リトアニア国立ヴィータウタス・マグヌス大学教授 元国連障害者権利委員会副委員長 ヨナス・ラスカス氏 メッセージ 2024年1月16日 新しく設立された地域密着型の施設において、知事・副知事と知的障害者の方々にお会いするため、2022年9月に神奈川県を訪問する招待を頂いたことを思い起こし、大変嬉しく思います。温かく迎えて頂いたことを大変感謝しています。 知的障害者が他の人々と同様の立場で社会で生活できるよう希望と機会を与え、知的障害者の人権を尊重する、皆様の目覚ましい努力と貢献を改めて認識したいと思います。障害者の脱施設化という改革を始めることで、皆様は真の変化をもたらしました。私はこうした県の取組が続くことを強く推奨します! 私は、国連障害者の権利に関する条約(CRPD)委員会における元専門家委員・副委員長として、また日本におけるCRPDの実施状況に関する日本の国連報告書に係る委員会の共同報告者として、自分が訪問する機会を得た神奈川県において、条約に沿った実質的な取り組みが行われていることを見聞きし、喜びに満ちています。 皆様は、脱施設化や地域志向のサービスを目指す改革にとどまらず、障害者の声を聞き、政策決定のあらゆるレベルや段階における彼らの有意義な参加を可能にし、多様な能力を促進し、彼らが生活と社会への貢献において完全な主体性を持つことを目的に、障害当事者部会とも呼ばれるフォーラムを立ち上げていると聞いています。国際的なスローガンである「Nothing About Us Without Us」(私たちのことを私たち抜きで決めないで)が神奈川県で実際に実践されることを願っています。私の個人的な経験や業務上の経験から、このスローガンが政策や実践にうまく取り入れられれば、全ての人にとってどれほど効果的であるかを何度も目にしてきました。 障害当事者部会は、CRPD条約に明確に沿ったものであるだけでなく、神奈川県における障害者の権利に関するさらなる改革の資源、原動力、そしてガイドとなり得ますし、そうなるべきであり、そのような障害当事者部会の創設という本質的な実施がなされたことを心からお祝いします。 当事者部会は、神奈川県において、すべての生活分野に関する意思決定プロセスに意味のある形で関与しなければならないということが最も重要です。なぜなら、2020年のCRPD委員会の日本に対する最終見解(CRPD/C/JPN/CO/1参照)にあるように、障害者は、その障害を理由に、他の人々と平等に生活するための構造的な障壁に直面しているからです。 これに関連して、締約国である日本が義務付けられているCRPD条約の規定や、条約の規定及び基準を明確にする一般的コメントや声明などを把握しておくことを強くお勧めします。これらの全ては、CRPD委員会のウェブページhttps://www.ohchr.org/en/treaty-bodies/crpdで見ることができます。CRPD条約とその法理論は、全ての障害者が他の人々と平等に暮らせるよう、締約国を支援するものです。 私は、神奈川県における障害者の権利に関する過去何年もの進展が、差別をなくし、人権に基づく慣行や規定を生み出すためのさらなる発展の糧となることを願っています。加えて、神奈川県が他の都道府県の、そして国際的なロールモデルとなることを願っています。 障害者の権利の実現は継続的なプロセスであり、多くの人権に立脚した意識や政治的意志、そして、特により集中的な支援を必要とする障害者を含む多様な人々の関与と参加が必要です。さらなるアップデートを期待しています。 元国連障害者権利委員会副委員長 リトアニア国立ヴィータウタス・マグヌス大学教授 ヨナス・ラスカス 以上