(仮称)武田薬品工業株式会社新研究所建設事業に係る環境影響予測評価書案の概要
対象事業の名称等
対象事業の名称
(仮称)武田薬品工業株式会社新研究所建設事業
事業者
大阪府大阪市中央区道修町四丁目1番1号
武田薬品工業株式会社 代表取締役社長 長谷川閑史
事業の種類
研究所の建設
対象事業の目的
新薬研究の効率化を図るために、現在大阪府大阪市と茨城県つくば市に分散している武田薬品工業株式会社医薬研究本部の国内研究拠点を同社の旧湘南工場敷地に集約し、研究開発プロセスの初期を担当する研究施設を整備する。
対象事業の位置等
実施区域
藤沢市村岡東二丁目26番地1号ほか約25ヘクタール
実施区域及び周辺地域の環境の特性
実施区域は旧武田薬品工業湘南工場の跡地であり、藤沢、鎌倉の市境に位置している。用途地域については、藤沢市域は工業専用地域、鎌倉市域は工業地域に指定されており、実施区域の南側及び東側には工場等が、北側及び西側には住宅地等が分布している。
実施区域周辺の丘陵地などにはオニシバリ-コナラ群集といった二次林や緑の多い住宅地が分布している。
実施区域及び周辺地域の環境の特性
〈環境に関する基本原則〉
「研究開発から生産、流通、販売、調達、事務などの全ての企業活動において、地球環境への影響を重視し、環境を積極的に保全し、向上させる」ことを根幹とする、「環境に関する基本原則」を制定しており、これらの原則に則り対象事業の計画立案を行うこととした。また、環境に関する基本原則を理念として、レスポンシブル・ケア活動(*)計画ならびに年度方針を制定し、環境に関する諸施策を全社的に実施している。
レスポンシブル・ケア活動 「責任ある配慮」とも訳され、事業者による化学物質の管理に関する国際的な自主管理活動で、現在52箇国に活動が広がっている。
〈土地利用計画策定上の配慮〉
- 旧湘南工場敷地を全面活用することにより、旧湘南工場敷地以外の改変を行わない計画とする。
- 新たな建物は既存の建物の敷地を中心に活用して配置することで、なるべく既存樹林地を改変しない計画とする。
- 建設予定の研究所等施設は、実施区域の中心付近に集中配置し、敷地境界から十分距離をとることによって、騒音・振動等の影響を可能な限り低減する計画とする。
- 旧湘南工場敷地に植栽している樹林、樹木については、なるべく残存させるよう配慮するとともに、どうしても改変しなければならない樹木等については、可能な限り実施区域内に代替地を確保して移植する計画とする。
- 緑地の検討においては、北側を中心とした住宅地、東側の特別養護老人ホーム(建設中)、総合病院(建設予定)及び工場といった周辺施設に対する配慮として、これらの施設に隣接する既存樹林を可能な限り保全する計画とする。
- 関係車両の主要な出入口は南側及び西側の2箇所とし、渋滞が生じないよう、配慮することとする。また、北東側及び西側等に4箇所の非常時出入口を設置する計画とする。なお、従業員に対して公共交通機関の利用を促進する啓発を行うとともに、選択勤務制及びフレックスタイム制等を活用し、通勤時間の集中を回避する対策を行うこととする。
〈事業実施に当たっての配慮〉
大気汚染、騒音及び振動
- ボイラー、発電機等は、大気汚染、騒音、振動に関する環境負荷ができる限り小さいものを採用する。
水質汚濁
- 実験室系排水等は、実施区域内に配置する排水貯留槽に集約し、水質管理の後、公共下水道へ放流する。なお、有機溶媒系の廃液は、ポリタンク等で分別回収を行い、許可を得た廃棄物処理業者に委託して、関係法令等に基づいて適切に処分する。
廃棄物
- 研究所から発生する廃棄物(紙類や研究実験に伴う廃溶媒等)の削減に努めるとともに、再利用・再資源化するよう努める。
気象
- 建設予定の建物周辺には樹木を植栽し、施設周辺の風環境の変化を低減させる計画とする。
水象
- 地下水は使用しない計画とし、地盤沈下・水象への影響を回避するように努める。
- 雨水処理については、自然浸透を超える雨水は実施区域内に設置する貯水池(遊水池)に一旦貯留した後、公共水路に放流する。
景観
- 建物や屋上工作物は、藤沢市景観計画(平成19年1月)及び鎌倉市景観計画(平成19年1月)との整合を図った形態意匠、位置、規模、色彩等とする。
安全(交通)
