神奈川県水産技術センター メルマガ488

掲載日:2015年12月25日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  488号    2015年12月25日号

□ 研究員コラム

1 芦ノ湖のワカサギ (内水面試験場 安藤隆)

2 日本記録の巨大タチウオを同定 (栽培推進部 工藤孝浩)

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1 芦ノ湖のワカサギ (内水面試験場 安藤隆)

 以前ワカサギについて書きましたが、今回は私が毎年釣りに行く芦ノ湖のワカサギ事情についてお話したいと思います。

 今年も10月に1度釣りに行き、970尾、2.5kg釣ってきました。その時私の隣で釣っていた人はなんと1,400尾、3.5kg釣っていました(写真1)。毎回こんなに釣れるわけではありませんが、本当に良く釣れる湖です。また、刺網漁業もおこなわれており、箱根の旅館、ホテル、レストランなどに出荷され、地元の名産品として観光客などにも喜ばれています。

 芦ノ湖のワカサギ資源がこんなに豊かなのにはちゃんと理由があります。もちろん湖の環境がワカサギに適していることもあるのでしょうが、芦之湖漁業協同組合の努力が大変大きいと思います。

 ワカサギ資源を維持するため、芦之湖漁協でも以前は毎年他県からワカサギ卵を購入して放流していましたが、年々入手が困難となり苦労していました。それが今では毎年安定的に約5億尾ほどのワカサギ孵化仔魚を放流していますが、全て自前です。定置網で親魚を採捕し、船で養魚場に運び、水槽に入れて産卵させ、卵の粘着力を取り除いてから孵化筒(写真2)という直径15cmほどの円筒形の透明な塩化ビニールのパイプに入れ、水を循環させて孵化させ、放流しています。しかも生残率の向上を図るため、ワムシというプランクトンを水槽で培養し、孵化した仔魚に餌として食べさせた上で湖に出しています。このような作業が毎年3月から4月にかけて毎日続きます。孵化を待つ卵の管理もあり、箱根の寒い冬に大変な作業だと思います。

 しかし、そのおかげで私たちはワカサギ釣りを楽しめているわけです。

 芦之湖漁協がすごいのは、これら一連の技術を大学、内水面試験場と協力しながらすべて自前で開発してきたことでしょう。そして今でも、もっと効率のよい孵化放流ができないかといろいろと知恵をしぼっているようです。

 写真1 芦ノ湖のワカサギ釣果

 芦ノ湖のワカサギ釣果

 写真2 ワカサギ卵と孵化筒

 ワカサギ卵と孵化筒

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2 日本記録の巨大タチウオを同定 (栽培推進部 工藤孝浩)

 先日のこと、私のところへ「鮮魚」と書かれたトロ箱が鹿児島から航空便で届きました。中には、これまでに見たことがない大きさのタチウオが入っていました。

 この魚を、平成27年10月31日に現地で釣り上げた(公財)日本釣振興会神奈川県支部長の山口充さんが、「タチウオならば釣りの日本記録になる」と、私に同定(魚種の判別)を依頼したのでした。なぜならば、鹿児島県にはタチウオに似た大型魚であるオキナワオオタチが分布しているからです。

 タチウオの仲間は、腹びれ、臀びれと尾びれを欠き、リボン状の体は一様に銀色で斑紋もないことから種を分ける特徴が乏しく、分類学上の混乱が近年まで続いていました。そこで、プロポーション、眼の大きさ、背鰭の条数、頭部の形などを慎重に検討したうえで、私はタチウオであると結論づけました。そもそも、オキナワオオタチは鹿児島県屋久島以南に分布しており、この魚が釣られた鹿児島県鹿屋市沖の錦江湾は分布域から外れています。

 同定結果を伝えると、山口さんは世界共通の釣りルールに則って日本記録・世界記録の認定をしているJGFA(ジャパンゲームフィッシュ協会)に申請し、後日この魚は日本記録に認定されました。記録は体重2.75kgで、それまでの1.9kg台を大幅に更新しました。ちなみに、JGFA記録は体重ですが、記録魚の全長は158cmもありました。

 ところで、タチウオはどこまで大きくなるのでしょうか?比較的狭い海域ごとで成長に差がみられることから、複数の系群があるとされており、分布域のほぼ中心にあって研究が進んでいる紀伊水道を例にとると、1歳で全長66cm、2歳で87cm、3歳で104cm、4歳で116cmとなり、年齢と成長の関係式から求められる理論上の最大全長は158cm、最大体重は2.76kgとなります。4歳時の全長を各分布域で比較すると、紀伊水道のタチウオは熊野灘と並んで最も大きいことから、この理論値が研究から導かれる日本最大サイズと考えられます。

 この記録魚は、全長・体重ともにこの理論上の最大魚と見事に一致しました。ところが、山口さんは驚くべきことを語りました。記録魚を釣らせた船宿は、「こんな魚はまだまだ小さい。もっと大きいのが釣れる」と言い、全長174cmのタチウオの魚拓を見せられたと言うのです。錦江湾のタチウオの生態は未解明で、記録魚を超える大魚はいるものと思われます。この海域には大型化を促す何らかの条件があるのかも知れません。

 写真1 JGFAの日本記録に認定されたタチウオ(山口充さん提供)

 JGFAの日本記録に認定されたタチウオ(山口充さん提供)

 写真2 日本記録魚の頭部。眼は小さく眼隔部はくぼんでいないことから、オキナワオオタチと区別されます

 日本記録魚の頭部。眼は小さく眼隔部はくぼんでいないことから、オキナワオオタチと区別されます

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