神奈川県水産技術センター メルマガ471

掲載日:2015年5月1日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  471号    2015年5月1日号

□ 研究員コラム

1 磯焼け対策を行う漁業者への支援 (企画資源部 木下 淳司)

2 流木回収作業の珍客(ミゾレウツボ) (船舶課 中村 良成)

3 漁業調査指導船「ほうじょう」船長就任挨拶 (相模湾試験場 宍戸 俊夫)

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1 磯焼け対策を行う漁業者への支援 (企画資源部 木下 淳司)

 この話は、全国水産業改良普及職員協議会が発行する、漁民の友56号への寄稿を、メルマガ読者の皆様にも知っていただきたく書き直しました。

 三浦半島沿岸には、大型海藻の一種である、カジメ、アラメの広大な藻場があり、そこに生息するアワビ、サザエ、イセエビなどを昔から盛んに漁獲してきました。ところがこの10年程の間に、海藻を食べるガンガゼ(ウニ類)とアイゴ(魚類)が急増する一方で、磯焼けと呼ばれる藻場が衰退した状態が深刻になりました。危機感を強めた漁業者は自主的にガンガゼを除去していましたが、平成25年度に水産庁の磯焼け対策のための事業を活用し、漁業者と漁協を中心とする4つの活動組織が設立されました。 当センターでは、普及指導担当が主体となってこれら活動組織の取組みに対し支援しています。支援の内容ですが、まず磯焼けの実態を把握するため漁業者から聞き取りを行い、各地区の漁業関係者に対し現状を報告しました。

 次に、食害生物の除去とその効果を把握するため、漁業者がガンガゼを除去する活動に、なるべく多く同行して調査をしています。ガンガゼの除去方法について、漁業者は主として裸潜りや、見突き(みづき)と呼ばれる、船上から長い竿の先に取り付けた器具を用いてガンガゼを破壊します。我々はスキューバ潜水により、フジツボをかき落す器具等を用いて除去し、それぞれの方法の効率を調べています。あわせて潜水で藻場の現状を調べ、漁業者からの聞き取り結果を検証しています。

 磯焼けの原因として、ガンガゼ以上の脅威が、アイゴの食害です。アイゴは20年程前から、西日本を中心に磯焼けを引き起こしています。効果的な除去方法が見つからないため、除去の取組み例は全国的にも少ないようです。三浦半島には、アイゴ除去に挑戦している活動組織があります。普及指導担当は刺し網で除去したアイゴの体長や漁獲尾数を調べ、網を掛ける時期や場所について助言しています。まだ小さな一歩ですが、今年1月の全国報告会で活動組織がこの取組みを発表したところ、注目すべき活動とのことで、網の種類やアイゴが多く獲れる場所の特徴を教えて欲しい、との質問がありました。

 ガンガゼの密度は高く、潰しても潰しても岩の隙間から新たに現れます。また、アイゴの群れは神出鬼没で、一網打尽するすべはなく、目の前でカジメが食べられてしまうのを、悔しい思いで眺めるしかない状況です。しかし普及指導担当は、研究員や県庁水産課と協力し、磯焼け対策に取組む漁業者を藻場が回復するまで粘り強く支援していきます。

ウニ除去に参加しヘトヘトの筆者(右)

写真 ウニ除去に参加しヘトヘトの筆者(右)

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2 流木回収作業の珍客(ミゾレウツボ) (船舶課 中村 良成)

  平成22年9月の台風9号は山北町や静岡県小山町など、酒匂川源流域に記録的な豪雨をもたらしました。この雨で大量の土砂とともに倒木やゴミなどが流出して河口の小田原地先の海底に滞積したことで環境が悪化し、ヒラメ刺網漁の操業ができないなどの被害も生じ、漁業者から早急に撤去するよう要望がありました。そこで県は、ダイバーによる回収が可能な水深30m以浅は人力で、それより深いところは江の島丸が処理することになりました。

 江の島丸としても初めての試みであり試行錯誤を重ねながら、目合約30センチのハンモック状の網を取付けた幅3mの桁を製作し、できるだけスローで引っ張る方法で2トントラックの荷台一杯分の流木や古タイヤなどを回収することができました。