- 研究所供用時に走行する関係車両については、安全に配慮した運行計画の策定・運用、運転者に対する安全教育等の指導徹底を図ることにより、地域住民、通勤・通学者の安全の確保に努める。
対象事業の概要
対象事業の規模
項目 | 規模 |
---|---|
実施区域面積 | 約250,000平方メートル |
排水量 | 1日当たり約2,200立方メートル |
燃料使用量 | 都市ガス1日当たり約41,000ノルマル立方メートル |
従業員数 | 約1,200人 |
土地利用計画
区分 | 面積(平方メートル) | 比率(パーセント) |
---|---|---|
建物 | 約78,500 | 約31.5 |
樹林等 | 約60,000 | 約24 |
貯水池(遊水池) | 約10,000 | 約4 |
敷地内通路その他 | 約101,500 | 約40.5 |
計画敷地合計 | 約250,000 | 100 |
建築計画
建物名称 | 階数 | 建築面積 (平方メートル) |
延床面積 (平方メートル) |
最高建物高さ (メートル) |
---|---|---|---|---|
1研究実験棟1 | 5(*1) | 約4,300 | 約20,000 | 約39(43・*2) |
2研究実験棟2 | 5(*1) | 約4,300 | 約20,000 | 約39(43・*2) |
3研究実験棟3 | 5(*1) | 約4,300 | 約20,000 | 約39(43・*2) |
4研究実験棟4 | 5(*1) | 約4,300 | 約20,000 | 約39(43・*2) |
5研究実験棟5 | 5(*1) | 約4,300 | 約20,000 | 約39(43・*2) |
6研究実験棟6 | 5(*1) | 約3,100 | 約15,000 | 約39(43・*2) |
7研究実験棟7 | 5(*1) | 約3,100 | 約15,000 | 約39(43・*2) |
8研究実験棟8 | 5(*1) | 約3,100 | 約15,000 | 約39(43・*2) |
9研究実験棟9 | 5(*1) | 約3,100 | 約15,000 | 約39(43・*2) |
10研究実験棟10 | 5(*1) | 約3,100 | 約15,000 | 約39(43・*2) |
11研究実験棟11 | 5(*1) | 約5,500 | 約22,500 | 約39(43・*2) |
12研究実験棟12 | 5(*1) | 約5,500 | 約22,500 | 約39(43・*2) |
13研究実験棟13 | 5(*1) | 約5,500 | 約22,500 | 約39(43・*2) |
14研究実験棟14 | 5(*1) | 約5,500 | 約22,500 | 約39(43・*2) |
15研究実験棟15 | 5(*1) | 約5,500 | 約22,500 | 約39(43・*2) |
16事務所棟 | 5 | 約4,000 | 約15,000 | 約30 |
17エネルギー棟 | 2 | 約5,000 | 約6,000 | 約14 |
18附属棟1 | 1 | 約300 | 約300 | 約5 |
19附属棟2 | 1 | 約200 | 約200 | 約5 |
20附属棟3 | 1 | 約100 | 約100 | 約5 |
21附属棟4(既存建物) | 3 | 約800 | 約2,400 | 約14 |
22附属棟5(既存建物) | 1 | 約700 | 約700 | 約6 |
23附属棟6(既存建物) | 1 | 約1,400 | 約1,400 | 約14 |
24附属棟7(既存建物) | 1 | 約100 | 約100 | 約6 |
25附属棟8(既存建物) | 1 | 約100 | 約100 | 約6 |
26附属棟9(既存建物) | 1 | 約15 | 約15 | 約4 |
27附属棟10(排水貯留槽) | 1 | 約100 | 約100 | 約6 |
28ゴミ置場 | 1 | 約450 | 約450 | 約5 |
29エントランスゲート | 1 | 約700 | 約700 | 約5 |
30守衛室 | 1 | 約35 | 約35 | 約5 |
合計 | 約78,500 | 約315,100 | ||
駐車場等 | - | - | 約32,000(約700台) |
15階建て(一部中間層を利用して10層とする)。
2エレベーター等を含む。
環境影響予測評価の結果
