性的マイノリティ理解促進フォーラムのパネルディスカッションの概要

掲載日:2020年4月3日

令和元年12月21日(土曜日)に開催した性的マイノリティ理解促進フォーラムのパネルディスカッションの概要をご紹介します。

 

1 パネリスト等

パネリスト
 牧島かれん氏(衆議院議員、LGBTに関する課題を考える議員連盟事務局次長)
 杉山文野氏(フェンシング元女子日本代表、株式会社ニューキャンバス代表取締役)
 星野慎二氏(認定特定非営利活動法人SHIP代表)
 藥師実芳氏(認定特定非営利活動法人ReBit代表理事)
 玉木真人(神奈川県共生担当理事)
コーディネーター
 阿部知代氏(株式会社フジテレビジョン報道局)

2 テーマ

性の多様性を尊重し、ともに生きる社会をめざして

 

3 概要 

(敬称略)

【性的マイノリティに関わることで、現在行っている取り組みと現状に関して】

(牧島)
 レインボーパレードにスケジュールが合えば参加している。議員会館での私のオフィス、応接室にはLGBTアライのシールを貼っていて、いろいろな方が来られていて、安心して今の思いを伝えてくださいという意思表示を行っている。

(杉山)
 性的マイノリティに関する研修や講演活動は年間120本くらい行っている。今は自治体・教育関係・企業、その3つが多い。15年前に本を出して、活動、講演を行っている中で、当初はLGBTという言葉を知っていますかと言っても1~2名手があがるかあがらないかといった状況だったが、今の認知度は、何割かはわからないが認知度は上がってきたと感じる。
 今まではパレードも含めてLGBTの当事者の可視化というのを行ってきた。今後は具体的にどう解決していくかというフェーズ、課題の可視化になってきていると感じている。

(星野)
 2002年から活動を始め、2007年から神奈川県と一緒にLGBTに対しての居場所づくりを始めた。以前は学校の中で同性愛を語るのはタブー視されていたが、渋谷区が同性パートナーシップ制度を始めたころを起点にがらりと変わり、今では学校から講演の依頼が来るようになり、だいぶ学校の理解が変わってきたと感じる。
 その一方で、親の理解は進んでいない。子どもたちの中にはいまだに親に言って家を出ていけと言われる子もいる。

(藥師)
 20歳のときに団体を始めて10年間、LGBTを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を目指し、学校現場での啓発、就活の支援、LGBTとアライの若手リーダーシップの応援と、3つのことを行っている。また、2014年からかながわボランタリー活動推進基金21という、県内での就労サポートを弊団体と神奈川県と一緒に5年間実施している。
 弊団体は20代や学生を中心に600名ぐらいのボランティアがいるが、学校現場での理解は促進され可視化は進んでいるものの、まだ、子どもの通っている学校・担任の先生が本当に理解があるか、カミングアウトしたときに安全に明日も学校に通えるのかというと、そこにはまだギャップがあるというのが現在の状況だと思う。
 また就活の現状は、2017年には厚生労働省の公正な採用選考の基本の中で、採用において性的指向・性自認に関して差別をしてはいけない、いるということを前提として対応することが求められた。それを受け、今企業人事として理解はあるものの、現場の感覚というのは乖離があり、そこを何とか追い付かせないといけないというのが現状だと思っている。

(玉木)
 神奈川県では、「ともに生きる社会かながわ憲章」を作り、ともに生きる社会づくりを進めている。今回のフォーラムもその一環である。県の取組みの基本的な考えは、性的マイノリティといっても当然ひとくくりではなく、性のあり方は多様であるということから、当事者の目線に立って悩みや苦しみということに対応する対策を取っていかなければならないというのが基本かと思っている。
 県では、しっかりとまず一人一人に寄り添う形、SOGI派遣相談や、若い方たちも来やすいような相談会場を設けたりといった活動や企業向けの研修も行っている。またパートナーシップ条例、パートナーシップ制度について、かなり多くの自治体で取組みが進んでおり、その価値は、行政がパートナーシップを認めていくということで性的マイノリティの方の暮らしやすさ・生きやすさを後押しする、その意義があると考えている。
 神奈川県内では小田原、横須賀、横浜で取組みが進んでおり、県の役割として、そうした自治体の役割を後押ししていくということが広がりにつながっていくと考えている。具体的には、県営住宅では該当市のパートナーシップの証明がある場合には、世帯としての入居を了解していくという取組みなども進めている。

