第64回神奈川文化賞受賞者プロフィール

掲載日:2017年6月30日

神奈川文化賞

吉田 鋼市(よしだ こういち)さん <学術>

吉田鋼市さん
 西洋建築史研究の第一人者。近代建築を中心とした歴史的な建物の調査を数多く手がけ、それぞれの来歴や見どころ、図面化に取り組んできた。こうした仕事の蓄積を通じ、建物の歴史的、社会的意義を喚起するとともに、建築に関する専門的な知識を持たない人々に対しても、「古い建物を見る目」を広く普及させてきた。
 中世の建築物が集積する鎌倉や近代建築が集積する横浜など、バラエティー豊かな建築がそろう神奈川の建物を、歴史、地域という観点から価値付け、整理してきた。こうした見識は、横浜市や川崎市、鎌倉市などをはじめとした県内全域の文化財保護に生かされている。
 また、横浜赤レンガ倉庫や横浜生糸検査場といった第一級の建築物から、復興小学校や県内駐在の外資系企業の住宅、港の倉庫といった生活や地域経済に関わる建築物まで、幅広い建物の再発見にも尽力。専門的な見地を、数多くの著書や講演などを通じて、平易かつ魅力的な言葉で解説している。
[横浜市]

菊地 信義(きくち のぶよし)さん <芸術>

菊地信義さん
 少年期を藤沢市で過ごし、県立鎌倉高校を卒業。1970年代前半から装幀にたずさわる。装幀家という職業がまだ確立されておらず、編集者や画家の片手間仕事と一般的に考えられていた1977年、装幀家として独立。一時、神奈川県を離れるも、1966年、鎌倉に転居。現在も鎌倉・東京で制作を続けている。
 1979年、埴谷雄高『光速者』(作品社)では、当時国内に数台しかなかったCTスキャンを用い、著書の脳の断面写真を箱の表紙に大胆にあしらった。星雲を想起させる画像は瞬く間に話題となる。1982年、講談社文庫のデザイン変更を手がけ、読者への調査結果をふまえ、従来とは逆に背表紙の上側に著者名を配置。美しく特徴のあるデザインが評判になる。
 これまでに手掛けてきた作品は、実に1万2000点余り。テキストの深い読み込みに裏付けられた装幀で、現在も多くの読者、著者、編集者に支持されている。
 1984年、装幀の業績により第22回藤村記念歴程賞、1987年、『神奈川県の歴史』(有隣堂)により、ドイツ・ライプツィヒ「世界で最も美しい本」展銀賞など、ほか多数受賞。
[鎌倉市]

五大 路子(ごだい みちこ)さん <文化活動>

五大路子さん
 1977年、NHK朝の連続テレビ小説「いちばん星」の主役で朝の顔としてデビュー。以来、舞台、テレビと幅広く活躍する横浜市出身の女優。
 1999年、横浜から世界へ舞台芸術を発信し、地域からの文化活動を推進したいとの思いから、横浜夢座を旗揚げ。座長として今年16年目を迎える。明治開港期、激動する日本を動かした人々を描いた「エンドレス・ドリーム ヨコハマの夜明け」や、横浜生まれの歌手「渡辺はま子」、小説家・劇作家である「長谷川伸」を題材にした舞台を上演するなど、横浜に根差した演劇活動を続けている。
 終戦直後から進駐軍の米国人を相手に伊勢佐木町周辺に立ち続けた伝説の娼婦、「メリーさん」をモデルにしたひとり芝居「横浜ローザ」は、1996年の初演から19年目を迎え、全国各地で繰り返し上演している。戦後70年目の節目である今年は、ニューヨークでの公演を実現。ニューヨークタイムスに記事が取り上げられるなど、好評を博した。
 2008年、第29回松尾芸能賞演劇優秀賞、2011年、第46回長谷川伸賞、2012年、第61回横浜文化賞など、ほか多数受賞。
[横浜市]

養老 孟司(ようろう たけし)さん <文化活動>

養老孟司さん
 日本における解剖学の第一人者。鎌倉で生まれ育ち、現在も鎌倉在住。環境問題や医療、生き方など、幅広い分野にわたり、執筆や講演活動などを精力的に行っている。
 2003年、『バカの壁』(新潮新書)を出版。同年、ベストセラー第1位となり、毎日出版文化賞特別賞を受賞。本のタイトルである「バカの壁」は、新語・流行語大賞を受賞し、一世を風靡した。その後も数多くの著書を通じて、心の問題や社会現象を、脳科学、解剖学をはじめとした医学・生物学領域の知識を交えながら分かりやすく解説。多くの読者の支持を得ている。
 また、県内に留まらず全国各地で積極的に講演活動を行っており、脳、人生、医療、死など、そのテーマは多岐にわたる。
 鎌倉での幼少時、自宅近くの滑川で虫や生き物を観察した経験から、趣味は昆虫採集。2005年、箱根に「養老山荘」を建設し、これまで収集した虫の標本などを置き、現在も箱根に足を運ぶ。
[鎌倉市]

神奈川文化賞未来賞

川瀬 賢太郎(かわせ けんたろう)さん <芸術>

川瀬賢太郎さん
 2006年10月、東京国際音楽コンクール<指揮>で1位なしの2位(最高位)に入賞。以来、読売日本交響楽団など各地のオーケストラから次々に招きを受ける。
 2014年4月から、神奈川フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者。29歳での就任は、当時の国内オーケストラの常任指揮者としては最年少。
 楽曲の知性的解釈と情熱的なタクトにより、地元オーケストラの力を引き出している。曲選びにおいても、モーツァルトやベートーベンなど人気のある作曲家のほか、アイヴズなど一般にはなじみの薄かった作曲家も積極的に取り上げ、聴衆が新しい世界を体験できるよう試みている。
 2015年6月、神奈川フィル常任指揮者に就任して以降の実績が特に評価され、第23回渡邉暁雄音楽基金音楽賞を受賞。
 現在、神奈川フィルの常任指揮者として2年目を迎える。緻密な分析による楽曲の構成力、音楽文化を根づかせようという積極性には定評があり、若き実力派指揮者として、今後さらなる活躍が期待されている。
[東京都]

甲斐 智美(かい ともみ)さん <文化活動>

甲斐智美さん
 川崎出身の女流棋士。10歳の時、将棋の観戦記者である父親から将棋を教わる。1995年3月、女流育成会に入会。1997年4月、13歳で昇級し、中原誠門下で女流プロ入りするが、その後奨励会に五年間在籍する。
 2006年9月、第11回鹿島杯女流将棋トーナメントで棋戦初優勝を飾る。2010年、初タイトル「女王」を獲得し、続いて「女流王位」も奪取する。2011年、「女王」は失冠。「女流王位」は防衛をしたが、2012年に失冠し、無冠となる。
 2013年、再び女流王位戦に挑戦すると、里見香奈女流五冠(当時)を破って返り咲く。里見女流五冠の全冠制覇に注目が集まっていたため、価値の高いタイトル奪取だった。続いて、「倉敷藤花」も奪い、二度目の二冠に。現在は「倉敷藤花」の一冠のタイトルを保持している。
 2010年度、第38回女流棋士賞、2013年度、第41回女流棋士賞、2014年度、第42回最優秀女流棋士賞など、ほか多数受賞。
 今後さらなる活躍が期待されている。
[川崎市]
神奈川県

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