野菜にも遺伝子診断!?

掲載日:2021年5月26日

我々はバイオテクノロジーを利用した育種およびその技術を開発する研究をしています。今回はDNAマーカーについてご紹介します。

DNAマーカーって?

「目的とする形質(花の色、葉の形など)を選択するために、その形質が発現する前に、種々の方法によって検出したDNAの塩基配列の違いを指標として用いること。」です。

マーカー概念図

例えば、きれいな赤い花を選抜しようと考えたとします。この種類の花は苗から花が咲き、色が判別できるまで1年もかかるとします。この場合、苗のとき赤い花が咲くものだけ選抜し育てることができれば、時間と場所の節約になります。
ここで、赤い花になる苗の双葉には切れ込みがあると仮定します。もし、赤い花の苗がほしかったら、赤い花が咲く前に、切れ込みがある苗を選択すればいいのです。このとき、「双葉の切れ込み」が赤い花の「マーカー」となります。
では、苗の見かけがそっくりだったら、どうしましょう?
そこで「DNAマーカー」の出番です。苗の葉を少し切り取って、DNAを抽出し、「赤い花」に関係する塩基配列を調べることによって、その苗が将来赤い花が咲くかどうかわかります。
花の色でしたら、見て分かりますが、「病気に強い」とか「味がいい」というような性質は、大きく育てた後、実際に病気にかけてみたり食べてみないと分かりません。こういうときも、苗のときに違いが分かればとても便利です。
私たちはこのようなことを「DNAマーカー」を使って調べようとしています。

その、やり方

私たちはDNAの中にある目的の目印、「DNAマーカー」を探すのにPCR(PolymeraseChainReaction)法を利用しています。

PCR

この方法には、「プライマー」とよばれる短いDNA断片を使います。DNAは4つの「塩基」というものから構成されていて、その塩基がある順番に並び(塩基配列という)遺伝子として働きます。この塩基は4つの塩基の中で決まった相手と結合するので、あるDNAの「鎖」は相手となる「鎖」(相補鎖という)と結合して、「二重鎖」を構成します。この性質を利用して、DNA合成酵素を用いて「プライマー」が結合したDNAを鋳型に相補鎖を合成してゆきます。これを繰り返すと、「プライマー」に挟まれた部分だけが増幅されます。ある特定の「プライマー」を選び、これを用いてPCRを行うことで、「プライマー」に挟まれ増幅されたDNA断片を「DNAマーカー」として利用できるようになります。

例えばこんなこと

私たちが行っている新品種育成を目的に検索しているDNAマーカーの中から、「赤タマネギ細胞質雄性不稔因子関連マーカー」についてお話しします。
私たちは現在、色が鮮やかで辛味の少ない生食用タマネギの育成を進めています。

赤タマネギ

育種の現場で、片方の親となるものが「花粉ができない」性質(雄性不稔)を持っていると交配が非常に楽になります。しかし、「花粉ができない」という性質は、花が咲くまでわかりません。タマネギの場合、種をまいてから花が咲くまで2年かかります。そのため、「DNAマーカー」を使って苗のうちに選抜できないかと考えています。

マーカー電気泳動

上の図では、「維持系統」が花粉ができる系統、「CMS系統」が花粉ができない系統です。この「A10プライマー」で調べると、花粉ができる「維持系統」だけにに特異的にDNAが増幅されているのが分かります(→のところ)。つまり、このDNA断片を「DNAマーカー」として利用することができます。