選定した評価項目
10項目(大気汚染、土壌汚染、騒音・低周波空気振動、振動、悪臭、廃棄物・発生土、電波障害、植物・動物・生態系、景観、安全)
環境影響予測評価結果の概要
評価項目 | 評価細目 | 予測評価結果の概要 |
---|---|---|
大気汚染 | 一般環境項目(二酸化硫黄、浮遊粒子状物質、二酸化窒素) | 1 建設機械の稼働等に伴う浮遊粒子状物質及び二酸化窒素の長期平均濃度の予測結果は環境基準を下回る。また、粉じん(降下ばいじん量)の予測結果も評価指標を下回る。 2 工事用車両の走行に伴う浮遊粒子状物質及び二酸化窒素の長期平均濃度の予測結果は環境基準を下回る。 3 関係車両の走行に伴う浮遊粒子状物質及び二酸化窒素の長期平均濃度の予測結果は環境基準を下回る。 4 施設の稼働に伴う浮遊粒子状物質、二酸化窒素及び二酸化硫黄の長期平均濃度の予測結果は環境基準を下回る。また、短期高濃度の予測結果についても環境基準を下回る。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼすことはないと評価した。 |
特定環境項目(ダイオキシン) | 熱源施設の稼働に伴う大気中のダイオキシン濃度の予測結果は評価指標を下回る。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼすことはないと評価した。 |
|
規制項目(粉じん、塩化水素) | 熱源施設の稼働に伴う塩化水素濃度の予測結果は評価指標を下回る。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼすことはないと評価した。 |
|
土壌汚染 | 土壌汚染 | 1 実施区域では一部の地点で鉛及びふっ素が土壌環境基準を超過したが、関係法令に準拠して実施区域外に搬出した上で適切に処理する。 2 敷地境界付近の一部の地点における地下水でふっ素が地下水環境基準を超過したが、自然由来によるものと推定され、対象事業の杭基礎工事に当たっては、異なる帯水層に拡散しないよう拡散防止対策を講じる他、濁水は公共下水道(汚水経路)へ放流することとしている。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼすことはないと評価した。 |
騒音・低周波空気振動 | 騒音 | 1 建設機械の稼働に伴う建設作業騒音レベルは規制基準値を満足する。また、低騒音型建設機械の採用に努める等の対策を実施する。 2 工事用車両及び関係車両の走行に伴う道路交通騒音レベルは平日で4地点、休日で4地点において環境基準値を満足しないが、工事用車両及び関係車両の走行による増加分はそれぞれ0.6デシベル以下、0.8デシベル以下とわずかである。 3 施設の稼働に伴う騒音レベルの最大値は規制基準を満足する。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼさないと評価した。 |
低周波空気振動 | 施設の稼働に伴う低周波空気振動の音圧レベルは評価指標値を満足する。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
|
振動 | 振動 | 1 建設機械の稼働に伴う建設作業振動レベルは規制基準値を満足する。また、建設機械の集中稼働を避ける計画とするほか、低振動型建設機械の採用に努める。 2 工事用車両及び関係車両の走行に伴う道路交通振動レベルは全ての地点で評価指標を満足する。 3 施設の稼働に伴う振動レベルは規制基準値を満足する。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
悪臭 | 悪臭 | 敷地境界における臭気指数の予測結果は規制基準値を下回る。また、現有施設(大阪工場地区の研究所等)における発生抑制・漏洩防止対策を講じる。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
