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更新日:2023年9月28日

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「食品廃棄物の堆肥化とその農業利用に関する研究」要旨

研究報告要旨

食品廃棄物の堆肥化とその農業利用に関する研究
要旨
1.背景
農業分野でも営農活動の環境への影響が重要視されており,「食料・農業・農村基本法」では,環境保全型農業の推進が位置付けられた.環境保全型農業では,天敵などの利用による減農薬栽培と同時に,減化学肥料栽培及び有機質資材の有効利用による土づくりの推進,地力の維持,増進などが提唱されており,未利用の有機質資源(有機性廃棄物)の堆肥化や肥料化によるリサイクル技術の開発が環境保全型農業推進における重要な要素の一つとなる.
一方,近年最終処分場の不足やダイオキシン問題などによって,焼却を主とした廃棄物処理が困難となっており,有機性廃棄物については,最終処分量の減量化の観点からも肥料や飼料としての有効利用が求められている.このため,有機性廃棄物の有効利用は,環境面では廃棄物の減量,環境への負荷の軽減,一方,農業面では土壌改良資材や肥料の農地への供給と両面より有効な手段となる.
大都市を抱える神奈川県では都市部から排出される廃棄物の有効利用が重要な課題であるが,食品廃棄物のリサイクル率は10%に満たない状況で,その中でも一般廃棄物に属する生ごみのリサイクル率は,0.3%に過ぎない.その要因としては,廃棄物の発生が都市部に偏在していること,食品廃棄物の特性が家畜ふんや汚泥など従来の堆肥材料と異なることなどがある.
本研究では,食品廃棄物の堆肥化による農業利用を前提として,神奈川県内で食品廃棄物の適正な農業利用を促進し,その利用指針を明らかにする目的で,県内で大量に発生する食品廃棄物であるおから,コーヒー粕,生ごみを対象として,それらの特性,堆肥化条件,農業利用方法について研究を行ったものである.
本研究により得られた成果の概要は以下のとおりである.
 
2.おから,コーヒー粕の農業利用法の検討
2-1.おからコーヒー粕の混合堆肥化法の開発
神奈川県内で大量に発生する豆腐粕(以下,おから),コーヒー粕について,それぞれ縦型堆肥化装置による単独堆肥化を試みた結果,おからについては肥料効果に優れる堆肥が得られた.しかし,製品の歩留まりが29%と悪いこと,原料の含水率が約80%と高いこと,堆肥化過程でアンモニアガスの揮散が激しく,悪臭が著しいなどの問題があった.一方,コーヒー粕については,通気性に優れ,窒素成分の揮散も少ないため臭気の発生も少なく,堆肥化資材として優れていたが,通常の数ヶ月の堆積期間では,作物生育が抑制される傾向にあった.
そこで,両者の堆肥化特性に基づいて,おからとコーヒー粕の混合堆肥製造法について検討したところ,おからとコーヒー粕を重量比1時01分で混合することにより,臭気発生を軽減した堆肥化が可能であった.
この混合堆肥の無機成分組成は,窒素5.5%,リン酸1.2%,カリ(K2O)1.6%で,窒素成分に比べてリン酸,カリ含有率が低かった.得られたおからコーヒー粕混合堆肥と対照区として牛ふん堆肥をそれぞれ400,800kg/10a施用した試験区を神奈川県農業総合研究所内圃場に設け,3年間にスイートコーン,ダイコン,ホウレンソウを合計8作栽培した.その結果,おからコーヒー粕混合堆肥の各作の収量は化学肥料区を3~14%上回り,牛ふん堆肥施用区と同等の肥効を呈した.この際,おからコーヒー粕混合堆肥区における土壌中の可給態リン酸,交換性カリの増加は,牛ふん堆肥区と比較して少なく,土壌中へのリン酸,カリ成分の集積が軽減された.したがって,おからコーヒー粕混合堆肥は,リン酸やカリが過剰となっている農地への施用に有効な有機物であると考えられた.
以上のように,複数の食品廃棄物の特性を生かした廃棄物同士の組み合わせによって良質な堆肥を製造することが可能であること及びその利用法を明らかにした.
