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更新日:2023年4月5日

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神労委平成29年(不)第37号横浜自動車学校事件命令交付について

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しました。

1 当事者

申立人 神奈川県自動車教習所労働組合(本部組合)
同 神奈川県自動車教習所労働組合横浜自動車学校支部(支部組合)
同 個人1名(X)
被申立人 株式会社横浜自動車学校(会社)

2 事件の概要

本件は、会社が、(1)支部組合の支部長であるXを配置転換し、教習指導員に復帰させないこと、(2)Xの自動車通勤を禁止したこと、(3)本部組合及び支部組合(以下「組合ら」という。)の、Xの教習指導員復帰等を議題とする団体交渉申入れを拒否したこと、(4)平成29年夏季賞与(以下「29年夏季賞与」という。)の査定において支部組合の組合員を差別的に扱ったこと、及び(5)Xや支部組合に対する差別的扱いや団体交渉拒否により支配介入を行ったことが、(1)、(2)及び(4)については労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号に、(3)については同条第2号に、(5)については同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
また、X及び組合ら(以下「申立人ら」という。)は、(6)会社が、支部組合が従前より組合事務所として利用してきたスペース(以下「組合利用スペース」という。)に会社の備品を運び入れて設置していることが、労組法第7条第3号及び第4号に該当する不当労働行為であるとして、追加申立てを行った。

3 命令の概要

(1) 主文

ア 会社は、Xに対してコース整備業務を命じるという不利益取扱いをしてはならない。
イ 会社は、申立人ら執行部全員がドライブレコーダーの映像を視聴していないことを理由としたり、出席人数について一方的に条件を付したりすることにより、団体交渉を拒否してはならない。
ウ 会社は、支部組合が利用していたスペースを平成30年9月28日の状態に戻さなければならない。
エ 会社は、本命令受領後、速やかに陳謝文を掲示及び手交しなければならない。
オ 会社がXを平成28年1月6日付け辞令により配置転換したことに係る申立てを却下する。
カ その余の申立てを棄却する。

(2) 争点及び判断の要旨

(争点1)
会社がXを、平成27年9月2日以降教習指導員に復帰させないこと及び平成28年1月6日付け辞令により配置転換したことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)
本争点の配置転換に係る申立てについては、1年の除斥期間が経過しているため却下を免れず、本件の審査対象とはならない。
Xの配置転換後、会社は、Xにコース整備業務及び高齢者講習業務を命じ、教習指導員に復帰させていない。Xに対するコース整備業務命令には懲罰的意味合いが強く、業務上の必要性や合理性が認められず、X主導の組合活動に対する会社の嫌悪の意思が推認されるため、同業務命令は会社の不当労働行為意思に基づくと認められる。よって、コース整備業務命令は不利益取扱いであると同時に、組合活動を委縮させるおそれがあるため支配介入行為であり、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当する。
一方、高齢者講習業務は、総務部での通常業務であるため差別的な処遇とはいえない。
また、Xの教習指導中に教習生が起こした事故(以下「本件事故」という。)直前及び以前から複数回に及ぶXの居眠り又は意識消失が疑われる状態の原因は明らかでないことから、自動車の運転教習を本業とする会社がXの教習指導員復帰に慎重となるのは無理からぬことである。よって、教習指導員に復帰させないこと及び高齢者講習業務を命じていることは、不当労働行為には該当しない。

(争点2)
会社が平成28年1月7日以降、Xに対し車通勤を禁止していることは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)
本件事故直前及び以前から複数回に及ぶXの居眠り又は意識消失が疑われる状態の原因は明らかでないため、会社が、従業員が交通事故を引き起こす可能性のある行為について慎重な対応となるのもやむを得ないことであり、不当労働行為には該当しない。

(争点3)
Xの教習指導員への復帰及びXの車通勤禁止について組合らが申し入れた団体交渉の開催に関する、一連の会社の対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)
会社が、団体交渉の議題に係る状況が変化している中、支部組合執行部全員のドライブレコーダーの映像の視聴等を条件に、約1年2か月の長期に渡り団体交渉の開催に応じなかったことは、正当な理由なく団体交渉開催の条件に固執していたと評価せざるを得ず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
また、会社のこうした対応は、組合らの団体交渉権を軽視し、組合活動に重大な支障を与える支配介入行為であるといえ、労組法第7条第3号の不当労働行為にも該当する。

(争点4)
会社が29年夏季賞与において、支部組合の組合員14名中12名をマイナス査定としたことは、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び組合らの運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)
29年夏季賞与の査定には、支部組合員と非組合員との間に外形的な格差が認められる。しかし、会社の評価制度により査定で教習指導員を個別に評価することは可能であり、各支部組合員の能力及び勤務実績が非組合員と比べて劣っていないことについて申立人らの立証があったとは認め難いため、29年夏季賞与の査定が不合理であったとまではいえない。よって、不当労働行為には該当しない。

(争点5)
会社が平成30年9月29日以降、支部組合が事務所として利用しているスペースに会社備品を設置していることは、支部組合の運営に対する支配介入及び組合らが不当労働行為救済申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いに当たるか否か。

(判断の要旨)
支部組合は組合利用スペースを長年継続して利用していたことなどから、その利用は労使慣行になっていたといえる。会社が、組合利用スペースを備品の設置場所に選んだ合理的な理由は認められないため、同スペースに備品を設置したことは支部組合に対する支配介入行為であり、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
一方、労組法第7条第4号の報復的不利益取扱いは、労働者個人を対象とした規定と解されるところ、申立人らは本争点に関して組合員個人に対する会社の報復的不利益取扱いがあったという主張及び立証はしていないため、同条同号の成立は認められない。

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