廃棄物・発生土 | 一般廃棄物 | 1 供用開始後の施設の稼働に伴い発生する廃棄物については、分別収集を行った上で許可を受けた委託事業者による再資源化(約28パーセント)に努めるとともに、事業者が独自に制定した「環境に関する基本原則」に基づき発生量の削減及び再資源化に努める計画とする。 2 実験動物死骸は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、動物焼却炉を設置し、適正な処理を行う計画とする。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
産業廃棄物 | 1 工事中に発生する建設副産物は可能な限り場内利用及び分別収集による再資源化及び再生資材の活用を図り、資源の有効な利用及び適正な処理を行う。 2 供用開始後の施設の稼働に伴い発生する廃棄物については、分別収集を行った上で許可を受けた委託事業者による再資源化を図るとともに、廃棄物処理法に準拠した廃棄物焼却施設の運用を行う等、資源の有効な利用及び関係法令に準拠した適正な処理を行う。 したがって、実施区域周辺の生活環境に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
|
発生土 | 工事に伴い約30万立方メートルの発生土が想定されるが、実施区域内の盛土等として約13パーセントを活用するとともに、実施区域外へ搬出する発生土については「再生資源利用計画」を作成の上、適正な処分を図ることとする。 したがって、実施区域周辺の生活環境に影響を及ぼすことはないものと評価した。 |
|
電波障害 | テレビジョン電波障害 | 対象事業の実施に伴い、テレビジョン電波の遮へい障害及び反射障害が生じると予測されるが、必要に応じ共同受信施設の設置や既設共同受信施設への繋ぎ込み、受信アンテナの調整等、状況に応じた適切な対策を講ずる。 したがって、実施区域周辺のテレビジョン電波受信障害に著しい影響を及ぼすことはないと評価した。 |
植物・動物・生態系 | 植物、動物、水生生物、生態系 | 対象事業の実施により生物の生育生息環境への一時的な影響及び緑の量の減少が予測されるが、樹木については可能な限り残存させるよう配慮するとともに、やむを得ず改変しなければならない樹木については、可能な限り実施区域内に代替地を確保して移植する計画とする、また、供用開始後に順次緑化を進め、樹林等の整備に努めることとする。注目すべき種のうち、改変が予定されている区域に生育生息し、著しい影響を受けると予測された個体については移植を行うことにより保全する計画とする。 したがって、生物と生育生息環境との関わり、生物相互の関わり及び生物多様性に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
景観 | 景観 | 対象事業の実施により主要な展望地点からの景観に変化が生じるが、建物配置を工夫し、敷地外周部には中高木を主体とした緑地や貯水池を配置する、また、計画建物のデザインは華美なものは避け、一体感のある落ち着いたデザインとする計画である。また、圧迫感の影響が考えられる地域は実施区域近傍の限られた地域であり、敷地外周部に施した植栽により影響は緩和される。 したがって、主要な展望地点からの景観に著しい影響を及ぼすことはないものと評価した。 |
安全 | 高圧ガス | 供用開始後の施設の稼働に伴う高圧ガスの取扱い、貯蔵については、高圧ガス保安法等に準拠するとともに、事業者独自に定める社内規定に基づき厳格な管理体制、設備の定期検査・運転等を徹底する。災害等の緊急時や事故発生時については、藤沢市地域防災計画に定められている防災対策に加え、事業者独自に定めた防災に係る社内規定等に基づき適切に対策を講じるとともに、基礎免震等の地震対策を考慮した施設を設置することとしている。 したがって、実施区域周辺における高圧ガスに係る安全性に影響を及ぼすことはないものと評価した。 |
危険物 | 供用開始後の施設の稼働に伴う危険物等の取扱い、貯蔵については、消防法及び毒劇物取締法等に準拠するとともに、事業者独自に定める社内規定に基づき厳格な管理・運用を徹底する。災害等の緊急時や事故発生時については、藤沢市地域防災計画に定められている防災対策に加え、事業者独自に定めた防災に係る社内規定等に基づき適切に対策を講じるとともに、基礎免震等の地震対策を考慮した施設を設置することとする。 したがって、実施区域周辺における危険物等に係る安全性に影響を及ぼすことはないものと評価した。 |
|
