資料3 県立障害者支援施設のあり方 1 県立中井やまゆり園における利用者支援等の改善について 2 県立中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証の中間報告書概要について 3 障害者支援施設や障害者グループホームの利用を希望する方の実態調査の実施について 4 「愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会中間報告書」を受けての対応について 5 今後の県立障害者支援施設のあり方について 1 県立中井やまゆり園における利用者支援等の改善について  令和5年7月末に策定し、令和6年7月に改定した「県立中井やまゆり園当事者目線の支援アクションプラン〜一人ひとりの人生を支援する〜」(以下「アクションプラン」という。)  に基づく利用者支援等の改善について報告する。 (1) いのちに係る深刻な課題 ア 現状 (ア) 利用者の機能低下に関する課題 ・ 園の再整備(平成12年)で入所した20〜30代の利用者が現在40〜50代の若さで歩行機能の低下により車椅子を利用するようになった。 ・ 現在、車椅子を利用している利用者24名のうち、16名は、40〜50代である。また、車椅子を利用している24名のうち、17名は入所後に車椅子を利用するようになった。 (イ) 栄養に関する課題 ・ 低栄養が懸念される利用者は34名、食事形態に配慮が必要な利用者は57名と食事リスクのある利用者が多い。 (ウ) 医療に関する場面での課題 ・ 眼科検診で白内障の所見を受ける利用者は年々増加(令和5年度42名、令和6年度44名)している。(令和6年10月現在) ・ てんかん薬の処方にあたって、園では定期的に脳波検査をしているが、一部利用者は障害特性のため脳波検査を受けられないと職員が判断し、検査せずに服薬しているケースがある。 ・ 健康管理に必要な知識が不十分で、職員が日常の生活場面において健康面の変化に気づくことができていなかった。 イ 課題への対応    (ア) 園の医療体制の拡充 ・ 長年、障害福祉分野で活躍していた医師を中井やまゆり園の「医務統括」に、医療安全問題に関して実績豊富な看護師を「医務統括補佐」として、緊急的に園に配置し、   一人ひとりの利用者の状態を改めて把握し、その結果明らかになった健康リスクの改善や、看護に関するマニュアルの抜本的な見直しを進めていく。    (イ) 「県立中井やまゆり園における医療・健康管理問題改革委員会」について     ・ 令和6年10月22日に「県立中井やまゆり園における医療・健康管理問題改革委員会」を設置した。 ・ 健康管理、リハビリテーション、摂食嚥下など、各領域の専門  家を委員として対応策を検討し、福祉施設における利用者の健康状態に応じた対応のルール化を進める。 (2) アクションプランに基づく取組状況(令和6年度) ア 園と県本庁の取組 アクションプランに掲げる4つの柱ごとに取組を進めている。 (ア) 人生に共感し、チームで支援する これまでどのような人生を歩んできたのか、生育歴から利用者の人生を理解し共感するため、まずは、生育歴の充実に向けて取組を進めている。 a 支援改善アドバイザーとのカンファレンスを通じた生育歴の理解と人となりシートの作成 ・ 利用者86名中10名のカンファレンスを実施し、19名について園内での事前協議を実施(令和6年10月現在) (イ) 暮らしをつくる 施設の中だけで完結していた暮らしから、当たり前に地域で活動する暮らしに向け、次の取組を進めている。 a 秦野駅前拠点「らっかせい」での活動の充実 ・ 花壇整備や公園清掃に加え、商店街でのリサイクル活動等の開始 ・ 利用者実人数47名、延べ655名が参加(令和6年10月現在) b 近隣農家や他事業所との連携による、農作業を通じた地域連携の取組 ・ 農業に精通した社会福祉法人の指導のもと、夏野菜の苗植えから収穫に利用者が参加 c 園外の事業所への通所 ・ 体験利用を含め、通所事業所へ22名、グループホームへ1名が利用(令和6年10月現在) (ウ) いのちを守る施設運営  上記(1)イのとおり対応 (エ) 施設運営を支える仕組みの改善 a 利用者満足度調査の実施に向けた調査方法の検討 b ICF(国際生活機能分類)の評価シートの作成 c 職員の不安、悩み、ストレスを解消するための取組として、中井やまゆり園全職員向けアンケートの実施 イ 今後の取組     園と本庁の幹部職員がチームを編成し、支援改善アドバイザーと連携しながら、職員教育を徹底するなど、アクションプランの取組を推進する。 