2-2.コーヒー粕のキノコ栽培培地として利用及びその廃培地の堆肥利用
キノコ栽培のための培地としては,広葉樹おが屑が主流であるが,これらの培地材料が入手しにくくなってきており,新たな培地材料の開拓が望まれている.このため,コーヒー粕のキノコ栽培培地として利用及びその廃培地の堆肥利用法について検討した.
合計15菌種24菌株のキノコについて検討したところ,コーヒー粕単独で栽培が可能であったが,通常栽培に比べ生育が劣った.このため,コーヒー粕を基本とし,各種の材料を混合した栽培培地を作成し,検討したところ,ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindraceae)では,コーヒー粕:フスマ:木炭=1時01分1秒,エリンギィ(Pleurotus eryngii)では,コーヒー粕:フスマ:廃培地=2時02分1秒で通常培地と同等な生育が認められた.
また,キノコ栽培廃培地を堆肥化することにより,コーヒー粕による作物生育抑制が,軽減され,良質な堆肥とすることができた.
このことから,コーヒー粕をキノコ栽培に利用した後,廃培地を堆肥化し,農業利用することにより,2つの利点を含んだコーヒー粕リサイクルシステム構築の可能性が示された.
3.生ごみ処理装置での生ごみの分解条件の検討
生ごみ処理装置は微生物分解型と乾燥型に大別される.前者では,投入される生ごみの種類,菌床の容量などの処理条件により処理物の特性が異なると考えられる.
そこで本項では,家庭用生ごみ処理装置を一般家庭に設置して,装置の運転状況,生ごみの投入状況などを調査すると共に,生ごみ素材の分解特性及び生ごみ処理物の微生物特性,油脂分などの成分特性及び生ごみ処理装置菌床の改良等について検討し,以下の結果を得た.
3-1.微生物分解型生ごみ処理装置における処理条件と処理物特性の関係
(1)一般家庭における生ごみの投入量と処理物の物性調査
容量,分解基材が異なる2種類の家庭用微生物分解型生ごみ処理装置を神奈川県大磯町内の家庭17軒に設置し,生ごみの投入量,処理物の化学性,有機物分解率の分析とその変動を1年間にわたって調査した.
各家庭の投入生ごみ量は,296g~1183g/日と家庭間差が大きかった.また,1日あたりの生ごみ投入量も,冬季40g~3,280g/日,夏季50g~2,970g/日と同一家庭内においても,日当り投入量の格差も大きかった.
生ごみの乾物減少率から算出した有機物分解率と2週間ごとに測定した生ごみ処理物のpH,ECとの関係を検討したところ,生ごみの有機物分解率は高EC,低pH条件の装置で低い傾向にあった.以上のことから,生ごみの分解率の低下は,生ごみ投入によるECの上昇やpHの低下が要因と考えられた.
(2)生ごみ素材の分解特性
小規模の試験装置で,キャベツや米飯など10種類の生ごみ素材の有機物分解率及びpHの変化を調査した結果,キャベツではpHが試験開始6日目で8.4と上昇し,10日後の有機物分解率が72%と高かったのに対し,米飯ではpHが6~7と低下し,有機物分解率は28%と低かった.すなわち,有機物分解率やpH変化において生ごみの種類による特徴的な変化が認められ,各種生ごみを分解パターン(分解の最盛期及び最終分解率)とpH変化のパターンによって分類することが可能であった.
さらに,生ごみ処理装置では生ごみの投入に伴い,装置内での塩分や油脂分の増加が想定されるため,塩分(最大8%),油脂(最大30%)存在下での生ごみ分解状況の変化を検討したところ,塩分(NaCl)濃度の上昇に伴いCO2発生量(有機物分解率)の低下が顕著であった.油脂類では油脂無添加区より油脂添加区でCO2発生量が増加した.また,塩分(0,2,4,8%),油脂(10%)共存下でも,塩分の増加によりCO2発生量が低下した.
(3)生ごみ処理物の特性に基づく微生物分解型生ごみ処理装置の分類
供試した生ごみ処理物の油脂含有率は0~20%と分布範囲が広かった.酸性を呈する生ごみ処理物では油脂含有率が2.5%~21%と高い傾向にあり,pH7以上の生ごみ処理物ではほとんどの試料で1%以下と極めて少なかった.
