神奈川県水産技術センター メルマガ490

掲載日:2016年1月22日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  490号    2016年1月22日号

□ 研究員コラム

1 泳ぐまつぼっくり「マツカサウオ」(栽培推進部  古川 大)

2 温暖化で熱・亜熱帯の魚が北上中!? (企画資源部 武内啓明)

----------------------------------------------------------------

1 泳ぐまつぼっくり「マツカサウオ」(栽培推進部  古川 大)

 みなさんは「まつかさ」をご存知でしょうか?秋冬になると、松の木の根元に落っこちているパイナップルのような形をしたあれです。いろいろな呼び名があるようで、私は小さいころからまつぼっくりと呼んでいました。最近ではクリスマスのリースや正月飾りに使われているものを見かけたのではないでしょうか。6月に神奈川の海でダイビングしている時に、まつぼっくりにそっくりな魚に出会いました。

 今回紹介させていただくのがその魚、「マツカサウオ」です。深さ15mのサンゴの下に隠れていました。黄色い体と大きい六角形のウロコが特徴で、このウロコが体表に並ぶ姿はまつぼっくりのように見えます。ハコフグのような頑丈な骨格と大きなウロコを備えた、硬い身体の持ち主です。身体が硬いぶん素早い動きが苦手なようで、海の中で近づいた時も緩慢な動きでゆっくりと離れていきました。

 まつぼっくりのような見た目やゆっくりとした動きのほかにも特徴があります。発光器を持っており、暗いところでは青白く光るのです。この特徴が見つかった経緯には、少し面白いエピソードがあります。

 もともとマツカサウオは、発光生物であることが判明する以前からも水族館で展示されるようなよく知られた魚でした。1914年に富山県の水族館でマツカサウオを飼育中に、激しい暴風雨で停電が発生。周囲が暗闇に包まれるなか飼育員が見たのは、水槽の中を漂う青白い光…。マツカサウオが発光することは、こうして偶然発見されたそうです。ふとした偶然から新たな発見が生まれることがあるということに気づかされます。

 特徴的な見た目とゆっくりとした動きが可愛らしい魚で、水産技術センターの見学者向けタッチングプールで展示したこともあります。そのほか神奈川の漁業や魚に関する展示などがありますので、ぜひセンター見学にいらしてください。

 写真1 マツカサウオ 六角形の大きなウロコと黄色いからだが目立ちます

 写真:マツカサウオ 六角形の大きなウロコと黄色いからだが目立ちます

 写真2 まつぼっくり(まつかさ) 手芸で使ったり、子供時代におもちゃとして遊んだ方も多いのではないでしょうか

 写真:まつぼっくり(まつかさ) 手芸で使ったり、子供時代におもちゃとして遊んだ方も多いのではないでしょうか

----------------------------------------------------------------

2 温暖化で熱・亜熱帯の魚が北上中!? (企画資源部 武内啓明)

 2013年に公表されたIPCC(注)第5次評価報告書によれば、温暖化は疑う余地がなく、人間活動がその主な要因であった可能性がきわめて高いそうです。地球規模で進行する温暖化は生物にも様々な影響を与え、日本においても温暖化の影響が疑われる現象が報告されています。温暖な地域に生息する生物の分布域が北方に拡大する現象(ナガサキアゲハ、ミナミアオカメムシなどの昆虫で有名)はその代表例ですが、魚ではどうでしょうか?

 写真1は、私が昨年の夏に千葉県房総半島のとある河川で採集した“カマヒレマツゲハゼ”というハゼの仲間です。その名の通り、目の上に“まつげ”のような突起があるのが特徴で、かつては琉球列島以南の熱・亜熱帯域に分布するとされていました。しかし、2000年代以降、静岡県、和歌山県、高知県などで相次いで確認され、一部の地域では既に定着している可能性もあります。本種は、もともと熱・亜熱帯域に分布する魚ですから、本州や四国では、冬になれば水温の低下に耐えられず死んでしまうはずです。しかし、気象庁が公表しているデータによれば、この100年で日本の年平均気温及び海面水温は約1℃上昇しており(特に冬季の上昇率が高いようです)、冬場に水温が下がりにくくなったことで、本州や四国でも越冬できるようになったのかもしれません。

 近年、水産業の分野でも、アイゴ、カタボシイワシ、ヒョウモンダコなどの暖海性種の増加、海藻類が減少する磯焼けの進行、ノリやワカメの不作など、温暖化の影響が疑われる事例がいくつか報告されており、今後、本県でも漁獲対象種の変更や高温耐性を持った種苗の生産など、温暖化への対応が必要となることでしょう。

 (注)IPCC(気候変動に関する政府間パネル):温暖化に関する最新の研究成果を各国が共有するため、世界気象機関などによって1988年に設立された組織

 写真1 2014年に千葉県の河川で採集されたカマヒレマツゲハゼ

 写真:2014年に千葉県の河川で採集されたカマヒレマツゲハゼ

----------------------------------------------------------------

■水技Cメールマガジン(隔週金曜日発行)
■メルマガの配信の変更、解除、ご意見やお問い合わせはこちらのメルマガお問い合わせフォームからお願いいたします。

発行:神奈川県水産技術センター 企画資源部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312

-----------------------------------------------------------------

メルマガTOPへ

神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター です。