神奈川県水産技術センター メルマガ479

掲載日:2015年8月21日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  479号    2015年8月21日号

□ 研究員コラム

1 ウナギについて (内水面試験場  戸井田 伸一)

2 梅雨時はツライ! (企画資源部 清水 顕太郎)

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1 ウナギについて (内水面試験場  戸井田 伸一)

 暑い夏がやってきました。一文字目に『う』がつくものを食べると、良いという話があります。

 皆さんは、暑い夏に『う』がつく言葉がどれだけ浮かぶでしょうか?

 私は、やはり『ウナギ』が真っ先に思い浮かびます。他には、うどん、牛、ウグイでしょうか。

 2013年2月、ニホンウナギが、絶滅危惧IB類へカテゴリー変更が行われました。2014年6月にはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)に、ニホンウナギが絶滅危惧種(EN)として掲載されるなど、ニホンウナギが食べられなくなるのでは、と心配された方が多くいられたと思います。

 内水面試験場では、(国研)水産総合研究センター中央水産研究所が実施する全国調査に参加し、ニホンウナギの調査研究を2カ年行いました。ニホンウナギが減少した要因として、食用のための過剰な漁獲、海洋環境の変化(エルニーニョ、台風、地球温暖化)、河川の自然環境の変化などが指摘されていますが、すぐに解決できるものは限られています。

 神奈川県でも、シラスウナギの採捕が行われています。採捕できる許可期間は12月からですが、資源保護のために採捕者が自主的に採捕時期を短くするなど、資源の保護の取り組みが進んでいます。一方、シラスウナギの採捕される時期が遅れる傾向が見られています。最近では2月から4月に漁獲されることが多くなってきました(表1の青く塗りつぶした所が多く採捕された時期)。

 河川内でニホンウナギの遡上時期を調べたところ、1月以降から色素の薄いシラスウナギが多数採捕されたとから、県内では1月以降がシラスウナギの主な遡上時期と考えられました。

 また、ニホンウナギの成長を調べるために、ICタグ(図1)標識を用いた標識放流調査を行ったところ、ICタグ標識を付けたニホンウナギは、7月以前には上流への移動が多く、8月以降は下流域への移動が増えていました。

 ニホンウナギが採捕された環境は、大石から小石の環境では大型個体、砂から礫の環境では小型個体が多く、大きな障害物がある緩い流れでは大小様々な個体が採捕され、浅く流れの速い瀬では、小型のニホンウナギが多く生息していました。

 ニホンウナギが食べていた物を調べると、相模川と早川、千歳川ではハゼ科魚類とアユ、水生昆虫が多く食べられていました。一方、酒匂川では甲殻類や水生昆虫(特にユスリカ)への依存が高くなっています。ニホンウナギは河川により好んで食べる餌料の割合が異なるようです(表2)。

 ニホンウナギの生態が少しずつ解明されてきています。これからデータを解析し、新しい発見をしていきたいと思います。

 表1 シラスウナギの来遊時期の遅れ(青く塗りつぶした所が採捕量の多い時期)

 シラスウナギの来遊時期の遅れ(青く塗りつぶした所が採捕量の多い時期)

 図1 ニホンウナギの体内に注入したICタグ(全長9mm)

  ICタグは誤って食べないよう腹腔内に入れてあり、ニホンウナギを食べるために捌くと外へ出る様にしています。

  ニホンウナギの体内に注入したICタグ(全長9mm)

 表2 ニホンウナギが食べていたもの

 ニホンウナギが食べていたもの

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2 梅雨時はツライ! (企画資源部 清水 顕太郎)

 この原稿を書いている数日前に関東地方は梅雨明けが報じられ、今でこそ夏の太陽がじりじりと照りつけておりますが、今年の梅雨は太陽が見えない日が10日近くも続いた期間がありました。久しぶりに雲間から顔を出したお日様を見たときには「なんだかえらく久しぶりだなぁ」などと思ったものでした。

 さて、今年はその梅雨の時期に「関東・東海海況速報」(図1)(http://www.agri-kanagawa.jp/suisoken/Kaikyozu/KantoTokai.asp で公開しています)の当番が回ってきました。関東・東海海況速報は千葉県から和歌山県の1都5県が当番制で作図しています。図の基になるデータは人工衛星が観測した海表面の水温データや各県の調査船・漁船等が観測した水温や流れのデータ、関係機関がその地先や観測ブイなどで観測した水温データなどで、これらを総合して解析し、さらに潮位変化や海洋観察(2012年12月21日発行のVOL411で紹介しています)などの結果を加味して水温分布と黒潮流路の図を作成しています。幸い、私が担当した期間は海が凪ぐことが多かったので、船舶水温はそこそこあったのですが、その一方で、梅雨前線が本州南方に居座り続けたため、人工衛星による水温データが一時期は全く得られませんでした。

 ご存じの方も多いと思いますが、人工衛星での海水温観測には通常赤外線を用います。水温の高低に応じて海の表面から放出される赤外線の強弱をセンサーで測定し水温値に変換するのですが、赤外線は雲を通過できないのです。もっとも、雲がかかっていても雲にはたいてい隙間がありますので、そこから部分的ではありますがデータが得られますし、複数の衛星データを重ね合わせることである程度全体を推測することができる場合もあるのですが、今回はそのような隙間を見せてくれない梅雨前線でしたので、船舶やブイ等による水温観測が無い海域の様子は全くわからなくなってしまいました。広大な関東・東海海況速報の範囲の水温全てを船舶やブイだけで毎日把握することは、人的な面からも費用的な面からも不可能ですから、人工衛星による観測がいかに重要かがお分りいただけるかと思います。

 今回の当番では、人工衛星によるデータが全くない日が1週間ほど続き、さすがに参りました。データが無いから作図しない・・・というわけにも行かないので、船舶水温やブイ・地先の水温の前日からの変化から「この辺の水温が下がってこの辺が上がったから、水温の等値線はこんな感じかしら?」とか「ここの流れが速くなったから黒潮が近寄ったに違いない。だとしたら、この辺の水温は上がるはずで、等値線はこんな感じだよね?」と言ったように、わずかな手がかりをもとに毎日ウンウン言いながら作図していました。例年、梅雨の時期や台風シーズンには衛星データが少なくなるのですが、こんなにつらかったのも久しぶりでした。

 今回は梅雨前線に悩まされた・・・というお話でしたが、そうは言っても梅雨は日本の自然現象のひとつですから、避けて通るわけには行きません。空梅雨なら困らなかったのか?と言えば、これは梅雨に限ったことではありませんが、適度に照ったり降ったりしてくれなければ困るので、「空梅雨だったら良かった」と言うつもりもありません。ですが、今回のように、また、近年のように照ったり降ったりする程度がだんだん極端になってきているようですが、これも地球温暖化の影響なのでしょうか?だとしたら今回私が作図で困ったのも、些細なこととはいえ、温暖化の弊害と言うことになるのでしょうか?

 以上のように苦労して作成しています海況速報ですが、毎年予算が減少し機器更新や経費の捻出が難しく、このまま現状レベルの情報を提供できるか苦慮しているところです。ただ今、バナー広告を募集しておりますので、ご賛同いただける方は水産技術センターまでお問い合わせください。

 図1 関東・東海海況速報(平成27年8月17日発行分)

 関東・東海海況速報(平成27年8月17日発行分)

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