 さて、今回は除去作業の際に、変わった生物を発見したお話です。

 昨年11月下旬の作業中、河口正面の水深50-60mからタイヤや倒木とともに一抱えほどもある大きな切株を回収しました(写真1)。船上に網をおろして回収物を甲板に広げると、切り株の根元のすき間から小さなカニとともに全長25センチほどの普段見たことがない真黒いウツボの若魚が出てきました。このウツボ、流木類の除去作業中にたまたま回収物の中から発見した目的外の対象物ですから、そのまま海に戻すべきかもしれませんが、一目で「普段見たことがないウツボ」とわかれば、試験研究機関としては、その魚が何なのかきっちり確認しないわけにはいきません。ウツボを水産技術センターに持ち帰り水槽に入れて観察すると、真黒と思った体は濃茶色で表皮に微小な黄点が散在し、青白く輝く背鰭と腹鰭の縁が特徴的でした(写真2、3)。

 早速手元の図鑑類で調べてみましたが適当な種が見つからず、「新種か?」と一瞬色めき立ちましたが、その翌週たまたま箱根の地球博物館を訪れたウツボの大家(O博物館のH学芸員)に写真を見せて判別してもらったところ、ミゾレウツボ(Gymnothorax neglectus   Tanaka, 1911 )の若魚と判明しました。

 ミゾレウツボは主に紀伊半島以西に分布し、水深200から300メートルにすむ深海性のウツボで、水族館での飼育例も少ないかなり珍しい種類です。採集時のデータがはっきりしているので、本来なら早速ホルマリン標本にすべきところですが、「とりあえず種が判明するまで」とバケツの中で生かしていたところ、網スレによる傷がなかったため、早くも3日目には餌付きました。1センチ角の魚肉の切れ端を水中に落とすとゆっくりサザエのシェルターから出てきて、しばらく思案?したのち、底に落ちた肉片をパクリとくわえます。その動作はまことにおっとりしており、獰猛な海のギャングというウツボの一般的なイメージとはずいぶん異なるものでした(でも、一番食指を動かしたのは生のマダコの肉片でした。やっぱりウツボですね)。

 すっかり情が移ってしまい標本にもできず、また、珍しい種類の魚ですので、現在は近くの水族館に飼育(未公開)をお願いしています。

回収した流木や古タイヤ (ミゾレウツボは右上の切株から)

写真1 回収した流木や古タイヤ (ミゾレウツボは右上の切株から)

上から見たミゾレウツボ (青白く輝く背びれの縁が印象的)

写真2 上から見たミゾレウツボ (青白く輝く背びれの縁が印象的)

横から見たミゾレウツボ (顔つきはやっぱりウツボ)

写真3 横から見たミゾレウツボ (顔つきはやっぱりウツボ)

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3 漁業調査指導船「ほうじょう」船長就任挨拶 (相模湾試験場 宍戸 俊夫)

 4月1日付けで相模湾試験場の漁業調査指導船「ほうじょう」の船長に就任しました。

 「ほうじょう」は先代の漁業調査船「うしお」に代わり、新しく建造され、船名も公募により命名されました。

 この新しい漁業調査指導船の船長を務めることで、水産関係者からの期待を背負いながら、誇りを持って職務に邁進したいと考えています。

 今回の異動で、私とともに喜屋武真機関長、西村竜雄航海士も新たに「ほうじょう」勤務となり、船員が一新されましたのでご紹介させて頂きます。

 私は、水産技術センターの「相模丸」「江の島丸」に30年以上乗船し、イカ、キンメ、サバ、底魚などの調査をさせて頂き、日本中の海を回ってきました。

 喜屋武機関長は、外航船機関士を経て、本県入庁後は「相模丸」機関士、漁業取締船「たちばな」機関長、「江の島丸」機関長の経歴を持っています。

 マグロ資源調査では、オーストラリア海域やハワイ諸島などでも調査をしており、外洋経験も豊富な船員歴40年以上のベテランです。

 西村航海士は、かつて警察、海上保安庁において、船長、機関長両方の経歴を持っています。密漁取り締まり等の経験も持っていますので、水産資源の保護に関する意識は高いです。

 また、新しいことに取り組もうとする意欲も高く持っています。

 わたしたちは、相模湾試験場の一員として、当試験場の研究員や普及員と一体となり、神奈川県水産業の発展に全力を注ぐ所存ですので、どうぞよろしくお願いします。

写真1 ほうじょう

写真1 ほうじょう

写真2 ほうじょう

写真2 ほうじょう

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住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312

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