2 県立中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証の中間報告書概要について 県立中井やまゆり園(以下「園」という。)の元利用者が、令和6年7月4日に転居先の千葉県長生村で死亡した事案について、県内の支援機関を構成員とする検証チームの会議を3回開催し、 このたび、中間報告書を取りまとめたので、報告する。 (1) 検証チームの設置 元利用者と関わりのある県内の支援機関とともに、転居前の生活や支援状況を振り返り、地域での生活を支えるために必要な支援等について検証をするため、「中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証チーム」を設置した。 ア 構成員 ( 座 長 )佐藤 彰一氏(國學院大學名誉教授) (支援機関)中井やまゆり園、支給決定自治体、相談支援事業所、 短期入所事業所、障害サービス課 イ 開催状況    (第1回)令和6年8月27日(火) 議 題 〇 検証チームの進め方 〇 支援機関ごとの検証 (第2回)令和6年9月12日(木) 議 題 ○ 検証チームの進め方 〇 支援機関ごとの検証 〇 支援機関の連携についての検証 〇 制度や仕組みの検証 (第3回)令和6年10月28日(月) 議 題 〇 中井やまゆり園元利用者の死亡事案に係る検証チーム中間報告書(案)について 〇 今後の検証について (2) 中間報告書について ア これまでの検証チームの議論 (ア) 支援機関ごとの振り返り (園・県本庁) ・ 本人の生き辛さや人生を理解しようせず、ケースワークの視点を持った支援がなく、親身になって本人に寄り添う職員がいなかった。 ・ 短期入所や長期入所を家族が求めた際の機械的な対応が、家族を追い詰め、家族が将来に希望を持てなくなってしまった。 ・ 県本庁は、方針は示すが、施設入所を待機する方への対応についてなんら関与しなかった。 ・ いのちに係ることが想定される重要な問題として、組織でしっかりと共有し対応することができなかった。 (短期入所事業所) ・ 短期入所以外のサービス利用を提案する余裕はなかった。 ・ 父親の本人への行為は、継続的に行われたものではないという認識で、親子を引き離すまでの危機感はなかった。 (相談支援事業所) ・ 家族の介護疲れからくる家庭生活のリスクに対し、虐待事案との認識はあったが、関係機関が同じ意識、目線を持てていなかった。 ・ 転居先の基幹相談支援センターからは、サービスを組み立てるということだったので、関与しなかったが、状況を確認すべきだった。 (市) ・ 関係者でケース会議を実施し、虐待リスクに注意することを共有していたが、関係者内で引き継がれたかは確認できなかった。 ・ 市に対し、本人の行動障害の強さや家族の介護負担、虐待リスクなどの報告がある中、地域で活用できるサービスがないか計画相談や基幹相談と協議する必要があった。 (イ) 支援機関の連携についての検証 ・ 本人の行動だけに着目し、生き辛さを理解、共感し、本人と家族の暮らしを支えていくという視点で支援機関が連携していなかった。 ・ 家族の介護疲れなど家庭で生活するリスクを念頭において、本人の在宅での支援に向けて支援機関が連携していなかった。 (ウ) 制度や仕組みの検証 ・ 短期入所は、一般的な利用と同様に制度上の月15日以内と支給決定するなど、本人の家庭生活上のリスクを考慮できておらず、地域生活の支援として十分に機能していなかった。 ・ 家族の高齢化や体調不良、介護疲れや本人の家庭生活のリスクに対し、自立支援協議会や地域生活支援拠点の活用につながらなかった。 ・ 行動障害の強い本人に対し、施設と精神科病院以外に地域の仕組みが十分に機能していなかった。 