キュウリうどんこ病菌の薬剤耐性メカニズムを遺伝子レベルで解析

掲載日:2021年5月26日

近年、使用していた農薬の効果が低下して実用上問題となる現象が各種の農作物病害で起こっています。このような現象は、薬剤に耐性を持つ菌が出現したために起こります。同じ薬剤だけを長い間繰り返して使った結果、自然突然変異で出現したその剤に強い変異個体だけが増殖してしまったためと考えられています。薬剤耐性菌の発生を防止する対策としては、異なった有効成分や作用特性を持った薬剤を交代して使用することがもっとも有効です。

写真:施設キュウリ圃場

キュウリ栽培においてもうどんこ病の薬剤耐性菌が出現し防除効果が低下しています(図1)。しかし、このような耐性菌は見た目は通常の菌と変わりません。また、うどんこ病菌は人工培養ができないため耐性菌の検出には生物検定による方法しかなく、迅速かつ効率的な診断ができません。そこで、うどんこ病菌の薬剤耐性を迅速に診断するための遺伝子診断手法の開発を進めています。

現在、ステロール脱メチル化酵素阻害剤(DMI剤:キュウリうどんこ病の防除に最もよく使用されている農薬)に耐性を持つ菌について解析をおこなっています。DMI剤は真菌の細胞膜(エルゴステロース)合成に関係するステロール脱メチル化酵素(CYP51)を阻害することで抗菌作用を発揮します。DMI剤耐性菌ではCYP51が変化している可能性が考えられます。そこで、キュウリうどんこ病菌のCYP51遺伝子の単離・解析を試みました。

写真:うどんこ病菌に感染したキュウリ

既知の糸状菌CYP51遺伝子配列情報をもとに縮重プライマーを設計し、キュウリうどんこ病菌CYP51遺伝子のPCRクローニングをおこないました。全コード領域を含むDNA断片を単離し塩基配列を解読したところ、主要な植物病原性糸状菌のCYP51と塩基配列で70~80%、推定アミノ酸配列で80~85%の相同性を示し、これまでに知られている他の生物のCYP51遺伝子とよく似た構造をしていることがわかりました(図2)。更に、DMI剤耐性菌には基質や薬剤に結合する部位などの重要な部分に1~4個のアミノ酸置換をともなう変異が確認されました(図2)。また、耐性菌には耐性程度が強い菌株や弱い菌株がありますが、塩基置換の数と関連していることがわかってきました。これらのことから、この塩基置換によってCYP51の構造が変化しDMI剤に耐性を持つようになっていると考えられます。

キュウリうどんこ病菌CYP51遺伝子構造の模式図

今後は、この塩基配列の情報を基に、感受性菌と耐性菌を識別できる簡易な遺伝子診断法を開発していく予定です。