(仮称)下古沢・上古沢・愛名土地区画整理事業に係る実施計画審査意見書
(仮称)下古沢・上古沢・愛名土地区画整理事業は、厚木市下古沢・上古沢・愛名土地区画整理組合設立準備委員会が、厚木市大字下古沢、上古沢、愛名の約70.1ヘクタール(以下「実施区域」という。)において土地区画整理事業の手法を用いて、良好な自然環境に配慮した産業用地を整備するものである。
実施区域の属する厚木市は、神奈川県のほぼ中央に位置し、豊かな自然環境に恵まれるとともに、東京一極集中の都市構造を改めるため、首都機能を分散することを目的に多極分散型国土形成促進法(昭和63年6月14日法律第83号)により制度化された業務核都市に位置づけられている。その中でも、実施区域は、市街化調整区域であるが、厚木市が特に積極的に業務機能の集積を進める業務施設集積地区として、基盤整備を進める地域となっている。
実施区域の現況は、西側には工場、南西から南側にかけては教育機関及び民間の研究機関が隣接している。また、北側には山林や農地が広がっており、周辺の東西は住宅地となっている。
実施区域は、丹沢山地から緑の連続性を保ちながら丘陵部へと張り出した大きな緑地で、クヌギ、コナラ、エノキ等が優占する落葉広葉樹林を主体とする植生が成り立つとともに、実施区域内に水源を有する複数の谷戸が存在している。、また、実施区域周辺を含めた区域では希少猛禽類、ヘイケボタル、キンラン等の貴重な動植物の生息及び生育が確認されている。
現在の実施計画は、谷戸を中心として地形を改変するものであり、実施区域の豊かな自然環境や生態系に与える影響の大きさが懸念される。事業者は実施区域が持つ自然環境の重要性を十分に認識し、周辺地域を含めた十分な調査を行った上で、生態系の保全の視点に立って、環境保全対策を検討することが必要である。
したがって、環境影響予測評価書案の作成に当たっては、次の審査結果を十分に踏まえ、適切な対応を図る必要がある。
1 事業内容について
実施区域は、谷戸や谷戸から広がる樹林地などの自然環境が周辺の緑地と連担して残されており、そこに数多くの動植物が生息及び生育し、多様な生態系を形成していると考えられることから、可能な限り連続的かつまとまった自然環境が保全されるよう計画を検討すること。
2 環境影響評価項目の選定について
関係車両の走行に伴う、大気汚染、騒音及び振動の環境に対する影響が懸念されることから、立地する施設の業態等から想定できる範囲内で最大の影響を及ぼす前提条件を適切に設定し、評価項目として選定すること。
3 調査・予測及び評価の手法について
(1) 騒音・低周波空気振動、振動
環境騒音、低周波空気振動及び振動の調査地点については、実施区域近傍の1地点を設定しているが、実施区域周辺には影響を受ける建物が点在することから、調査地点を適切に設定すること。
(2) 植物・動物・生態系
中型、大型哺乳類、鳥類の調査範囲については、実施区域及びその周辺約200メートルとしているが、周辺の生息状況や移動経路を適切に把握して断片化や孤立による影響を捉えることが生物多様性の保全の観点から重要であることから、実施区域及びその周辺500メートル以上とすること。
(3) 景観
調査地点の設定に当たっては、身近な視点として地域住民の日常利用という観点も踏まえて行う必要がある。また、実施区域東側で行われる地形改変によって及ぼされる影響について予測評価できるよう、調査地点を追加すること。
4 環境保全対策について
- 実施区域には多様な自然環境が残されており、多くの貴重な種が生息及び生育していると考えられることから、環境保全対策を検討する際には以下の内容に留意すること。
- 既存資料として用いている現存植生図では詳細な植生が把握できないことから、より緻密な植生調査をした上で生態系を区分すること。
- 実施区域には移動能力の小さい種や生活史のステージごとに生息環境を変える種など、多様な種の生息が考えられることから、それらの種の特性を十分に踏まえること。
- 周辺地域で実施される事業と調整を図り、可能な限り統一性のとれた保全対策を検討すること。
5 その他
- 事業内容について、平面図だけでなく断面図等も用いてわかりやすく説明すること。
住民への情報提供については、神奈川県環境影響評価条例に基づいたものだけでなく、事業の進捗に
応じて適切な方法で行うこと。
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