(阿部)
 SOGI派遣相談とは具体的にはどういうことを行っているのか。

(玉木)
 学校や支援機関などに専門の相談員を派遣する事業である。神奈川県は広く、場所や時間を決めてしまうと特定の人しか利用できないので、遠方の人でも利用できるように、時間・場所を決めず、要望があればそこに出向いていくといった活動を行っている。年齢が低かったり障害を抱えていたりなど、一般社会の中でなかなか行動しにくい人、社会的弱者からの相談が多い。

【国政の場でLGBT、性的マイノリティに関する課題というのはどのくらい討議されているのか。】

(牧島)
 超党派の議員連盟の事務局次長を務めているが、この議連には全ての政党から関心を持っている議員が参加しており、いわゆる当事者団体の皆さまからのお話を伺ったりしている。課題の可視化によって出てきたものを、各省と調整をさせていただくというのが議員の役割だと思っている。自民党内にはLGBTに関する委員会があり、困り事、質問を集めQ&Aをつくり、広くホームページなどで公開している。
 セクシュアリティはグラデーションであり、はっきりと分けられるものではない。学校現場では、先生の持つ知識に偏りがあり、様々な性自認・性的指向の人がいるという認識が足りず、例えばGIDではなく同性愛かもしれないと悩んでいる子ども等に誤ったメッセージを発してしまう等のリスクがあると感じ、正しい知識を広める啓発活動を行っている。

【子どもが気付く年齢は様々な中で、何となく他の人と違うなというぐらいの自覚の子どもに、教師や学校、団体はどのようなサポートができるのか?】

(藥師)
 学校の先生の理解は非常に大切。例えば今年から中学校教科書の一部に、来年から小学校教科書の一部にLGBTについての記載がされ、学校の先生がLGBTについて教えられるようになることは非常に早急な課題となっている。
 LGBTであることを自覚する年齢は二次性徴期のタイミングが一番多いといわれているが、トランスジェンダーの子であれば小学校入学前に半数以上が性別違和を持っているといわれている。そういう子が、例えば「スカートは嫌だ」というような言葉であったり、「何で男の子と遊んではいけないの」など、日常的な会話の中で発信をしたときに、「何言ってるの、おかしいんじゃないの」や、「そんなの駄目だよ」と周りの大人が言ってしまうと、自己否定をしてしまう。周りの教員や保護者の方が肯定をしてあげなければならない。
 小さいときにその子のセクシュアリティが何なのかというのを決める必要は全くなく、一人一人の個性を尊重して自分らしさを尊重するように声掛けをするというのは、LGBTに限らず全ての子にできればよいと思う。

【自己肯定に関して】

(杉山)
 自己肯定感が持てないとは何かというと、やはり自分の存在が否定されるというか、ここにいていいのだということが分からないことである。
 渋谷区の同性パートナーシップ証明書の発行に関わった際、同性パートナーシップのところばかりがフォーカスされていたが、当事者からするとそれだけではなく、それまで「そこにはいない」という前提で語られていたものが、行政が取り組んだことによって、そういう人たちがいる、と前提条件が覆ったことが一番大きなことであったと思う。
 これは決してパートナーシップ制度を導入している自治体だけにいるわけではなく、全国のどこの地域・世代にもいる。性同一性障害特例法という法律があるということは存在を認めているということである。
 ただL・G・Bに関する法律はまだ日本に無く、法律ができることによってやっとスタートできるのではないか、まだそのスタート地点にまで立てていないというのが、セクシュアルマイノリティの現実なのではないかと、そこに課題を感じている。

(牧島)
 まず性同一性障害については、障害ではないということが世界的に決定されたことで、まずここの表現をどうするか、今ある法律の改正を既に超党派の中で議論している。改正を1回しているが、積み残している要件が幾つかあり、見直していかなければいけないというところが宿題。
 そしてL・G・B、性的マイノリティ、セクシュアルマイノリティといわれている人たちに対しての法律がないことをどうするかという点は、今2つの法律が俎上に上がっていて、1つは差別を禁止しましょうという法律、これは野党により既に国会に提出をされている法案。もう1つは自民党にて理解増進という手続き中の法律がある。

