寄り添う職員がいなかった。 ・ 短期入所や長期入所を家族が求めた際の機械的な対応が、家族を追い詰め、家族が将来に希望を持てなくなってしまった。 ・ 県本庁は、方針は示すが、施設入所を待機する方への対応についてなんら関与しなかった。 ・ いのちに係ることが想定される重要な問題として、組織でしっかりと共有し対応することができなかった。 (短期入所事業所) ・ 短期入所以外のサービス利用を提案する余裕はなかった。 ・ 父親の本人への行為は、継続的に行われたものではないという認識で、親子を引き離すまでの危機感はなかった。 (相談支援事業所) ・ 家族の介護疲れからくる家庭生活のリスクに対し、虐待事案との認識はあったが、関係機関が同じ意識、目線を持てていなかった。 ・ 転居先の基幹相談支援センターからは、サービスを組み立てるということだったので、関与しなかったが、状況を確認すべきだった。 (市) ・ 関係者でケース会議を実施し、虐待リスクに注意することを共有していたが、関係者内で引き継がれたかは確認できなかった。 ・ 市に対し、本人の行動障害の強さや家族の介護負担、虐待リスクなどの報告がある中、地域で活用できるサービスがないか計画相談や基幹相談と協議する必要があった。 (イ) 支援機関の連携についての検証 ・ 本人の行動だけに着目し、生き辛さを理解、共感し、本人と家族の暮らしを支えていくという視点で支援機関が連携していなかった。 ・ 家族の介護疲れなど家庭で生活するリスクを念頭において、本人の在宅での支援に向けて支援機関が連携していなかった。 (ウ) 制度や仕組みの検証 ・ 短期入所は、一般的な利用と同様に制度上の月15日以内と支給決定するなど、本人の家庭生活上のリスクを考慮できておらず、地域生活の支援として十分に機能していなかった。 ・ 家族の高齢化や体調不良、介護疲れや本人の家庭生活のリスクに対し、自立支援協議会や地域生活支援拠点の活用につながらなかった。 ・ 行動障害の強い本人に対し、施設と精神科病院以外に地域の仕組みが十分に機能していなかった。 イ 同様の事案の発生を防ぐための各論点 (在宅支援(短期入所を含めた地域生活支援)) ・ 本人の地域生活のために必要な取組は何か ・ 本人の地域生活支援のために短期入所はどうあるべきか (施設入所支援) ・ 施設入所支援の公正な判断に必要な取組は何か ・ 県立施設が連携して果たすべき役割は何か (家族への支援) ・ 家庭での家族の介護に対し必要な取組は何か ・ 施設はレスパイトケアの受入れをするだけでなく、家族に対してどのような支援が求められるか (リスクのある家庭への緊急対応) ・ リスクのある家庭を地域で支えるための取組みは何か ・ リスクのある本人の意思決定支援をどのように行うか ウ 今後の対応  これまでの検証では、強い行動障害のある重度の知的障害の方の地域生活を入所施設としてどのように支援してきたのか、さらには、何ができ、何が十分でなかったのか、整理できていない。  また、両親の就労や身体の状況、他に頼れる親族の有無など、元利用者の家庭での支援にどのような影響を与える要素があったかなど、整理ができておらず、加えて、転居後の対応について、引継ぎは適切だったのか、なぜ障害福祉サービスにつながっていなかったのかなど、確認する必要がある。  したがって、引き続き、検証を進めるとともに、本中間報告後の対応として、家族に対するヒアリング調査や他の県立施設に対する入所調整の確認、転居先の長生村に対する引継ぎ時の対応を確認するなど、本事案について、さらに検証を深め、最終報告書を取りまとめる。