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更新日:2023年5月22日

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神労委令和元年(不)第25号O事件命令交付について

概要は次のとおりです。

※本件は、中央労働委員会が和解認定したことにより失効したため、申立人及び被申立人を匿名化しています。

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、本日、申立人の不当労働行為救済申立ての全部を救済する命令を交付しましたので、お知らせします。

1 当事者

申 立 人 X(組合)

被申立人 Y(会社)

 

2 事件の概要

本件は、組合が会社に対し組合員Aの業務上の疾病による健康被害への謝罪や補償等を交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、会社が、Aが平成21年に退職したこと等を理由に団体交渉を拒否したことは労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

⑴ 主文

ア 会社は、Aの業務上の疾病による健康被害への謝罪や補償等を交渉事項とする団体交渉に誠実に応じなければならない。

イ 会社は、本命令受領後、速やかに陳謝文を組合に手交しなければならない。

⑵ 争点及び判断の要旨

(争点1)

組合は、会社との関係で労組法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」に当たるか否か。

(判断の要旨)

労組法第7条第2号の「使用者が雇用する労働者の代表者」は、使用者との間に現に労使関係が存在する労働者をいうが、労使関係が存在していた期間の清算されていない労働関係上の問題を巡って争われているような事情が存在する場合には、これに該当すると解される。

組合は、Aが会社での勤務時にアスベストにばく露したことが原因で、業務上の疾病を発症したとして、アスベスト健康被害による補償について問題解決を求めている。加えて、Aが申請した労災保険請求書は、会社の事業主証明を経て支給決定されており、会社に労働災害の責任があるか否かはともかく、同人と会社の間には労使関係が存在していた期間に清算されていない労働関係上の問題が存在していたといえる。

よって、Aは「使用者が雇用する労働者」に該当するため、Aの加入する組合は「使用者が雇用する労働者の代表者」である。

(争点2)

組合が申し入れた、Aの業務上の疾病による健康被害への謝罪や補償等を交渉事項とする団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 組合の申し入れた交渉事項は、Aの労働災害に関わるものであり、その前提となる事実関係は、まずは労使間で明らかにしたうえで、それに起因する労使紛争を自主的に解決していくべきであるから、義務的団体交渉事項と解するのが相当である。 

イ アスベストに起因する疾病は、アスベストのばく露から長い潜伏期間を経て発症するものであるため、Aの退職後10年が経過して業務上の疾病が発症したことに不合理な点はない。また、組合が労働基準監督署の判断後に団体交渉申入れを行ったことにも不合理な点はなく、社会通念上、合理的期間内に申入れがなされたと解するのが相当である。

ウ 使用者には、組合との見解の相違の有無にかかわらず、団体交渉における誠実な対応を通じ、合意形成の可能性を模索する姿勢が求められている。会社は、組合の要求に対し文書回答や調査報告書に相当する書面を提出したことを理由に、団体交渉を行っていない。

エ 以上から、組合の求める交渉事項は義務的団体交渉事項であり、団体交渉の申入れも合理的期間内になされているといえる。さらに、団体交渉を開催する必要性は失われていないから、会社は組合の申し入れた団体交渉に応じる義務があり、会社の対応は正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

 

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