【今、動いている法律が現実となったとき、現場レベルではどのくらいの変化が望めるか。】

(星野)
 表向きには差別というのはなくなるような感じはするが、水面下ではやはり強く残っていくのではないかと感じている。

【若い世代はセクシュアルマイノリティの存在が身近にいて、違和感なく共存共栄、共生しているが、根強い昔ながらの価値観や、偏見がまだ残っている世代もいるような気がしている。そういった世代の意識を変えていくためにはどうしたらいいのか。】

(杉山)
 丁寧に説明を続ける必要がある。しっかりとした情報を、丁寧に説明しコミュニケーションを図っていくことはすごく大事なことだと思っている。

(藥師)
 理解の増進が本当に必要。それには日本においてLGBTに関する法律というのは必要だと思っている。G7の中でLGBTに関する法律がないのは日本だけといわれる中で、法律があれば、声を挙げたり、対話を始めたりと一歩踏み出すきっかけになるかもしれない。SDGsに基づき、ジェンダー平等を世界的に進めている中で、LGBTも取りこぼさないようにするのが大事と思っている。

(杉山)
 全国でパートナーシップは広がっているが、市区町村レベルでスタートしていて、都道府県で唯一、茨城県が今年同性パートナーシップ証明書の発行をスタートした。茨城県の大井川県知事の「理解より人権が先」という言葉に、勇気をもらった。パートナーシップだけが全てではないが、ぜひ神奈川県でもそういったことをスタートしてほしい。

【今進めている活動の中で、一番困難なことは何で、それを打ち破るためにどのようなことを今心掛けて戦っているのか。】

(牧島)
 10年くらい前、先輩の議員に一緒に考えてもらえないか声を掛けたが、何人かは「自分の周りにはいない」と言い絶対にいるといっても、でも「会ったことがないから」と。隠れたくないのに押し込んでいるとしたら、私たち側の責任だから、という話をし、その後は時には当事者を交え食事をしながらカジュアルにみんないろいろなことを考えている、というところから始め時間をかけてほぐしていった。普通に身近な話から始めるというのも1つと思う。

【テーマである笑いあふれる共生社会、これはLGBTの方もそうではない方も、LGBTだけではなくさまざまなマイノリティの人たちとマジョリティが笑って一緒に生きていける、これを実現するために、私たちが、今日から・今からでもできるヒントを。】

(杉山)
 ウエルカミングアウトはもうすぐにでもできること。そして、多様性、これはみんなの話ですよねと。自分が車椅子を使うようになってから段差に気付くよりも、一生使わないかもしれないけれども、課題をみんなで解決したほうが、みんなが安心して暮らせる。
 なので、友達にまだいないからといって他人事というわけではなく、そのために準備をしておく。そういうことでは僕もセクシュアル、LGBT以外のこともアライでありたいと思うし、声を挙げていきたい。なので、これはみんなの課題だよね、という共通認識をつくっていけたらいいのではないかと思う。

(星野)
 今、いろいろな情報が出ているが、情報は関心のある人は見るが関心のない人は見ない。知り合いの方などにこういう話をしていただき、それで少しでも関心を持ってもらう、それでそういうところからネットワークを広げていけたらいいと思う。

(藥師)
 共生社会というと、LGBTのことだけではなくて本当にいろいろな人たちの話だと思っている。例えば最近のニュースでは、日本はまだ、ジェンダーギャップが大きく、共生とかダイバーシティ・アンド・インクルーシブ・アンド・ビロンギングというと、全てまだまだ課題があると思う。だからこそLGBTだけ前にではなく、みんなでいろいろな課題が全部前に進むように皆さんで手を取り合っていきたいと思う。
 そのときに全て同じだと思っているのが、当事者が困っていますと声をあげるのはすごく難しく、自分が当事者性がない何かのテーマに対して、誰もが1つアライに成り合えたら、それは社会がすごく前に進むことなのではないかと思う。

(玉木)
 県としては、やはり当事者の目線に立った取組みが重要と考え、いろいろな方と連携を図りながら取組みを進めたいと思っている。

(牧島)
 立法府にいる者としては法律を作るのはとても大きな責任を感じているが、それで全てでは無く、法律ができた後もやはり社会全体で一つ一つの課題と向き合っていくことが大事で、職場、コミュニティ、学校、地域の皆さんの活動をサポートできるような立法をしていきたいと思っている。