また,生ごみ処理物中の有機酸の同定と定量を行った結果,乳酸は,pH6.5以上の試料で検出されなかったのに対し,pHが6.5より低い試料で検出され,pH6.5未満の試料24点の平均含有率は1.8%であった.
次に,低pH・高油脂生ごみ処理物2種類,高pH・低油脂生ごみ処理物および牛ふん堆肥の好気性菌数を希釈平板法により測定した結果,高pH・低油脂生ごみ処理物では糸状菌1.6×106,細菌6.3×108(cfu/g),牛ふん堆肥では糸状菌1.4×104,細菌4.3×108(cfu/g)に対し,低pH・高油脂生ごみ処理物では糸状菌<8.4×101,細菌7.5×105,2.0×104(cfu/g))で,糸状菌・細菌ともに少なかった.
以上より,微生物分解型装置の菌床量に対する生ごみの投入負荷割合や処理温度,投入生ごみの種類など,条件の違いによって得られる生ごみ処理物の特性の違いを明らかにできた.
その結果に基づき,現在市販されている微生物分解型生ごみ処理装置を次の2種類に区分した.
(ア)菌床量に対する生ごみ投入負荷割合が高い装置(維持温度60℃程度):装置内の処理物はpHが低く,好気性菌数も非常に少ないため,装置内での堆肥化は進行していない.このため,本処理装置の処理物は分解状態が不十分で油脂分の残存量も多い.
(イ)菌床量に対する生ごみ投入負荷割合が低い装置(維持温度40~50℃):多量の菌床を利用し,長期間(3~6ヶ月間)取り出さず生ごみの投入,分解を繰り返し継続する.装置内で生ごみの堆肥化が進行しているため,製品に残存する易分解性有機物は(ア)に比べ少ない.アンモニアが生成してpHが上昇し,油脂分の残存量も少ない状態となっている.
3-2.微生物分解型生ごみ処理装置菌床の改良
現在,市販されている微生物分解型生ごみ処理装置の菌床としては,主に木質チップが利用されている.しかし,木質チップは分解が遅く,分解処理物を農業利用するには,長期の追熟期間を必要とする問題がある.そこで,市販の園芸資材を中心に各種資材の生ごみ処理装置菌床としての適性を検討し,それら資材の混合によって生ごみ処理に適する新たな菌床の作成を試みた.
まず,23種類の資材の生ごみ処理装置菌床としての適性を小規模の試験装置で検討したところ,資材の特性により分類することができた.
続いて,このうちのバーク堆肥等特性の異なる4種類の資材で16種類の混合物を作成し,試験したところ,バーク堆肥は臭気抑制への寄与,ベラボン(ヤシ殻破砕物)は撹拌性向上への寄与が高いことが明らかになった.
以上の結果,バーク堆肥とベラボンの混合により,効率的に生ごみを分解でき,農業利用にも適した新たな菌床を作成できることが明らかとなった.
このように本項では,処理物特性の改善の一方策を菌床資材の改良の面から示すことができた.
4.生ごみ処理物の農業利用法の検討
生ごみ処理物を農業利用する場合,その成分変動や含有される油脂成分,塩分,重金属などが作物生育に及ぼす影響を懸念する声が多い. そこで本研究では,生ごみ処理物中の油脂が土壌中での窒素の無機化と作物生育に及ぼす影響,内容成分特性,他の有機質資材との混合による堆肥の高品質化等について検討した.
4-1.ノイバウエルポットでの植害試験
3-1(3)で示した(ア)(イ)の生ごみ処理物についてノイバウエルポットでの植害試験を行ったところ,(イ)型の生ごみ処理物では堆肥化が進行しており,生育阻害が認められなかったのに対し,(ア)型の生ごみ処理物では発芽阻害(発芽率100%~24%),生育不良(対化学肥料区収量比68.5~7.1)が認められた.このため,生ごみ処理物の利用に際しては,このような特性を考慮した上で利用方法を決定することが必要であると考えられた.
現在,生ごみ処理装置の表示では,(ア)型が堆肥化型,(イ)型が消滅型と称されている.しかし,本研究の結果から(ア)型は乾燥処理が主体で堆肥化型とはいえない.消滅型といわれている(イ)型を堆肥化型と称するのが適切である.
