白山高等学校
美術科1期生「古美術研修」の取組み【神奈川県立白山高等学校】
美術科紹介
白山高校は、平成29年度より普通科と美術科を併置する高校として新たにスタートをしています。平成30年度は、美術科2年目を迎え、1学年は、普通科(43期生)7クラスと美術科(2期生)1クラスで構成されています。
今年度、美術科教育課程は更にに充実し、美術関係の授業時間数の増加とともに、授業内容がより専門的になり絵画・彫刻・デザイン・工芸と様々な美術分野を学ぶことができるようになりました。耐震化工事の準備として仮設校舎を建設中ですが、併せて美術の学びの場としての環境整備も進行中です。
古美術研修の取組み
■〔目的〕
「古美術研修」は、美術科の1年生が、必修科目「美術館研究」1単位の中で取組む内容の一つです。年間を通じて、美術大学や美術館における鑑賞活動に取り組んできた1学年最後の集大成としての学習となります。国宝や重要文化財の見学を通して日本の美術への理解を深め、「鑑賞の能力」の伸長を図る事が目的です。
美術科1期生は、平成30年3月11日から13日までの三日間、奈良・京都方面への研修旅行に行ってきました。
研修1日目〔法隆寺〕
主な見学先は次の通りです。
3月11日 | 〈奈良〉新横浜駅出発⇒法隆寺⇒薬師寺⇒唐招提寺⇒奈良泊 |
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3月12日 | 〈奈良から京都へ〉東大寺⇒興福寺⇒宇治平等院⇒京都泊 |
3月13日 | 〈京都〉京都国立博物館⇒養源院⇒智積院⇒京都市内散策⇒新横浜駅到着 |
■〔事前学習〕
出発前の学習は、各訪問先について、生徒が個々に行う探究学習です。その後に、地歴科の先生による日本美術史の講義を受け、建造物建立や、仏像制作の歴史的な背景を学びました。
事前学習の様子
■〔研修旅行〕
1日目
法隆寺では、その伽藍配置や金堂、五重塔に見られる白銀比の美のバランスを体感しました。大宝蔵院を見学後に東伽藍、夢殿と巡りました。
薬師寺では、金堂から大講堂、最後に西塔を見学。住職の説明に耳を傾けながら、金銅仏の最高峰である薬師三尊像の写実的で「とろける美しさ」(『古寺巡礼』〉を味わいました。西塔や金堂の再建の解説から、飛鳥時代の寺院建築技術を受け継ぐ「最後の宮大工」西岡常一氏についても思いを馳せ、建造物の独特な色合いに当時の文化を偲びました。初日の最後には、鑑真和上の開いた唐招提寺を訪問。奈良時代建立の金堂、講堂の見学では天平文化の息吹を感じ、建築様式の違いについて学ぶことが出来ました。
法隆寺夢殿の見学
2日目
東大寺へは、旅館より徒歩で移動。法華堂(三月堂)の説明では、「執金剛神像や四天王像、それぞれの役割が分かり、益々、興味が深まった」との生徒たちからの感想。二月堂の階段に情緒を感じつつ、大仏殿へ。大仏の印象は見るごとに大きく、そのスケール感に圧倒されました。
興福寺の阿修羅像の鑑賞では、「イメージしていたサイズより小さかった」といった感想があり、実物を見ることの大切さを感じました。国宝館から東金堂、五重塔を見学後、奈良を出発。
午後は「平等院鳳凰堂」の「阿弥陀如来座像」を鑑賞後、併設のミュージアムへ。照明が調整され空調の整備された室内では、「雲中供養菩薩」一体ずつをゆっくり鑑賞出来るよう環境づくりされ、修復や保存技術の大切さも同時に学びました。京都に到着し2日目の行程は無事に終了です。
法華堂にて
東大寺南大門を入る 東大寺仏殿へ
3日目
1万4千件の収蔵を誇る「京都国立博物館」から開始です。陶磁器、絵画、書、工芸、彫刻等京文化の神髄を誇る展示ですが、生徒たちからは、「半日では時間が足りない」との感想もある程、一点一点の美術品に真剣に向き合う姿が印象的でした。その後、「養源院」では俵屋宗達の杉戸絵や襖絵、「智積院」では長谷川等伯一門の障壁画の鑑賞。午後は各班別の自主行動で、京都市内を散策後、帰路につきました。
智積院 大書院より庭園を眺める
■〔振り返り〕
国宝と重要文化財を堪能し、充実した三日間でした。「神社仏閣や仏像制作の歴史的背景への理解を図り、本物を鑑賞する中で造形的要素の観点から作品を捉え、見方を深める」ことをねらいとした古美術研修旅行。1年間の美術科における学習により、ものの見方や考え方が変化していく中、主体的な鑑賞活動が実感的な美の捉えにつながりました。この経験が、一人ひとりの価値意識を広げ、今後の制作の糧となることを期待しています。
神奈川県立白山高等学校
電話:045-933-2231
(掲載内容は掲載日現在のものです。最新の情報は各県立学校のホームページでご確認ください。)