交通 | 1 工事用車両の走行による実施区域周辺の交差点における交差点飽和度は、可能な限り走行台数を分散させる計画とすることで、交差点交通流に支障が出るとされる0.9を下回ると予測される。また、交通整理員の配置等の交通安全対策を実施する。 2 関係車両の走行による実施区域周辺の交差点における交差点飽和度は、可能な限り走行台数を分散させる計画とすることで、交差点交通流に支障が出るとされる0.9を下回ると予測される。また、左折進入・左折退出を原則とする等の交通安全対策を実施する。 したがって、実施区域周辺の交通安全に著しい影響を及ぼさないものと評価した。 |
選定しない評価項目
9項目(水質汚濁、地盤沈下、日照阻害、気象、水象、地象、文化財、レクリエーション資源、地域分断)
審査意見書に基づく実施計画書の変更内容又は変更しない場合は、その理由
審査意見書における指摘事項 | 事業者の対応 |
---|---|
(仮称)武田薬品工業株式会社新研究所建設事業(以下「本件事業」という。)は、武田薬品工業株式会社が同社の国内研究拠点を集約し、新薬研究の効率化を図ることを目的として、藤沢市村岡東二丁目26番地1号外の面積約24.8ヘクタールの敷地(以下「実施区域」という。)に、研究開発プロセスの初期を担当する研究施設を整備しようとするものである。 実施区域は、藤沢市と鎌倉市の両市にまたがる同社の旧湘南工場の敷地であり、藤沢市側は工業専用地域に、鎌倉市側は工業地域に指定されている。実施区域の西側から北側にかけては住宅地が広がり、東側は工場、住宅等が混在した地域である。南側はJR東海道線を挟んで主に工場が立地している。 本件事業は、既設建物を順次解体しながら最高建物高さ約39メートルの実験棟15棟をはじめとする、延床面積約32万平方メートルの大規模な研究施設を建設することから、工事の実施及び施設の供用による環境への影響が懸念される。 また、完成後の研究施設において多種類の薬品類や、遺伝子組換え生物を扱うことから、事業者は環境影響評価手続を通じて近隣住民へ十分な説明を行うことが求められている。 このような状況の中で、本件事業の環境影響予測評価実施計画書を審査したところ、その審査結果は以下のとおりである。 環境影響予測評価書案の作成に当たっては、これらの内容を十分に踏まえ、適切な対応を図る必要がある。 |
本件事業は、当社の旧湘南工場の敷地を活用し、研究施設を整備するものである。ただし、実施区域西側から北側にかけては住宅地が広がり、既設建物を順次解体するとともに研究施設等を建設することから、工事の実施及び施設の供用による環境への影響に十分配慮する必要があると認識している。 したがって、環境影響予測評価書案の作成に当たっては、審査意見書及びこれらの認識を十分に踏まえ、事業の実施に際し環境保全上の見地から適正な配慮を講じることができるよう、調査、予測及び評価を行うこととした。 また、完成後の研究施設における多種類の薬品類や、遺伝子組換え生物の取り扱いについては、関係法令等の遵守や、自主的な取り組みによる管理体制、運用の詳細を環境影響予測評価書案に示すこととした。今後も環境影響評価手続等を通じて近隣住民へ十分な説明を行う方針である。 |
1 環境影響評価項目の選定について (1) 気象 実験棟は、いずれも高さが30メートルを超えるが、実施区域の中心付近へ集中配置し、さらに実施区域の敷地境界には十分な植栽等を施し防風効果を高めるとして、気象(風向・風速)を評価項目として選定していない。 しかし、住宅地が実施区域に隣接しているため、評価項目として気象の選定について改めて検討し、その結果を明らかにすること。 |
研究実験棟等、実施区域内の建物による風向・風速への影響について、既存資料等の知見に基づき検討した結果、風向・風速の変化は対象事業実施区域内に十分収まることから評価項目として選定しないこととした。 なお、実施区域の敷地境界には十分な植栽等を施し防風効果を高める措置を講じる。 |
(2)水質汚濁等 実験室系排水及びエネルギー棟排水は公共下水道へ放流することとしているが、自ら処理して河川へ放流することになった場合は、これに伴って変更される事業計画の内容について明らかにするとともに、影響が想定される放流河川の水質汚濁や水生生物を評価項目として選定すること。 |