イ 同様の事案の発生を防ぐための各論点 (在宅支援(短期入所を含めた地域生活支援)) ・ 本人の地域生活のために必要な取組は何か ・ 本人の地域生活支援のために短期入所はどうあるべきか (施設入所支援) ・ 施設入所支援の公正な判断に必要な取組は何か ・ 県立施設が連携して果たすべき役割は何か (家族への支援) ・ 家庭での家族の介護に対し必要な取組は何か ・ 施設はレスパイトケアの受入れをするだけでなく、家族に対してどのような支援が求められるか (リスクのある家庭への緊急対応) ・ リスクのある家庭を地域で支えるための取組みは何か ・ リスクのある本人の意思決定支援をどのように行うか ウ 今後の対応 これまでの検証では、強い行動障害のある重度の知的障害の方の地域生活を入所施設としてどのように支援してきたのか、さらには、何ができ、何が十分でなかったのか、整理できていない。 また、両親の就労や身体の状況、他に頼れる親族の有無など、元利用者の家庭での支援にどのような影響を与える要素があったかなど、整理ができておらず、加えて、転居後の対応について、 引継ぎは適切だったのか、なぜ障害福祉サービスにつながっていなかったのかなど、確認する必要がある。 したがって、引き続き、検証を進めるとともに、本中間報告後の対応として、家族に対するヒアリング調査や他の県立施設に対する入所調整の確認、転居先の長生村に対する引継ぎ時の対応を確認するなど、 本事案について、さらに検証を深め、最終報告書を取りまとめる。 3 障害者支援施設や障害者グループホームの利用を希望する方の実態調査の実施について 県が実施を予定する障害者支援施設や障害者グループホーム(以下「施設等」という。)の利用を希望する方の実態調査について、報告する。 (1) 趣旨 県は、障害の特性や程度によって、施設等の利用ができないといった、「当事者目線の障害福祉推進条例〜ともに生きる社会を目指して〜」に基づく計画だけでは、把握できないニーズがあると考えており、 国の動向を注視しながら、施設等を利用できない方の実態を調査する。 (2) 調査概要 ア 目的 施設等の利用を希望する方の理由やその背景を確認し、量的な対応だけでなく、質的にも充足できるような対応を検討する。 イ 調査対象 (ア) 県内全市町村 (イ) 基幹相談支援センター (ウ) 障害当事者・家族 ※ 障害者支援施設は、国が着手した実態調査により把握する。 ウ 主な調査内容 (ア) 障害当事者の状況 ・ 障害支援区分 ・ 障害福祉サービス等の支給決定状況 ・ 現在の障害福祉サービス等の利用状況 など (イ) 家族等の状況 ・ 主に介護をしている人の年齢や就労状況等 ・ 主に介護をしている人以外の家族の状況 など (ウ) 施設等の利用を希望する方の意向 ・ 障害当事者、家族、自治体、関係機関などの主体の特定 ・ 希望しているサービスの種類及び量 ・ 家族が入所を希望する理由 など (エ) 障害当事者が居住する地域の社会資源の状況 ・ 地域生活支援拠点等の整備状況 ・ 重度訪問介護等のサービス提供状況 など (オ) 障害当事者をめぐる支援体制の整備状況 ・ 障害者団体、NPO、保健福祉サービス等の状況 など エ 調査方法 アンケート及びヒアリング調査 (3) 今後のスケジュール 令和6年12月中旬 実態調査開始 令和7年1月下旬 県所管域の市町村の回答期限 2月   県所管域分の集計・分析 関係者へのヒアリング実施 3月上旬 中間報告 3月下旬 政令指定都市及び中核市の回答期限 4月以降 対応策の検討 4 「愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会中間報告書」を受けての対応について 社会福祉法人かながわ共同会(以下「共同会」という。)が設置した第三者委員会が公表した、「愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会中間報告書」(以下「中間報告書」という。)を受けての県の対応について報告する。 (1) 経緯 令和5年11月 元職員による利用者の骨折事案が発生 共同会が県に改善計画(第1次)を提出 12月 別職員による利用者の額をスプーンで叩く事案が発生 令和6年4月 共同会が第三者委員会を設置 県が共同会に対して行政処分(新規入所者の受入停止6か月間)と改善勧告を実施          共同会が県に改善計画(第2次)を提出 6月 元職員が、公判で「自分の部署では半数程度の職員が虐待に関わっている。」