4-2.生ごみ処理物中の油脂が植物生育に及ぼす影響
油脂含有率の異なる3種類の生ごみ処理物を土壌に混和して,ビン培養試験により生ごみ処理物中に含有される窒素の無機化を調べたところ,油脂含有率が高いほど無機態窒素の有機化が激しく,その後の無機化量も少なかった.ポット栽培試験では,油脂含有率の高い試験区でコマツナの発芽率と生育量が低下した.すなわち,油脂含有率が高い生ごみ処理物では,発芽抑制や窒素成分の有機化,無機化抑制により作物の生育に悪影響を与えることが明らかになった.従って,生ごみ処理物の農業利用には油脂含有率の測定が重要となる.
通常,有機物中の油脂含有率の測定には有機溶媒による抽出法が用いられているため,測定場所が限定される.そこで,油脂含有率の簡易な判定法について検討した.その結果,油取り紙への処理物含有油脂の浸とう度合いや生ごみ処理物のエタノール抽出液を水と混合した際の白濁度合いにより,油脂含有率約5%以上での検出が可能であることを明らかにした.
また,前述のように生ごみ処理物のpHが低いほど油脂含有率が高い傾向にあり,pH7以上では,油脂含有率が極めて低かった.
これらのことに基づいて,生ごみ処理物のpH測定と上記の油脂簡易判定法を用いることにより,現地で簡易に生ごみ処理物の作物生育への害の有無判定を行うことができる.
4-3.生ごみ処理物の内容成分特性
神奈川県内に設置された生ごみ処理装置より収集した生ごみ処理物を装置のタイプ(微生物分解型と乾燥型),処理量(1~1.5kg/日処理の家庭用と数10kg~数100kg/日処理の事業所用)の組み合わせで4種類に分類し,家庭用の微生物分解型4機種80点,乾燥型5点,事業所用の微生物分解型31点,乾燥型5点を収集し,成分組成を分析した.その結果の概要は以下のとおりである.
(ア)窒素,リン酸,カリ含有率
肥料三要素(窒素,リン酸,カリ)は,それぞれ,微生物分解型A(家庭用)平均値で3.0%,1.5%,2.1%,微生物分解型B(事業所用)平均値で2.7%,0.5%,0.5%,乾燥型C(家庭用)平均値で4.5%,1.4%,1.3%,乾燥型(事業所用)全体の平均値で3.0%,0.6%,0.8%であった.総合的にみると,窒素成分がリン酸,カリに比べ,多い傾向にあった.
(イ)NaCl含有率
生ごみ処理物のNaCl含有率は,平均1.98%であり,この数値と神奈川県の露地畑における堆肥の標準的施用量(1kg/平方メートル)から堆肥が土壌に供給するNaCl濃度を試算したところ,198mg/kgであった.この数値は,高橋ら(1991)が示している作物生育に影響のある塩分(NaCl)濃度500mg/kgと比較し,低かったことから,生ごみ処理物中のNaClが作物生育に悪影響を与える可能性は低いと考えられた.
(ウ)重金属含有率
供試した生ごみ処理物中の重金属含有率は,Zn25~130mg/kg,Cu1~69mg/kgであり,神奈川県内で流通する牛ふん堆肥と比較しても極めて低い値であった.また,Cd含有率は0.14~1.05mg/kgであった.これらの値は,現在の肥料取締法における汚泥肥料の基準と比較しても著しく低いため,生ごみ処理物中の重金属が土壌や作物に悪影響を与える可能性は極めて低く,安心して使える資材と考えられた.
(エ)無機成分含有率の時期別変動
家庭用生ごみ処理装置による処理物2種類,事業所用生ごみ処理装置による処理物2種類について,窒素,リン酸,カリなど主要無機成分含有率の時期別変動を分析したところ,同一処理装置での変動係数は,窒素,リン酸,カリで神奈川県内のハウス乾燥で製造された牛ふん堆肥と同等程度であった.
以上のことから,生ごみ処理物は,十分農業利用が可能な資材と結論される.
