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更新日:2023年3月23日

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研究報告 第155号 摘要一覧

神奈川県農業技術センター研究報告の摘要のページです。

ブモザイクウイルス(TuMV)ゲノム由来の遺伝子を導入したNicotiana benthamianaにおけるTuMV抵抗性

 カブモザイクウイルス(TuMV)のコートタンパク質(CP)遺伝子,NIb遺伝子及びVPg遺伝子を植物に導入し,抵抗性レベルや抵抗性個体の獲得効率などを比較する目的で,TuMV-JOのCP全長遺伝子864bp(CP)及び3’末端側430bp(CP3’),NIb遺伝子の3’末端側820bp(NIb3’),VPg全長遺伝子575bp(VPg)をそれぞれNicotiana benthamianaに導入し,得られた形質転換T1及びT2系統のTuMV抵抗性について調べた.その結果,T1世代の系統では、いずれの遺伝子を導入した場合でもTuMV接種後にまったく病徴が認められない高度抵抗性を示す個体や,TuMVを接種後の直上葉には病徴が認められるが,その後展開してくる葉には病徴が認められない回復型抵抗性を示す個体が確認された.導入遺伝子の違いによる抵抗性レベルに差は認められなかった.T1世代で高度抵抗性を示す個体が半数以上を占めた系統は,CP及びNIb3’では7系統,VPgでは3系統,CP3’では2系統であり、これらの自殖T2世代はすべて高度抵抗性を示した.ノーザンブロット解析では,抵抗性を示す系統はいずれも導入遺伝子の検出レベルが低く,CP遺伝子を導入した形質転換体のTuMV抵抗性植物からは導入遺伝子由来のsiRNAが検出されたことから,形質転換体のTuMV抵抗性は導入遺伝子のRNAサイレンシングによることが示唆された.

メ新品種'十郎小町'及び'虎子姫'の育成経過とその特性

早生で結実性に優れる漬け梅用品種の育成を目的として1997年から交雑育種に取り組み,‘十郎小町’及び‘虎子姫’の2品種を育成した.‘十郎小町(じゅうろうこまち)’(‘玉織姫’ב十郎’)は小田原市において5月29日頃に収穫される極早生品種で,果実重は20g程度の中粒となる.‘虎子姫(とらこひめ)’(‘南高’自然交雑実生)は平塚市において6月20日頃に収穫される品種で,果実重は48g程度の大粒となる.両品種とも結実性は良好で,果皮の柔らかい高品質な梅干しに加工できる.

触媒を利用した切り花の品質保持

酸化チタン光触媒の有機物分解能を,切り花品質保持方法の一つとして利用する可能性を検討した.切り花をあらかじめ浸けて微生物を繁殖させた水に酸化チタン粉末を添加し,紫外線を照射したところ,水中の微生物数が減少した.さらに,水に酸化チタンと糖を添加してバラ切り花を生けたところ,花持ちが長くなり,開花が促進された.次に,このシステムを実用化するために,紫外線発光ダイオードと光触媒担持体を同一容器内に収めた小型の溶液浄化装置を開発し,切り花をショ糖溶液に浸けた中に試作機を入れ,品質保持効果を検討した.その結果,バラ切り花では花持ち日数の延長,開花促進,生け水中の微生物増殖抑制等が認められた.また切り花用ヒマワリでは切り花重の増加や花持ち日数の延長が認められ,試作機による切り花の品質保持期間の延長が可能であると考えられた.

植質黒ボク土における有機物の連用が作物収量及び土壌化学性に及ぼす影響

神奈川県に広く分布する腐植質黒ボク土において,キャベツ(春どり)-スイートコーン(夏どり)の作物体系の一定栽培条件下で15年間の連作試験を行い,化学肥料区(無窒素区,無リン酸区,無カリ区,三要素区),有機物加用区(三要素+牛ふん堆肥),有機物単用区(牛ふん堆肥+各種有機質肥料)との間で作物収量及び土壌化学性等の変化を比較し,有機物連用がこれらに及ぼす影響について考察した. 

1.キャベツ収量は三要素区と比較し,有機物加用区は増収したが,有機物単用区は15年の連用後に減収した.スイートコーン収量は全ての処理区で作付け回数が増加するにつれ低下したが,有機物加用区,同単用区いずれにおいても三要素区の収量を上回った. 

2. 各養分吸収量は,いずれの作物においても有機物施用区で三要素区を上回った.一方,養分利用率については,カリ利用率が両作物とも連用後半に向上する傾向であったのに対し,窒素については有機物連用後半に利用率の大きな低下が認められた.リン酸は,三要素区と有機物を施用した区との間に利用率の大きな差はなく,また窒素やカリと異なり連用期間における利用率の大きな変化もなかった. 

3. 土壌化学性については,有機物の施用により交換性塩基や可給態リン酸が著しく蓄積した.CECの上昇も有機物を施用した区で三要素区より大きかった.

以上より,有機物の連用により養分要求量以上の肥料成分の供給をしており,土壌成分の蓄積及びバランスの悪化をまねき,長期連用後の作物収量の低減につながったものと考えられた.有機物の連用にあたっては,土壌診断に基づく土壌肥沃度及び有機物中の養分供給量を十分考慮した上で施用を行うことが重要である.

壌散布によるセシウムの茶新芽への移行

面積3m2の土壌埋設型ライシメーターで生育した31年生茶樹に対し,塩化セシウム〔133Cs〕3gを300Lの水に溶解し,2011年7月12日に注入して栽培したところ,10月15日に採取した秋冬番茶新芽には1.53mgkg-1のセシウムが含まれた.このことから,根域に水溶性セシウムが存在すると,茶樹は根からセシウムを吸収し,新芽まで移行することが示された.

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