などと証言 9月 第三者委員会が共同会に中間報告書を提出(30日) 共同会が県に中間報告書を提出(30日) 10月 第三者委員会が県へ虐待疑い事案38件を情報提供(4日) 県が関係自治体へ虐待通報(7、8日) 第三者委員会が中間報告書を公表(10日) 共同会・県が家族及び利用者代表に報告(19日) 愛名やまゆり園・県が利用者自治会で報告(30日) (2) 中間報告書の指摘事項への対応状況    県では、虐待通報した38事案の調査を進めるとともに、支援改善チームを立ち上げ、第三者の助言を得ながら中間報告書で指摘された問題点を検証し、改善提案に対する改善策を検討している。   ア 虐待が疑われる事案    (ア) 対応状況     ・ 令和6年10月8日以降、県と関係自治体とが合同で「障害者虐待防止法」に基づき、園の幹部職員や加害の疑いのある職員等(20人)に対し、ヒアリング調査などを実施した。     ・ 県は、令和6年10月28日からは、「障害者総合支援法」第48条の規定に基づく特別監査に切り替え、調査を実施している。    (イ) 今後の対応     ・ 関係自治体による「障害者虐待防止法」に基づく調査結果も踏まえ、県の監査結果をまとめる。     ・ 監査の結果、利用者への虐待や不適切な支援があったと判断した場合は、行政処分も含めて、厳正に対処する。 ・ 11月に開催された家族会での意見を踏まえ、利用者の家族から、ヒアリングを行う方向で調整する。    イ 支援改善チームによる対応 (ア) 検証の状況 a 中間報告書において検証すべきとされた事項 (個室化について) ・ 愛名やまゆり園は成人施設として昭和60年に再整備された。 ・ 平成3年度に作成された「かながわ福祉プラン基本計画」では、個室化などの方針が掲げられたが、再整備されたばかりの同園は、この計画の対象施設には位置付けられなかった。 ・ 県が、共同会に運営を委託した平成12年度から平成17年度の間に、共同会が4人部屋に間仕切りを入れるなど簡易な対応を行ったと考えられ、関係書類等の確認を続けている。 (県直営施設で行われていた支援内容とその影響について) ・ 県は、平成12年度に愛名やまゆり園の運営を共同会へ委託し、平成18年度には指定管理者制度を導入した。 ・ 平成24年に障害者虐待防止法が施行され、県は、その内容や、適切な手続きを踏まえない身体拘束が虐待であることを県立施設に周知したが、身体拘束の実施状況等は確認しなかった。 ・ 平成26年度以降に、せせらぎ寮で勤務した職員について、過去に津久井やまゆり園での勤務経験を確認しながら、引き続き、支援記録等を確認するなど検証を継続する。 ・ 令和3年3月に取りまとめられた「障害者支援施設における利用者目線の支援検討部会報告書」において、同園では身体拘束について、どのように取り組んだらよいか、分からないようだったと指摘された。 ・ 令和4年3月に公表された、「当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会報告書」に基づき、指定管理施設の募集要項や業務の水準等が見直されたが、同園は指定管理継続中であり、見直しを行わなかった。 (神奈川県強度行動障害対策事業の総括について) ・ 平成9年7月、県は、標準化された支援方法の導入などにより、行動障害を軽減し、地域に戻すことを目的として神奈川県強度行動障害対策事業(以下「対策事業」という。)を開始した。 ・ 「県立障害福祉施設等あり方検討委員会報告書(平成26年1月公表)」では、対策事業について、一定程度行動障害が軽減されても、民間施設へ移行することが難しいと指摘された。 ・ 令和5年3月、県立施設をはじめ関係する団体等へ説明を行い、対策事業の廃止による影響がないことを確認した上で、事業廃止としたが、対策事業に代わる内容の検討は行っておらず、県立施設に示せていない。 b 県独自に検証を進めている事項 (県の関与について) ・ 令和3年『津久井やまゆり園の支援内容にかかる「県の関与」の検証調査報告書』において、県立施設に対する県の関与について改善策を策定した。 ・ 策定された「県の関与」の実行状況やその効果について、書類を確認した上で、県担当者や園職員等関係者へのヒアリングなどを行いながら検証を進めている。 (個別事案への対応状況について) ・ 令和元年度以降に愛名やまゆり園から収受した全ての事故報告や虐待事案等について検証を行っている。 ・ そのうち、怪我等の再発が繰り返されているものや、事案発生後の対策・対応を把握できないもの等について、その後の対応状況の検証を進めている。 (イ) 改善提案等に対する対応策(骨子) 中間報告書において、第三者委員会から提案された7つの改善策のうち、県が主体的に取り組むべき事項についての対応策(骨子案)は次のとおり。 (現状の職員数に見合った利用者数にしていく) ・ 利用者定員の適正規模について、個室化を前提として検討を進める。 ・ 利用者定員を適正規模にするための緊急避難的な利用者の他施設等への移動を検討する。 ・ 施設入所を待機する障害者等の実態を確認するとともに、新規入所や短期入所の停止について検討する。 (大規模施設支援の限界を乗り越え、職員のやる気を喚起するため、利用者の地域移行を推進する) ・ 地域生活移行を進めながら、個別支援が行える生活空間や将来的な機能について、施設整備を検討する。    (相部屋の解消) ・ 利用者定員の適正化を進めながら、相部屋を解消する計画を作成する。 (監査及びモニタリングの見直し) ・ 愛名やまゆり園については、令和2年度に「津久井やまゆり園利用者支援検証委員会」で利用者支援の見直しを行って以降、定期モニタリング、随時モニタリング、総合支援法に基づく実地指導や監査等を実施していた。 ・ これまでのモニタリングや監査が有効に機能していたかどうか等について検証を進めている。 ウ 今後の対応 ・ 引き続き、虐待が疑われる事案について検証を進めるとともに、県の支援改善チームと法人の改善チームが連携しながら、利用者支援の改善について指導を行う。 ・ 対応策(案)をとりまとめ、令和7年第1回県議会定例会厚生常任委員会に報告する。 5 今後の県立障害者支援施設のあり方について 令和5年12月に策定した「県立障害者支援施設の方向性ビジョン」の中で示した各県立障害者支援施設(以下「県立施設」という。)の方向性について、現在の取組状況を報告する。 (1) 県立施設として継続する施設 ア 中井やまゆり園 令和8年4月に新たな地方独立行政法人を設立し、同時に中井やまゆり園を同法人による運営に移行することを目指している。 (ア) 検討状況 a 法人制度 ・ 組織の基本となる定款の素案について作成した。 b 組織体制 ・ 障害者の地域での暮らしを支えるため事業者や住民と連携して、地域づくりに取り組むとともに、当事者目線の支援による利用者の行動変化などを現場職員自ら研究し、その成果を実践する組織体制の検討を進めている。 c 人事・給与制度 ・ 人事・給与制度及びプロパー職員の採用計画の検討を進めている。 d 財務・会計制度 ・ 財務・会計制度及び法人に出資する財産の整理の検討、測量等を進めている。 e 情報システム ・ 情報システム基本構想・計画を策定した。 f 福祉科学研究・人材育成 ・ 研究体制について関連分野の大学教授等にヒアリングを実施し、検討を進めている。 ・ 法人職員のキャリアパス等の人材育成計画の検討を進めている。 ・ 令和6年11月21日に第3回福祉を科学する検討会を開催した。 (イ) 今後のスケジュール 令和7年2月 第1回県議会定例会に定款案及び神奈川県地方独立行政法人評価委員会条例の一部を改正する条例案を提出 令和7年度中 県議会に中期目標案等を提出             総務大臣による法人の設立認可 令和8年4月 法人の設立 (2) 民間法人への移譲を検討する施設 ア さがみ緑風園 (ア) 現状 ・ 平成14年の開設時は定員160名の大規模施設であったが、入所者の減少が続き、現在の入所者数は35名(定員50名)である。 ・ このため、2階建ての建物のうち居住フロアとして使用しているのは、2階の一部だけとなっている。 ・ 最重度の身体障害者用の施設として、民間施設に比べて広く、ゆとりを持ったつくりの建物であり、維持・管理費がかかる。 (イ) 検討状況 ・ 建物の使用していない部分(建物1階部分と2階の一部)の活用に向けて、地域の福祉的ニーズを把握するため、関係機関にヒアリングを行った。 (ウ) 今後の対応 ・ 引き続き、未使用部分の活用の可能性を検討するとともに、今後、周辺の事業所等と意見交換をしながら、医療的ケアが必要な身体障害者が地域で生活するために必要な資源やサービスを把握し、移譲方針等を整理する。 ・ 現在の入所者数を踏まえて、来年度から定員を40名に変更する。 イ 厚木精華園 (ア) 現状 ・ 市街地から離れた立地であり、園外での日中活動の機会や地域との交流の場が少ない状況である。また、高齢の知的障害者支援のモデル施設であったことから高齢者が多く、地域生活移行が進んでいない。 ・ 隣接地は土砂災害特別警戒区域に指定されている。 ・ 建物は築29年が経過し、定員112名の大規模施設で、2人部屋が中心の多床室となっている。 ・ 指定管理は令和7年度までであり、令和8年度以降の運営方針を示す必要がある。 (イ) 検討状況 a 移譲条件 ・ 民間移譲にあたって、この地域での事業展開を検討するため、近隣で障害福祉サービス事業所を運営する複数の民間法人から、現在の運営状況、課題、今後の運営の方向性等のヒアリングを行った。 b 指定期間満了後の運営体制 ・ 指定期間が満了する令和8年度以降の運営体制については、上記の移譲条件の検討に時間を要する見込みであり、家族会等の意見、現在の法人や施設運営の課題への対応を確認しながら、 指定期間の延長について検討している。 (ウ) 今後の対応 ・ 民間移譲についても、引き続き、民間法人等と意見交換を重ねながら、移譲方針等を検討する。        ウ 三浦しらとり園 (ア) 現状 ・ 知的障害児と知的障害者の複合施設である。 ・ 建物は築41年が経過し、児者あわせて定員152名の大規模施設で、多床室が中心となっており、老朽化が進んでいることから、再整備が必要となっている。 (イ) 検討状況 再整備を含めた、民間移譲の方針を整理するため、家族会、職員、複数の民間法人等と意見交換を行っている。 (ウ) 今後の対応 障害児施設及び障害者施設に今後求められる役割に応じて、再整備後の施設に必要な生活環境を検討するため、引き続き、関係者との意見交換を進めていく。 (3) 引き続き方向性を検討する施設 ア 芹が谷やまゆり園及び津久井やまゆり園 (ア) 現状 ・ 両園ともに建物は小規模ユニット施設として整備されている。 ・ 園外に日中活動の拠点を設置し、又は設置する計画があるなど、積極的に地域生活移行に取り組もうとしている。 ・ 両園とも指定期間が令和9年度までであるため、遅くとも令和8年中には方向性を示す必要がある。 (イ) 検討状況 方向性の検討にあたって、各園の特徴や現状を把握するために、両施設を訪問して、日中活動、地域団体との連携、周辺地域の資源等について、視察やヒアリング等を行っている。 (ウ) 今後の対応 引き続き、両施設の状況を把握し、福祉科学研究や人材育成といった県立施設としての役割を果たすべき施設であるかを検討する。 イ 愛名やまゆり園 (ア) 現状 ・ 県全域からアクセスがしやすく、障害福祉サービス事業所をはじめ、地域資源が豊富な県央地域に立地している。     ・ 建物は築38年が経過し、定員120名の大規模施設で、4人部屋が中心の多床室となっており、老朽化が進んでいることから、再整備が必要となっている。     ・ 再整備するにあたっては、将来的に、利用者の方々が地域に溶け込んで暮らせるようにするためには、どのようなあり方がふさわしいか、外部有識者等の意見を伺いながら、検討を進める。     ・ 県立施設として存続し、中井やまゆり園とともに、地方独立行政法人が一体的に運営することを視野に入れて検討を進める。     ・ 指定管理は令和7年度までであり、令和8年度以降の運営方針を示す必要がある。     ・ かながわ共同会が設置した第三者委員会が「愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会中間報告書」(以下「中間報告書」という。)を取りまとめ、かながわ共同会及び県に対する改善提案がされた。     ・ 県は、中間報告書で指摘された問題点を検証し、改善提案に対する改善策を検討するため、支援改善チームを立ち上げた。 (イ) 検討状況 a 再整備 中間報告書を受けて、再整備とあわせて現施設における多床室の解消(個室化)の検討を始めた。 将来的に目指す「地域に溶け込んだ暮らし」のイメージや再整備について、利用者、関係団体等と意見交換を行った。 b 指定期間満了後の運営体制 指定期間が満了する令和8年度以降の運営体制については、再整備や地方独立行政法人による運営を視野に入れた検討に時間を要する見込みであり、家族会等の意見、現在の法人や施設運営の課題への対応を確認しながら、 指定期間の延長について検討している。 (ウ) 今後の対応 ・ 利用者、ご家族等、関係者の意見を伺いながら、県と法人が連携して支援改善策を検討し、早急に改善に取り組む。 ・ 地方独立行政法人による運営を視野に入れて、引き続き、関係者と意見交換をしながら、導入の是非、導入する場合の時期等について検討を進める。 ・ 再整備については、かながわ共同会が設置した第三者委員会からの提言も踏まえ、多床室の解消(個室化)などの生活環境の改善を含め、将来の障害福祉のあり方を見据えた検討を進める。 (参考:県立施設の概要) 施設名(所在地) 中井やまゆり園(中井町) 管理方法 直営 主な対象 知的障害者 定員 140人 築年数 築24年 (部屋)(個室・多床室) 施設名(所在地) さがみ緑風園(相模原市南区) 管理方法 直営 主な対象 身体障害者 定員 50人 築年数 築21年 (部屋)(個室中心) 施設名(所在地) 芹が谷やまゆり園(横浜市港南区) 管理方法 指定管理 主な対象 知的障害者 定員 66人 築年数(部屋) 築2年(個室) 施設名(所在地) 津久井やまゆり園(相模原市緑区) 管理方法 指定管理 主な対象 知的障害者 定員 66人 築年数(部屋) 築2年(個室) 施設名(所在地) 愛名やまゆり園(厚木市) 管理方法 指定管理 主な対象 知的障害者 定員 120人 築年数(部屋) 築38年(多床室中心) 施設名(所在地) 厚木精華園(厚木市) 管理方法 指定管理 主な対象 知的障害者 定員 112人 築年数(部屋) 築29年(多床室中心) 施設名(所在地) 三浦しらとり園(横須賀市) 管理方法 指定管理 主な対象 知的障害児 定員 40人 主な対象 知的障害者 定員 112人 築年数(部屋) 築41年(多床室中心) 資料3別紙 1  かながわが目指す当事者目線の障害福祉 どんな障害があっても、地域であたり前に暮らせる環境が整っている イメージ図 入所施設から地域生活支援拠点への転換 (イメージ図中文章) ○住まいの場 グループホーム(県立・民間)、アパート等(一人暮らし、夫婦等) ○日中活動の場 生活介護、就労支援事業所、余暇活動等 ○地域生活を支える拠点 居宅介護、短期・緊急入所、相談支援等 (イメージ図の説明) イメージ図中央に、建物の絵があり、「日中活動の場、地域生活支援拠点」と記載され囲われている その周りに、県立GH、民間GH、アパート等と記載された家の絵と、日中活動の場と記載された建物の絵がある 県立GH、民間GH、アパート等の住まいの場の絵からは、中央の日中活動の場、地域生活支援拠点と、その周りの日中活動の場へ矢印が向かっている 矢印の横には人の絵があり、県立GH、民間GH、アパート等の住まいの場から、日中活動の場や地域生活支援拠点へ人が向かうイメージとなっている 2 関係者からの主な意見 (1)利用者、家族、園職員 ・2人部屋で狭い、外の活動をしたい。(利用者) ・人員配置体制をきちんとやってほしい、日中活動を充実させてほしい、地域生活移行や規模縮小は丁寧に進めてほしい。(家族) ・今いる人を追い出すことがないように施設も確保してほしい。(家族) ・GHや生活介護の整備を先にしてほしい、GH利用者でも短期利用ができると良い。(園職員) (2)当事者部会 ・施設は、地域に障がい者を受け入れる受け皿ができるまでは、必要かもしれないが、将来的には廃止し、地域で暮らせると示す方が良い。 ・ヘルパーの支援センターや、研究機関にできたら良い。 ・支援者も当事者も入れて、望む生活に必要なものを考えていくべき。 ・地域へ移行後も、ショートステイ等、自信を取り戻せるようなサポートが必要。 ・どうにもできなくなった時に相談できる所が必要。