4-4.生ごみ処理物を利用した高品質混合堆肥製造
生ごみの利用方法としては,牛ふん,剪定屑など他の有機物と混合して堆肥化する事例が各地で認められる.本項では,前項の試験で堆肥化が進行していないと見なされた低pH・高油脂生ごみ処理物と主要な堆肥材料である牛ふんの混合堆肥化処理による利用法について検討した.
まず,神奈川県内の牛ふん堆肥について成分分析を行ったところ,窒素2.4%,リン酸2.1%,カリ3.7%で,窒素,リン酸に比べてカリ含有率が高くなる傾向にあった.
ハウス内で乾燥した牛ふんと生ごみ処理物を重量比3時01分で混合して油脂を3段階に添加して堆肥化試験を行ったところ,生ごみ処理物の添加により牛ふん単独と比較して著しい温度上昇が認められた.油脂含有率の高い区でも温度上昇が著しい傾向にあり,油脂含有率にかかわらず,良好な堆肥化処理が可能であった.また,混合堆肥化処理により堆肥化前に2.8~6.3%であった油脂含有率が牛ふん単独堆肥と同等な0.5%以下に低下した.
以上のように生ごみと他資材との混合によって堆肥化が促進され,同時に油脂分も分解除去されることが明らかになった.また,生ごみ処理物の混合により製品のカリ含有率は低下した.
更に,基肥の一部を生ごみ処理物牛ふん混合堆肥で代替する試験区を設けて圃場栽培試験を行った結果,夏秋キャベツ(8月~12月)では,生ごみ処理物牛ふん混合堆肥区および牛ふん堆肥区の収量は対化学肥料区の収量比で99~114と化学肥料区と同等の生育を示した.また,生ごみ処理物牛ふん混合堆肥区では牛ふん堆肥区よりカリ施用量が減少した.
以上の結果から,生ごみ処理物と牛ふんなどの他の資材を混合堆肥化することにより,窒素無機化や肥料成分バランスの調整を行った堆肥製造の可能性が示された.
神奈川県内の主要な堆肥素材である牛ふんや圃場残さには多量のカリが含有されるため,これらのみを堆肥材料として利用した場合には土壌養分のアンバランス化の進行が懸念される.また,県内の土壌には肥料や堆肥の過剰施用に起因するリン酸,カリの過剰が目立つ.その一方では,労働力不足により堆肥の施用が不十分な農耕地も認められる.本研究結果のように,複数の有機性廃棄物を混合した堆肥を製造することは,土壌養分状態を改善し,土壌環境を良好に維持するための有用な手段となると考えられた.
5.まとめ
本研究では,神奈川県内で大規模に発生する食品廃棄物としておから,コーヒー粕を,分散して発生する食品廃棄物として生ごみを対象としてそれらの農業利用技術について検討した.
おからとコーヒー粕については,それぞれの堆肥化特性を明らかにし,その結果に基づいて両者の混合堆肥化による高品質堆肥の製造技術を確立した.
さらに,生ごみについては生ごみ処理物の特性とその簡易判定法を明らかにするとともに,生ごみ処理物の有効利用方法として,牛ふんや圃場残さなど地域で発生する他の有機性廃棄物との組み合わせによる高品質混合堆肥製造の可能性が示された.
また,神奈川県未利用資源農業利用推進計画で設定されている生ごみの目標リサイクル率(事業系生ごみ8%,家庭系生ごみ0.2%)に相当する生ごみを本法で農業利用した場合の窒素成分供給量を試算したところ,670トン/年相当であった.これは,神奈川県内の化学肥料販売数量から推定した化学肥料として施肥されている窒素成分量3235トン/年の約21%に相当する.
このため,本法による食品廃棄物の農業利用の促進は,廃棄物の減量化,堆肥施用による土づくりの推進への貢献に加え,化学肥料使用量の削減の面からも有効な手段となることが明らかとなった.さらに,本法を生ごみの有機質肥料化(後藤らの生ごみ肥料)等と併用することにより,食品廃棄物の有効活用が促進されると考えられる.
本研究で示した都市から発生する食品廃棄物の堆肥としての有効利用技術は,神奈川県のような都市近郊での農業では,生産現場と消費者の連携の緊密化,地場産野菜の消費拡大にも効果が期待される重要な技術である.本研究の成果は,都市近郊農業の展開にとって有益な技術を提供するものである.

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