関係機関と協議した結果、当初、実施計画書に記載したとおり、実験室系排水及びエネルギー棟排水は、重金属・有機溶媒系廃液の分離等、必要な処理を行った上で公共下水道へ放流することとした。 したがって、排水を河川へ放流しないことになったことから、放流河川の水質汚濁や水生生物を評価項目として選定するには至らなかった。 |
2 調査計画等について (1)植物・動物・生態系 哺乳類の調査方法は直接観察法及びトラップ法を選定しているが、実施区域及びその周辺にはタヌキ等の中型哺乳類が生息している可能性があることから、実施区域内におけるそれらの種の調査方法として、無人撮影法についても選定すること。 |
実施区域内におけるタヌキ等の中型哺乳類の調査方法として、無人撮影法についても選定した。 |
(2)安全(交通) 実施区域周辺は市街化の進んだ地域であり、供用後の関係車両台数は一事業所からの発生台数としては非常に多いため、関係車両走行ルートのうち補助幹線道路との交差点についてもその構造や渋滞の状況などを十分把握し、交通量調査地点の追加を検討すること。 |
実施区域周辺は市街化の進んだ地域であり、対象事業による影響が懸念されることから、関係車両走行ルートのうち補助幹線道路との交差点についてもその構造や渋滞の状況などを十分把握し、交通量調査地点を追加することとした。また、交通への影響の予測評価にあたっては、調査結果や予測結果に基づき、安全確保に万全を期すよう環境保全措置の検討、評価を行う。 ただし、関係車両走行ルートと補助幹線道路との交差点のうち、一般県道田谷藤沢線と一般県道小袋谷藤沢線の交差点は立体交差となっており、現況を把握した結果、以下の状況が確認されたことから、調査地点としては選定していない。 1 当該交差点では、信号は立体構造の上部(東西方向の道路)に位置し、東西方向の道路における信号や右左折による滞留等は、南北方向に走行する交通量には基本的に影響を受けないと考えられ、また、実際に東西方向の道路における滞留等が南北方向に走行する交通量に影響を受けている状況は認められなかった。 したがって、予測評価の指標とする交差点の飽和度に、当該地点を南北方向に走行する関係車両の交通量は影響を及ぼさない。 2 当該交差点周辺の関係車両走行ルートは歩行者等の立ち入れない道路構造となっており、予測評価対象予定の歩行者、通学等における安全に対して影響を及ぼさない。 |
(3) 予測の前提 予測の信頼性を確保するため、予測に必要な施設の位置や設計等を可能な限り確定するとともに、次の点に留意して適切に予測の前提を設定すること。 |
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ア大気汚染 予測に必要な施設の位置や設計等が確定しない場合にあっては、環境負荷が最大となるような条件を設定すること。 |
大気汚染の予測に当たって、一定程度確定した施設の位置や設計をもとに、予測の前提を設定した。その上で、不安定時で最も影響が大きくなる気象条件時やダウンウォッシュ発生時等、環境負荷が大きくなる条件を設定し、予測を行うこととした。 |
イ悪臭 類似事例として現有施設を引用する場合は、施設の種類だけでなく規模等についても勘案すること。 |
対象事業において、悪臭が発生するおそれがある施設として、「廃棄物焼却施設」、「固液分離槽」、「創薬化学実験室」、「薬効・薬理実験室」が挙げられる。 各施設の類似事例として現有の施設(大阪工場地区の研究所等)を引用するに当たっては、施設の種類や悪臭発生源の量、悪臭防止措置等が対象事業と同様で、悪臭が発生する場所の容積や面積等に対して対象事業の排気送風量がほぼ同等以上となるよう、現有施設を選定し、排出口の臭気濃度を引用した。 対象事業の排気送風量が現有施設と比較して同等以上であれば、対象事業の排出口における悪臭は希釈されるが、実際の対象事業より高いと考えられる現有施設の臭気濃度を引用することで、より厳しい条件で予測を行えるものと判断した。 |
3 その他 多種類の薬品類や、遺伝子組換え生物を取り扱うため、周辺環境への配慮が必要であることから、それらの管理体制や運用の詳細について、自主的な取り組みを含め具体的に示すこと。 |
多種類の薬品類や、遺伝子組換え生物の取り扱いについては、関係法令等の遵守や、自主的な取り組みによる管理体制、運用の詳細を示した。 また、「バイオハザードの防止措置」を配慮事項として選定し、環境保全上の見地から講じようとする措置を示した。 |